2016/06/02

市場は買う側の論理で動き出す

スクランブル交差点

市場の意思決定とは

マーケティングとは、個人や集団が、製品及び価値の創造や交換を通じて、顧客のニーズや欲求を満たす社会的プロセスである

と定義をしたのは、アメリカのフィリップ・コトラー教授ですが、ものを売るためには相手の欲しいものを提供すべきというシンプルな理論は子どもでもわかります。逆に言えば、どれほど優れている製品であると売り手側が力説しても要らないものは買わない、という買い手側の論理を理解しなければ、マーケティングは始まりません。

 1950年以降の高度成長期時代では、「売れるもの」は売り手側の意思から生まれました。“もっともっと欲しい”という貪欲とも言える需要が供給を上回り、最新の製品を作ればいくらでも売れた時代です。
やがて大量生産のシステムが整うと、流通も拡大を続け、市場は成熟期を迎えます。ほぼ均等に物資が行き渡る時代で必要となったのが、顧客志向マーケティングという考え方でした。顧客のニーズを的確に把握できる企業が、市場を征する者となったのです。

高度成長期と成熟期

買い手側の欲求が満足できる製品やサービスはいったい何なのか。それを知らなければ、低価格・高品質を売りにしていても、物は売れません。
現代の市場では、買う側の要求や好みは細分化され、多様化しています。安くて良いものであれば、顧客の満足が得られたという時代ははるか昔の話です。

 当然のことながら、企業にとって顧客は経営の最上位にすえるべき柱です。規模の大小は違えど、顧客なしにはどのような業種も成り立ちません。顧客との関係が長く続き、拡大し続けることは企業の存続に不可欠な要素であり、それと同時に新規顧客が永劫的に増え続けることは、繁栄への確実な道筋です。顧客との蜜月関係を生み出すのは、必要とする商品やサービスの提供に他なりません。売る側が利益を上げると同時に、買う側は満足を手にする。これを可能にするのが、精度の高い顧客ニーズの把握なのです。

 

既存データから学ぶ顧客ニーズ

 もっと売れる製品・サービスに、顧客との関係をもっと継続的に、というのはどの企業でも取り組んでいる恒常的な課題と言えるでしょう。突破口となるのは、「顧客がなぜ買っているのか」を明確にすることです。

 商品やサービスを選ぶ上での理由は顧客によって異なります。購買や受注の時期、環境条件によっても左右されるかもしれません。顧客が理由付けに使った要因から、ニーズの絞込みが可能となります。最終的な決め手が、価格なのか、製品自体の特性であるのか、アフターサービスなどの付帯的な条件なのか、あるいはブランド品などのようにイメージ重視なのかを調べることによって、顧客を吸引する因子が明らかになります。同時に、顧客の属性によるセグメンテーション(グループ化)を実施することで、さらに具体的なニーズが浮かび上がってきます。

商品やサービスを選ぶ上での理由

身近な例としては、コンビニエンスストアチェーンでのPOSシステム活用などが挙げられます。時間帯による売れ筋商品と、それを買った客の属性、同時に売れている商品などを分析した結果、商品の並べ替えやレジ前での展示、声かけにより大幅な売り上げアップにつなげた例が報告されています。
商品が手に取られた理由と属性を掛け合わせて分析することにより、次ステップへの具体的なアプローチが実現されたのです。現在すでにある事実関係やデータを元に、顧客動向を見える化することで、顧客ニーズ戦略の方向性を探ることができます。

 

潜在的顧客ニーズによる将来戦略

 顧客ニーズに関しての話題で、最近よく耳にするのが「ウォンツ」の重要性です。また、それに関連して「顧客ニーズは崩壊している」と述べている説まであります。顧客ニーズがあまりにも細分化されたために、これまで行われてきたマーケット調査手法が追いつかなくなり、求められているものがわからなくなっているのではないか、という主旨です。

 「ニーズ」とは、商品やサービスの現実的な必要性のことですが、「ウォンツ」には本能的に欲しいものへの潜在欲求という意味があります。これまでの顕在化している顧客ニーズに対して、潜在的な顧客ニーズをとらえることで、“真の顧客ニーズ”に応えることができるのがウォンツの追及です。

 それでは、顧客自身すら漠として捕らえ切れていない潜在ニーズを、どのようにしてたぐり寄せるべきなのでしょうか。
それには商品やサービスを提供する側の、さらなる分析力が試されます。商品やサービスの提供により顧客が実現できる未来や、内在する問題の解決を推察することです。それは、数値データのみを加工、分析するに留まっていては獲得できません。
現実の状況を足で確認する機動性、さらに顧客とのコミュニケーションから、表層の下に隠れている欲求を解析する能力も必須となるでしょう。これまでの顧客ニーズへの踏み込みを一歩も二歩も進めて考えてゆく、それが尽きることのない潜在的な顧客ニーズを掴み取るスタート地点となります。

 顧客ニーズについては、関わる産業や事業によってまったく異なってきます。どの側面から、どの切り口で探り、いかに満足感を与えるのかが、事業戦略の重要な視点となることは間違いありません。自社の提供する商品やサービスが顧客の未来像に反映され続けるというシナリオは、まさに顧客ニーズに導かれてこそ、と言えるでしょう。

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