2018/11/29

オンプレミスとクラウドの違いは?移行するメリットとコストを比較

近年、オンプレミスからクラウドへの移行が加速しつつあります。そもそも、オンプレミスとクラウドの違いを把握していないと、移行するかどうかを含めた検討は難しいでしょう。本記事では、オンプレミスとクラウドの特徴を比較しながら、オンプレミスからクラウドへ移行する際の検討ポイントを探っていきます。

オンプレミスとクラウドの違い

オンプレミスとクラウドは、それぞれどのように違うのかについて解説します。

 

オンプレミスとは

オンプレミス(On-Premises)とは、「自社運用型」とも言い、自社内にシステムを構築・運用するシステムの運用形態のことです。ハードウェアは購入またはリース契約で調達し、データベースやメーラーなどのソフトウェアはパッケージ製品を購入します。いずれにしてもシステムは自社内にあることがオンプレミスの特徴です。

このシステム運用形態は、昔からある一般的な方法で特に呼び名もありませんでした。ところが、近年自社内にサーバーを置かない運用形態が広まり始めたため、区別のために現在は「オンプレミス」と呼ばれるようになりました。

オンプレミスには3パターンの利用形態があります。

 

クラウドとは

クラウドコンピューティング(以降クラウド)は、サービス提供業者が構築したシステムを、ネットワークを介し、多くの場合月額使用料を支払って利用するシステムの運用形態のことです。ハードウェアの調達やソフトウェアのセットアップなどはすべてサービス提供業者側が行い、企業はできあがったシステムを利用するだけとなります。

クラウドは、NIST(米国国立標準技術研究所)の定義によれば5つの特徴があります。

オンデマンド・セルフサービスとは、サービス提供業者に連絡することなく、サービスの利用者側が自分で利用できる仕組みのことです。ネットワークを介してサービスは提供され、リソースは他のユーザーと共用します。拡張性が高いことや、提供サービスの利用結果が計測できるという点も特徴です。

クラウドでは、自社内にシステムを構築する手間やハードウェアの置き場所にかかる土地代、メンテナンスにかかる人件費も不要です。必要な経費は月々の使用料のみと明確で、初期コストがオンプレミスに比べて少ないことから、主に起業間もないベンチャーや中小企業を中心に利用が広まっていきました。

クラウドは、サービスの提供形態によって3パターンの形式に分かれます。

SaaS:サービスの形で提供されるソフトウェア
PaaS:サービスの形で提供されるプラットフォーム
IaaS:サービスの形で提供されるインフラ

SaaS(Software as a Service)はWebブラウザのようなシンクライアントでアクセスして利用するソフトウェアサービスです。利用者側はその裏にあるプラットフォームやインフラを意識することはありません。

PaaS(Platform as a Service)は、サービス提供業者側が用意したインフラ・プラットフォーム・オペレーションシステムを利用して、自らアプリケーションを配備し、利用する形の利用形態です。アプリケーションの設定や制御は、企業側で行います。

IaaS(Infrastructure as a Service)は、インフラを利用するサービス形態です。企業側は、ハードウェアはサービス提供業者が用意したものを利用します。オペレーションシステムやアプリケーションのインストール、運用は企業側でインストールし、管理する点が特徴です。

代表的なクラウドのサービスを3つご紹介します。これらは世界的にも大きなシェアがあり有名なサービスです。

 

オンプレミスとクラウドのメリット・デメリット比較

オンプレミスとクラウドには、それぞれメリットとデメリットがあります。それぞれの特徴を把握できるよう、メリットとデメリットを分かりやすく表にまとめました。

 

オンプレミスとクラウドの比較表

障害対応×
・すべて自社で対応する必要がある
・保守員を置く人件費も必要◎
・ハードウェア関連の障害は、サービス提供業者側ですべて対応
・ソフトウェアはサービス形態により異なる

オンプレミス クラウド
導入コスト ×
ハードウェアの調達費用、数年後のデータ蓄積量や通信量などを予測した拡張性を持たせるなどの検討が必要

初期費用無料の場合も多く、導入コストはオンプレミスに比べてかなり少なくて済む
運用コスト ×
保守、運用のコストが必要

・ハードウェアにかかる運用コストはサービス利用料に含まれているがオンプレミスに比べてかなり安い
・ソフトウェアに関しては、利用するサービス形態によっては運用コストがかかる
構築期間 ×
・構築期間が必要で、大規模なシステム構築となると数ヶ月かかる場合もある
・システムテストなど、将来のデータ増加を予測してのテストなども必要になる
・システムを拡張する際にも時間とコストがかかる

・ハードウェア関連はすでに構築されているインフラを使うため構築不要
・アカウントを作成してすぐに利用でき、システムの拡張も簡単
・ソフトウェアに関しては、サービス形態によって構築期間が必要。拡張性が高くすぐに対応できる点も魅力
カスタマイズ性
自社のシステムなので、自由にカスタマイズできる

・ある程度できるがブラックボックス化されている部分はカスタマイズできない
・IaaS型なら比較的自由度は高い
セキュリティ
自社内のネットワークでシステムを構築できるため、高いレベルのセキュリティが可能だが、コストがかかる

・インターネットVPNや閉塞網領域などを利用できれば安全
・セキュリティに関するコストはサービス利用料のみ
システム連携
自社システムとの連携、インターネット経由でのシステム連携ともに自由度が高い

・インターネット経由でない場合は難しい場合もある
・事前に既存システムとの連携はよく検討しておく必要あり

 

  • 導入コスト

オンプレミスの場合、サーバー用のマシン・ネットワーク機器などのハードウェア、オペレーションシステムなどのトフとウェアなどをすべてそろえ、どのようなシステム構成にするかを検討する人件費などがかかります。大規模なシステムの場合は、システムテストや性能テストを行い、将来的にシステムを利用する頻度が高くなる場合を予測するための費用も必要です。

クラウドの場合、システム導入にかかるこういった諸費用は不要です。SaaSの場合は、単にサービスを利用するだけで済む上、初月は無料のところも多いため導入コストはほとんど必要ありません。

ただし、PaaSの場合はアプリケーションを構築する分の導入コスト、IaaSではアプリケーションやオペレーションシステムなどを導入するコストは必要になります。ただ、インフラに関する部分やハードウェアに関しては導入コストが不要なため、オンプレミスと比較すれば導入コストは安価です。

  • 運用コスト

オンプレミスでは、運用開始後もトラブル対応や定期的なメンテナンスの保守費用がかかります。大規模なシステムでは専任の保守員が必要となり、購入したソフトウェア類のバーションアップなどもかなりコストのかかるメンテナンスです。ハードウェアも定期的に入れ替えたり増築したりと手を入れる必要があり、運用コストがかかります。

クラウドの場合、ハードウェア周りの保守運用はすべてサービス提供業者が対応するため、保守費用は不要です。毎月支払う利用料とオンプレミスで必要となる保守運用コストを比べると、クラウドの場合が安い場合が多いですが、クラウドで利用するサービスによっては、クラウドの方が高くつく可能性もあります。

  • 構築期間

オンプレミスの場合、運用形態によって構築期間にバラツキがあります。自社設置やハウジングの場合は、システムの規模により数ヶ月かかる場合もまれではありません。システムを拡張する場合も、準備期間やコストが必要です。ホスティングの場合は、サービス提供業者が注文を受けてインフラを構築しますが、多くの場合は数日程度で環境構築ができます。

クラウドの場合、構築期間はたったの数分。アカウントを取って設定が終わればすぐに必要なリソースが利用できます。システムを拡張する場合もとても速く簡単で、拡張性に優れている点もクラウドの魅力です。アプリケーション環境を企業側で構築するPaaSの場合は、構築期間として数日必要になるでしょう。IaaSではさらにOSを用意する期間も必要なので、1週間程度見込んでおく必要があります。

  • カスタマイズ性

オンプレミスは、自社内ですべてを管理していますので、カスタマイズ性は高く、要望に合わせて自由にカスタマイズできます。コストをかける余裕があるなら、カスタマイズは無限に可能です。

クラウドの場合、フルにカスタマイズすることは難しくなります。サービス提供業者が用意するメニューの範囲内でのカスタマイズが前提です。

  • セキュリティ

オンプレミスの場合、自社内に閉じたネットワークでシステムが構築できるため、セキュリティは安全です。インターネットを接続できる回線とイントラネットで閉じた回線を用意するなど、高いセキュリティ対策がとれます。

クラウドの場合、他ユーザーと同じリソースを使っている状態では、セキュリティ面で不安だという企業も少なくありません。そのような声に応えて、現在多くのサービス提供業者では、インターネットVPNや閉塞網領域など、セキュリティに配慮したサービスの提供を始めています。これらのサービスが使えるなら高いセキュリティを保てるため安全です。

  • システム連携

オンプレミスでは、これまで構築してきた自社システムとの連携を始め、他システムとの連携もコストさえかければ十分に可能です。同じイントラネット上での連携や、インターネットを介した他社システムとの連携もできます。

一方、クラウドは基本的にインターネット経由での連携になるため、イントラネット内のシステムと連携させようとすると難しい場合があります。

  • 障害対応

オンプレミスの場合、障害対応はすべて自社責任です。24時間稼働のシステムだと交替制で監視するコストもかかります。また、自然災害対応も、分散してデータを管理するなどの対策が必要です。

クラウドの場合、ハードウェア関連の障害対応はサービス提供業者側で行います。ただし、PaaSやIaaSでは、自社で構築しているアプリケーションの障害は企業側での対応が必要です。自然災害対応に関しては、サービス提供業者側でしっかり対応していますので、企業側で何かする必要はありません。

 

クラウドに移行するメリット

クラウドに移行するメリットは、主に以下のようにまとめられます。

  • 導入コストおよび運用コストのコスト削減
  • 素早く構築できて拡張性も高い
  • ハードウェアの障害対応が不要
  • 自然災害対応が不要

このようなメリットを最大限に享受できる企業の特徴は以下の通りです。

  • 初期コストがあまりかけず、すぐに試してみたい実験的なシステムを多く立ち上げたい企業
  • 小さく構築して大きく育てたいネットショップを構築したい企業

 

クラウド移行時の注意点

クラウドには多くのメリットがありますが、注意するべき点もあります。クラウドに移行する際の注意点を解説していきます。

 

既存システムとの連携がとれるかどうか

既存システムとの連携がとれるかどうかは、慎重に検討を進めるべきポイントです。セキュリティの要件が満たせるか、運用面のコストが増加しないかという点は、特によく検討してください。既存システムとうまく連携がとれないまま導入を進めてしまうと、導入コストは安くても、運用コストがかかってしまいトータルではかえって高くつく可能性があります。

 

本当にコスト削減につながるかどうか

クラウドは月額の運用コストがかかります。システム構成などによっては、総コストで見るとオンプレミスの方が安く済む場合がありますので、オンプレミスで同じ構成のシステムを組んだときの導入コストと運用コストは試算して比較するようにしましょう。

 

オンプレミスとクラウドのハイブリッドもある

オンプレミスかクラウドかは、導入目的や企業の運用体制によってどちらが必ず良いというものではありません。クラウドサービスも、新しい機能などを次々と発表していますので、セキュリティ面の問題やカスタマイズ性の問題などもクリアできるようになってからクラウド化するという考え方もあります。

また、オンプレミスとクラウドのハイブリッドも検討する価値のある選択肢です。セキュリティレベルを高く保ちたいデータを扱うシステムはオンプレミスのままにして、比較的クラウドに移行しやすいグループウェアや社内コミュニケーションツールなどをクラウド化という使い分けも視野に入れて考えてみましょう。

 

まとめ

オンプレミスとクラウドの違いについて、両者を比較しながらクラウドのメリットや移行のポイントについて解説しました。クラウドは、時間やコストをかけず簡単にシステムを構築できるサービスです。すべて自社で構築するオンプレミスと比べて、システム運用開始まで素早く立ち上げられる点が最大の魅力ですが、セキュリティ面や既存システムとの連携など検討しておくべき注意点もあります。

自社システムをどこまでクラウド化するかどうかを検討する中で、オンプレミスとクラウドを使い分けるハイブリッドも視野に入れ、クラウド導入の効果を高めるようにしましょう。

ページ先頭へ戻る