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SFA JOURNAL by ネクストSFA

更新日:2025/01/09 

給与前払いにも控除や源泉徴収は必要? メリットや注意点を解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

給与前払いへのニーズは高く、自社へ導入する企業が増えています。しかし、控除や源泉徴収への対応も必要であり、混乱を招く可能性があるため注意が必要です。

本記事では、給与前払いを実施する場合の控除や源泉徴収について解説します。給与前払いを導入するメリットや注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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給与前払いとは?

給与前払いとは、働いた分の給与の一部を、本来の給料日より前に受け取れる制度です。従業員が前払いの申請を行うと、企業は働いた分の給与から一定額を支払います。

企業が給与前払いを導入するメリットは、優秀な人材の確保やブランディングの向上につながることです。また従業員は、給料日前に必要な資金を得られることで、より安定した生活を送ることができます。

給与前払い制度は、経済環境の変化を背景に注目を集めています。特に非正規雇用の増加や賃金水準の低下により、柔軟な給与受け取りへのニーズが高まっていると言えるでしょう。

前借りとの違い

給与前払いと似た言葉に「前借り」がありますが、それぞれ定義が異なるので、その違いを明確に理解しておく必要があります。

前借りとは、従業員が将来の給与を担保として企業から金銭を借りる制度であり、実際の労働実績とは関係なく借り入れができます。前借りは本質的に借金であるため、給与とは別個の債権債務関係として扱わなければなりません。給与から前借り分を差し引いて支給することは労働基準法違反のため注意が必要です(※)。

なお、生活費や友人の結婚式などを理由に従業員から前借りを要請された場合、企業側には、すでに行われた労働ぶんの給与前払いの義務は生じますが、これから行われる予定の労働を前貸しする義務はありません(※)。

※参考:e-Gov法令検索.「労働基準法」.“第二十五条, 第二十六条”.

https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 ,(2024-12-02).

※参考:厚生労働省.「従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。」.

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_21.html ,(2024-12-02).

給与前払いのメリット

給与前払いは従業員にとってだけでなく、企業にもさまざまなメリットがあります。制度の導入を考えている担当者の方は、メリットを押さえておきましょう。

  • 求人応募数の増加が期待できる
  • 従業員のエンゲージメント向上につながる
  • 採用コストをカットできる

求人応募数の増加が期待できる

給与前払いは求人応募数の増加が期待できるため、人手不足に悩む企業にとっては効果的な手段です。

企業が人手不足を解消するには、競合他社と差別化しなければなりません。その一環として給与前払いを導入すれば、求職者にとっては大きな魅力となります。

求職者にとって経済的な安心感は重視すべき項目であり、応募先を決める際の決め手となるでしょう。

また、給与前払いはニーズが高い制度のため、「従業員を大事にする企業」として評価が集まれば、求職者を集めやすくなります。

従業員のエンゲージメント向上につながる

給与前払いの導入は、従業員のエンゲージメント向上を目指す企業にもおすすめです。

給与前払いによって従業員は経済的な不安を軽減できるため、仕事に集中しやすくなります。また、働きに応じた報酬を柔軟に受け取れる環境が整っていれば、仕事に対するモチベーションも向上するでしょう。

従業員のエンゲージメント向上は、企業の存続に欠かせない要素です。給与前払いによって従業員の生活の質を向上させられれば、企業の競争力も高まるでしょう。

採用コストをカットできる

従業員の採用コストをカットできるのも、給与前払いを導入するメリットの一つです。

先述したように、給与前払いの導入は従業員のエンゲージメントを向上させられるため、定着率も高められます。採用した従業員が自社に定着してくれれば、採用にコストを掛ける必要がありません。

また、給与前払いを導入しているだけでも、人材を集める効果が期待できます。求人広告を出すよりも費用対効果が高く、コストを抑えて人材を確保したい企業におすすめです。

給与前払いのデメリット

給与前払いには、働く人と会社のそれぞれにとってのデメリットもあります。

従業員のデメリットは、給料の一部を先に受け取ることで、本来の給料日に受け取れる金額が少なくなってしまうことです。当面の金銭的ニーズには対処できるかもしれませんが、結局毎月の生活費のやりくりが大変になり、将来的な支出の計画も立てづらくなる可能性があります。また、前払いを繰り返し利用することで、この制度に頼りすぎてしまうリスクにも注意が必要です。

企業側のデメリットは、予定していない時期の給与支払いによって、資金の流れが乱れる可能性があることです。さらに、前払い制度を運営するために、人事や経理の担当者が追加の仕事を行う必要があり、会社の運営費用が増えてしまいます。

給与前払い制度を導入する際は、上記のようなデメリットを踏まえて慎重に検討する必要があるでしょう。

給与前払いでも社会保険料・税金の控除が必要

給与前払いを行う場合であっても、通常の給料日に支払う場合と控除されるものは基本的に変わりません。

給与前払いで控除されるものは、大きく分けて以下3種類です。

  • 保険料
  • 源泉徴収される税金
  • 労使協定で決められた費用

給与前払いは1カ月に働いた分から前払いできる制度であり、控除額は通常の給与支払いと同じです。

また、給与の控除限度額は、民事執行法第152条と民法第510条から「賃金額の4分の1にとどまる」と定められています(※)。

従業員の生活を守るためこのように定められており、企業は限度額を超えて給与から控除できません。

給与前払いを導入する場合は、控除についても従業員に周知しておきましょう。

※参考:e-Gov法令検索.「民法」.

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 , (2024‐12‐02).

※参考:e-Gov法令検索.「民事執行法」.
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 , (2024‐12‐02).

給与前払いの源泉徴収の時期は?

給与前払いでも控除が必要なため、源泉徴収も行わなければなりません。従業員が受け取る給与から所得税や社会保険料を差し引いて納付し、給与明細には所得税として記載します。

通常、源泉徴収が行われる時期は、各企業ごとの契約で決められた給与支給日です。支給日が決められていない場合には、給与を受け取ったタイミングで源泉徴収が行われます。

例えば、10月分の給与を9月25日に前払いする場合は、9月25日が源泉徴収を行うタイミングです。

※参考:国税庁.「No.2509 給与所得の収入金額の収入すべき時期」 .

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2509.htm , (2024‐12‐02).

給与前払いの注意点

給与前払いを導入する場合には、いくつかの注意点があります。導入後にトラブルを起こさないためにも、注意点を事前に把握することが大切です。

  • 従業員と給与額の認識を合わせる
  • 給与前払いの上限額をあらかじめ設定しておく

従業員と給与額の認識を合わせる

給与前払いを導入する際は、従業員と給与額について認識を合わせることが重要です。

従業員が給与前払いを利用する場合、通常の給料日には前払いした分と税金や社会保険料などの控除分を差し引いた給与が支払われます。そのため、従業員への説明が十分にできていないと「思ったよりも給与額が少ない」と感じるかもしれません。

認識のズレが原因で従業員から不満の声があがれば、トラブルに発展する可能性もあります。

そのため、従業員には前払いの給与額や控除の内訳、控除のタイミングなどを事前に伝えて、トラブルを発生させないように対処することが重要です。

給与前払いの上限額をあらかじめ設定しておく

従業員の金銭的なリスクを回避するために、給与前払いの上限をあらかじめ設定しておきましょう。

給与前払いは従業員の生活安定につながりますが、前払いを利用すると通常の給料日に控除される金額が大きくなります。給料日に受け取る金額が少ないために、従業員の生活が不安定になるかもしれません。

例えば、給与の大部分を前払いにした場合、残りの給与では必要な支出に対応できない可能性があります。

前払いは企業と従業員の双方にメリットがありますが、ルールを設定していないと従業員の生活に支障を与えかねません。

そのため、給与前払いの上限をあらかじめ設定しておき、通常の給料日にも十分な金額を受け取れるようにしておきましょう。

給与前払いをするなら控除や源泉徴収に適切に対応しよう

給与前払いは、従業員の申請によって通常の給料日よりも前に働いた分の給与から一部を先に受け取れる制度です。企業と従業員の双方にメリットがあり、ニーズの高い制度となっています。

一方で、予算管理の難しさや業務負担の増加などのデメリットもあるため、自社への導入は慎重に検討しなければなりません。

また、給与前払いをする場合でも、控除や源泉徴収が必要です。控除や源泉徴収についても適切に対応できるように準備しましょう。

以下の記事では、おすすめの給与前払いサービスを紹介しているので、ぜひご覧ください。

【2025年最新比較表あり】給与前払いサービス10社を比較!特徴やメリット、選ぶときのポイントを解説

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