SNS連携で安否確認を最適化 企業のためのシステム選定・活用ガイド

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
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なぜ安否確認にSNS連携が求められるのか?
企業活動を取り巻くリスクは、大規模な自然災害から感染症のパンデミック、予期せぬシステム障害まで多様化・複雑化しています。こうした状況下で事業を継続し、従業員の安全を守るためには、実効性のあるBCP(事業継続計画)の策定と運用が不可欠です。BCPの初動対応として極めて重要なのが、迅速かつ正確な従業員の安否確認です。従業員の状況を把握できなければ、事業所の再開判断や人員の再配置、ひいては事業継続そのものが困難になります。
従来、安否確認の主な手段は電話やメールでした。しかし、災害発生時には電話回線の輻輳やインフラの損壊、停電などにより、これらの手段が機能不全に陥るリスクが常に存在します。メールも、緊急時には見落とされたり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりする可能性があり、確実な連絡手段とは言えません。また、管理者側にとっても、電話での個別確認やメールでの回答集計には多大な時間と労力を要し、迅速な状況把握の障壁となっていました。
このような課題を背景に、新たな連絡手段として注目されているのが、LINEやSlackといったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)です。スマートフォンが普及し、多くの従業員が日常的に利用するSNSは、プッシュ通知による気づきやすさや、使い慣れたインターフェースによる操作の容易さといった利点を持っています。
しかし、企業が公式な安否確認手段としてSNSを「直接」利用することには、プライバシーへの配慮、アカウント保有状況のばらつき、情報統制の難しさ、セキュリティリスクなど、看過できない課題が多く存在します。
そこで現実的な解決策として浮上しているのが、堅牢な安否確認システムとSNSを連携させるというアプローチです。安否確認システムの持つ一斉配信・自動集計・情報管理といった基盤に、SNSの持つリーチ力や利便性を組み合わせることで、従来の手段の弱点を補完し、より確実で効率的な安否確認体制を構築することが期待されています。本記事では、企業の管理部や決裁者の皆様が、このSNS連携型安否確認システムの導入を検討する際に押さえるべきポイントを、選び方から活用方法まで具体的に解説します。
【比較】おすすめの安否確認システム一覧
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サービス名 | 特長 | 費用 | 主な機能 |
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Biz安否確認 |
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ライトプラン:月額10,000円、初期費用0円 スマホプラン:月額400円~、初期費用0円 お手軽導入プラン:月額10,400円~、初期費用100,000円 通常プラン:月額10,400円~、初期費用200,000円 ※全て10IDの場合 |
安否確認/一斉通報/掲示板/設備確認/音声オプション/家族オプション/回答の自動集計/API連携/グループ作成/組織管理など |
安否コール |
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小規模企業向け:5,000円~ 中規模企業向け:15,000円~ 大規模企業向け:30,000円~ |
自動メール配信/アプリ通知/GPS位置情報/自動集計/家族安否確認/アンケート機能/掲示板機能/メール手動配信など |
安否LifeMail |
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初期費用 150,000円(税抜) 月額費用 80円~(税抜)1人当たり |
自動安否確認機能/訓練メール機能/業務連絡機能/新型インフルエンザ状況確認機能/グループメール機能/代理安否確認機能/家族へ安否確認通知機能/地震・津波・火山情報/台風情報/大雨・洪水・雷・竜巻・その他警報・注意報/SNS連携/GPS安否確認機能など |
安否確認サービス2 |
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ライト:6,800円 プレミア:8,800円 ファミリー:10,800円 エンタープライズ:14,800円 |
ユーザーの所属地域設定/登録状況確認/通知条件かんたん設定/予行練習一斉送信/自動一斉送信/LINE連携/リアルタイム自動集計/掲示板による災害対策指示/限定メンバーで対策議論/家族の安否確認/自動メンテナンス/英語表示対応など |
エマージェンシーコール |
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要お問い合わせ | 回答があるまで繰り返し安否確認(最大100回まで)/英語対応/社員情報一括登録/従業員の家族向け伝言サービス/混乱時の従業員の負担を軽減再通知抑止機能など |
セコム安否確認サービス |
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11,000円~(管理者10人当たり) | 災害想定訓練/連絡網管理/安否確認メール代行送信機能/メールアドレスクリーニング機能/位置情報通知機能/英語対応機能/余震判定機能など |
オクレンジャー |
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50ユーザー:60,000円/年 100ユーザー:115,200円/年 |
津波自動配信/地震自動配信/掲示板/自動集計/アプリ受信/プライベート配信など |
Safetylink24 |
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1〜100人:月額 9,800円 101〜200人:月額12,800円 201〜300人:月額費用 15,800円 ※詳細は要お問い合わせ |
個人情報管理/ダッシュボード機能/安否状況登録/安否状況確認/自動リトライ機能/地震・防災気象情報との連動/メール配信結果レポート/掲示板機能/代理回答機能など |
ALSOK安否確認サービス |
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~100名:月額19,800円(税込) 101~500名:月額37,400円(税込) 501~1000名:月額48,400円(税込) |
安否確認連絡の自動配信/Googleパーソンファインダーとの連携/GPS・写真・音声登録/気象情報の自動配信/家族安否サービス/手動による配信機能/社内掲示板機能/グラフ化機能など |
ANPiS |
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スタンダードプラン:6,600円~(税込) ファミリープラン: 6,985円~(税込) |
「地震」 や 「特別警報(台風・洪水等)」 も気象庁の情報と自動で連携/未回答者へのメール等自動再配信/手動配信など |
ANPIC |
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50名:月額 5,130円 100名:月額5,510円 150名:月額7,030円 ※詳細は要お問い合わせ |
LINE連携/アンケート機能/代理報告/自動メッセージ送信/震度設定/送信抑制など |
安否確認システムにおけるSNS連携とは?
安否確認システムにおけるSNS連携とは、単に企業がSNSを使って安否確認を行うこととは異なります。それは、安否確認専用に設計されたシステムの機能と、LINEやSlackなどのSNSプラットフォームを技術的に接続し、連携させる仕組みを指します。これにより、安否確認システムを司令塔として、SNSを有効な連絡・回答チャネルの一つとして活用することが可能になります。
主な機能と連携の仕組み
多くのSNS連携型安否確認システムは、以下のような基本機能を有しています。
- 一斉通知: 管理者がシステム上で指示を出すと、登録された従業員に対し、メールや専用アプリ通知に加え、連携設定されたSNSアカウント(例:LINEの公式アカウントや個人のLINE、Slackのワークスペースなど)へも安否確認メッセージを一斉に送信します。
- 回答: 従業員は受け取ったSNSメッセージ上のボタンをタップしたり、簡単なテキストを入力したりすることで、安否状況や出社の可否などをシステムへ回答できます。
- 自動集計・可視化: SNS経由で回答された情報も、他の手段からの回答と合わせてシステム側でリアルタイムに自動集計されます。管理者はダッシュボードなどで全体の安否状況、未回答者リストなどを即座に把握できます。
- 再通知: 未回答者に対して、SNSを含む複数の手段で自動的に再通知を送る機能を持つシステムもあります。
連携対象となる主なSNS
- LINE: 日本国内で圧倒的な利用率を誇り、多くの従業員が日常的に利用しているため、導入効果を期待しやすいプラットフォームです。個人アカウントとの連携だけでなく、LINE WORKSなどビジネス版との連携に対応するシステムもあります。
- Slack/Microsoft Teams: ビジネスチャットとして社内コミュニケーション基盤となっている企業では、これらのツールとの連携が有効です。業務連絡の流れの中で安否確認を行える利点があります。
- X (旧Twitter)/Facebook Messenger: システムによっては、これらのSNSとの連携オプションを持つ場合もあります。
従来手段との比較におけるSNS連携の位置づけ
各連絡手段には一長一短があります。SNS連携は、他の手段を完全に置き換えるものではなく、連絡手段を多重化し、弱点を補完し合うという位置づけで考えるべきです。
- 電話: 緊急度は伝わるが、一斉連絡や記録・集計に不向き。回線輻輳の影響も受けやすい。
- メール: 文書での記録は残るが、到達・開封の確認が難しく、見落としリスクがある。
- SMS: 到達率は比較的高いが、文字数制限があり、大量送信にはコストがかかる。
- 専用アプリ: プッシュ通知は有効だが、従業員にインストール・設定の手間が発生する。
- SNS連携: 利便性が高く回答率向上が期待できる一方、アカウント問題やプライバシー懸念、プラットフォーム依存のリスクがある。
企業が安否確認にSNSを単独で利用しようとすると、前述のプライバシー、セキュリティ、情報管理、未加入者対応といった課題をクリアできません。だからこそ、安否確認システムという信頼性の高い基盤の上で、SNSを連携させることが、企業にとって現実的かつ効果的な選択肢となるのです。システムを介することで、情報の一元管理とセキュリティを担保しつつ、SNSの利便性を享受できます。
安否確認システムとSNS連携が生む企業のメリット
安否確認システムとSNSを連携させることで、企業は安否確認体制の強化において多くの具体的なメリットを享受できます。管理部や決裁者の視点から、主な利点を整理してみましょう。
1. 連絡手段の多重化による到達率の向上 災害時には、特定の通信インフラが利用できなくなる可能性があります。メールサーバーがダウンしたり、携帯キャリア網が輻輳したりする状況でも、LINEやSlackなどが利用可能なインターネット回線を通じて機能していれば、SNS経由での通知が有効な代替手段となります。複数の伝達経路を確保することで、従業員へ安否確認メッセージを届けられる確率が格段に向上します。これは、一人でも多くの従業員の安否を迅速に確認したい企業にとって、最も基本的なメリットです。
2. 普段使いのインターフェースによる回答率の向上 多くの従業員にとって、日常的に利用しているSNSの操作は慣れたものです。安否確認のために専用アプリを起動したり、別途ウェブサイトにログインしたりする必要がなく、普段使っているLINEやSlackの画面上で通知を受け取り、簡単な操作で回答を完了できるため、従業員の心理的なハードルが大幅に下がります。結果として、回答までの時間が短縮され、安否確認全体の回答率向上が期待できます。
3. プッシュ通知による迅速な情報収集 SNSのプッシュ通知は、メールと比較して見落とされにくく、即時性が高いという特徴があります。これにより、従業員は安否確認依頼に素早く気づき、迅速に応答することが可能になります。企業としては、災害発生後の早い段階で、より多くの従業員の状況を把握できるようになり、事業継続に向けた次の判断を迅速に行うための重要な情報を得られます。
4. 管理業務の大幅な効率化 安否確認システムと連携しているため、SNS経由での回答も、メールやアプリ経由の回答と合わせて自動的に集計されます。管理者は、手作業での煩雑な集計作業から解放され、リアルタイムで更新されるダッシュボードなどで全体の安否状況、部署・拠点別の状況、未回答者リストなどを一目で確認できます。これにより、状況把握と必要なフォローアップ(未回答者への再連絡など)に注力でき、管理業務全体の効率が大幅に向上します。
5. 従業員の利便性向上と導入負荷の軽減 特にLINE連携などの場合、従業員は新たな専用アプリをスマートフォンにインストールする必要がないケースが多く、導入時の手間や、スマートフォンのストレージ容量を気にする必要がありません。普段から利用しているツールで安否確認が完結するため、従業員満足度の向上にも繋がる可能性があります。
これらのメリットは、単に連絡手段が増えるというだけでなく、安否確認プロセス全体の質とスピードを向上させ、企業のBCP実効性を高める上で大きな価値を持ちます。
SNS連携の導入前に知るべきデメリットと注意点
多くのメリットを持つSNS連携ですが、導入を検討する際には、そのデメリットや注意点を十分に理解し、事前に対策を検討しておくことが不可欠です。安易な導入は、かえって混乱を招いたり、従業員の不信感に繋がったりする可能性があります。
1. 全従業員への対応の限界 最も基本的な注意点として、全ての従業員が対象SNSのアカウントを持っているとは限らない、また、持っていても業務目的でのシステム連携に同意しない可能性があるという事実です。企業はアカウント取得や連携を強制できません。したがって、SNS連携を導入する場合でも、必ずメール、専用アプリ通知、SMS、電話自動発信など、他の複数の連絡手段を確保し、SNSを利用しない・できない従業員も確実にカバーできる体制を構築することが絶対条件となります。
2. プライバシーへの懸念と同意形成の重要性 特にLINEのようにプライベートでの利用が主体のSNSを安否確認に利用することに対して、従業員が「プライベートな領域に会社が入ってくる」と感じ、抵抗感を覚える可能性があります。なぜSNS連携が必要なのか、どのような情報(例:LINEのユーザーIDのみで、友だち情報やトーク内容は取得しない等)がシステムに連携されるのか、個人情報の管理体制はどうなっているのか等について、導入前に従業員一人ひとりに対して丁寧に説明し、理解と明確な同意を得るプロセスが極めて重要です。これを怠ると、従業員との信頼関係を損なう恐れがあります。
3. セキュリティリスクの評価 安否情報という機微な個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策は最重要検討項目です。
- システム自体の堅牢性: 安否確認システム提供事業者のセキュリティ対策(通信暗号化、不正アクセス対策、脆弱性対応、データセンターの安全性等)は十分か。
- 連携部分の安全性: SNSプラットフォームとのAPI連携におけるセキュリティは確保されているか。アクセス権限は適切に管理されているか。
- 第三者認証: プライバシーマークやISMS(ISO27001)など、客観的な認証を取得しているかは、信頼性を判断する上での一助となります。
4. SNSプラットフォームへの依存リスク 連携先のSNSプラットフォームで大規模な障害が発生したり、API仕様が変更されたり、最悪の場合サービスが終了したりすると、SNS連携機能が利用できなくなるリスクがあります。特定のSNSに過度に依存した体制は避け、あくまでSNSは連絡手段の一つと位置づけ、他の連絡手段と組み合わせた多重的な体制を構築しておく必要があります。
5. 通知の確実性に関する留意点 SNSのプッシュ通知は即時性が高い一方で、スマートフォンの設定(通知オフ設定など)やネットワーク環境、OSのバージョンなどによっては、リアルタイムに届かない、あるいは届かない可能性もゼロではありません。通知の到達を100%保証するものではないことを理解し、重要な連絡は複数の手段で補完することが賢明です。
これらのデメリットや注意点を十分に考慮し、対策を講じた上で導入・運用計画を立てることが、SNS連携を有効に機能させるための鍵となります。
失敗しないSNS連携安否確認システムの選定ポイント
SNS連携機能を備えた安否確認システムは多数存在しますが、自社にとって最適なシステムを選定するためには、いくつかの重要なポイントを比較検討する必要があります。単に「SNS連携が可能」というだけでなく、以下の点をチェックしましょう。
1. 連携可能なSNSの種類と機能の詳細
- 対応SNS: LINE、Slack、Microsoft Teamsなど、自社の従業員が利用している、あるいは社内標準となっているツールに対応しているか確認します。
- 連携の深さ: 単に安否確認通知をSNSに送るだけ(一方向)か、従業員がSNS上で安否回答まで完結できるか(双方向)は大きな違いです。管理者からSNS経由で個別メッセージを送れる機能なども確認しましょう。
2. セキュリティ対策の堅牢性(最重要項目) 安否情報という機微な個人情報を取り扱うため、セキュリティは最も重視すべき点です。
- 通信・データの暗号化: 通信経路(TLS1.2以上など)や保存データの暗号化は適切に行われているか。
- アクセス権限管理: 管理者権限や閲覧権限などを細かく設定・管理できるか。
- 不正アクセス対策: WAF(Web Application Firewall)の導入や不正ログイン検知機能はあるか。
- データセンター: 国内の信頼性の高いデータセンターを利用しているか。
- 第三者認証: プライバシーマークやISMS(ISO27001)などの認証取得状況。
- 脆弱性対応: 定期的な脆弱性診断や迅速なパッチ適用が行われているか。
3. 他の連絡手段の充実度 SNS連携はあくまで選択肢の一つです。メール、専用アプリのプッシュ通知、SMS送信、電話自動発信(IVR)など、他の連絡手段が豊富に用意されているかを確認します。連絡手段が多いほど、様々な状況に対応できる可能性が高まります。
4. 管理機能とレポート機能 管理者の負担を軽減し、迅速な状況把握を支援する機能が充実しているかを確認します。
- リアルタイム集計・表示: 回答状況が自動で集計され、ダッシュボードなどで分かりやすく表示されるか。部署・拠点・役職などで絞り込み表示できるか。
- 未回答者管理: 未回答者を容易に特定し、再通知を自動/手動で実行できるか。
- 従業員情報管理: 従業員情報の登録・更新(CSVインポート/エクスポート、API連携など)が容易に行えるか。
- 訓練機能: 定期的な安否確認訓練を容易に実施できる機能(訓練用テンプレート、訓練結果レポートなど)があるか。
- レポート出力: 集計結果をCSVなどで出力し、報告書作成や分析に活用できるか。
5. 配信到達率と信頼性 システム提供事業者が、過去の災害時における実際の配信到達率データや、第三者機関による評価レポートなどを公開しているか確認します。また、テスト配信機能で事前に到達状況を確認できるかもポイントです。
6. サポート体制
- 導入支援: スムーズな導入を支援する体制(説明会、設定サポートなど)はあるか。
- 運用サポート: 操作方法に関する問い合わせ窓口、マニュアル類の充実度。
- 緊急時対応: 災害発生時にベンダー側のサポートが確実に受けられるか(24時間365日対応など)。
7. コスト体系 初期費用、月額/年額費用、ID数に応じた課金か、機能に応じたオプション課金かなど、料金体系を正確に把握し、自社の予算や規模に見合っているかを確認します。
これらのポイントを総合的に比較検討し、デモンストレーションやトライアル利用などを通じて実際の操作感も確認した上で、自社に最適なシステムを選定することが重要です。
SNS連携を成功させる導入プロセスと運用ベストプラクティス
高機能なSNS連携安否確認システムを導入しても、その後の導入プロセスや運用が適切でなければ、期待した効果を発揮できません。ここでは、SNS連携を成功に導くための具体的なステップと、運用を定着させるためのベストプラクティスを紹介します。
【導入プロセス】
- 要件定義フェーズ:
- 目的と対象範囲の明確化: なぜSNS連携が必要なのか、全社導入か段階導入か、対象とする従業員の範囲(正社員、契約社員、派遣社員など)を明確に定義します。
- 連携SNSの選定: 社内の利用状況やセキュリティポリシーに基づき、連携するSNS(LINE、Slack等)を決定します。
- 権限設計: 管理者、部門担当者、一般従業員など、役割に応じた操作権限や閲覧権限を設計します。
- 運用ルールの骨子策定: いつ、誰が、どのようにシステムを使うかの基本的なルールを定めます(詳細は運用フェーズで具体化)。
- 環境構築・設定フェーズ:
- アカウント連携設定: システムと選択したSNSとの連携設定を行います。従業員による個別の連携許諾が必要な場合は、その手順を整備します。
- 従業員情報登録: 正確な従業員情報をシステムに登録・同期します(人事システム連携等も検討)。連絡先情報は常に最新に保つ仕組みが必要です。
- 通知・回答テンプレート作成: 緊急時に迅速に配信できるよう、状況に応じた通知文面や回答選択肢のテンプレートを事前に作成・設定しておきます。
- テスト・検証フェーズ:
- 小規模テスト: まずは情報システム部門や一部の部署でテスト配信を行い、設定や連携に問題がないか、通知が想定通りに届くかを確認します。
- 全社テスト(パイロット運用): 対象範囲を広げてテスト配信を実施し、従業員からのフィードバックを収集します。操作性や分かりにくい点などを洗い出し、マニュアルや説明内容を改善します。
- ローンチ・社内周知フェーズ:
- 従業員への説明と教育: システム導入の目的、使い方、個人情報の取り扱い、緊急時の対応フローなどを、説明会やマニュアル配布を通じて全従業員に周知徹底します。特にプライバシーに関する説明は丁寧に行い、理解と同意を得ることが重要です。
- 正式運用開始: 全社的な運用を開始します。
【運用ベストプラクティス】
- 定期的な訓練の実施: 最も重要な運用活動です。災害発生時を想定した安否確認訓練を定期的(例:月1回、四半期に1回)に実施します。これにより、従業員は操作に慣れ、管理者は手順を確認し、システムの実効性を維持できます。訓練結果(回答率、回答時間など)を分析し、改善に繋げます。
- 通知テンプレートの最適化: 訓練や実際の運用を通じて、より分かりやすく、従業員が応答しやすい通知文面や回答選択肢に改善していきます。「【緊急】本社ビルで火災発生。状況を報告してください。1:安全 2:負傷 3:連絡不可」のように、具体的かつ簡潔な形式が望ましいです。
- グループ運用の工夫: 全社一斉配信だけでなく、部署、拠点、プロジェクトチームなど、目的に応じたグループを作成し、必要な対象者だけに通知を送る運用も有効です。これにより、情報の氾濫を防ぎ、受信者の負担を軽減できます。
- 未回答者へのフォローアップ: 訓練や本番において、未回答者への再通知や、電話など別の手段でのフォローアップ手順を明確にしておきます。システムのアラート機能を活用し、迅速な対応を促します。
- 運用体制とレビュー: システムの運用担当者を明確にし、定期的に(例:半年に1回)関係部署(総務、人事、情シス、現場部門)で運用状況(KPI達成度、課題など)をレビューし、改善策を検討する場を設けます。
- システム・情報のメンテナンス: 従業員の入退社・異動に伴う情報更新を速やかに行うプロセスを確立します。また、システムや連携するSNSのアップデートに追従し、常に最新の状態で利用できるようにします。
これらのプロセスとベストプラクティスを着実に実行することで、SNS連携安否確認システムを単なる「導入しただけ」のツールではなく、組織の危機管理能力を高める「使える武器」へと育て上げることができます。
まとめ:安否確認体制強化に向けた次の一歩
本記事では、企業の安否確認体制強化におけるSNS連携の有効性と、その導入・活用における重要なポイントを解説しました。安否確認システムとSNSを連携させることは、連絡の到達率や回答率を高め、情報収集を迅速化し、管理業務を効率化する上で大きなメリットをもたらします。特に、多くの従業員が日常的に利用するインターフェースを活用できる点は、緊急時におけるスムーズな対応を促進するでしょう。
しかし、その導入にあたっては、アカウント問題やプライバシーへの配慮、セキュリティリスク、プラットフォームへの依存といった注意点を十分に理解し、対策を講じることが不可欠です。SNS連携は万能ではなく、メールや専用アプリ、電話など他の連絡手段と組み合わせた多重的な連絡体制を構築することが重要です。
失敗しないシステム選定のためには、連携機能の詳細、セキュリティ対策の堅牢性、他の連絡手段の充実度、管理機能、サポート体制、コストなどを総合的に比較検討し、自社のニーズに合致したシステムを見極める必要があります。そして、導入後も従業員への丁寧な説明と同意形成、明確な運用ルールの策定、そして何よりも定期的な訓練の実施を通じて、システムを形骸化させず、実効性のあるものとして維持していく努力が求められます。
SNS連携型安否確認システムの導入は、単なるツール導入に留まらず、企業のBCP全体の強化に繋がる重要な一手です。本記事が、貴社の安否確認体制を見直し、より強靭な危機管理体制を構築するための一助となれば幸いです。まずは情報収集から始め、自社に最適なソリューションの検討を進めてみてはいかがでしょうか。