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生成AIが作った物は著作権侵害になる? リスクの軽減や注意点を解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

AI画像生成とは人工知能(AI)を活用し、テキストや既存の画像データを元に新たな画像を作り出す技術です。

生成AIは画像だけでなく、テキストや音楽の生成などにも対応でき、ビジネスにも活用されています。しかしAIが生成したこれらのコンテンツは、既存の著作物を参考にしている可能性があり、著作権侵害のリスクも伴います。

この記事では生成AIとは何かを簡単に説明した上で、AI生成コンテンツの著作権に関する最新情報や具体的な対策を紹介します。生成AIの可能性を引き出しつつ、法的なリスクを最小限に抑えるためにもぜひ参考にしてください。

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AIと著作権の関係

AI技術の進展により、著作権法の適用範囲や解釈が注目されています。著作権の基本を理解した上で、AI生成物や学習データの扱いを考察しましょう。

著作権法とは

著作権法とは小説、絵画、音楽など、私たちの身の回りにあるさまざまな創作物を保護するための法律のことです。著作権はこれらの作品を創作した作者に自動的に与えられる権利であり、この権利によって作者は自分の作品が勝手にコピーされたり、インターネット上にて無断で使用されたりするのを防げます。

著作権は作者の創作意欲を保護すると同時に、適切な利用を促進し文化の発展に貢献する目的もあります。

著作権者は、この著作権に基づいて自分の作品をどのように利用してもらうかを決める権利がある人です。具体的には他人が自分の作品を利用したい場合に許可を与えたり拒否したり、あるいは対価を支払ってもらうなどの条件を付ける権限です。

※出典:e-Gov. 「著作権法」. https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048, (参照 2024-11-21).

生成AIにおける著作権の考え

近年、急速に進化している生成AIですが、同時に著作権という新たな問題も浮き彫りになりました。生成AIは膨大な量のデータをもとに学習し、新しい作品を生み出します。しかしこの学習データの中には、著作権で守られている作品が含まれていることも多く、AIが作った作品が既存の作品と似てしまうことがあります。

生成AIと著作権の関係は大きく分けて「学習段階」と「生成・利用段階」の2つです。著作権法の視点から見るとAIの学習でも、著作権法で定められたルールに従う必要がありますが、ある程度の範囲で著作物を利用できるという例外規定が存在します。(著作権法第30条の4)

つまり生成AIと著作権の関係は、AIが学習する段階とAIが作った作品を利用する段階でそれぞれ異なるルールが適用されるということです。AIの利用者はこれらのルールを理解した上で、著作権を尊重しながら活用しなければなりません。

※参考:文化庁「AIと著作権」.https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf,(参照 2024-11-21).

AIで生成された物が著作権に当たるケース

AI生成物が著作権に該当するかは、生成プロセスや結果に依存します。最悪の場合、訴訟問題に発展する可能性もあるため著作権侵害にどのようなケースかあらかじめ把握しておきましょう。

著作物と類似している

AIが生成した画像や文章が、既存の著作物と非常によく似ている場合は著作権侵害となる可能性があります。

これはAIが学習データとして大量の著作物を収集・解析し、その特徴を元に新たなコンテンツを生成しているためです。このケースは生成物がどの程度オリジナル性を持つかが争点となります。

また既存の著作物をAIで加工したり一部を修正したりした場合も、元の作品との類似性や依拠性が認められれば著作権侵害となる可能性が高いです。

著作者に承諾を得ないで利用している

AI生成物を商用利用する場合、原則として著作権者からの事前許諾が必要です。特にAI生成物が既存の著作物と類似し、その作品に依拠していると判断される場合には、著作権者の許諾がないまま利用すると著作権侵害とみなされるリスクが高まります。

このような状況を回避するためには、許諾を得るプロセスが非常に重要です。  許諾を得る際には、口頭での合意ではなく明確な書面契約を交わすことが推奨されます。

契約書を作成し、利用範囲や条件を具体的に定めておくと双方の認識の違いによる問題を未然に防げる他、将来的な紛争が発生した場合に法律的な証拠としての役割を果たします。

依拠性が認められる

著作権に当たるケースとして、AI生成物が著作物に依拠している場合があります。依拠とは、既存の著作物から直接的または間接的に影響を受けた状態を指し、生成物がその著作物に依存していると認められると問題になります。  

例えばAIが作った絵画が「ある特定の画家の絵画と作風が似ている」「文章がある作家の文章の書き方を思い起こさせる」などの場合、元の作品の権利を侵害している可能性が考えられます。

実際にはAIの作品が元の作品に大きく影響を受けているかどうかを判断することはとても難しいですが、AIの生成物の内容や作品の影響を受けた範囲など、具体的な要素を慎重かつ丁寧に調べることが大切です。

AIで生成物を作る際の注意点や対策

AIを活用して新しいコンテンツを生成することは、現代において一般的となりつつありますが、AI生成物には著作権や倫理的な問題などさまざまなリスクが伴います。そこでAIで生成物を作成する際に注意すべき点と具体的な対策を解説します。

AIの仕組みを理解しておく

企業が生成AIを利用する際は、学習データなど特有の仕組みと特性を理解することが大切です。AIの学習データの中には著作権で守られている作品も含まれていることが多く、生成物が影響を受けてしまうことから元の作品と似てしまうことがあります。

たとえ利用する企業が元の著作物を意識して作成したわけではないといっても、著作権の侵害となるケースも存在します。

そのためAIを使う企業は、AIが作った作品が他の作品と似てしまうかもしれないというリスクを常に意識し、きちんと検証してから活用しましょう。

既存の著作物と類似していないか

著作権侵害が成立するためには、「類似性」と「依拠性」の両方が必要とされます。「類似性」とは、生成されたコンテンツと既存の著作物が、外見上または内容的に似ている状態を指し、「依拠性」は生成されたコンテンツが既存の著作物を参考にしたり、影響を受けたりしている状態を指します。

AIによって生成されたコンテンツは、著作物も含めたさまざまなデータを元にしているためこの2つが該当する可能性があるのです。

コンテンツが既存の著作物と類似していなければ著作権者の許可なく利用できますが、AIが生成したコンテンツが既存の著作物と一部またはわずかに似ているだけであっても著作権侵害となるケースがあるため、慎重に確認しましょう。

予防措置や対策を考えておく

AIを利用してコンテンツを生成する企業は、著作権侵害を防ぐためにいくつかの予防措置を講じる必要があります。

まずAIの利用に関する社内ルールを明確にし、従業員に周知を徹底しましょう。またAIが学習するデータの選定や著作権侵害の有無を確認する仕組みなど、生成されたコンテンツの使用を管理する体制を構築することも大切です。  

さらに万が一著作権侵害が発生した場合に備え、対応手順を事前に準備しておく対策も重要です。例えば関係者への情報共有、該当システムの一時停止、著作権者との協議、原因究明、再発防止策の策定など、迅速かつ適切に対応するためのフレームワークを整えておきましょう。

著作権侵害が認められた場合はどうなる?

著作権侵害が認められた場合、権利者から侵害行為の差止や損害賠償を請求される可能性があります。差止請求は侵害行為の継続または再開を禁止するよう求める内容で、故意・過失の有無に関わらず行えます。これにより権利者は侵害行為の拡大を防ぐことが可能です。

なお損害賠償請求は、侵害行為によって被った損害の賠償を求める補償です。損害賠償請求を行うためには、侵害者に故意または過失があったとの証明が必要とされます。

しかしAIの利用者が侵害著作物を認識していなかった場合でも、不当利得返還請求を認める裁判例もあります。不当利得返還請求とは、侵害者が侵害行為によって得た利益を返還させる手段です。

さらに場合によっては著作権侵害が犯罪とみなされ、刑事罰が科される場合もあります。ただし、これは利用者が故意に使用したと認められる必要があります。

企業が生成AIによるリスクを低減するには

生成AIは業務効率化や新たなビジネスモデル創出のポテンシャルを秘めていると同時に、著作権侵害やプライバシー侵害といったリスクがあります。

そのため社内の従業員だけでなく、取引先、顧客、そして規制当局などさまざまなステークホルダーに対して、生成AIの利用に関する理解を深めてもらうことが重要です。その上で以下のような対策を講じましょう。

従業員向けのマニュアルを作成する

生成AIのリスクを最小限に抑えるには、企業が生成AIを導入する際に従業員が安全かつ倫理的にAIを利用できるよう、社内で統一した明確なガイドラインを作成することが必要です。

このガイドラインには生成AIの利用目的、使用可能な範囲、データの取り扱い方法、倫理的な配慮事項など具体的なルールを盛り込む必要があります。また禁止事項や責任範囲を明確化し、従業員がリスクを理解しやすいよう工夫するのもよいでしょう。

そして作成したマニュアルは従業員への周知を徹底し、誤った使い方をさせないように注意することが大切です。

生成されたコンテンツを検証する

AIが生成したコンテンツを安全に利用するためには、既存の著作物との類似性を確認する検証プロセスを設けましょう。生成物が著作権で保護された既存作品とどの程度似ているかを判断することは、著作権侵害のリスクを回避する上で重要な項目です。  

検証には類似性チェックを行う自動スキャンツールの活用が効果的です。これらのツールは生成物を既存のドキュメントや公開されている作品と照合し、テキストや画像の一致箇所をスムーズに特定できます。また商業利用が可能か、外部公開が適切かを評価する際にも役立ちます。

リスク管理する

企業が生成AIを導入する際には、従業員のAIリテラシー向上が大切です。従業員向けの研修やトレーニングを実施し、生成AIの基本的な仕組み、潜在的なリスク、および適切な利用方法を体系的に学ばせて従業員一人ひとりが責任を持って活用できる環境を構築しましょう。

特にAIの技術的限界や法的・倫理的な課題の理解を深めておくと、生成物を利用する際の適切な判断を下せる能力が向上します。例えば予期せぬ問題が発生した場合でも具体的な対応手順を示せる他、原因の特定や再発防止策の策定にもつながります。

安全で魅力的なコンテンツを提供できれば、企業の競争力も強化できるでしょう。

データマネジメントを実施する

生成AIの利用においては、データマネジメントがリスク低減の重要な要素となります。まず学習データの正確性や多様性を十分に確保し、生成物に偏りや不正確な情報が含まれるリスクを抑えます。

また機密情報や個人情報の取り扱いには細心の注意を払いましょう。不適切なデータ利用や情報漏洩を防ぐため、データの収集、保存、使用に関する明確なルールを策定し、従業員に徹底させる必要があります。またアクセス権限の制限やデータの暗号化など、技術的なセキュリティ対策を講じておくと情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。

企業にあった生成AIサービスを利用する

生成AIを選定する際には、自社のニーズに適したサービスの選択がとても大切です。具体的には、「自社の業務に必要な機能や性能を満たしていること」そして「セキュリティが確保されていること」が最優先となります。これによりAIが提供する成果物が確実に自社の要求を満たし、リスクなく運用できるようになります。

またAIツールを選ぶ際には、入力データがAIに学習されるのを制限できる「オプトアウト」機能を備えたサービスを選びましょう。この機能を使うと、企業が提供したデータがAIの学習に使用されないように設定でき、機密情報や個人情報が不用意に学習されるリスクを防げます。

多様な機能を有したサービスを選べば、自社の特定のニーズに合わせてAIの利用方法を調整でき、より安全に運用できるでしょう。

まとめ

生成AIは業務の効率化や新たなビジネスモデル創出の可能性に貢献する一方で、既存の著作物と類似性が高く、著作権侵害となるリスクも伴います。企業が生成AIを導入する際には従業員への教育、コンテンツの検証、データマネジメントなど適切なリスク管理対策を講じること、そして企業にあった適切な生成AIを導入することが重要です。

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