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SFA JOURNAL by ネクストSFA

労務管理と勤怠管理の違いとは?業務範囲と役割、システム化の要点を徹底解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

企業の人事業務において「労務管理」と「勤怠管理」は中核を担う存在ですが、その定義や業務範囲、そして両者の関係性を正確に理解できている担当者は意外と少ないかもしれません。働き方改革や法改正、テレワークの普及などにより、これらの管理業務はより複雑さを増しています。不十分な管理体制は、未払い残業や是正勧告といったリスクにも直結します。

本記事では、労務管理と勤怠管理の違いと役割、システム導入による改善策までを網羅的に解説し、実務に役立つ視点をご提供します。

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労務管理とは?企業経営を支える多岐な業務

労務管理は、勤怠管理を含む、より広範で包括的な概念です。従業員の採用プロセスから始まり、入社後の育成・配置、評価・処遇、労働条件の整備、福利厚生の提供、安全衛生の確保、そして最終的な退職に至るまで、従業員の「労働」に関するあらゆる事項を総合的にマネジメントし、従業員が安心してその能力を最大限に発揮できるような魅力的な労働環境を整備・運用していく活動全体を指します。

労務管理の目的は、企業が持続的に成長し、競争力を維持・強化していくための人的基盤を構築・維持することにあると言っても過言ではありません。その目的達成のため、労務管理は以下の重要な役割を担っています。

  1. 法令遵守(コンプライアンス)体制の構築と維持:
    • 労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法など、多岐にわたる労働関連法規を正しく理解し、遵守することは、企業の法的リスク・社会的信用失墜リスクを回避する絶対条件です。労務管理部門は、法体系に対応し、社内規程の整備・運用・周知徹底を行う責任を負います。
  2. 従業員のエンゲージメント向上と人材の確保・定着に繋がる良好な労使関係の構築・維持:
    • 公正な人事評価制度、適切な賃金・労働条件、多様な働き方支援、ハラスメントのない職場環境、充実した福利厚生などを通じ、従業員との信頼関係を深め、働きがいと帰属意識を高めることが求められます。優秀な人材の定着は企業の競争力の源泉です。
  3. 従業員の安全と健康の確保:
    • 労働安全衛生法に基づき、職場の危険・リスクの特定・除去、安全衛生教育、健康診断・ストレスチェック、長時間労働抑制、メンタルヘルスケア、産業医連携などを通じ、労働災害や健康障害を未然に防止し、従業員のウェルビーイング向上を図る責務があります。

労務管理がカバーする具体的な業務範囲は非常に広範であり、勤怠管理以外にも主に以下のようなものが含まれます。

  • 採用・入社関連: 採用計画、募集・選考、内定、雇用契約締結、入社手続き
  • 規程・制度関連: 就業規則、賃金規程、退職金規程、育児・介護休業規程などの作成・変更・届出・周知
  • 給与・評価関連: 給与・賞与計算、年末調整、人事評価制度の設計・運用
  • 保険・福利厚生関連: 社会保険(健康保険・厚生年金)、労働保険(雇用保険・労災保険)の手続き、法定福利・法定外福利制度の企画・運用
  • 安全衛生関連: 安全衛生委員会の運営、職場巡視、安全衛生教育、健康診断・ストレスチェックの実施、産業医連携
  • コンプライアンス・労使関係関連: ハラスメント防止策、コンプライアンス教育、労働組合対応(該当する場合)
  • 退職関連: 退職手続き、解雇関連手続き、退職金計算・支払い
  • 法定帳簿管理: 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの作成・整備・保存

これら多岐にわたる業務は相互に密接に関連し、影響し合っています。労務管理の質は、従業員のモチベーション、生産性、そして企業全体の業績やレピュテーションに直接的な影響を与えるため、単なる管理部門の事務作業ではなく、経営戦略の根幹をなす重要な機能として位置づけ、継続的な改善と強化を図っていく必要があります。

勤怠管理とは?業務内容と重要性

勤怠管理とは、端的に言えば、従業員の「労働時間」を正確に把握し、適正に管理するための一連の活動を指します。

具体的には、従業員一人ひとりの日々の出退勤時刻、休憩時間の取得状況、実労働時間、時間外労働(いわゆる残業)、休日労働、深夜労働の時間数、そして年次有給休暇をはじめとする各種休暇・欠勤の取得状況などを、客観的な方法で記録・集計し、労働基準法をはじめとする関連法規及び社内規程に則って管理していくことです。

この勤怠管理が企業活動において担う役割・目的は多岐にわたりますが、主に以下の三つの重要な側面が挙げられます。

  1. 法令遵守(コンプライアンス)の確保:
    • 法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)の遵守
    • 適切な休憩時間・休日の付与
    • 時間外労働・休日労働に関する36協定の遵守と上限規制の管理
    • 割増賃金(時間外・休日・深夜)の正確な計算と支払い
    • 年次有給休暇の付与と取得義務(年5日)の履行
    • これら法規制遵守の大前提が、客観的かつ正確な労働時間の把握であり、企業の法的義務です。勤怠管理の不備は重大なリスクとなり得ます。
  2. 正確な給与計算の実施:
    • 従業員の給与は、基本給以外に勤怠状況に応じて変動する項目(時間外手当、休日手当、深夜手当、各種控除など)が多く含まれます。
    • 勤怠データはこれらの計算の最も基本的な情報源であり、その正確性が担保されなければ、給与の未払いや過払いが発生し、従業員との信頼関係を損ないます。適正な勤怠管理は公正な処遇の基盤です。
  3. 従業員の健康管理と組織全体の生産性向上への寄与:
    • 勤怠データを継続的にモニタリングすることで、長時間労働の常態化などを早期に発見し、過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調を未然に防ぐ対策を講じることが可能です。
    • 労働時間の実態を可視化・分析することは、業務の繁閑予測、人員配置の最適化、非効率な業務プロセスの特定などに繋がり、組織全体の生産性向上に貢献します。

近年、テレワーク、フレックスタイム制度、時短勤務など、働き方の選択肢が広がる中で、従来のタイムカードや手書きの出勤簿、自己申告といった管理方法では、正確な労働時間の把握や多様な勤務形態への対応が困難になっています。ICカード認証、PCログオン・オフ時刻の記録、生体認証(指紋・顔・静脈)、GPS打刻機能付きスマートフォンアプリなど、客観的で効率的な勤怠管理を実現するための様々なシステムやツールの活用が重要です。

管理部門や決裁者におかれては、勤怠管理を単なるルーチンワークとしてではなく、企業のコンプライアンス、適正な処遇、従業員の健康、そして生産性を根底から支える経営の重要基盤であると認識し、その正確性と効率性を常に追求し続ける必要があります。

労務管理と勤怠管理の決定的な違いと関係性

労務管理と勤怠管理は、企業の人事労務領域において相互に連携し、補完し合う重要な機能ですが、その目的、対象とする業務範囲(スコープ)、そして日々のオペレーションにおける役割は明確に異なります。この二つの概念の違いと、両者がどのように結びついているのか、その関係性を正確に理解することが、適切な管理体制の構築・運用、そして効果的なシステムソリューションを選定する上で不可欠な前提となります。

まず、両者の最も本質的な違いは、その視点と対象範囲にあります。

  • 勤怠管理:
    • 主に個々の従業員の「労働時間」という具体的な数値データに焦点を当てる。
    • 出退勤時刻、休憩、残業、休暇などの勤務実績を正確に記録・集計・管理することが中核。
    • 法令遵守や正確な給与計算の基礎を固める、ミクロな視点での時間管理活動
  • 労務管理:
    • よりマクロで包括的な視点に立つ。
    • 採用から退職までの従業員ライフサイクル全体に関わるあらゆる労働関連事項をマネジメント対象とする。
    • 法令遵守、公正な処遇、安全衛生、福利厚生、良好な労使関係などを通じ、労働環境全体を整備・運用することが目的。
    • 勤怠管理は、この労務管理の広大な領域を構成する一部分野

この関係性を理解する上で重要なのは、勤怠管理が労務管理の単なる一部分であるだけでなく、労務管理全体の質と有効性を左右する極めて重要な「基盤情報」を提供するという点です。勤怠管理によって収集され、正確性が担保された勤怠データは、後続する多くの労務管理業務にとって、必要不可欠な基礎情報(インプット)となります。

例えば、

  • 給与計算: 勤怠データがなければ、残業代、各種手当、控除などを正しく計算できない。
  • 社会保険・労働保険手続き: 正確な賃金総額の算出に、勤怠データに基づく給与データが必須。
  • コンプライアンスチェック: 36協定の時間外労働上限、有給休暇取得義務、長時間労働の有無などのモニタリングは、すべて日々の正確な勤怠データが基盤。

もし勤怠管理が杜撰でデータの信頼性が低い場合、これらの重要な労務管理機能は正常に働かず、企業は意図せず法令違反を犯したり、潜在的なリスクを見過ごしたりする危険に晒されます。つまり、勤怠管理の精度が低いことは、労務管理全体の機能不全に直結する可能性があるのです。

したがって、管理部門や決裁者におかれては、勤怠管理を単なる時間記録の作業と捉えるのではなく、労務管理全体の健全性と有効性を支えるための戦略的な基盤であると認識し、その正確性、効率性、信頼性の向上に継続的に取り組む必要があります。労務管理と勤怠管理の違いを明確に区別しつつ、両者のこの不可分な連携関係を深く理解することが、より高度で効果的な人事労務マネジメント実現への鍵となるのです。

労務管理をするうえで勤怠管理が必要な理由

勤怠管理は、単なる出退勤の記録ではありません。企業運営における重要なリスク管理のひとつであり、正しく行うことでトラブルの回避や法令遵守、従業員満足度の向上に大きく貢献します。ここでは、勤怠管理が労務管理において欠かせない3つの理由について解説します。

労務トラブルを予防

勤怠記録が曖昧だったり不正確だったりすると、「残業代が支払われていない」「休暇が取得できていない」などの労務トラブルにつながります。特に、近年は労働者側の労働環境への意識も高まっており、些細なミスが訴訟や離職の原因になるケースも少なくありません。正確な勤怠管理を行うことで、労使間の認識のズレを防ぎ、トラブルを未然に防止することができます。

コンプライアンスのため

労働基準法をはじめとする各種法令では、労働時間の管理や記録義務が定められています。勤怠管理が適切に行われていないと、長時間労働や未払い残業といった法令違反が発生し、企業は行政指導や罰則の対象となるリスクがあります。正確な勤怠管理は、法令遵守(コンプライアンス)を果たすうえで不可欠な要素です。

従業員の給与を正しく支払うために必要

給与計算の基礎となるのが勤怠データです。出勤日数や労働時間、残業時間、休暇情報などが正しく記録されていなければ、給与の過不足が発生し、従業員の不満や信頼低下につながります。給与の誤支給は労働意欲を下げるだけでなく、企業の信用問題にも直結します。適切な勤怠管理により、正確で公平な給与支払いが可能になります。

労務管理・勤怠管理の課題とシステム化のメリット・注意点

多くの企業において、特に従来からの手作業や表計算ソフト(Excelなど)を中心とした方法で労務管理や勤怠管理を行っている場合、共通して様々な課題やリスクに直面しています。これらの課題を認識し、適切な対策を講じなければ、業務効率の低下に留まらず、コンプライアンス違反や従業員との信頼関係悪化といった、より深刻な事態を招きかねません。幸いなことに、これらの課題の多くは、適切なITシステム(労務管理システムや勤怠管理システム)の導入と活用によって解決、あるいは大幅に軽減することが可能です。

ここでは、まず従来型の管理手法が抱えがちな典型的な課題を整理し、次にシステム化によって得られるメリット、そしてシステム導入を成功させるために留意すべき注意点について解説します。

従来型管理における典型的な課題

  • 人的ミスの頻発と信頼性の低下: 打刻漏れ、転記ミス、計算間違いなど、人手を介する作業にはヒューマンエラーのリスクが常に伴い、給与未払いや手続きミスに繋がります。
  • 担当者の過重な業務負荷と属人化: 勤怠集計、給与計算、保険手続きなどは煩雑で時間を要し、担当者の負担増大や、特定の担当者しか分からない属人化を招きます。
  • 法改正への対応遅延とコンプライアンスリスク: 頻繁な法改正への情報キャッチアップ漏れや対応遅延が発生しやすく、意図せず法令違反となるリスクがあります。
  • リアルタイムな状況把握とデータ活用の困難さ: 紙やExcelでは、最新の労働時間状況や人件費などを迅速かつ正確に把握することが困難で、データに基づいた意思決定が遅れます。
  • 多様化する働き方への対応限界: テレワーク、フレックスタイム、副業など、複雑化する勤務形態への対応が手作業では限界に達しつつあります。

システム導入によるメリット

これらの課題に対し、労務管理・勤怠管理システムを導入・活用することで、以下のような多岐にわたるメリットが期待できます。

  • 圧倒的な業務効率化と生産性向上: 打刻・集計・計算の自動化、Web明細、電子申請などにより、手作業を劇的に削減し、担当者はより付加価値の高いコア業務に集中できます。ペーパーレス化も実現します。
  • ヒューマンエラーの撲滅とデータ精度の向上: システムによる自動処理で人為的ミスを根本的に排除し、データの正確性と信頼性を飛躍的に高めます。
  • コンプライアンス遵守体制の強化: 法改正への自動アップデート(クラウド型の場合)、残業超過や有休未取得等のアラート機能により、コンプライアンスリスクを効果的に低減します。
  • データの可視化と戦略的人事の実現: 労働時間や人件費などのデータをリアルタイムで可視化・分析でき、データに基づいた客観的な意思決定や人事戦略立案が可能になります。
  • 多様な働き方への柔軟な対応力: テレワーク時のGPS打刻、フレックスタイム制の自動計算など、複雑な勤務形態にも柔軟かつ正確に対応できます。
  • 従業員エンゲージメントの向上: 従業員自身による簡単な打刻・申請、勤怠状況の透明化は、利便性向上と公平感に繋がり、エンゲージメント向上に寄与します。
  • 内部統制強化とセキュリティレベルの向上: アクセス権限管理、操作ログ記録、データの暗号化、不正打刻防止機能(生体認証など)により、内部統制とセキュリティを強化します。

システム導入時の注意点

多くのメリットが期待できるシステム導入ですが、その効果を最大限に引き出し、失敗を避けるためには、以下の点に注意が必要です。

  • 自社適合性の詳細な評価とシステム選定: 自社の業務プロセス、ニーズ、将来計画に真に適合するシステムを慎重に選定することが最も重要です。機能だけでなく、操作性、サポート、セキュリティ、ベンダー信頼性も評価し、トライアル等を活用します。
  • 費用対効果(ROI)の厳密な評価: 初期費用だけでなく、ランニングコストを含めた**TCO(総所有コスト)**を把握し、得られる効果(定量的・定性的)と比較してROIを評価します。決裁者には具体的な根拠を示す必要があります。
  • 堅牢な情報セキュリティ対策の確認: 機密性の高い個人情報を扱うため、システムのセキュリティ対策(暗号化、アクセス制御等)やベンダーの信頼性、第三者認証の取得状況などを厳しく確認します。
  • 周到な導入計画と円滑な運用体制の構築: 導入はゴールではなくスタートです。詳細な移行計画、従業員への十分な説明・研修、サポート体制の整備が不可欠です。導入後も継続的な評価と改善(PDCA)が効果を最大化します。

これらのメリットと注意点を十分に踏まえ、自社の状況に最適なシステムを戦略的に選定し、計画的に導入・運用していくことが、人事労務管理の高度化、ひいては企業全体の競争力強化と持続的成長を実現するための鍵となるのです。

まとめ:適切な労務管理・勤怠管理で健全な企業経営と成長を

本記事では、労務管理勤怠管理の基本的な定義、業務範囲、そして両者の明確な違いと相互に不可分な連携関係について、詳細に解説してまいりました。

勤怠管理が、従業員の「労働時間」という具体的な数値を正確に把握・管理することに主眼を置くのに対し、労務管理は、勤怠管理を含むより広範な視点から、従業員が安心して能力を発揮できる労働環境全体を整備・運用し、法令遵守と良好な労使関係を築くための総合的なマネジメント活動であることを、ご理解いただけたかと思います。

勤怠管理によって得られる正確なデータは、給与計算、社会保険手続き、コンプライアンスチェックなど、多くの労務管理業務の基盤となり、その精度が労務管理全体の質を左右します。

管理部門や決裁者の皆様におかれましては、これらの違いと関係性を深く理解することが、自社の課題を正確に認識し、最適なシステム選定や業務改善策を判断する上で不可欠です。システム化は、単なる効率化に留まらず、コンプライアンス強化、データに基づいた迅速な意思決定、従業員満足度向上といった、経営上の多大なメリットをもたらし、企業の持続的な成長を支える重要な投資となります。

自社の現状を客観的に評価し、労務管理と勤怠管理の適切な運用とシステム化を、戦略的に検討・推進されることを強く推奨いたします。

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