更新日:2024/09/18
M&Aにおける売り手の注意点は? リスクやM&Aを成功させるための対策を解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
M&Aにはさまざまなメリットがあり、売り手として実施する企業が増えています。しかし、複雑なプロセスやリスクから、失敗に終わるケースも少なくありません。
売り手としてM&Aを成功させるためには、手順だけでなくリスクや注意点も把握しておくことが大切です。
本記事では、M&Aで売り手が知っておきたい注意点と、成功させるための対策を解説します。
大手&上場しているM&A仲介会社 比較10選
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会社名 | 特徴 | 手数料体系 | サービス対応範囲 |
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株式会社日本M&Aセンター |
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相談:無料 着手金:有 報酬:レーマン方式 |
事前コンサルティング M&Aサービス~戦略立案~ M&Aサービス~マッチング~ アフターサービス |
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
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相談:無料 着手金:無料 報酬:株価レーマン方式 |
譲渡売却 譲受買収 企業評価 M&Aマッチングサービス |
株式会社ストライク |
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相談:無料 着手金:無料 報酬:レーマン方式 |
成長加速型M&Aコンサルティング 事業承継型M&Aコンサルティング 経営支援コンサルティング |
株式会社M&A総合研究所 |
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年間問い合わせ5,000件以上 譲渡企業様は着手金中間金無料の完全成功報酬制 東証上場の信頼とM&A支援の豊富な実績 最短49日のスピード成約 AIマッチングシステムの活用 |
M&A仲介 事業譲渡 AIマッチングシステム 資料事業計画書の作成 面談指導 |
名南M&A株式会社 |
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譲渡企業報酬体系 着手金(アドバイザリー契約締結時): 5億円以下 66万円 5億円超~20億円以下 110万円 20億円超 220万円 成功報酬(クロージング時): 5億円以下の部分 5.5% 5億円超~10億円以下の部分 4.4% 10億円超~50億円以下の部分 3.3% 50億円超~100億円以下の部分 2.2% 100億円超の部分 1.1% (最低報酬1,100万円) 譲受企業報酬体系 情報提供料(アドバイザリー契約締結時): 10億円以下 66万円 10億円超~50億円以下 110万円 50億円超 220万円 成功報酬(クロージング時): 5億円以下の部分 5.5% 5億円超~10億円以下の部分 4.4% 10億円超~50億円以下の部分 3.3% 50億円超~100億円以下の部分 2.2% 100億円超の部分 1.1% (最低報酬1,100万円) |
事業承継 譲渡 譲受 |
株式会社オンデック |
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要お問い合わせ |
事業承継型M&A イグジット型M&A MBO支援 ターゲット選定 簡易企業評価 |
株式会社ペアキャピタル |
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着手金:なし 中間報酬:手数料の10% 成約時:残りの90% |
M&Aアドバイザリー 事業承継コンサルティング 業務提携コンサルティング 企業再生支援 資本政策経営計画コンサルティング 資産運用コンサルティング |
セレンディップホールディングス株式会社 |
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事業承継支援事業 経営コンサルティング事業 M&Aアドバイザリー事業 企業再生支援事業 コーポレートアドバイザリー事業 プロ経営者派遣事業 その他付帯する事業 |
ブティックス株式会社 |
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着手金:なし 最低手数料:100万円 報酬:レーマン方式 |
展示会事業 M&A仲介事業 人材採用支援事業 |
株式会社スピカコンサルティング |
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着手金:なし 成功時の報酬:成功時の報酬は、譲渡対価に対して計算される 譲渡オーナーは完全成功報酬 |
完全業界特化型M&A仲介 バリューアップコンサル |
大手企業傘下&上場企業傘下M&A仲介会社 比較11選
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会社名 | 特徴 | 手数料体系 | サービス対応範囲 |
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株式会社M&Aサクシード |
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中間手数料:無し 譲渡対価の5%~ 詳細については要お問い合わせ |
M&Aマッチングサービス 譲渡・譲受の仲介 |
株式会社Innovation M&A Partners |
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着手金:なし 中間手数料:なし 完全成功報酬型 |
M&Aサービス 初期コンサルティング 簡易株価算定 アドバイザリー契約締結 企業概要書(IM)の作成 経営者同士の面談のセッティング デューデリジェンス 条件交渉 最終契約締結 株式譲渡や資産の移管等を実施(クロージング) |
ABNアドバイザーズ株式会社 |
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着手金:原則無料 成功報酬型:取引金額に対するレーマン方式 |
M&A総合アドバイザリー業務 M&A仲介事業 事業成長戦略、事業承継戦略、事業再建戦略等の立案助言および実行サポート M&A戦略立案、検討、実行に係るアドバイザリー PMI戦略のサポート その他経営全般に係る助言サポート |
信金キャピタル株式会社 |
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着手金:なし 取引金額に応じた完全成功報酬制 |
M&A仲介 投資育成 |
株式会社DYM M&Aコンサルティング |
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M&A事業 投資育成事業 |
株式会社マイナビM&A |
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着手金:なし 手数料:株式価値に応じて手数料率を乗じ金額を算定 成功報酬制 |
M&Aに関する仲介、斡旋、コンサルティングおよび アドバイザリー業務 |
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社 |
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成功報酬型:レーマン方式 |
M&Aアドバイザリー 企業評価の実施 資本政策経営計画コンサルティング |
エムレイス株式会社 |
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着手金:無料 アドバイザリー手数料:無料 中間報酬:基本合意契約締結時に200万円(消費税別) 最終報酬:取引金額に応じて定められた成功報酬を頂戴致します。 (レーマン方式により算出) |
M&A支援事業(M&A仲介、M&Aアドバイザリー業務) スカウト型M&A 事業承継サポート 後継者スカウト PMI(経営統合)サポート 企業価値評価 |
株式会社MJS M&Aパートナーズ |
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着手金:あり 成功報酬:レーマン方式 |
中小企業の事業承継事業再生等に関するサポート事業 税理士をはじめとする士業の事業承継支援事業 |
M&A BASE 株式会社 |
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着手金:なし 成果報酬型 |
M&Aアドバイザリー事業 サーチファンド事業 サーチファンド設立の目的、5つの強み、チームメンバー、サーチャーを紹介 |
株式会社ウィット |
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着手金:なし 完全成功報酬型 |
M&A仲介事業 |
中小企業向けM&A仲介会社 比較15選
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会社名 | 特徴 | 手数料体系 | サービス対応範囲 |
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株式会社M&Aコンサルティング |
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相談:無料 着手:無料 成功報酬:レーマン方式(M&A成立時) |
スケール型M&A 事業承継支援 不動産M&A |
株式会社M&Aベストパートナーズ |
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着手金:なし 中間報酬:あり 成功報酬型 手数料率:5% |
中堅中小企業におけるM&A仲介 |
株式会社fundbook |
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相談:無料 着手金:無料 成功報酬:レーマン方式 |
譲渡サービス 譲受サービス |
株式会社CBパートナーズ |
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着手金:なし 中間報酬:なし 完全成功報酬 |
M&A仲介事業 医療介護福祉業界M&A支援サービス 医師開業支援サービス |
インテグループ株式会社 |
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相談:無料 成功報酬:5億円以下の部分 5% 5億円超~10億円以下の部分 4% 10億円超~50億円以下の部分 3% 50億円超~100億円以下の部分 2% 100億円超の部分 1% (最低額1,500万円) |
M&A仲介アドバイザリー ディールファインディングサービス(買い手企業向け案件発掘サービス) MBO支援 |
株式会社経営承継支援 |
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着手金:なし 成功報酬型:基本合意時 100万円 最終契約締結時 :合計から100万円を控除した残額 |
中堅中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務 中堅中小企業の継続発展に資するM&A仲介助言業務 |
株式会社M&A DX |
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企業提携に関する仲介 企業提携に関するファイナンシャルアドバイザリー(FA) セカンドオピニオン(第三者視点のM&Aアドバイス) 財務税務調査業務(DD) 株式価値算定(Valuation) PMI(Post Merger Integration)支援 PPA(Purchase Price Allocation)支援 MBO(Management Buy Out)支援 CVC(Corporate Venture Capital)運営支援 スナイパーサービス(M&A戦略立案投資候補先開拓) 不正調査 相続相続税対策支援 富裕層向け財産サービス 資本政策策定支援 ストックオプション構築算定支援 組織再編プランニング実行支援 |
Growthix Capital株式会社 |
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基本合意の締結時:手数料の10% 受諾と決済時(クロージング):支払い:残額全て |
アドバイザリー契約の締結 M&A戦略の立案 対象企業へアプローチ 価格の条件交渉 基本合意の締結 買収監査(デューデリジェンス) 売買契約の締結 受諾と決済(クロージング) |
Byside株式会社 |
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着手金:なし 完全成功報酬型の手数料体系 |
M&Aアドバイザリー(FA業務) M&A仲介事業 |
M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社 |
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着手金:なし 中間報酬:なし 完全成功報酬型 |
M&A仲介事業 M&Aアドバイザリーサービス(譲渡売却) セカンドオピニオンサービス MALAパートナープログラム |
株式会社NEWOLD CAPITAL |
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着手金:なし 中間報酬:あり 成功報酬型 |
M&A仲介及びM&Aアドバイザリー事業 経営、プロフェッショナル人材の紹介事業 M&A業務及びM&A関連人材の教育研修事業 |
株式会社 M&Aフォース |
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成約時に手数料の100% 成功報酬の一部を着手金中間報酬として頂戴する場合あり |
事業承継診断 成⻑戦略コンサルティング 提携仲介契約締結 企業概要書作成 マネジメントインタビュー 財務/ビジネス分析 株価/企業価値算定 会社の雰囲気調査 マッチング 候補企業への提案 トップ⾯談 基本合意契約 買収監査 会計/法務監査 最終契約成約 |
ゴエンキャピタル株式会社 |
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着手金:なし 中間報酬:なし 成功報酬型:譲渡価格の5% |
M&Aコンサルティング事業 PMIコンサルティング事業 プライベートエクイティファンドの運営 |
株式会社クラリスキャピタル |
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着手金なし 成功報酬のみで200万円から |
M&A仲介アドバイザリー事業 |
株式会社INNOVATION LEADERS |
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手数料 0円 中間手数料:報酬の10% 報酬(残りの90%) |
M&A仲介事業 |
業界特化 おすすめM&A仲介会社 15選
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会社名 | 特徴 | 手数料体系 | サービス対応範囲 |
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株式会社ウィルゲート |
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完全成功報酬型 着手金・中間手数料なし |
M&A仲介事業 |
株式会社パラダイムシフト |
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M&Aアドバイザリー CVC運営支援 事業開発 金融イノベーション |
株式会社エイスリー |
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着手金:なし |
アドバイザリー契約の締結 M&Aの戦略立案 M&Aサービス -マッチング- 買手候補を一社選定 成約クロージング |
xxx(エイジィ)株式会社 |
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成功報酬:レーマン方式(※成功報酬の最低額は1,000万円) |
簡易審査個別相談 M&Aスキームのご提案 必要書類の準備 買手候補の選定 買手候補への提案 面談設定 条件交渉成約 PMI(M&A後の更なる企業価値向上、成長支援策の提案) |
株式会社エムズ |
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秘密保持契約の締結 M&A事業承継の可能性の検討 提携仲介契約の締結 具体的資料の提出/法人の評価額の算定 マッチング 譲渡価格などの条件交渉 基本合意契約の締結 買収監査の実施 最終条件交渉と譲渡契約の締結 クロージング対価の授受 |
株式会社シードコンサルティング |
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中小企業への財務力強化、資金調達、コスト削減、経営全般に関するコンサルティング業 相続事業承継に関するコンサルティング業務 建設業特化型スモールM&Aアドバイザリー仲介業務、M&Aに関する調査コンサルティング業務 生命保険、損害保険代理店業務、各種金融商品、生命保険の活用法、資産運用、資産防衛に関するコンサルティング業務 |
株式会社 バシラックス |
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売り手手数料 0円~ 書いて手数料 200万円~ 面談、基本合意手数料 0円~ |
条件交渉 TOP面談 契約締結 買収監査(デューデリジェンス) クロージング |
MACアドバイザリー株式会社 |
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原則有料(完全成功報酬型) 着手金:なし 中間金:なし |
調剤薬局ドラッグストア専門M&Aアドバイザリー 仲介事業企業再生再編支援コンサルティング業務 企業経営調剤薬局の運営に関するコンサルティング業務 薬価差の改善業務 |
株式会社アウナラ |
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完全成果報酬型 仲介手数料200万円~ |
M&A仲介 薬剤師様独立支援 ドクター誘致支援 人材紹介事業 |
株式会社希望の星 |
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清掃経営(支援)コンサルティング 清掃独立開業支援 清掃業M&A 清掃技術研修 |
早稲田M&Aパートナーズ株式会社 |
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初期相談料:無料 営業提案活動費:無料 着手金:無料 面談設定費:無料 完全成功報酬型 |
ベンチャー企業のM&A(株式譲渡売却資本提携事業譲渡等)の仲介業務 ベンチャー企業の資金調達支援及びファイナンシャルアドバイザリー業務 ベンチャー企業の株式価値算定及びデューデリジェンス業務 ベンチャー企業の経営コンサルティング業務 |
株式会社コルウスパートナーズ |
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国内最大級のネットワークを活用し信頼性の高いマッチングを実現 完全成功報酬制+業界最安値水準の料金体系 専門コンサルタントによる安心のサポート |
M&AアドバイザリーM&A仲介 経営コンサルティング PMIコンサルティング その他、上記に付帯する業務 |
株式会社エクステンド |
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着手金:なし 中間金:なし 成功報酬型:レーマン方式 |
お問い合わせヒアリング 提案 マッチング先の選定紹介 トップ面談 |
株式会社エスエムエス |
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着手金:なし 中間報酬:なし 成約基本料 100万円 成功報酬型:レーマン方式 |
マッチング トップ面談 基本合意 デューデリジェンス(リスク調査) 最終合意 |
株式会社M&A Properties |
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着手金:なし 中間報酬:なし 成功報酬型 |
ヒアリング初回面談 個別案件の初期検討 及び 意向表明書の提出 懸念点などのすり合わせ及び解消 投資回収シミュレーション 現地視察 デューディリジェンスのサポート 譲渡契約書の締結サポート クロージングのサポート |
M&Aで売り手が知っておきたい6つの注意点
M&Aのプロセスは複雑であり、一つでも不備があると失敗に終わる可能性があります。自社のM&Aを検討するに当たっては、以下6つの注意点を押さえましょう。
- M&Aの情報が外部に漏れないようにする
- 根拠のない価格で会社を売却しない
- M&A仲介会社の意見を鵜呑みにしない
- 嘘偽りのない情報を相手に伝える
- 判断を誤らないよう、客観的に状況を見る
- M&Aの売り手は競業避止義務を守らなければならない
1. M&Aの情報が外部に漏れないようにする
1つ目は、M&Aを検討している段階から、情報が外部に漏れないようにすることです。
M&Aを進めている最中に情報が漏れると、売り手・買い手ともに不利益を被る可能性があります。そのため、従業員や取引先などの関係者にも公表せず、プロジェクトを進めなければなりません。
M&Aの情報が外部に漏れてしまうと、根拠のない噂が広がる場合があります。取引先からの急な契約解除や従業員の離職につながるかもしれません。
また情報流出が原因で、買い手との交渉に失敗する恐れもあるでしょう。M&Aができなければ、最悪の場合は会社存続の危機につながります。
加えて、M&Aで会社の売却が完了した後も、売り手には一定期間の守秘義務が発生するので注意が必要です。M&Aの実施は経営に深く関わる関係者のみに留め、従業員への告知は最終契約締結後にしましょう。
2. 根拠のない価格で会社を売却しない
2つ目は、買い手から根拠のない価格を提示された場合は、会社を売却せず破談を検討することです。
M&Aで会社を売却する際は、買い手側が企業価値評価(バリュエーション)を行います。企業価値評価は、交渉の基準となる価格を算出するために必要です。企業価値評価では、財務情報や事業計画などを参考に適正な売却価格を設定します。
M&Aでは売買相場が決まっておらず、交渉によって価格を決めるのが一般的です。売り手はできるだけ高く売却できるよう交渉を進めます。対して、できるだけ安く購入したいのが買い手の考えです。
そのため、売り手にとって不利な価格を提示されるケースがあります。根拠のない算定額を押し付けられないために、自社でも企業価値評価を実施することが重要です。
納得できない価格を提示された場合は、相手の条件を飲むよりも破談を検討した方がよい場合もあります。
3. M&A仲介会社の意見を鵜呑みにしない
3つ目は、M&A仲介会社を利用する際、担当者の意見を鵜呑みにしないことです。
特にM&Aが初めての場合は、M&A仲介会社にサポートを依頼することもあるでしょう。しかし、M&A仲介会社に言われるがままになっていると、売り手に不利な条件で契約が進んでいるのに気付けないかもしれません。
基本的にM&A仲介会社は中立ですが、担当者の知識不足などが原因で、買い手側に有利な取引になることもあります。不利な条件での契約とならないよう、売り手も積極的に交渉に関わるとよいでしょう。
また、売り手もM&Aに関する正しい知識を身につける必要があります。M&A仲介会社のアドバイスが適切なのかを見極めて、納得した上で会社を売却しましょう。
4. 嘘偽りのない情報を相手に伝える
4つ目は、買い手との良好な関係を築くため、嘘偽りのない情報を伝えることです。
M&Aが進むと、買い手によるデューデリジェンス(買収監査)が行われます。デューデリジェンスとは、M&Aを実施する前に買収企業の価値やリスクなどを調査することです。
デューデリジェンスで虚偽の申告や過去の粉飾決済が明らかになると、買い手の信用を失ってしまいます。売り手に悪気がなくても情報に誤りがあれば、M&Aが破談してしまうでしょう。
なお、デューデリジェンスの実施前は黙秘権の行使が可能です。ただし、デューデリジェンスで黙秘すると、信用できない相手とみなされるので誠実な回答を心掛けましょう。
5. 判断を誤らないよう、客観的に状況を見る
5つ目は、判断を誤らないよう、客観的に状況を見ることです。M&Aでは常に冷静な判断を下す必要があります。会社への思い入れがあるあまり、主観で考えすぎないように注意しましょう。
優れた経営者であっても、感情が先走ると判断を誤る可能性があります。特に、M&Aのスキームや売却先を決定する際は、主観的に判断しがちです。経営者が冷静なつもりであっても、誤った判断を下す可能性はあります。
例えば、付き合いの長さを理由に売却先を選定してしまうケースです。詳細な条件を精査しなかったために、売り手が損をする恐れがあります。
また、買い手企業のブランド力のみで判断するケースも要注意です。売却先を選ぶ際はM&A後の成長が期待できるか、企業理念が合うかなどを客観的に判断してください。
6. M&Aの売り手は競業避止義務を守らなければならない
最後が、売り手は競業避止義務を守らなければならないということです。競業避止義務には、譲渡した事業の競合に当たる事業を売り手が再度開始するのを防ぐ目的があります。
売り手は譲渡した事業のノウハウを持っており、事業を再開すると買い手の事業拡大や成長を妨げるかもしれません。そのため、売り手は長年営んできた事業を完全に手放す必要があります。
事業譲渡によるM&Aを実施する場合、会社法第21条において競業避止義務が明確に明記されています。M&Aの契約書に競業避止義務の旨を記した場合、事業を譲渡した日から20年間は同じ事業を行えません。また、特約を記載した場合は競業避止義務を30年まで延長可能です(※)。
競業避止義務の遵守も考慮した上で、M&Aを実施しましょう。
※参考:e-Gov法令検索「会社法」.“(譲渡会社の競業の禁止)”
M&Aで売り手に起こり得る3つのリスク
売り手の注意点を把握していても、M&Aは必ずしも成功するとは限りません。M&Aで会社売却が完了するまでに起こり得る3つのリスクを解説します。
- 希望どおりにM&Aが進むとは限らない
- M&Aの途中で業績が悪化する可能性がある
- M&Aが従業員の離職につながる恐れがある
1. 希望どおりにM&Aが進むとは限らない
まずは、希望どおりにM&Aが進むとは限らないということです。
M&Aを実施する際、売り手は希望条件を提示した上で買い手を探します。すぐに買い手が見つかる場合があれば、なかなか買い手が見つからないケースも少なくありません。
M&A仲介会社に依頼すれば買い手がスムーズに見つかりそうですが、経営難を理由にM&Aを検討している企業は難しいでしょう。買い手が見つかったとしても、双方の意見が合わず破談になる可能性もあります。
また、デューデリジェンスで負債や粉飾決済が見つかれば、売却価格の低下は避けられません。相手からの印象も悪くなるので、デューデリジェンスで判明するようなリスクは買い手にあらかじめ伝えておきましょう。
2. M&Aの途中で業績が悪化する可能性がある
また、M&Aの途中で業績が悪化する可能性もあります。一般的に、M&Aの手続きにかかる期間は半年~1年程度です。この売却期間中に状況が変われば、業績にも影響します。
例えば、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症によって、事業を停止した企業もありました。災害や感染症の蔓延による業績悪化は誰も予想できないでしょう。
近年は円安の影響で製造コストが跳ね上がり、業績悪化の歯止めが効かない企業もあります。このように、業績悪化が原因で企業価値が下がったり、M&A自体が白紙になったりするケースは少なくありません。
また、経営状況や人手不足によって、事業とM&Aを並行して進める売り手もいます。どちらも中途半端になってしまえば、業績悪化につながるので注意が必要です。
リスクを回避するためには、専門家のアドバイスを受けながらM&Aを進めましょう。
3. M&Aが従業員の離職につながる恐れがある
さらに、M&Aを行ったことで、従業員が離職する恐れもあります。特に事業のキーパーソンが離職すると、M&A後の業績に悪影響を与えるでしょう。
従業員の離職には以下3つの要素が関わっています。
- 従業員の待遇
- 労働環境の変化
- 従業員同士の関係
例えば、M&A後に給与の減額や役職の降格があると、従業員のモチベーションは低下します。買い手側の従業員よりも待遇が悪いと感じれば、離職は避けられません。
業務の進め方が今までとは異なることや、新しい企業風土に馴染めない点も従業員が離職する原因です。また、売り手と買い手がライバル関係にあった場合は、各従業員への配慮も必要になります。
従業員の離職につながる可能性があることも考慮して、M&Aを検討しましょう。
M&Aを成功させるための7つの対策
M&Aを成功させるため、売り手には注意点を押さえた上での十分な準備が必要です。7つの対策を紹介するので、ポイントを押さえてM&Aの成功率を高めましょう。
- M&Aを実施する目的を明確にする
- M&Aのスキームは早い段階で決めておく
- M&A仲介会社は慎重に選ぶ
- 複数の買い手候補を比較して決める
- 従業員の雇用に関する条件を確認する
- M&Aについて従業員から理解を得る
- M&Aに関する契約書に漏れがないかを確認する
1. M&Aを実施する目的を明確にする
M&Aを成功させるには、実施する目的を明確にすることが必須です。売り手にとってのM&Aには、以下のようにさまざまな目的があります。
- 後継者不足の企業による事業継承
- 生き残りを賭けて大手の傘下に入る企業存続
- コア事業に集中するための事業譲渡
- 売却益によるオーナー利益の獲得
売り手の状況によって、M&Aを実施する目的は異なります。目的が明確になっていなければ、どのスキームでM&Aを実施するかを決めるのも困難です。
また、M&Aの達成自体が目的にならないよう注意してください。達成が目的になると、売り手に不利な条件でも契約を締結してしまう可能性があります。
M&Aの検討段階で実施する目的を明確にし、売り手にとって納得できる条件での達成が重要です。
2. M&Aのスキームは早い段階で決めておく
M&Aのスキームを早い段階で決めておくことも大切です。一般的に、中小企業のM&Aでは以下のスキームが採用されています。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- ヨコの会社分割(分割型分割)
- タテの会社分割(分社型分割)
M&Aを成功させるため、自社に適したスキームを選択しましょう。例えば、株式譲渡では負債も含めて譲渡するため、買い手は慎重になります。デューデリジェンスの結果によっては、希望よりも低い価格での契約となるでしょう。
また、スキームごとに手続きや税制が異なります。M&A完了後の負担を軽減するため、税制もしっかり把握しなければなりません。
買い手との交渉を進める上で、柔軟な対応は必要です。ただし、スキームが定まっていないと信頼関係に影響を及ぼすため、最初に固めた方針からできる限りずれないようにしましょう。
3. M&A仲介会社は慎重に選ぶ
M&A仲介会社に相談する際は、自社に合ったサービスを慎重に選んでください。
納得できる条件で会社を売却するには、専門家の存在が欠かせません。信頼できるM&A仲介会社に依頼すれば、中立の立場で買い手との交渉をサポートしてくれます。
取引先や交流関係にある経営者から、M&A仲介会社を紹介してもらえれば信頼できるでしょう。経営者が依頼する会社を自ら選ぶ場合は、以下のポイントを押さえましょう。
- 取り扱い業種・取引規模
- 過去の成約実績
- 法務や税務に関する専門家の在籍
- 担当者との相性
依頼する会社を選ぶ際は、まずは対応業種や過去の成約実績の確認をおすすめします。もちろん、担当者との相性をチェックしておくことも重要です。
さらに、M&Aには契約書の作成や税務処理も欠かせません。そのため、税務や法務に関する専門家が在籍しているかも確認しましょう。
4. 複数の買い手候補を比較して決める
M&A仲介会社に依頼すると、複数の買い手候補を紹介してもらえる場合があります。自社の価値を評価してくれる買い手と取引するために、複数の買い手候補を比較して決めてください。
複数の買い手候補から譲渡先を決める場合、入札方式を採用します。入札方式とは、1社の企業に対して複数の買い手が条件を提示し、その中から譲渡先を選定する方法です。入札方式では複数の買い手を比較するため、M&Aの達成までに時間がかかります。しかし、買い手同士で競争になるので、希望よりも低い価格で買い叩かれるリスクを軽減できるのが魅力です。
また、譲渡先を決める際は買い手の提示価格のみを基準にせず、事業の運営方針や良好な関係が築けるかなど、多角的に判断しましょう。
5. 従業員の雇用に関する条件を確認する
M&Aは従業員のキャリアを左右するので、譲渡後の雇用に関する条件の確認も徹底してください。株式譲渡や会社分割によるM&Aの場合、従業員の雇用は譲渡先にそのまま引き継がれます。基本的に雇用契約の内容も維持されるのが一般的です。
しかし、事業譲渡によるM&Aでは売り手側の従業員を雇用するか否かは、買い手の判断が左右します。従業員を引き続き雇用する場合は、譲渡先との再契約が必要です。もし再契約が決まっても従業員の待遇が今までよりも下がれば、離職につながる可能性があります。
そのため、どのスキームでM&Aを実施するにしても、売り手は買い手に対して従業員の雇用に関する交渉をしなければなりません。従業員の離職を防ぐため、雇用に関する条件も詰めておきましょう。
6. M&Aについて従業員からの理解を得る
M&Aが順調に進んでいても、従業員から反発が起こる可能性があります。M&Aを成功させるためには、従業員から理解を得ておきましょう。
従業員は経営者の決定に従う立場ではあるものの、M&Aによって自分のキャリアが変わることに対して、不安を感じる人は多いかもしれません。M&Aの目的や今後の待遇を丁寧に説明し、少しでも不安を取り除くことが大切です。
ただし、従業員にM&Aの実施を開示するタイミングには注意しましょう。具体的には、最終締結の直前または直後に開示するのがおすすめです。開示するタイミングが早すぎると、根拠のない噂として拡散される恐れがあります。
7. M&Aに関する契約書に漏れがないかを確認する
最終契約を締結する前に、M&Aに関する契約書に漏れがないか確認してください。特に、売り手は表明保証について注意すべきです。
表明保証には株式や事業を譲渡するに当たって、売り主が保証すべき事項が記されています。M&Aに表明保証は必須ではなく、特約のような役割です。表明保証に反する事実が発覚した場合、売り手に対して損害賠償が求められます。
表明保証の内容は、売り手と買い手がお互いの妥協点を見つけながら決定するのが一般的です。交渉を十分に重ねて、契約書に盛り込む条項を検討しなければなりません。
また、契約書の作成時は法務の専門家に依頼し、内容に抜けや漏れがないか徹底的に確認しましょう。
売り手側の注意点を押さえて納得できるM&Aにしよう
売り手としてM&Aを実施する際は、全体像や注意点を把握した上で十分な準備が必要です。M&Aが順調に進んでいた場合でも、小さなミスや不備で契約が白紙になる可能性もあります。
注意点を押さえてM&Aを成功させるには、専門家のサポートが欠かせません。しかし、M&A仲介会社に全てを任せると、売り手に不利な状況で契約が締結する場合があります。
また、納得できる条件でM&Aを実施するには、交渉の場で売り手が積極的に参加する姿勢も重要です。
注意点を押さえた上でサポート機関を活用し、スムーズにM&Aを進めましょう。