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SFA JOURNAL by ネクストSFA

コンピテンシー評価とは? 導入のステップやメリット、評価項目の具体例を解説

コンピテンシー評価とは? 導入のステップやメリット、評価項目の具体例を解説

【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬

企業の人事評価は、従業員の仕事への意欲や成長、会社の目標達成につながる重要な要素です。しかし、評価者の主観や年功序列の考え方が入ると公平な評価ができず、従業員のモチベーションを低下させる要因にもなりかねます。コンピテンシー評価は個人の行動特性に着目する評価方法のため、より具体的で公平な評価がしやすくなります。

本記事では、コンピテンシー評価の概要やメリット、デメリット、導入までの流れなどを具体的な例を基に解説していきます。

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コンピテンシー評価とは?

コンピテンシー評価とは、仕事で優れたパフォーマンスを発揮する人の行動特性を評価の基準とした企業の人事評価です。

従業員のスキルや知識を基準とするのではなく、どのような行動が仕事のパフォーマンスを上げているのか、実際にどのような成果を上げているかを分析した上で評価します。例えば、営業職で契約数や売上が高い従業員の行動特性は「顧客とのコミュニケーション能力が優れている」「顧客のニーズに合った提案ができている」などです。

社歴や職位で評価せず、個人の行動特性に目を向けることで、より公平な人事評価が可能となり改善点も見えやすくなります。コンピテンシー評価によって、個々の仕事のパフォーマンスが上がれば、会社全体の体制もより強化できるメリットがあります。

コンピテンシーの意味

コンピテンシーとは、仕事のパフォーマンスが優れた人に共通して見られる行動特性を指します。優れたパフォーマンスの例を、営業職、販売職、管理職に分けると以下のとおりです。

  • 営業職:契約件数が他の従業員よりも高く、営業成績が良い
  • 販売職:高い接客力で顧客のニーズに合った商品提案をしている
  • 管理職:マネジメント能力が優れており、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献している

コンピテンシー評価は、このような高いパフォーマンスが発揮されている理由を分析し、その結果に基づいて評価項目が設定されます。実際の従業員を分析する以外にも、企業理念から編み出した理想の人物像に基づいて評価項目が設定される場合があります。高いパフォーマーに共通する行動特性をお手本にし、その行動を他の従業員にも広げていくことで、組織全体のパフォーマンス向上させる評価方法です。

改善点を明確にしやすい一方で「なぜその行動を取ったのか」といった行動の動機や個人の性格などに焦点を当てるため、データとして可視化しにくい場合があります。

なお上記は一例のため、業界や職種によって高いパフォーマンスの考え方は変わります。

コンピテンシーと関連性がある用語

コンピテンシーと意味が似ており、人事評価で使われている以下の用語を解説します。

  • スキル
  • アビリティ
  • コア・コンピタンス
  • ケイパビリティ

1. スキル

スキルは、従業員が持っている専門的な技能や能力です。これまでの経験で身に付けた技能や能力の他、会社の研修や教育の過程で身に付いたものもスキルに当てはまります。例えば、語学力や営業力、デザインスキル、パソコンでの文書作成能力などです。

対してコンピテンシーは、スキルを発揮するための行動に焦点を当てています。従って、コンピテンシーはスキルを発揮するための行動パターンや特性を指していると考えましょう。

2. アビリティ

アビリティとは、先天的に持っている能力や才能を指します。技能や能力といった意味ではスキルと同様ですが、アビリティはスキルほど高度な技術や能力を必要としません。

具体的には、アビリティ(先天的に持っている力)が教育や経験によって磨かれ、スキルにつながるイメージです。

ただし、使うシーンや業界、分野によって考え方は変わる可能性があります。

3. コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは、企業や組織が独自に持っている技術や能力です。他社と差別化できる要素であり、市場での競争に勝つための強みでもあります。

コンピテンシーは一人だけに焦点を当てて能力を図るのに対し、コア・コンピタンスは個人ではない企業としての能力に焦点を当てた用語です。例えば、特定の分野に特化した技術力やブランド力などが該当します。

4. ケイパビリティ

ケイパビリティは、企業や組織の組織力を上げるための技術や能力です。コア・コンピタンスと異なる部分は、組織全体に焦点を当てているかどうかです。コア・コンピタンスは、他者と差別化するための独自の強みを表しますが、ケイパビリティは組織の力を上げるための全体的な能力を指します。例えば、デザイン力やスピード力、生産性などです。

コンピテンシー評価と能力評価・行動評価の違い

コンピテンシー評価の他にも、能力評価や行動評価などの評価方法があります。以下で違いを見ていきましょう。

能力評価との違い

コンピテンシー評価との能力評価の違いは、どこに焦点を当てているかにあります。

能力評価とは、従業員の専門的なスキルや知識、能力を総合的に評価する方法です。職務資格制度とも呼ばれており、主に「どのような職務ができるか」「どのような知識や能力を持っているか」に重点を置きます。長い目で教育していくときに有効な方法ですが、社歴が長い人は能力が高くなる傾向にあるため、公平性に欠けた評価になる可能性があります。

一方、コンピテンシー評価は、持っているスキルや知識をどのように使って成果を生み出しているのかに重点を当てる方法です。行動の動機や成果につながった行動を見るため、社歴や職位に左右されない平等な評価ができます。

また、コンピテンシー評価の方が評価基準も具体的です。以下は、コンピテンシー評価と能力評価の評価基準の例を比較した表です。

コンピテンシー評価能力評価
目標に対して粘り強く取り組む相手の話に耳を傾けられる相手と良好な人間関係を築ける計画的に物事に取り組める など行動力傾聴力協調性計画性 など

このように、より具体的な評価が可能となるため、従業員のフィードバックや人材育成がしやすくなります。

行動評価との違い

コンピテンシー評価と行動評価は、どちらも従業員の行動や行動同機を総合的に評価する方法のため、違いはありません。コンピテンシー評価は、別名で行動評価と呼ばれています。

しかし、成果を出す人材の特徴は業種や職種ごとに定義が変わるため、コンピテンシー評価は行動評価の一種でもあります。

コンピテンシー評価が重要視されている理由

コンピテンシー評価が重要視されている理由は、以下のとおりです。

  • 従来の評価方法では、評価者の主観が入りがちだから
  • 年功序列で実力が公平に評価されないから
  • 人件費がかかるから

1. 従来の評価方法では、評価者の主観が入りがちだから

従来の人事評価では、評価基準が曖昧なために評価者の主観が入ってしまう場合があります。

例えば、能力評価は業務遂行に必要な能力や知識、スキルを基に評価する方法です。しかし、傾聴力やコミュニケーション力、商品提案力など抽象的な評価基準となっており、客観的な評価が難しいデメリットがあります。

コンピテンシー評価なら傾聴力などの言葉で評価するのではなく、傾聴力のどこが具体的に優れているのかを分析できるため、主観の入らない客観的な評価が可能です。

2. 年功序列で実力が公平に評価されないから

年功序列から成果主義になった時代の背景も、コンピテンシー評価が重要視されている理由の一つです。

完全になくなったわけではありませんが、かつての日本企業では年齢や社歴に応じて職位や給与が上がる年功序列が採用されていました。そのため、入社して間もない新人や社歴が浅い従業員は、成果を上げても昇給や給与アップにつながりにくい問題がありました。

この状況が改善されない場合、若手社員の仕事への意欲が下がり、離職者が増える可能性があります。コンピテンシー評価は、成果を出すためのプロセスを客観的かつ公平に評価できる方法として重要視されています。

3. 人件費がかかるから

人件費の増加による経営の圧迫も、コンピテンシー評価が導入されるようになった理由の一つです。

年功序列で評価を行う場合、従業員の勤続年数が長いほど人件費が高くなります。そのため、ベテランの社員が多い企業だと人件費の高騰が経営資金に影響を与える可能性があります。

役職に付いていなくても、年齢に伴って給与をアップしなければならない背景から、成果主義で評価を行えるコンピテンシー評価の導入が進んでいきました。

コンピテンシー評価の導入がもたらすメリットとは?

コンピテンシー評価を導入すると、以下のようなメリットがあります。

  • 従業員を公平に評価できる
  • 人材育成の指標となる
  • 社内の体制強化につながる

従業員を公平に評価できる

コンピテンシー評価は、抽象的な表現ではなく明確な基準に基づいて評価が行われるため、従業員の公平な評価が可能です。仕事でどのような行動をして、どのような成果を出したのかを細かく可視化すれば、個人のパフォーマンスを見落とさずにしっかり評価できます。

また、公平な評価は従業員のやる気を引き出し、チーム力を高めるための基盤にもなるため、離職率の低下にもつながります。

人材育成の指標となる

コンピテンシー評価で算出されたデータは、人材育成の指標にもなります。

コンピテンシー評価は、社内の優秀な人材(ハイパフォーマー)を基に評価基準を定めているため、目標達成のために必要な行動が明確になるためです。

良いパフォーマンスにつながるアクションや現在の自分の立ち位置が見えてくると、従業員は成果を出すまでの道のりを把握しやすくなります。仕事上の目標も立てやすくなり、さらなる成長が見込める点もメリットです。

社内の体制強化につながる

コンピテンシー評価は、個人のパフォーマンスだけでなく会社全体の体制強化につながります。コンピテンシー評価で従業員の行動を確実に評価することで、従業員のモチベーションが上がり、業務の生産性やチームの活気がアップするためです。

また明確な基準に基づいて評価するため、従業員一人ひとりをどの部署に配置すれば体制強化につながるかが明確になります。適正に合った人事配置によって、従業員がそれぞれの場所で能力を発揮しやすくなったり、ストレスフリーで働けたりなどのメリットがあります。

コンピテンシー評価の導入に伴うデメリット

コンピテンシー評価は個人の行動を細かく分析して評価するため、社内体制が強化されたり、人材育成に役立ったりとメリットが多くあります。

一方でデメリットもあるため、自社での導入を決定する前にしっかりと確認しておくことが重要です。以下で解説していきます。

評価項目の選定や分析など、導入までに手間がかかる

コンピテンシー評価は、企業独自で評価項目を選定、分析しなければならないため、導入するまでに時間を要します。また、部署や職種ごとでも評価基準を変えなければなりません。

他にも社内からモデルとなる人材を選出し、分析やヒアリングをする工程も発生します。分析では、成果を出している人材の行動パターンやスキルを細かく調査し、評価基準に反映させることが重要です。しかし、正確に調査するのが予想以上に大変な場合があるため、思いどおりに進まないケースも考えられます。

そのため、導入にかけるリソースを確保した上で準備を進めていく必要があります。

評価項目の定期的な見直しが必要となる

コンピテンシー評価の評価基準は、徹底した分析を基に設定されますが、一度決めた基準が今後も効果的とは限りません。市場環境や企業の戦略、組織体制の変化などに応じて、求められるスキルや行動も進化していくため、評価項目の定期的な見直しが必要です。

継続的な見直しの時間が取れない企業は、コンピテンシー評価ではない別の人事評価を検討しましょう。

コンピテンシー評価はどこで活用する?

コンピテンシー評価は、主に以下の場面で活用されています。

  • 従業員の人事評価
  • 採用活動の選考
  • 業務上の目標設定
  • 会社の管理体制の強化

1. 従業員の人事評価

主に活用される場面は、従業員の人事評価です。

コンピテンシー評価では、従業員の行動特性を企業独自で定めた基準に基づいて、公平に評価します。また、基準はハイパフォーマーの行動特性を反映させているため、徐々に模範となる従業員が増えれば、会社の生産性がアップする利点もあります。

2. 採用活動の選考

コンピテンシー評価は、採用活動の選考で活用できます。

応募者の行動特性と面接での質問の回答を照らし合わせて評価することで、求める人物像にふさわしいかどうかを見極めやすくなるためです。

またコンピテンシー評価を活用すれば、面接官ごとに異なる採用基準や視点を統一でき、公平な選考が期待できます。

3. 業務上の目標設定

コンピテンシー評価は、従業員一人ひとりの目標設定にも活用されています。

成果を出すために必要なスキルや能力をコンピテンシー評価で整理することで、より具体的で達成可能な目標設定が可能です。さらに、定期的な評価の実施で各自の業務での取り組みを随時振り返えられます。

4. 社内の管理体制の強化

人材育成や採用活動だけでなく、社内の管理体制の強化にも活用可能です。

コンピテンシー評価の導入で、仕事で成果を上げるためにはどうすればよいのかが明確になります。また評価基準が全従業員に共有されることで、目標達成までに足りていない部分を把握しやすくなります。

従業員の強みや弱みを理解すれば、適材適所の人材配置が考えやすくなり、管理体制も強化につながるでしょう。

コンピテンシー評価における評価項目の具体例

コンピテンシー評価における評価項目の例は、以下のとおりです。

  • 達成・アクション
  • 援助・対人支援
  • インパクト・対人影響力
  • 管理領域
  • 知識領域
  • 個人の効果性

上記の7つの項目は、コンピテンシー・ディクショナリーとも呼ばれています。コンピテンシー・ディクショナリーは、研究者のライル・M・スペンサーとシグネ・M・スペンサーによって提唱されました。

以下は、コンピテンシー・ディクショナリーのコンピテンシーごとに概要や評価項目例をまとめた表です。

評価項目を決める際の参考としてご活用ください。

コンピテンシーの領域評価項目評価基準の例
達成・アクション・達成志向・秩序・品質・正確性への関心・イニシアチブ(自主的に行動を起こす力)・情報収集・成果をどれほど出しているか
・自分から行動を起こしているか
・目標達成のための情報収集をしているか
援助・対人支援・対人理解・顧客支援志向・相手の気持ちを考えながら行動できているか
・顧客のニーズに答えられているか
・自分の感情に流されずに冷静に行動できているか
インパクト・対人影響力・インパクト・影響力・組織感覚・関係構築・他の従業員にどれほど良い影響を与えているか
・会議などの話し合いで、自ら意見を提案できているか
・相手の話にどれだけ耳を傾けているか(傾聴力)
管理領域・他者育成・指導・チームワークと協力・チームリーダーシップ・適切な部下育成と効果的な指導ができているか
・チームをリードできているか
・他者と協力してチームの成果を上げているか
・積極的にメンバーと関われているか
知的領域・分析的思考・概念的思考・技術的・専門職的・管理的専門性・状況を分析して的確な判断ができるか
・相手の言動に関心を持ち、改善に向けて行動しているか
・専門的な知識を生かして成果を出しているか
個人の効果性・自己管理・自信・柔軟性・組織コミットメント・与えられた仕事を管理できているか
・組織の目標達成に貢献しているか
・負荷がかかっても成果を上げているか

必ずしも6つの項目を設定するとは限らず、企業理念や考え方によって項目は異なります。

コンピテンシー評価における5段階評価

コンピテンシー評価では、一つの評価項目を以下の5段階に分けて評価します。

  • レベル1:受動行動
  • レベル2:通常行動
  • レベル3:能動・主体行動
  • レベル4:創造・主体行動
  • レベル5:パラダイム転換行動

レベル5になるほど、優れたパフォーマンスを見せる人材と評価されます。以下に、各レベルがどのような状態なのかをまとめました。

レベルの段階行動状態
レベル1受動行動・指示がないと行動しない
・指示内容のみを実行する受け身の状態
レベル2通常行動・与えられた仕事は、指示がなくても遂行できる
・与えられた仕事以外は、自主的には行わない場合がある
レベル3能動・主体行動・与えられた仕事はもちろん、それ以外の仕事も自ら率先して動く
・自ら情報を収集し、目標達成のために動く
レベル4創造・主体行動・自主的に目標設定をし、必要な行動は何か考え実行する
・改善案や新しいアプローチを提案し、業務の効率や質を高める行動を取る
レベル5パラダイム転換行動・問題を解決するための改善策を考えて実行し、他者に影響を与える
・従来の枠組みを超えて、組織体制強化のためのアイデアを提案できる

レベル1は、具体的な指示がなければ動かないなどの完全に受け身の状態です。

レベル2は「与えられた業務はミスなくやろう」といった気持ちはありますが、自主性が足りていない状態を指します。

レベル3になると自主性が増し、目標達成のための情報収集を積極的に行うなどの努力が見られます。

レベル4は、主体的な行動に加えてチームを良くするための提案を行う状態です。

レベル5は、チームに革新的な改革をもたらすほどの主体的な行動を見せ、実際に成果を出す人材に当てはまるレベルです。

【職種別】コンピテンシー評価の具体例

それでは、コンピテンシー評価の具体例を見てみましょう。ここでは、前述で解説した5段階評価を管理職と営業職に分けて解説していきます。

なお、企業によって評価の仕方は変わるため、一例としてご参考ください。

管理職向けのコンピテンシー評価のレベル例

管理職は、チーム全体をまとめ各メンバーを良い方向へ導く役割を担っています。特に求められる能力は、リーダーシップや戦略的思考です。

例えば、2つの能力を5段階に分けると以下のようになります。

【1.リーダーシップ:チームメンバーをまとめ、目標を達成する力】

  • レベル1:チームの基本的な運営や業務管理ができる
  • レベル2:メンバーの強みを生かして成果を出せる
  • レベル3:チームに明確なビジョンを提示し、メンバーを目標達成へと導ける
  • レベル4:他部署と連携しながら、リーダーシップを発揮して業務を遂行できる
  • レベル5:企業のビジョンを打ち立て、そのビジョンを実現するための戦略的なリーダーシップを発揮できる

【2.戦略的思考:企業理念やミッションに沿った提案や改革をする力】

  • レベル1:チームや部署内の短期的な計画を立て、実行に移せる
  • レベル2:部門の中長期的な計画を策定し、チームに共有かつ実行させられる
  • レベル3:他部署と協力して組織全体に関わる戦略を策定し、実行できる
  • レベル4:組織のビジネス戦略や市場での立ち位置を分析し、戦略的な方向性を提案できる
  • レベル5:長期的な目標を設定し、実現に向けて改革を行える。改革を通して、社内体制や文化を構築できる

営業職向けのコンピテンシー評価のレベル例

営業職は顧客のニーズに沿った提案を行う仕事のため、顧客理解力や交渉力が求められます。

5段階に分けると、以下のようになります。

【1.顧客理解力:顧客の要望を理解し、ニーズに合った提案を行う力】

  • レベル1:顧客のニーズを理解できる
  • レベル2:顧客の市場動向や競合を理解し、ニーズに合った提案ができる
  • レベル3:顧客の将来的なビジネス戦略を理解し、それに合った知識や技術を提供できる
  • レベル4:顧客の奥底にあるニーズを先回りして提案できる
  • レベル5:顧客と強固なビジネスパートナーシップを築き、深い信頼関係を持てる

【2.交渉力:双方にとって納得いく取引ができるように交渉する力】

  • レベル1:顧客と良好な信頼関係の基、基本的な交渉を行える
  • レベル2:取引の関係者との交渉を進め、各方面の問題を解決できる
  • レベル3:複雑な交渉でも、顧客と良好な信頼関係を築ける
  • レベル4:複数の企業や関係者との交渉を積極的に行い、大規模な契約を締結する
  • レベル5:交渉で業界標準を生み出し、市場に良い影響を与える

このように項目ごとに5段階に分けることで、目標達成までの道のりがより具現化されます。

コンピテンシー評価シートに記載する項目

コンピテンシー評価シートは、人事評価や採用活動で使用されるもので、企業が独自に設定した評価項目や達成基準などをまとめたシートです。決められたフォーマットはなく、基本的には企業がオリジナルで作成します。

コンピテンシー評価シートには、主に以下の3つを記載します。

記入するもの内容
評価項目評価の対象となる能力やスキルの項目具体的な職務に関連する能力を明記する
評価軸評価項目を評価するための軸や視点各職種に合った行動指針などを明記する
尺度評価を行うためのレベルレベル1~5、A~Eなど、評価を数値化したもの主に共通基準と個別基準がある・共通基準:全従業員に共通する尺度・個別基準:部門や職種、役割に応じた特定の尺度

このように、コンピテンシー・ディクショナリーを参考にしながら評価項目を決め、評価軸や尺度を具体的に落とし込んでいきます。

尺度には、全従業員に共通している共通基準と、部署や職種ごとで独自で定めた個別基準があります。

コンピテンシー評価を導入するときの7ステップ

コンピテンシー評価を導入するときのステップを、以下の7つに分けて解説していきます。

  1. コンピテンシー評価導入のためのチームを発足する
  2. ハイパフォーマーの選定や分析、ヒアリングを行う
  3. コンピテンシー項目を選定する
  4. 企業理念や経営方針との整合性を確認する
  5. コンピテンシー項目の最終選定とレベル分けを行う
  6. コンピテンシー評価シートを作成し、導入する
  7. 定期的に見直しを行う

1. コンピテンシー評価導入のためのチームを発足する

まずは、コンピテンシー評価を導入するためのチームを社内で発足しましょう。

コンピテンシー評価を成功させるには、ハイパフォーマーの選定や分析、評価項目の設定、企業理念との整合性の確認など多くの工程を踏まなければならないためです。

チームを発足せずに人事担当者のみで導入準備を進めてしまうと、負担が増え通常業務に支障をきたす可能性があります。専属チームを作り、負担を軽減しながら効果的に準備を進めていきましょう。

人事評価は従業員のモチベーションや給与に直結する要素のため、人事部のメンバーだけでなく、経営陣や各部署のリーダーもチームに入れた方がよいです。

2. ハイパフォーマーの選定や分析、ヒアリングを行う

チームを発足したら、社内で優れたパフォーマンスを発揮しているハイパフォーマーを選定し、分析やヒアリングを行いましょう。ハイパフォーマーが成果を出すまでの行動や目標を達成したときのエピソードを掘り下げて聞くことで、成功の要因を明確化できるためです。

選定するときは、以下の3つのポイントを意識しましょう。

  • 価値観:仕事を遂行する上で大切している思いや信念
  • スキル・経験・経歴:これまでの業務で身に付けた知識や経験
  • 行動特性:目標達成に向けて、どのような行動を取ったのか

ハイパフォーマーの分析では、何を達成したかではなく、どのような過程を得て達成したのかに焦点を当てることが重要です。

例えば、仕事で困難な状況に陥った際にどのように問題解決を行ったか、どのような思いで仕事に取り組んでいたのかなど具体的な話を聞き出しましょう。また、なぜそのような行動をしたのかの行動の動機も合わせてヒアリングするとよいです。

ハイパフォーマーの選定や分析はコンピテンシー評価の基礎となるため、時間を掛けて丁寧に行いましょう。

社内に理想とするハイパフォーマーがいないときはどうする?

企業によっては、従業員が目標にまだ達していないためにハイパフォーマーが選定できない場合があります。

選定が難しいときは、企業の理念やビジョンを基に理想の人物像を架空で設定しましょう。この方法は理想型と呼ばれており、社内にモデルとなるハイパフォーマーがいないときに有効です。

ただし、理想を追い求めすぎると自社のレベルに合わない評価項目を設定してしまうリスクがあります。従業員が実現できそうな範囲内で理想像を設定しましょう。

3. コンピテンシー項目を選定する

ハイパフォーマーの分析を基に、実際の評価で使うコンピテンシー項目を選定しましょう。

「コンピテンシー評価における5段階評価」で紹介したコンピテンシー・ディクショナリーを参考にしながら決めても構いません。

ただし、企業の目標や価値観は企業ごとに異なるため、コンピテンシー・ディクショナリーはあくまで一例です。自社の求める人物像や達成したい目標に合わせて、最適な項目を選定しましょう。

項目を選定するときは、達成力や傾聴力などの抽象的な表現ではなく、具体的な行動やスキルを示す表現で定義しましょう。達成力といっても、何を達成するかによって評価基準は変わります。なるべく具体的な表現に落とし込みましょう。

4. 企業理念や経営方針との整合性を確認する

選定したコンピテンシー項目が、企業理念や経営方針の価値観と合致しているか確認しましょう。

自社の価値観と項目が合致していないと、評価基準が企業の目標や戦略にそぐわないため、実際の業務や成長に役立たない可能性があります。当てはまらない項目は除外し、再度目標に合った項目を設定していきましょう。

5. コンピテンシー項目の最終選定とレベル分けを行う

企業理念との整合性が取れたら、コンピテンシー項目の最終選定を行いましょう。

最終選定が適切かどうかを判断するための基準は、以下の2つです。

  • 目標達成につながる項目かどうか
  • 継続的な人材育成が期待できるか

継続的な人材育成とは、設定した項目が従業員の能力を長期的に育成できるかどうかを指します。

最終選定が完了したら、各項目を前述したように5つにレベル分けしましょう。レベル分けでは、各レベルに到達するために必要な達成基準を明確に設定することが重要です。基準を具体化すれば、評価側も評価しやすくなります。

6. コンピテンシー評価シートを作成し、導入する

コンピテンシー項目が決定したら、コンピテンシー項目や評価軸、尺度が記載されたコンピテンシー評価シートを作成します。

評価シートの作成後は、従業員に評価方法の概要やコンピテンシー項目の選定理由、導入の目的、導入によって達成したい企業目標などを説明しましょう。従業員が評価の仕組みや重要性を正しく理解できるようにするためです。

説明後は、実際に人事評価や採用活動、目標設定などのシーンで導入します。導入の効果を検証するためにも、2カ月程度のテスト期間を設けるのがおすすめです。期間中は設定したコンピテンシー評価が適切かどうか、高すぎる能力を理想としていないかなどをチェックしていきます。

7. 定期的に見直しを行う

コンピテンシー評価は、一度導入したら終わりではありません。人事評価を効果的に行うには、定期的な見直しが重要です。

テスト導入後は、まず従業員一人ひとりの評価結果を確認し、売上や成果との連動性を見ていきましょう。売上や成果に変化が見られない場合、必要に応じてコンピテンシー項目を見直す必要があります。

改善点があれば個別でフィードバックを行い、今後の行動目標を設定していきます。

達成できている項目に対しては、さらにステップアップした目標を設定していきましょう。

コンピテンシー評価の基準や項目は、企業の戦略や方向性によって変わります。定期的な見直しによって長期的かつ効果的な人事評価が維持できるため、丁寧に進めていきましょう。

コンピテンシー評価の導入を失敗させないためのポイント

コンピテンシー評価の導入には手間やコストがかかるため、必ずしも成功するわけではありません。導入失敗を避けるためのポイントを理解しておき、効率的に準備を進めることが重要です。

それでは、以下でポイントを見ていきましょう。

目的を見失わないようにする

コンピテンシー評価の導入目的を見失わないようにしましょう。

コンピテンシー評価は、従業員の成長と組織の発展のためのツールです。単に導入するだけでは、具体的な成果が得られません。

導入によって従業員のモチベーションが上がった、企業の売上が上がった、ミスマッチ採用が軽減したなどの具体的な成果が見えてこそ、コンピテンシー評価の効果を実感できます。常に目的を意識し、実際の成果への現れを基に調整と見直しを行いましょう。

全てのコンピテンシーを満たす人はいない

設定したコンピテンシーを全て満たす人材は、どの業界でもほとんど存在しません。

一つの目標を達成したら、そこからさらにステップアップした目標を設定する必要がありますが、常に高い目標を従業員に要求するとモチベーションが下がる可能性があります。

コンピテンシー評価はあくまで目安と考え、従業員一人ひとりの強みや弱みを理解し、良き人材育成につなげるものだと考えましょう。

コンピテンシー評価で従業員を正しく公平に評価しよう

コンピテンシー評価は、従来の評価方法で不明瞭になりがちだった能力や行動特性を具体的に明確化できるため、公平かつ効率的な評価や育成が期待できます。

準備や見直しに時間を要すなどのデメリットもありますが、導入すれば従業員の成長や組織全体のパフォーマンスの向上にもつながります。ぜひ今回解説した概要を基に、導入準備を進めてみてください。

社員の行動特性やスキルを理解できておらず、適切な人材配置ができていない場合は、人事評価システムを使って数値化するのがおすすめです。

以下の記事では、コンピテンシー評価を効率的に実施できる「人事評価システム」を導入しています。ぜひご参考ください。

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