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SFA JOURNAL by ネクストSFA

更新日:2024/10/02 

自働債権と受働債権とは? 相殺などについて詳しく解説

自働債権と受働債権とは? 相殺などについて詳しく解説

【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬

相殺を実行するにはいくつか満たさなければならない条件が定めらています。言葉が難しく分かりにくいですが、自働債権は相殺しようとする側が持つ債権、受働債権は相殺される側が持つ債権という意味です。本記事では相殺に関する言葉の意味や要件を解説します。

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相殺とは意思表示により債権を消滅させること

相殺は債権を回収する手段の一つです。債権者が自分の債権と同じ種類の債務を債務者に持つ場合、双方の債務を同額で打消し合い、損得が出ないよう債権を消滅できます。

例えば、AがBから50万円の商品を購入し、期日までに支払いができない場合、通常であれば支払督促や差押えなどの手段を取ります。しかし、このときに、BもAに対して50万円の賃金債権があれば、相殺が可能です。本来であれば、BはAに商品代金50万円を支払い、AはBに50万円を支払わなくてはいけませんが、50万円が行き来するだけで労力の無駄です。相殺を利用することで、金銭を動かさずBはAに、AはBに返済したことになり、両債券は消滅します。

自働債権は相殺する側の債権

相殺は、債権者AとBどちらかの意思表示により効力が生じます。自働債権は、相殺の意思を伝えた側の債権のことです。

例えば、BがAから50万円の商品を購入し、AはBに50万円借金があるとします。Aが相殺の意思を伝えた場合、Aの借金50万円が自働債権となります。

受働債権は相殺される側の債権

受働債権は相殺される側の債権のことです。

例えば、BがAから50万円の商品を購入し、AはBに50万円借金があるとします。Aが相殺の意思を伝えた場合、Bの商品購入代金50万円が受働債権となります。

相殺の処理方法

相殺は、互いに同じ種類の債権がある相手に相殺したい意思を伝えるだけで実行できます。意思を伝える手段は口頭でも有効なため、書面を残す義務はありません。しかし、相殺は実際に金銭が動いていないので証拠がなければ、取引が不透明になり、後でトラブルが起きた場合に相殺で債権が消滅したことの証明ができません。トラブルを防ぐためにも、何らかの形で証拠を残す必要があります。相殺の処理方法を2つ解説します。

相殺領収書

相殺処理の領収書には次の内容を記載します。

  • 領収書を発行した日付
  • 当事者名
  • 金額
  • 相殺したこと
  • 債権の内容

相殺は金銭が動かないので収入印紙は不要ですが、一部相殺で金銭の授受があった場合は、金額により収入印紙が必要となることがあります。

内容証明郵便

内容証明郵便は、差出人・宛先・内容・差し出し日を証明する郵便です。文書に記載する内容は、相殺領収書と同じです。送付するときには、配達証明を付けると相手に郵便物を配達した事実の証明に使えます。

相殺処理をするメリット

民法では、当事者が互いに同じ種類の債権を持つ場合、どちらかに相殺の意思があれば相殺の実行が認められています。ここでは、相殺処理のメリットを紹介します。

決済を省略できる

本来、債務や債権は金銭の受払いで決済します。しかし、当事者が双方に同じ種類の債権がある場合、相殺により2つの決済を省略できるため、金銭の移動を管理するよりも簡単です。

キャッシュフローの安定化

掛取引で売掛金の回収ができず未回収が重なるとキャッシュフローが悪くなり、経営状況が不安定になる恐れがあります。売掛金の回収ができない場合でも相殺処理をすれば、金銭の授受はなくても結果的に売掛金を回収したのと同じ効果があり、現金の持ち出しや未回収のリスクを軽減し損失を抑えられます。

相殺は法定相殺と約定相殺の2種類ある

相殺を実行する方法は、法定相殺と約定相殺があります。それぞれの違いを解説します。

法定相殺

法定相殺は、当事者のどちらかに相殺の意思があり、相手に意思を伝えて実行する相方法です。法定相殺を実行するには相殺適状、相殺禁止事由、相殺の意思表示などの条件を満たさなくてはいけません。

約定相殺

約定相殺は、当事者双方の合意により実行する方法です。相殺適状や相殺が禁じられているものであっても、双方が納得して実行するため相殺が可能です。

相殺適状は相殺するために必要な要件を満たした状態のこと

相殺は、相手に相殺したい意思を伝えるだけで実行可能です。しかし、どちらかの意志で実行される法定相殺は公平性を保つために満たさなければいけない条件があり、条件を満たした状況のことを相殺適状と言います。相殺敵状に必要な要件を3つ解説します。

当事者双方に債権があること

相殺は、当事者双方に債権を有していることが必須です。どちらかにしか債権がない場合や第三者の債権は対象になりません。しかし、連帯債務者や保証人の債権は、認められています。また、相殺の意思を伝えたときに債権を有していることが重要です。ただし、時効に関しても例外があります。自働債権が時効により消滅していた場合、時効が来る前に相殺適状であったのなら相殺が認められます。

両債権が同じ種類であること

相殺する両債権は、同じ種類でなければいけません。相殺は金銭債権同士や引渡債権同士であれば可能です。しかし、金銭債権と引渡債権では種類が異なるため、相殺できません。同じ種類であれば発生原因や時期は異なっても問題ありません。金銭債権であれば売掛金と貸付金、売掛金と賃金という組み合わせでも相殺できます。

また、金銭債権には売掛金・買掛金・賃金・賃料など、引渡債権には土地・家屋・自動車・貴金属などがあります。

双方の債権の弁済期が過ぎていること

相殺を実行するには、双方の債権の弁済期を過ぎている必要があります。一方は弁済期が来ていても、もう一方の弁済期が来ていない場合、相手の期限の利益を奪うことになるためです。例外として、自働債権は弁済期が過ぎていて、受働債権は弁済期前の場合、債務者が持つ期限の利益を放棄すれば、相殺の実行は問題ないとされています。

例えば、AはBに50万円の売掛金債権(弁済期4月30日)、BはAに50万円の賃金債権(弁済期6月30日)があったとします。5月30日の段階では、Aの弁済期が過ぎていますが、Bの弁済期は来ていません。そのため、Aに相殺の意思を伝え、Bが期限の利益を放棄すれば相殺の実行が可能です。

相殺を禁止している債権がある

相殺適状を満たしているケースでも相殺を禁止している債権は相殺できません。

  • 相殺を禁止する条件を付けた契約をした債権
  • 不法行為による損害賠償債権
  • 生命や身体への侵害による損害賠償債務
  • 抗弁権が付着している
  • 差押禁止債権
  • 差押え・仮差押えを受けた債権

それぞれの項目を詳しく説明します。

相殺禁止の条件を付けた契約をした債権

相殺は当事者の意思が尊重されるので、契約時に条件として相殺を禁止したり、相殺に制限をかけたりすることができます。しかし、相殺について条件を知らない第三者が債権を買い取り、相殺の意思を伝えられた場合は、相殺が認められることがあります。

不法行為により生じた損害賠償債権

債務者に不法行為による損害を与えた場合、相手に損害賠償権が発生しますが、損害賠償債権での相殺は禁止されています。金銭が回収できない報復として意図的に損害を与える事態を防ぐためです。しかし、例外として損害を与えられた側が、自働債権として損害賠償債権での相殺の意思を示すことは可能です。

生命や身体の侵害による損害賠償債務

生命や身体の侵害による損害賠賠償債務は、不法行為・債務不履行・過失など損害賠償権の種類を問わず受働債権となる相殺は禁止されています。相殺を認めれば、医療費や生活費の支払いに困窮する恐れがあるためです。

抗弁権が付着している

抗弁権とは相手の請求権の行使を拒否できる権利のことです。自働債権に抗弁権が付着しているケースでは、相殺を認めると相手の抗弁権を奪うことになるためです。例外として、受動債権に抗弁権が付着している場合は、債務者が抗弁権を放棄すれば相殺が可能となります。

差押禁止債権

法律で差押えが禁止されている債権は相殺できません。

  • 給料、賃金、退職金の全額
  • 生活保護費
  • 年金
  • 扶養請求権など

相殺により消滅することで、債務者の生活が成り立たなくなる可能性があるため、差押え禁止債権を受働債権とする相殺は禁止されています。

差押え・仮差押えを受けた債権

差押えや仮差押えを受けている債権を受働債権として相殺することは禁止されています。

相殺と差押えの優先関係は債権を取得した時期が重要

債権の回収方法には相殺の他に差押えという方法があります。相殺と差押えのどちらが優先されるかは、債権を得た時期により変わります。

差押え後に反対債権を得た場合

差押え後に反対債権を得た場合について、次の例で考えてみましょう。

AがBにお金を借りました。Aはお金を貸した後でお金が足りなくなり、Cからお金を借ります。AはCへの弁済期が来ても返済できなかったため、CはAの持つBに対する賃金債権を差押えました。その後、AはBからもお金を借り、反対債権を得たとします。

この場合、反対債権を得た時期はCがAに対する賃金債権を取得した後です。Cは差押えをしたにもかかわらず、AとBで相殺されては先に実行した差押えの意味がなくなります。そのため、差押え後に反対債権を得た場合は相殺が認められません。

差押え前に反対債権を得た場合

差押え前に反対債権を得た場合の例は次のとおりです。

AがBにお金を借りました。Bはお金を貸した後でお金が足りなくなり、Aからお金を借りて反対債権を得ます。しかし、さらにお金が必要になったため、AはCからもお金を借りました。AはCの弁済期が来ても返済できなかったため、Aの持つBの賃金債権を差押えたとします。

この場合、反対債権を得た時期がCがAに対する賃金債権を得る前のため、差押え前にAの賃金債権が相殺適状にあれば相殺が可能です。

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相殺は有効な債権回収手段

相殺は債権を回収する手段として利用価値の高い制度です。相殺が利用できるかどうかは、状況により異なります。相殺の要件を理解し、活用する場面が来たときには臨機応変に対応しましょう。

以下の記事では、相殺処理にも役立つ請求管理ツールを紹介しています。ぜひご参考ください。

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