掛売りの意味とは? 流れや事例・メリットとデメリットを詳しく解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
掛売りは、売買契約で発生した商品やサービスの代金を後払いする取引方法です。掛売りを導入することで、商品やサービスを納品する度に代金を請求して受け取る手間を省けます。
本記事では、掛売りの導入を検討している方に向けて、掛売りの意味やメリット・デメリット、掛売りを活用した取引の流れと事例などを詳しく解説します。掛売りのデメリットを解決する具体的な対策も解説しているため、参考にしてください。
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掛売りとは
掛売りとは、売買契約で発生した代金をその都度支払うのではなく、指定した期日に一括で支払う取引方法のことです。本章では、掛売りの意味と売掛との違い、掛売りを導入する前に知っておきたい用語を解説します。
掛売りの意味
掛売りは企業間で行われる売買契約の際に用いられる取引方法です。売り手と買い手の双方の信用を基に商品やサービスの代金を後払いにする取引方法であることから、信用取引とも呼ばれています。掛売りにすることで後日まとめて請求して代金を合計した金額を受け取れるため、商品やサービスの納品がある度に請求や回収業務をする必要がありません。
買い手は高額な取引でも期日までに代金を支払えばよいため、計画的な資金繰りが可能です。一方の売り手は自社製品を多く購入してもらえるメリットがあります。このように、掛売りは売り手と買い手の双方にメリットがあるため、企業間取引で一般的に行われています。
売掛との違い
掛売りの意味と混同して使用されやすい言葉に売掛という言葉があります。売掛とは、売買契約で発生した代金が未回収の状態のことです。取引対象の商品やサービスは売り手から買い手に納品され、代金は支払期日を迎えるまでの期間は未払いの状態にあります。
一方の掛売りとは、取引対象の商品やサービスの代金を後日改めて一括で受け取る仕組みのことです。売掛は代金が未払いの状態を指す言葉であるのに対して、掛売りは代金を後払いにする仕組みを意味する言葉であることから、双方には大きな違いがあるといえます。取引の際に掛売りと売掛の言葉を正しく用いるには、それぞれの違いを理解した上で使い分けることが大切です。
掛売りで知っておきたい用語
掛売りの関連用語には、売掛債権・買掛金・売掛金の3つの言葉があります。売掛債権とは、売り手が買い手に代金の支払いを請求できる権利のことです。売り手は売掛債権を自社の資産として扱うことができます。
買掛金とは、商品やサービスを購入した対価に支払う代金のことです。買い手が掛売りによる取引で商品やサービスを購入した場合の代金は帳簿上で買掛金として処理をします。売掛金とは、商品やサービスを販売した対価に支払われる代金のことです。
掛売りの流れと事例
掛売りによる代金の支払い方法は、大きく分けて請求書払いとクレジットカード払いの2通りの方法があります。自社にとってどちらの方法が適しているのかを知るためにも、それぞれの流れを押さえておきましょう。本章では、掛売りの流れと事例を解説します。
請求書払い
請求書払いとは、請求書の内容を基に代金を回収する方法のことです。請求書払いは以下の流れで行われることが一般的です。
- 売り手が買い手に商品やサービスを販売し、納品する
- 売り手は1カ月分の取引金額を基に請求書を発行する
- 買い手は請求書の内容と実際の取引内容と照合し、問題がない場合は支払期日までに代金を支払う
以下の2024年8月の取引を例に、請求書払いの流れを確認しておきましょう。
- 5日 商品C(15万円)
- 12日 商品D(40万円)
- 20日 商品E(5万円)
請求書の対象期間は8月1日〜8月31日の1カ月間、支払期日は9月30日で、8月の取引金額は合計60万円です。商品の代金は5日・12日・20日に回収せずに31日付けで取引金額をまとめ、請求書を発行します。請求書を受け取った企業は、9月30日までに合計60万円の代金を支払う必要があります。
クレジットカード払い
クレジットカード払いとは、クレジットカード決済を導入する事業者が、クレジットカード会社を通じて購入者から代金を回収する方法です。一般的なクレジットカード払いの流れは以下のとおりです。
- クレジットカード決済によって商品やサービスが購入される
- 事業者は購入者の取引情報をクレジットカード会社へ送信する
- 事業者は代金から手数料が差し引かれた金額をクレジットカード会社から受け取る
- クレジットカード会社が指定する引落日になると、購入者の銀行口座からクレジットカード会社へ代金が入金される
例えば、2024年8月の取引内容が10日 商品H(3万円)、17日 商品J(5万円)だった場合を例に一般的な流れを解説します。クレジットカード会社の締め日は毎月15日、引落日は翌月10日で、8月の取引金額は合計8万円です。商品の代金は購入者から直接支払われるのではなく、クレジットカード会社から手数料を差し引かれた金額が後日支払われます。
企業が掛売りを導入するメリット
企業が掛売りを導入した場合、業務効率化や売上アップなどのメリットが得られます。本章では、企業が自社の取引で掛売りを導入する場合に得られる主なメリットを3つ解説します。
業務を効率化できる
掛売りは、一定期間に同一の取引先との間で発生した代金を後日まとめて回収できるため、入金管理業務の効率化を図れます。同一の取引先と頻繁な取引がある場合、取引が発生する度に請求書を作成して発行し、代金を回収する必要があります。多くの取引先と多数の取引を行う会社になると、請求業務や入金管理はより煩雑化し、業務を担当する社員の負担はますます増えるでしょう。
掛売りを導入すれば、1カ月間に発生した取引で請求する回数も代金を受け取る回数も1度で済みます。請求業務では、月末に1カ月分の取引金額の合計額を1枚の請求書にまとめて発行します。入金管理では今月末が支払期日になっている請求書を基に代金を回収すれば完了です。このように企業が掛売りを導入することで、代金の請求や回収に関連する業務の手間を大幅に減らすことが可能です。
購入してもらう総額が増える
掛売りは取引先が多額の取引をしやすくなるため、自社の売上総額の増加につながります。掛売りを導入しない場合、取引先は商品の仕入れが必要でもまとまった資金がないと購入数を減らす、安い商品を選択するケースも少なくありません。結果的に、取引の機会損失が生じて売り手の企業は売り上げや利益を向上させることは難しくなるでしょう。
一方で、掛売りを導入すれば取引先は手元に多額の資金がない場合でも高額の取引を行いやすくなり、自社製品を多く購入してもらいやすくなります。売り手の企業は代金を回収するまでの期間は長くなるものの、売り上げや利益が増える可能性があります。掛売りは売り手と買い手の双方にメリットがあり、取引の機会損失を防ぐ有効な手段です。
取引先の幅を広げられる
企業間取引では掛売りを使用した取引が一般的なため、企業が掛売りを導入することで掛売りの取引を希望する取引先を獲得できる可能性が高まります。取引方法は掛売りによる取引や現金取引などがあり、対応できる取引方法が多いほど取引先の幅を広げることが可能です。
実際に、締め日や支払期日などの請求時のフローを定めている企業が増えており、掛売りを使用した取引を主とする企業も少なくありません。そのため、現金取引のみに対応する企業よりも、掛売りによる取引に対応している企業の方が取引先を獲得しやすい傾向があります。また、自社の取引に掛売りを導入すれば、複数の取引先と取引をすることになっても請求時のフローに合わせてスムーズな取引を行えるようになります。
企業が掛売りを導入するデメリット
企業が掛売りを導入するとさまざまなメリットが得られるものの、与信管理の必要性が出たり代金を回収できなくなったりするなどのデメリットも生じます。本章では、掛売りを導入する場合のデメリットを押さえておきましょう。
与信管理が必要になる
与信管理とは、信用取引が可能な企業であるかを調べるための審査のことです。掛売りは売り手と買い手の信用を基に取引を行うため、売り手は取引先が支払期日までに代金を支払ってくれるのかを事前に確認しておく必要があります。与信管理が必要な理由は、取引先の支払い能力を審査せずに掛売りを使用して取引をすれば最悪の場合、代金を回収できなくなる恐れがあるためです。与信管理を行い、取引先に支払い能力があると結論を出せれば安心して取引を行えます。与信管理の一般的なフローは以下のとおりです。
- 与信管理の基準を設定する
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- 営業担当者と情報を共有する
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- 社内で承認するためのプロセスを決定する
支払いが予定通りに行われない恐れがある
掛売りを使用した取引では、支払いの遅延や貸し倒れなどのリスクがあります。取引先の資金繰りが悪化したり倒産したりすると、支払期日が来ても予定通りに代金を回収できなくなります。掛売りによる取引が成立するには売り手と買い手の信頼関係が前提です。また、前述した与信管理によって取引先の支払い能力があるかどうかの確認も必要です。
しかし、信頼関係や支払い能力があっても、取引先の業績や資金繰りが悪化するリスクはゼロではありません。万が一、支払いの遅延や貸し倒れになった場合は売掛金を回収するために催促や督促業務が必要になり、入金管理業務に携わる社員の負担が増える可能性があります。
催促や督促業務が発生することがある
前述したとおり、支払いの遅延はもちろん、支払い自体してもらえない場合は催促や督促を行う必要があります。支払いの催促や督促業務を行う場合、取引先に催促状や督促状を送付して支払いを促すために書面の作成や郵送などの作業が必要です。
ただし、催促や督促業務は通常業務とは別に発生する業務のため、担当者にかかる負担は増大します。担当者は「取引先に催促しなければならない」「速やかに代金を回収しなければならない」などの重大な責務を担うことになり、精神的なストレスから心身への負担が大きくなるでしょう。さらに、催促や督促が必要な取引先が多くなるほど業務が滞って残業時間が増えやすくなるため、企業が負担する人件費も増える恐れがあります。
掛売りのデメリットを解決するには?
掛売りを導入した場合に生じるデメリットは、ファクタリングや請求代行サービス、売掛保証サービスの利用で解決できます。本章では、それぞれのサービスの概要と目的、利用する際の注意点を解説します。
ファクタリングを利用する
ファクタリングとは資金調達方法の一つで、売掛債権を売却して資金化する方法のことです。ファクタリングの目的は、売掛債権を資金化して資金繰りを改善することです。利用者は保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引いた金額を受け取れます。少額から1億円規模の高額な売掛債権まで対応しているファクタリング会社もあるため、さまざまな業種での資金調達に対応可能です。
ただし、ファクタリングを利用するには審査に通る必要があり、特に取引先の信用力(支払い能力)が問われます。そのため、取引先の支払い能力を把握した上でファクタリングを利用しましょう。
請求代行サービスを利用する
請求代行サービスとは、請求業務の一部または全てを外部の企業に委託できるサービスのことです。請求代行サービスの目的は、請求業務の一部または全てを外注して業務効率化を図ることです。代行できる主な請求業務は与信管理や請求書の作成・発行・発送はもちろん、代金の回収・督促業務なども含まれます。
請求代行サービスを利用する際の注意点は代行会社に請求データを共有するため、情報の取り扱いに関する取り決めをしておく必要があることです。また、サービスの利用には利用料金の他に手数料も発生するケースが多いことから、事前に手数料の割合を確認しておきましょう。
売掛保証サービスを活用する</h2>
売掛保証サービスとは、取引先が資金繰りの悪化や倒産などの理由で支払われなかった代金を保証するサービスのことです。売掛保証サービスの目的は、取引先から代金が支払われずに自社が被るリスクを軽減することです。
売掛保証のない取引をした場合、取引先から代金を回収できなくなれば売上金額はそのまま自社の損失になるだけでなく、回収できない金額が大きいほど自社への経済的な損失は増えます。売掛保証会社の審査を受けて必要な手続きを行い、手数料や保証料を支払うことで、代金を回収できなかった場合でも万が一のリスクに備えられます。売掛保証サービスを利用すれば、取引先の資金繰りの悪化や倒産などがあっても売掛保証会社から保証金を受け取ることが可能です。
まとめ
掛売りは、一定期間の取引で発生した商品やサービスの代金の合計金額を後日まとめて請求し、代金を回収する取引方法です。企業が掛売りを導入することで、業務効率化や売り上げアップ、新規顧客の獲得などのメリットが得られます。
ただし、事前に与信管理が必要な上に、代金を回収できなくなる、催促や督促業務が発生するなどのデメリットが生じる恐れがあります。掛売りのデメリットを解決するなら、ファクタリングや請求代行サービス、売掛保証サービスの利用を検討しましょう。
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