BtoBサービス、SaaS、IT製品を徹底比較!企業のDX推進、課題を解決!

SFA JOURNAL by ネクストSFA

【2025年最新比較表あり】おすすめのVDI比較16選! 

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

現代の企業では、リモートワークやハイブリッドワークの定着により、社員のデスクトップ環境は重要な経営テーマになっています。社外ネットワークや私物端末からのアクセス増加でセキュリティリスクは高まり、同時に情報システム部門の運用負荷も限界に近づいています。さらに災害時にも事業を止めないBCPの観点からも、「場当たり的なリモートワーク対応」では立ち行かなくなりつつあります。こうした課題をまとめて解決する有力な選択肢がVDI(仮想デスクトップ)/DaaSであり、

本記事では決裁者・管理部責任者の方に向けて、コスト・運用負荷・セキュリティ・選定軸の観点から分かりやすく比較・解説します。

この記事の目次はこちら

VDIとは

VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とは仮想デスクトップ基盤と訳されます。簡単に言えば社員が使うPCのデスクトップ環境OSやアプリケーションデータなどを物理的なPC本体から分離しサーバー上に集約する技術です。利用者は手元の端末シンクライアントPCタブレットなどからネットワーク経由でサーバー上の自分のデスクトップ環境を呼び出して操作します。データはすべてサーバー側に保存されるため端末側に情報が残らずセキュリティが飛躍的に向上します。これが従来のPC運用で課題となっていた「セキュリティリスク」「リモートワーク対応の難しさ」「端末ごとの設定・保守による運用負荷の増大」などをまとめて解決し得る技術として位置づけられている理由です。特に企業の情報資産を端末に残さず利用できる点が最大の特徴であり、端末紛失や持ち出しによる情報漏洩リスクを大きく低減できます。情報管理を強化したい管理部門や決裁者にとってVDIは有力な選択肢と言えます。管理者は中央からOSの更新やパッチ適用を行うことができ、個別端末のメンテナンス工数を大幅削減しIT部門の負荷分散や設定の統一によるガバナンス強化が期待できます。

VDIの需要が加速している背景

2025年に向けてVDIの需要が加速している背景は主に3つあります。

ハイブリッドワークの定着

リモートワークとオフィスワークが混在する働き方が定着し、従来の「社内PC+VPN」だけでは管理・保護が追いつかなくなっています。端末側にデータを置かないVDIであれば場所を問わず安全に業務を行えるため柔軟な働き方とセキュリティ要求を両立しやすくなります。

ランサムウェアや内部不正などの情報漏洩リスクの増大

データが端末に残らないVDIでは攻撃対象がサーバ側に集約されるため監査ログやアクセス制御権限管理を徹底しやすくなります。情報漏洩リスク対策そのものが取引条件となるケースも増える中VDIを基盤とした情報管理体制は経営の安全性にも直結します。VDIと混同されやすい技術にSBC(サーバベースコンピューティング)があります。SBCは複数ユーザーで同一OS環境を共有することでリソース効率を高める仕組みですが、VDIはユーザーごとに個別の仮想デスクトップを割り当てるため、アプリ互換性やカスタマイズ性が高く部門ごとの業務要件にきめ細かく対応しやすい特徴があります。2025年のVDI市場ではクラウド連携によるスケーラビリティ改善やゼロトラストモデルとの統合が進んでいます。VDI単体ではなくネットワークや認証デバイス管理ログ可視化などを含めた「エコシステム」で比較することが重要になっています。VDIの比較検討は単なるスペック比較ではなく働き方モデル情報管理レベル運用体制コスト構造など経営課題とのフィット感を含めて評価することが求められます。

VDIの種類

リモートワークが定着した今、企業がVDIを選定する際に最初に決めるべき大きなポイントが「どの提供形態を採用するか」です。VDIには自社で基盤を構築するオンプレミス型と、クラウドサービスとして利用するクラウド型(DaaS)の2種類があり、それぞれ強みと注意点が大きく異なります。両者の特徴を理解することが、自社に最適なデスクトップ環境を選ぶための第一歩となります。

オンプレミス型

オンプレミス型VDIは、自社が保有・管理するサーバー環境にVDI基盤を構築して運用する方式です。いわば「資産として持つ」形態であり、自社のデータセンター内や閉域網で完結した環境を構築できます。

メリット

  • 高いカスタマイズ性:業務要件に合わせて細かい設定や独自アプリの実行環境を自由に最適化できる。
  • 強固なガバナンス:ネットワーク・アクセス制御・ログ管理などを自社ポリシーに完全準拠させやすく、機密情報を取り扱う組織に適している。
  • セキュリティ面での安心感:金融・研究・製造業(R&D部門)など、高機密データを扱う業界で選ばれやすい。

デメリット

  • 莫大な初期投資:サーバー、ストレージ、ライセンス、構築費用などが一度に発生し、キャッシュフローを圧迫する。
  • IT部門の運用負荷:障害対応、パッチ適用、リソース管理など専門知識を要する作業が継続的に必要。
  • 導入に時間がかかる:設計〜構築〜テストまで数ヶ月単位となり、変化の早いビジネス環境では柔軟性に欠ける。

クラウド型(DaaS)

クラウド型VDI(DaaS:Desktop as a Service)は、ベンダーが提供する仮想デスクトップ基盤を「サービスとして利用する」方式です。初期構築は不要で、利用分だけ課金する「経費モデル」で運用できます。

メリット

  • 初期費用を大幅削減:ハードウェア調達が不要で、すぐに利用開始できる。
  • 導入スピードが速い:数週間、場合によっては数日で環境整備が可能。
  • 運用負荷が激減:基盤の保守・アップデートはベンダー側が実施するため、情報システム部門が戦略業務へ集中できる。
  • 柔軟なスケーラビリティ:社員数の増減に応じてライセンスを増減でき、繁忙期などの一時的な利用にも向いている。

デメリット

  • ランニングコストが継続発生:長期間・大規模利用の場合、総保有コスト(TCO)がオンプレミスを上回る場合も。
  • ガバナンス面の制約:自社独自のセキュリティポリシーを100%適用できないケースがあり、ベンダーの提供範囲に依存する部分がある。
  • ネットワーク依存:クラウド接続が前提のため、通信品質が安定していない環境ではパフォーマンスに影響が出る可能性もある。

VDIの選ぶ際の比較ポイント

VDIまたはDaaSの導入は単なるIT製品の購入ではなく経営戦略そのものに関わる投資です。技術的なスペック比較に終始するのではなく、決裁者として以下の5つの経営判断の軸で比較検討することが不可欠です。

 1. TCO(総保有コスト): 「初期費用ゼロ」だけで判断しない 

決裁者が最も重視すべき点です。「オンプレミス型VDI」は初期にハードウェアやライセンス費用が集中しますが5年7年といった長期間で減価償却と運用費をならした場合一人当たりのコストはDaaSより安価になるケースも特に大規模導入ではあり得ます。一方「DaaS」は初期費用が低いものの月額費用が継続的に発生します。重要なのは基本料金に含まれる機能とオプション料金です。高性能なCPUやGPUストレージ容量セキュリティ強化策(多要素認証など)が別料金の場合想定以上にランニングコストが膨らむ可能性があります。またVDI DaaSはネットワーク帯域を消費するため既存回線の増強費用も見落とせません。総保有コストを比較するには自社の利用人数と利用期間必要なスペックを明確にし双方のシナリオで「5年間のTCO」を試算する必要があります。

 2. 運用負荷・管理工数: 「情シス部門の工数」もコストである

 これは「見えないコスト」である情報システム部門の人件費に直結します。オンプレミス型VDIは基盤のすべてを自社で管理するため障害発生時の切り分けと復旧OSやミドルウェアのセキュリティパッチ適用リソース監視など膨大な工数がかかります。この工数を誰が負担するのかその人件費はいくらかをコストとして認識しなければなりません。DaaSの場合これらの基盤運用はベンダーが担うため情シス部門は本来注力すべきDX推進や業務改善といった戦略的な業務にシフトできます。このメリットは単なるコスト削減以上の経営価値を生み出します。自社のIT部門のリソースが限られている場合DaaSは極めて有力な選択肢となります。 

3. セキュリティとガバナンス: 「最新」か「厳格な自社統制」か 

オンプレミス型は自社の閉じたネットワーク内で厳格なセキュリティポリシーを適用できる点が強みです。特定のデータを絶対に社外に出したくない場合有効な選択肢です。ただし最新の脅威への対応やパッチ適用は自社の責任と速度に依存します。DaaSはベンダーが最新のセキュリティ対策を常時適用してくれるメリットがあります。しかしデータをクラウド上に預けることへの懸念やベンダーが定める基準でガバナンスを効かせる必要があります。特にデータの保管場所(国内か海外か)やアクセスログの管理範囲は契約前に詳細に確認すべきです。

 4. スケーラビリティ(柔軟性・拡張性): 事業スピードに対応できるか 

事業の成長、中途採用の増加M&A繁忙期の一時的な人員増などビジネスの変動にIT基盤が迅速に対応できるかは重要です。DaaSは1ユーザー単位で即座にデスクトップ環境を追加・削除できます。オンプレミス型は導入時に将来の最大利用人数を見越したサイジング(リソース設計)が必要となり過剰投資になりがちです。逆に想定以上の利用増にはリソース不足で対応できないリスクもあります。 

5. 導入スピードとBCP(事業継続計画) 

パンデミックや災害時に「今すぐ」リモート環境が必要になった場合オンプレミス型はハードウェア調達と構築で数ヶ月を要します。DaaSであれば迅速な展開が可能です。このスピードが事業停止期間を最小限に抑える鍵となります。BCP対策を迅速に整備したい場合DaaSの優位性は非常に高いと言えます。 これらの5つの軸を総合的に評価し自社の経営課題と優先順位(コストが最優先かセキュリティかあるいは運用負荷軽減か)に照らし合わせて判断することが決裁者の役割です。

【2025年最新】VDI・DaaSサービス徹底比較16選

VDIおよびDaaS市場には多様なプレイヤーが存在します。ここでは決裁者が比較検討する上で注目すべき主要な16サービスをその特徴と費用体系の観点から分類し解説します。費用が「要お問い合わせ」となっているサービスが多いのは利用するリソース(CPUメモリGPU)ユーザー数オプションによって価格が大きく変動するためです。導入検討時には必ず複数のベンダーに見積もりを依頼し自社の要件に基づいたTCOを試算してください。

株式会社ファナティック「かんたんテレワーク」

特長
● サーバー準備・VDIインストール・仮想デスクトップ割当などの構築不要、「HTML5対応ブラウザだけ」で利用可能
● USB/プリンタ制御・クリップボード制限、多要素認証など強固なセキュリティ機能を備える
● BYOD・スマホ・タブレット・既存PCなど多端末で利用可能、端末キッティング不要でスモールスタート可能

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.fanatic.co.jp/product-solution/needs/needs-16/

コーレル株式会社「Parallels RAS」

特長
● クラウド/オンプレ/ハイブリッド対応、Windows・Mac・iOS・Androidから仮想アプリ/デスクトップへアクセス可能
● 単一管理コンソールで配信・管理・監視が可能、多要素認証/SSL/FIPS 140-2暗号化に対応
● Concurrent Userライセンスで、最小15ユーザーから利用できるスケーラブルな体系、無料トライアルあり

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.parallels.com/jp/products/ras/remote-application-server/

NTTビジネスソリューションズ株式会社「AQStage 仮想デスクトップ」

特長
● セキュリティ強化・BCP対策・運用負荷軽減など多彩な機能で働き方改革を支援
● VDI/SBC方式を切り替え可能、仮想デスクトップ数・スペック変更など柔軟なリソース設計
● クラウド型でありながらカスタマイズ対応可能(マスターOS変更・複数OS運用など)

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.nttbizsol.jp/service/daas/

T4U株式会社「verde」

特長
● Windows/Linux 双方の仮想デスクトップに対応
● WANレイテンシ低減・拠点分散に強い「クラウド・ブランチ」機能を搭載
● Linux KVM基盤のAll-in-one構成で低コスト・スモールスタート・スケールアップ対応

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://verde-vdi.jp/

Amazon Web Services, Inc.「Amazon WorkSpaces」

特長
● フルマネージドDaaSで、パーソナル型/プール型(非永続型)双方に対応
● 管理コンソールでワークスペースのプロビジョニング・アクセス制御・監視など一元管理
● 月額固定/時間課金の両モデルに対応しコスト最適化、世界各リージョンで提供

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://aws.amazon.com/jp/workspaces-family/

日本電気株式会社「NEC Cloud DaaS v2.0」

特長
● Windows 10 仮想デスクトップをクラウド提供、どこからでもアクセス可能
● 専有VDI/サーバVDI/共有型SBCなど複数仮想方式から選択可能
● NECによる運用代行オプション(パッチ配布・更新評価など)で運用負荷を軽減

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://jpn.nec.com/outsourcing/daas/index.html

日本マイクロソフト株式会社「Azure Virtual Desktop」

特長
● Windows 10/11/Windows Server をクラウド上で仮想デスクトップとして提供
● マルチセッション対応で1台のVMを複数ユーザーで利用、コスト効率を最適化
● Azureポータルで集中管理でき、暗号化・多要素認証・Microsoft 365連携などセキュアな運用が可能

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/virtual-desktop

Citrix Systems, Inc.「Citrix DaaS」

特長
● クラウド/オンプレ/ハイブリッド対応、Azure・GCP・AWS・自社DCの統合が可能
● Windows/Mac/iOS/Android/Webブラウザからアクセス可能、HDXにより高品質体験を提供
● 統合管理でユーザー・デバイス管理、アクセス制御、コスト可視化、モニタリングが可能

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://docs.citrix.com/ja-jp/citrix-daas.html

株式会社インターネットイニシアティブ「IIJ仮想デスクトップサービス」

特長
● Azure Virtual Desktop+Citrix Cloud を組み合わせたフルマネージド環境
● 通信プロトコル最適化・閉域接続でWeb会議など高負荷業務にも対応
● セキュリティオプション(キーロガー対策・画面キャプチャ防止・不正アクセス検知など)を多数用意

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.iij.ad.jp/biz/avd/

日本事務器株式会社「Ezharness DaaS Plus」

特長
● AWS/NEC Cloud DaaSなどクラウド基盤を利用し、どこからでもWindowsデスクトップ提供
● データを端末に残さない設計で紛失・盗難リスク軽減、ゼロクライアントにも対応
● バリュー/スタンダード/パフォーマンスなどリソース別プランを選択可能、VPNなどオプションも豊富

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://ezharness.jp/service/daas-plus/

ソフトバンク株式会社「デスクトップサービス スタンダード」

特長
● データセンター内のVDI環境と閉域ネットワークを直結し、リモートでも高品質な通信
● SmartVPN等と連携し、クラウド利用/モバイル接続/リモートアクセスに対応
● パッケージ型VDI環境を提供し、30台規模からのスモールスタートが可能

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.softbank.jp/biz/services/platform/desktop-standard/

アップデータ株式会社「Shadow Desktop」

特長
● データをクラウドに保存し、ローカルに残さず“通常のPC操作感”を実現
● オフライン/不安定環境でもローカル暗号キャッシュ保持で作業可能
● 既存PC+エージェント導入だけで利用でき、VDI/RDPの課題(コスト・負荷)を解消
● 無料トライアルあり

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://www.shadowdesktop.jp/

株式会社ZenmuTech「ZENMU Virtual Drive」

特長
● サーバー新規構築不要で低コスト導入、既存PC+クラウド基盤活用
● FAT-PCのリソース活用でネットワーク集中・VDI遅延問題を軽減
● 秘密分散技術「ZENMU-AONT」でデータを無意味化・分散保管し、紛失/盗難時の情報漏洩を防止
● 無料トライアルあり

費用
● 要お問い合わせ

公式サイト
https://zenmutech.com/zvdee/

株式会社NTTPCコミュニケーションズ「VDIクラウド for デジタルツイン®」

特長
● GPUを活用した高性能仮想デスクトップを1クライアント単位で提供
● 低遅延VDI方式により、3Dモデル・シミュレーション用途でも快適動作
● インターネット/閉域VPN/5Gなど柔軟な接続方式に対応し、多様な働き方で利用可能

費用
● 初期費用:134,800円(テナントごと)
● 月額:
 ・Small:50,600円/VM
 ・Medium:104,500円/VM
 ・Large:148,280円/VM

公式サイト
https://www.nttpc.co.jp/service/product/vdicloud/

株式会社リンク「at+link リモートPCサービス」

特長
● 1台・1ヶ月から利用できスモールスタート可能
● 物理PC専有でアプリ制限が少なく、性能・自由度が高い構成
● 初期0円・月額定額の低コストで導入でき、月額9,500円〜で提供

費用
● 初期費用:0円
● 月額:
 ・リモートPCサービス:9,500円(2コア/4スレッド)
・Gen3:11,400円(8コア/8スレッド)

公式サイト
https://remote-pc.jp/

株式会社 USEN ICT Solutions「セキュアデスクトップ」

特長
● 不許可端末からのアクセスブロック、証明書認証・二要素認証対応
● ローカルにデータが残らない画面転送方式で情報漏洩リスクを低減
● 高速画面転送技術で高操作性、Windows/Mac/iOS/Androidに対応しタッチ操作も可能

費用
● 初期費用:30,000円
● 月額:スタンダード 15,000円/10ライセンス

公式サイト
https://www.gate02.ne.jp/service/security/secure-desktop-service/

失敗しないVDI/DaaSの選び方

多様なVDI DaaSサービスの中から自社にとっての最適解を導き出すためには体系化された選定プロセスが必要です。決裁者・管理部責任者としてこのロードマップを主導し適切な判断を下すことがプロジェクト成功の鍵となります。

Step 1:目的と要件の明確化 

導入の「目的」を定めることが最も重要です。「コスト削減」が最優先事項なのかそれとも「セキュリティの徹底強化」が譲れない一線なのか、あるいは「情シス部門の運用負荷軽減」を最重要視するのか。この優先順位によって選ぶべきソリューションは全く異なります。例えばコスト削減が至上命題であればオンプレミスVDIの大規模導入によるスケールメリットを追求するかDaaSのマルチセッション機能(Azure Virtual Desktopなど)を活用する戦略が考えられます。目的に加え「要件」も具体化します。

  • 対象となる利用人数は何人か
  • 対象部署はどこか
  • 一般事務作業かそれともCADや動画編集など高性能GPUを必要とする専門業務か
  • 既存の業務アプリケーションは仮想環境で正常に動作するか これらの要件定義が曖昧なままでは正確な比較ができません。決裁者としては情報システム部門や利用部門に対しこれらの目的と要件を明確化するよう指示しその結果を承認する役割を担います。 

Step 2:VDI(オンプレ) vs DaaS(クラウド) の基本方針決定 

これはStep 1で明確化した要件と自社のITリソース状況に基づき判断します。確認すべきは自社の情報システム部門にVDI基盤を構築・運用・保守できるだけの人員とスキルセットが備わっているかです。もしリソースが不足している場合オンプレミス型を選択すると運用が破綻し情シス部門がさらに疲弊する結果を招きます。その場合は運用をベンダーに任せられるDaaSが現実的な選択肢となります。また初期投資(イニシャルコスト)をどれだけ許容できるかも大きな判断材料です。予算の承認権限を持つ決裁者として初期に大きなキャッシュアウトを避けたいのかそれとも5年間のTCOで判断するのか経営方針を明確にします。一般的にスモールスタートをしたい場合や導入スピードを重視する場合はDaaSが有利です。 

Step 3:製品・ベンダー選定とPoC(実証実験)の実施 

基本方針が決まったら候補となる製品・ベンダーを3〜5社程度に絞り込みます。ここで絶対に省略してはならないのがPoC(Proof of Concept:概念実証)です。デモンストレーションでは快適に見えても実際の業務(特にWeb会議や動画再生)で遅延が発生するケースは少なくありません。実際の利用者(パイロットユーザー)を巻き込み業務が滞りなく行えるか操作感に問題はないかを厳しく評価します。決裁者はこのPoCのための予算と工数を承認する責務があります。また障害発生時のサポート体制も重要です。24時間365日の日本語サポートが受けられるか対応窓口は明確か復旧までのSLA(サービス品質保証)はどうなっているかを確認します。安価であってもサポートが手薄なサービスは結果としてビジネスの停止リスクを高めます。TCOの最終試算とサポート体制を比較評価し導入するサービスを最終決定します。

まとめ:自社の経営課題を解決する「最適なデスクトップ環境」とは

本記事ではVDI(仮想デスクトップ)の比較検討を行う決裁者・管理部責任者の方々に向けて経営判断に不可欠な視点を提供してきました。現代の企業が直面するセキュリティリスクの増大、情報システム部門の運用負荷BCP対策の必要性といった課題に対しVDIおよびDaaSは極めて有効な戦略的IT基盤となり得ます。重要なのはVDIの導入自体をゴールとしないことです。VDIはあくまで「コストを削減する」「セキュリティを強固にする」「柔軟な働き方を実現する」といった経営課題を解決するための「手段」に過ぎません。その手段を選択する上で決裁者が押さえるべきはVDI(オンプレミス型)とDaaS(クラウド型)の根本的な違いを理解することです。それは資産として「所有」するのかサービスとして「利用」するのかという経営モデルの選択でもあります。初期投資と運用人件費をかけて厳格な統制を目指すオンプレミス型か初期投資を抑え運用をアウトソースしスケーラビリティを確保するDaaSか自社の体力と戦略に照らし合わせて判断する必要があります。比較検討の軸は技術的な優劣ではなくTCO(総保有コスト)運用負荷セキュリティガバナンススケーラビリティ導入スピードという5つの経営判断の軸であるべきです。特に情シス部門の工数という「見えないコスト」を可視化しTCOに組み込んで評価する視点は不可欠です。今回ご紹介した16の多様なサービスは選択肢の多さを示していますがそれは同時に自社の固有の課題や要件にマッチするソリューションが必ず見つかる可能性が高いことも意味しています。決裁者・管理部責任者の皆様の役割はこれらの選択肢を前にして本記事で提示した「選定ロードマップ」に基づき自社の「目的」と「要件」を明確化しPoC(実証実験)を通じて厳しく評価し最終的な経営判断を下すことです。この戦略的なIT基盤の選択が今後の貴社の競争力と事業継続性を左右する重要な一手となります。

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