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SFA JOURNAL by ネクストSFA

不正侵入検知システムで企業資産を守る!導入メリットと運用のポイント

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

現代ビジネスにおいてサイバーセキュリティは経営の根幹を揺るがす重要課題です。巧妙化するサイバー攻撃は企業の規模や業種を問わず深刻なリスクをもたらし、機密情報の漏洩、システムの停止、信用の失墜は企業の存続すら危うくします。従来のファイアウォールやアンチウイルスだけでは進化する脅威への対応は困難です。そこで重要性が高まるのがネットワークやシステムへの不正な侵入の兆候を早期に検知し迅速な対応を可能にする「不正侵入検知システム(IDS:Intrusion Detection System)」および「不正侵入防御システム(IPS:Intrusion Prevention System)」です。これらの導入メリットを正しく理解することは管理部門や決裁者の皆様にとって事業リスク低減と投資最適化に不可欠です。本記事ではIDS/IPSの必要性、具体的なメリット、導入・運用を成功させるポイントを分かりやすく解説します。セキュリティ強化を検討中の方、既存対策に不安がある方はぜひご一読ください。不正侵入検知の理解とそのメリット活用が未来のリスクを低減する第一歩です。

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シグネチャ検査(更新、設定はマネージドサービスとして提供します。)
CMS設定(WordPress、Movable Type、EC-CUBEの運用に適した設定を行います。)
アクセス制御
国別フィルタ
ダッシュボード
レポート機能
専用フォーム(各種お問い合わせは専用フォームで承ります。履歴管理も可能です。)
Amazon Web Services, Inc. AWS WAF
  • ウェブトラフィックフィルタリング
  • AWS WAF Bot Control
  • アカウント乗っ取り詐欺の防止
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  • フル機能 API
  • リアルタイムの可視性
  • AWS Firewall Manager への統合
Web ACL 月あたり (時間で案分) USD 5.00
ルール 月あたり (時間で案分) USD 1.00
リクエスト USD 0.60/100 万件のリクエスト (最大 1500 WCU およびデフォルトの本文サイズの検査*)
Bot Control と Fraud Control 上記のタブによる追加費用
ウェブトラフィックフィルタリング
AWS WAF Bot Control
アカウント乗っ取り詐欺の防止
アカウント作成詐欺防止
フル機能 API
リアルタイムの可視性
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株式会社ROCKETWORKS 詳細はこちら ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 イージスWAFサーバセキュリティ
  • Webサーバ・Webサービスへの攻撃や不審な通信を自動で徹底ブロック
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  • AWSをはじめ最新のクラウド環境にも対応
  • 人気ECサイト、Webサービスも安心の低負荷・低遅延
  • 日本人エンジニア執筆による「読んでわかる」レポートを毎月送付
イージスサーバセキュリティタイプ
月額/50,000円

イージスDDoSセキュリティタイプ
~2Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥40,000
~5Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥60,000
~10Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥120,000
~50Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥198,000
~100Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥250,000
~200Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥450,000
200Mbps以上 別途見積もり
サイバー攻撃の検出/遮断
月次レポート
サイバーセキュリティに関するアドバイザリー
法務相談(オプション)
SBテクノロジー株式会社
詳細はこちら
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Imperva WAF
  • 自動学習機能による導入運用負荷軽減
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  • Imperva 独自の研究機関『ADC』
  • 仮想パッチの適用
- Web Application Firewall
株式会社セキュアスカイ・テクノロジー Scutum
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~500kbps 初期費用 98,000円 月額 29,800円
~5Mbps 初期費用 98,000円 月額 59,800円
~10Mbps 初期費用 98,000円 月額 128,000円

~50Mbps 初期費用 198,000円 月額 148,000円
~100Mbps 初期費用 198,000円 月額 198,000円
~200Mbps 初期費用 198,000円 月額 298,000円
200Mbps 初期費用198,000円 100Mbps毎に100,000円加算
1 ブロック機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を遮断する機能
2 モニタリング機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を記録する機能 (通信自体は遮断されません)
3 防御ログ閲覧機能 ブロック(モニタリング)した通信をログとして保存し、閲覧できる機能
4 レポート機能 下記の内容を管理画面上で報告する機能
 ・攻撃元(IPアドレス)top5
 ・攻撃種別top5
 ・防御ログの月別ダウンロード
5 ソフトウェア更新機能 防御機能等を向上させるため、ソフトウェアを更新する機能
6 防御ロジック更新機能 防御効果の向上を図るため、不正な通信パターンを随時最新の状態に更新する機能
7 特定URL除外機能 Webサイト中のWAF機能を利用したくない箇所を防御対象から除外する機能
8 IPアドレスの拒否/許可設定機能 特定のIPアドレスからの通信を拒否、もしくは特定のIPアドレスからの通信のみ許可する機能
9 脆弱性検査用IPアドレス管理機能 Webサイトへの脆弱性診断等を行う際、設定したIPアドレスからの通信についてブロック/モニタリングを行わない機能
10 SSL/TLS通信機能 暗号化された通信についても解読し、防御する機能
11 API機能 Scutumで検知した防御ログや詳細な攻撃リクエスト内容をAPI経由で取得できる機能
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社 SmartConnect Network & Security
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  • 変化するビジネス要件に、柔軟に対応できる
  • 安心・セキュアを継続できる品質と実績
- UTM
WAF
DDoS
Webプロキシ
メールセキュリティ
ロードバランサ
VPN
株式会社モニタラップ AIONCLOUD WAAP
  • ひとつのコンソールで提供する統合セキュリティ
  • 進化する脅威に対応するアプリケーションセキュリティサービス
- WAF
Webアプリケーションを既存の攻撃、ゼロデイ攻撃などから防御します。

APIセキュリティ
企業のAPIに対する可視性を提供し脅威を遮断します。

ボット緩和
ボットのトラフィックを管理し、Webサイトを保護します。

DDoS保護
アプリケーション階層のDDoS攻撃から企業のWebサイトを守ります。
フォーティネットジャパン合同会社 FortiWeb
  • WEBアプリケーション保護
  • 機械学習に基づいた脅威検知
  • セキュリティ ファブリックの統合
  • 高度な分析
  • 誤検知の減災
  • ハードウェアベースのアクセラレーション
- アプリケーションのセキュリティ
コンテンツセキュリティ
デバイスのセキュリティ
NOC/SOC セキュリティ
ウェブセキュリティ
管理された検出と対応
SOC-as-a-Service
インシデント対応サービス
サイバーセキュリティの評価と準備状況
バラクーダネットワークス Barracuda Web Application Firewall
  • Web攻撃とDDoSを確実に防止
  • 悪意のあるボットの動きを完全に静止
  • APIとモバイルアプリの保護
  • きめ細かなアクセス制御と安全なアプリ配信を実現
  • セキュリティの自動化と統合
  • 攻撃とトラフィックパターンの可視化
- WebアプリケーションとAPIの保護

+ OWASPおよびゼロデイ攻撃に対する保護
+ 高度なボット攻撃からアプリケーションを保護
+ API保護
+ サーバクローキング
+ URL暗号化
+ GEO IPとIPレピュテーションチェック
+ マルウェア対策とウィルス対策
+ マルチプロトコルサポート
+ アプリケーションDDoS対策
+ 大規模なDDoSの防止
+ JSONセキュリティ
+ XMLファイアウォール
+ アクティブ脅威インテリジェンス
+ クライアントサイドプロテクション

アプリケーションデリバリ
+ アプリケーションの負荷分散と監視
+ コンテンツルーティング
+ キャッシュ、圧縮、トラフィックの最適化

データ保護とコンプライアンス
+ アウトバウンドDLP
+ コンプライアンス認証

IAM
+ SAMLサポートとSSO
+ クライアント証明書ベースの認証
+ AD FSとの統合
+ LDAP、Kerberos、およびRADIUSとの統合
+ 2要素認証

レポート
+ Barracuda Active Threat Intelligenceダッシュボード
+ 直感的なドリルダウンレポート
+ 包括的なログ
+ SIEMとの統合

管理
+ HAクラスタリング
+ ロールベースの緻密なアクセス制御
+ REST APIによる自動化とスケーラビリティ
+ 統合的なDevSecOpsの有効化
+ デフォルトのセキュリティテンプレート

中央管理
+ 単一コンソール
+ 証明書の中央管理
+ 中央管理通知とアラート

使いやすさ
+ アプリケーション学習(アダプティブプロファイリング)
+ 仮想パッチと脆弱性スキャナとの統合
+ 自動構成エンジン
セコムトラストシステムズ株式会社 マネージドWAFサービス
  • AWS、Azure 等の、各種クラウド環境でも利用することができます。
  • メーカーシグネチャに加え、個別シグネチャを迅速に作成することができます。
  • クラウド型なので直ぐにご利用いただけます。(※大規模システム向けにはオンプレミス型(マネージドWAFサービス標準型)も提供できます)
  • ストラッツ(Struts)の脆弱性対策も実施することができます。
  • クレジットカード番号の外部流出を検知し防止することができます。
  • DDoS攻撃対策も実施することができます。(オプション)
- DDoS対策
ファイアウォール
IPS
WAF
Amazon Web Services, Inc. AWS Shield
  • AWS Shield Standard
    ↳基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
    ↳インラインの攻撃緩和
  • AWS Shield Advanced
    ↳アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
    ↳正常性に基づく検出
    ↳高度な攻撃緩和機能
    ↳自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
    ↳積極的なイベント応答
    ↳保護グループ
    ↳可視性と攻撃の通知
    ↳DDoS コスト保護
    ↳専門サポート
    ↳グローバルな可用性
    ↳一元化された保護管理
- AWS Shield Standard
基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
インラインの攻撃緩和

AWS Shield Advanced
アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
正常性に基づく検出
高度な攻撃緩和機能
自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
積極的なイベント応答
保護グループ
可視性と攻撃の通知
DDoS コスト保護
専門サポート
グローバルな可用性
一元化された保護管理

1. なぜ今、不正侵入検知システムが必要なのか?

企業を取り巻くサイバー脅威は深刻度と複雑さを増しています。金銭や機密情報を狙う組織犯罪、国家が関与するとされる高度なサイバー攻撃(APT)も増加し、攻撃者は常にセキュリティ対策の穴を探し新たな手法を生み出しています。特に以下のような攻撃は従来の対策だけでは防御が困難です。

  • ゼロデイ攻撃: ソフトウェア脆弱性の修正プログラム提供前に攻撃する手法。パターンマッチング型対策では検知困難。
  • 標的型攻撃: 特定企業や組織を狙い従業員を騙して不正ファイルを開かせたり偽サイトへ誘導したりする攻撃。
  • ランサムウェア: システムに侵入しデータを暗号化して身代金を要求。近年はデータ窃取と公開脅迫を伴う二重恐喝も増加。
  • 内部不正: 正規アクセス権を持つ内部関係者による情報持ち出しや破壊行為。
  • サプライチェーン攻撃: 取引先などを踏み台にして本来の標的企業へ侵入する攻撃。

こうした状況下で境界防御の代表格ファイアウォールは重要ですが万能ではありません。ファイアウォールは主に定義されたルールに基づき外部からの不正通信を遮断しますが許可された通信経路の悪用(メール添付ファイル、Webサイト経由の攻撃など)や内部ネットワーク侵入後の不正活動、内部不正の検知は不得意な場合があります。

不正侵入検知システム(IDS/IPS)はファイアウォールだけではカバーしきれない脅威に対処する不可欠なセキュリティレイヤーです。ネットワークやシステム内の通信、サーバーの挙動を監視し不正アクセスや攻撃の兆候を検知します。

  • IDS(不正侵入検知システム): 異常検知時に管理者へアラート通知。通信遮断は行わない。
  • IPS(不正侵入防御システム): 検知に加え不正通信を自動遮断する防御機能を持つ。

これらのシステムは主に以下の仕組みで脅威を検知します。

  • 検知エンジン:
    • シグネチャ照合: 既知の攻撃パターンデータベースと照合し検知。既知脅威に有効。
    • アノマリ検知: 平常時の通信や動作を学習し逸脱を異常として検知。未知脅威や内部不正の発見に期待できるが誤検知の可能性も。多くは両方式を組み合わせる。
  • センサー/エージェント配置:
    • ネットワーク型(NIDS/NIPS): ネットワーク経路上で通信全体を監視。
    • ホスト型(HIDS/HIPS): サーバー等に導入しデバイス内部を監視。
  • 管理コンソール: 検知イベント(アラート)を通知・可視化し管理を支援。

サイバー攻撃被害の影響は甚大です。情報漏洩による損害賠償ブランドイメージ失墜、システム停止による莫大な逸失利益高額な復旧コストなどが考えられます。このような事態を避けるには侵入を100%防ぐことは困難という前提に立ち万が一侵入されても早期に検知し被害拡大前に対処する仕組み、つまりIDS/IPSの導入が現代企業にとって必須の経営判断となっているのです。このシステムは脅威に対する防御壁を強化しインシデント発生時の影響を最小限に抑えるための重要な投資と言えます。

2. 【徹底解説】不正侵入検知システムの導入メリット

不正侵入検知システム(IDS/IPS)の導入は単なる技術的対策強化に留まらず企業の事業継続性確保コスト効率改善社会的信頼性向上に直結する多くの具体的なメリットをもたらします。ここでは経営層や管理部門の視点から特に重要な5つのメリットを解説します。

メリット1:サイバー攻撃の早期発見と被害の最小化 IDS/IPSはネットワークやサーバーを常時監視し攻撃の兆候をリアルタイムで検知します。これがもたらす最大のメリットはインシデントへの迅速な初動対応を可能にすることです。

  • 脅威検知の迅速化: 攻撃者が本格的な活動を開始する前やマルウェアが内部拡散する前にアラートが通知されるため不正通信の遮断、感染端末の隔離、脆弱性修正といった対処を早期に実施できます。
  • 被害範囲の限定: 早期対応により情報漏洩の規模縮小やランサムウェア被害の限定化が期待でき結果として復旧時間とコストの大幅削減、事業影響の最小化に繋がります。IPSであれば検知と同時に自動防御が可能です。

メリット2:ゼロデイ攻撃など未知の脅威への対策強化 シグネチャベースの対策では検知できない新たな脅威やゼロデイ攻撃は依然として大きなリスクです。

  • アノマリ検知の有効活用: 機械学習などを利用したアノマリ検知(異常検知)機能は平常時の通信パターンから逸脱する挙動を捉えます。これによりシグネチャが存在しない未知のマルウェア活動ゼロデイ攻撃の試み内部不正の兆候などを発見できる可能性があります。通常アクセスしないサーバーへのアクセス試行や大量データの外部送信などが検知対象例です。
  • 多層防御の補完: アノマリ検知は誤検知のリスクもありますが他の対策と組み合わせることでシグネチャ依存対策の弱点を補い多層防御体制を強化します。

メリット3:インシデント発生時の原因究明と迅速な対応支援 万が一インシデントが発生した場合迅速かつ正確な原因究明と影響範囲特定が不可欠です。

  • 詳細なログ記録: IDS/IPSは検知イベントに関する詳細なログ(攻撃元IP、ポート、検知シグネチャ名など)を記録します。これらのログはインシデント発生時の状況(いつ、どこから、どのように攻撃されたか等)を調査するための重要な証拠(フォレンジックデータ)となります。
  • 調査・復旧の効率化: 正確なログ情報に基づきインシデントの原因特定や影響範囲調査を迅速かつ効率的に進めることが可能です。これにより復旧作業や再発防止策の策定へ素早く移行できインシデント対応全体のコスト削減に繋がります。

メリット4:コンプライアンス要件への対応と内部統制の強化 法令や業界基準でセキュリティログの取得・監視が求められるケースが増加しています。

  • 規制・基準への準拠支援: PCI DSS(クレジットカード業界)、個人情報保護法、各種ガイドライン等で求められる不正アクセス監視やログ管理要件への対応にIDS/IPS導入と適切な運用は有効です。
  • 監査対応の効率化: 必要なログが適切に収集・保管されていれば内部・外部監査への対応がスムーズになり監査対応工数を削減できます。セキュリティ対策実施の客観的証拠としても機能します。
  • 内部不正抑止: IDS/IPSによる監視は外部脅威だけでなく内部関係者による不正行為の抑止力としても期待できます。監視されている意識が不正の未然防止に繋がる可能性があります。

メリット5:企業やサービスの信頼性・ブランドイメージの向上 積極的なセキュリティ対策は企業の競争力を左右する要素です。

  • ステークホルダーからの信頼獲得: IDS/IPS等高度な対策導入は顧客、取引先、株主等に対し情報セキュリティへの高い意識と責任感を示すメッセージとなります。特に機密情報を扱うビジネスでは堅牢なセキュリティ体制が信頼の基盤となりビジネス上の優位性に繋がります。
  • 事業継続性(BCP)への貢献: サイバー攻撃による事業停止リスク低減は事業継続計画(BCP)の観点からも重要です。安定したサービス提供能力は企業の信頼性を高めます。

これらの多岐にわたるメリットを考慮するとIDS/IPS導入は短期的なコストが発生するものの長期的視点では企業のリスク低減コスト最適化持続的成長に貢献する不可欠な戦略的投資と言えます。

3. 導入前に知っておきたい注意点と対策

不正侵入検知システム(IDS/IPS)の導入を成功させ、そのメリットを最大限に活かすためには、事前にいくつかの注意点を理解し、適切な対策を計画しておくことが重要です。ここでは、特に留意すべき3つのポイントとその対策を解説します。

注意点1:導入・運用コストの発生 IDS/IPSには初期費用と継続的な運用費用がかかります。

  • 発生するコスト:
    • 初期費用: 製品ライセンス料(または機器購入費)、導入構築作業費。
    • 継続費用: 保守・ライセンス更新料、運用人件費(自社運用の場合)、マネージドセキュリティサービス(MSS)利用料(外部委託の場合)。特に運用コストは長期的に発生するため重要です。
  • 対策:
    • 複数の製品・導入形態(オンプレミス/クラウド、自社運用/MSS)を比較しTCO(総所有コスト)を見積もります。
    • 導入によるリスク低減効果(想定被害額の削減など)を試算し投資対効果(ROI)を評価します。経営層への説明にも不可欠です。
    • 運用負荷とコストを考慮し自社運用かMSS利用かを慎重に判断します。

注意点2:誤検知・過検知の可能性とチューニングの必要性 IDS/IPSは正常な通信を不正と誤検知(フォールスポジティブ)したり重要度の低いアラートを過剰に発生させたり(過検知)することがあります。

  • 運用への影響:
    • 大量のアラートに埋もれ重要な脅威を見逃すリスク。
    • アラート確認作業による運用担当者の負荷増大
    • IPSの場合、正常な業務通信を誤遮断しビジネスに直接的な損害を与える可能性。
  • 対策:
    • 最も重要な対策は「チューニング」です。自社のネットワーク環境や業務特性に合わせて検知ルールを最適化し不要なアラートを抑制します(ホワイトリスト活用等)。
    • チューニングは導入時だけでなく継続的に実施する必要があります。環境変化に合わせて定期的にルールを見直すプロセスが不可欠です。
    • チューニングには専門知識が求められるため自社での対応が難しい場合はMSSの活用も有効です。

注意点3:運用体制の確保と専門知識の必要性 IDS/IPSは導入後の適切な運用があって初めて効果を発揮します。

  • 求められるスキルと体制:
    • アラート内容を分析・評価し脅威の深刻度や緊急度を判断するためのセキュリティ知識と経験。
    • 重要なシステムでは24時間365日の監視・対応体制が必要となる場合がある。
    • インシデント発生時に迅速かつ的確に対応できるインシデントレスポンス能力。
  • 対策:
    • 自社の人的リソース(担当者の有無、スキル、時間)を客観的に評価します。
    • 自社での運用が困難な場合はMSS(マネージドセキュリティサービス)の活用を積極的に検討します。専門ベンダーへの委託により運用負荷を軽減し高度なセキュリティレベルを確保できます。
    • 自社運用の場合でも担当者の教育・トレーニングやインシデント対応計画(IRP)の策定と訓練が重要です。

これらの注意点を事前に把握し自社の状況に合わせた対策(適切な製品選定、費用対効果評価、運用計画策定、外部サービス活用検討)を行うことがIDS/IPS導入を成功させる鍵となります。

4. 【失敗しない】不正侵入検知システムの選び方と比較ポイント

自社の環境やニーズに最適な不正侵入検知システム(IDS/IPS)を選定することは導入効果を最大化するための重要なステップです。多様な製品・サービスの中から適切なものを選ぶために管理部門や決裁者が押さえておくべき主要な比較ポイントを解説します。

比較ポイント1:検知方式と検知能力 どのような方式で脅威を検知するかが基本です。

  • 方式の種類:
    • シグネチャ型: 既知攻撃パターンで検知。精度は高いが未知脅威に弱い。
    • アノマリ型: 通常と異なる振る舞いを検知。未知脅威発見の可能性があるが誤検知も。
    • ハイブリッド型: 両方式を組み合わせる主流の方式。
  • 確認事項: 自社が重視する脅威(既知/未知)、許容できる誤検知レベル、運用負荷を考慮し最適なバランスの製品を選びます。対応プロトコルや攻撃カテゴリのカバレッジ(網羅性)も確認します。

比較ポイント2:設置場所(導入形態) どこに設置するかで監視範囲や運用方法が異なります。

  • 形態の種類:
    • ネットワーク型(NIDS/NIPS): ネットワーク経路上で通信全体を監視(アプライアンス、仮想、クラウド型)。
    • ホスト型(HIDS/HIPS): サーバー等にエージェントを導入しデバイス内部を監視。
  • 確認事項: 守りたい対象、既存インフラ、管理容易性を考慮し選択。両者を組み合わせることも有効です。クラウド型(SaaS)は初期投資抑制や運用負荷軽減のメリットがあります。

比較ポイント3:検知精度、誤検知率、チューニング 効果的な運用には高い検知精度と低い誤検知率が重要です。

  • 評価方法: ベンダースペックだけでなく第三者評価レポート導入事例を参考にします。可能であればPoC(概念実証)を自社環境で実施し実際の精度や影響を確認することが最も確実です。
  • チューニング機能: 誤検知・過検知抑制のため検知ルールを柔軟に調整できるか(ルール有効/無効化、閾値調整、ホワイトリスト機能等)を確認します。管理画面の使いやすさも運用負荷に関わります。

比較ポイント4:運用体制(自社運用 vs MSS) 導入後の運用をどうするかを事前に決定します。

  • 考慮事項: 自社に専門知識を持つ人材や24/365体制が確保できるか評価します。
  • MSSの検討: 自社運用が困難な場合マネージドセキュリティサービス(MSS)が有力な選択肢です。専門ベンダーが監視・運用を代行し運用負荷を軽減できます。サービス範囲、SLA、費用を比較検討します。製品選定と運用体制検討はセットで行います。

比較ポイント5:パフォーマンスとスケーラビリティ システムの処理能力が低いとネットワーク遅延や検知漏れの原因になります。

  • 確認事項: 自社のネットワーク帯域やピーク時トラフィックを考慮し十分なスループットを持つ製品を選びます。特にIPSではレイテンシ(遅延)影響を確認。将来的な拡張性(スケーラビリティ)やライセンスコストも確認します。

比較ポイント6:管理・レポート機能と連携 運用効率向上のため管理画面やレポート、連携機能を確認します。

  • 確認事項:
    • 管理画面: 直感的で分かりやすいか、日本語対応か。
    • レポート機能: 定期レポート自動生成、内容の有用性、経営層向けレポート作成可否。
    • 連携機能: ファイアウォール、SIEM、EDR等他のセキュリティシステムとのAPI連携が可能か。連携により高度な分析や自動化が可能になります。

比較ポイント7:サポート体制とベンダー信頼性 問題発生時のサポート体制は重要です。

  • 確認事項: 日本語サポート、対応時間、SLA(応答時間等)、情報提供(新脅威、更新情報)。ベンダーの実績、技術力、経営安定性も評価します。

比較ポイント8:コストと費用対効果(ROI) 最終判断にはコストが関わります。

  • 確認事項: 初期費用、継続費用(保守、ライセンス、MSS等)全てのコスト項目を明確にしTCO(総所有コスト)を比較。ROI試算を行い投資対効果を評価・説明できるようにします。

これらのポイントを総合的に比較検討しPoC等を通じて自社に最適なIDS/IPSを選定することが導入成功の鍵です。

5. 効果を最大化する!導入後の安定運用と多層防御

不正侵入検知システム(IDS/IPS)は導入後の安定した運用と他のセキュリティ対策と連携させた多層防御体制の構築があって初めてその真価を発揮し継続的に企業資産を守ることができます。ここではIDS/IPSの効果を最大化するための運用ポイントと連携について解説します。

安定運用を実現する5つのポイント

  1. 徹底した初期チューニングと継続的な最適化:
    • 初期チューニング: 導入直後は監視モードでイベントを収集・分析し業務に必要な正常通信をホワイトリスト化するなどして不要アラートを削減。これが最も重要です。
    • 継続的チューニング: ネットワーク環境や業務の変化に合わせ検知ルールを定期的に見直し最適化するサイクルを確立。チューニングを怠ると誤検知増大や検知漏れのリスク。
  2. アラート監視・分析体制と対応フローの整備:
    • 監視体制: アラート確認担当、時間、方法を明確化。24/365監視が必要ならMSS活用も検討。
    • アラート評価: アラート発生時、真の脅威か誤検知かを迅速・正確に判断。重要度を評価し対応優先順位を決定。
    • 対応フロー文書化: 重要度に応じた具体的な対応手順(調査、連絡、遮断判断、エスカレーション等)を事前に文書化・共有。
  3. 定期的なレポーティングとKPIによる効果測定:
    • 運用可視化: アラート件数、種類、対応状況等をまとめたレポートを定期的に作成・レビューし攻撃傾向や運用状況を把握。
    • KPI設定: 誤検知率平均初動対応時間未対応アラート数等のKPIを設定・測定し運用品質を評価・改善。
    • 経営層報告: インシデント未然防止による削減コストROI等ビジネス視点での効果を報告。
  4. シグネチャとソフトウェアの継続的な更新:
    • シグネチャ更新: ベンダー提供の最新シグネチャを迅速に適用し新たな脅威に対応。
    • ソフトウェア更新: IDS/IPS自体の脆弱性修正パッチやバージョンアップを計画的に適用しシステムを安全に保つ。
  5. 運用担当者のスキルアップとナレッジ共有:
    • 教育: 自社運用の場合担当者へ定期的なトレーニングや外部研修機会を提供。
    • ナレッジ共有: 対応事例やチューニングノウハウ等を文書化し組織内で共有する仕組みを構築。

多層防御におけるIDS/IPSの役割と連携

IDS/IPSは他のセキュリティ対策と連携させることでより強固な多層防御(Defense in Depth)体制を構築できます。

  • ファイアウォール(FW): FWが入口防御、IDS/IPSが内部監視。検知情報をFWに連携し自動遮断も可能。ログ相関分析で攻撃全体像を把握。
  • WAF(Web Application Firewall): WAFがWebアプリ層攻撃防御、IDS/IPSがネットワーク/OS層攻撃や内部不正検知。Webサーバー保護に効果的。
  • EDR(Endpoint Detection and Response): IDS/IPSがネットワーク異常検知、EDRが端末挙動監視。連携で侵入から端末活動まで攻撃連鎖を包括的に把握し迅速対応。
  • SIEM(Security Information and Event Management): 各種ログを一元収集・相関分析。IDS/IPSアラートをSIEMに取り込み高度な脅威検知やアラート重要度判断。SOC運用の核。
  • UTM(Unified Threat Management): 複数機能を統合。中小規模向けだが専用機より機能制限あり。大規模環境では専用IDS/IPSとUTMを使い分ける構成も。

これらの運用ポイント実行と他対策との連携最適化によりIDS/IPS導入効果は最大化され変化する脅威に持続的に対抗できるコスト効率と防御効果を両立した堅牢なセキュリティ体制が実現します。

(まとめ) 本記事では不正侵入検知システム(IDS/IPS)の重要性、導入メリット、そして導入成功のための選定・運用ポイントを解説しました。巧妙化するサイバー攻撃に対し境界防御だけでは不十分でありIDS/IPSは内部侵入や未知の脅威を早期検知し被害を最小限に抑えるための不可欠なセキュリティ対策です。その導入メリットリアルタイム脅威検知による迅速対応とコスト削減、未知攻撃への対策強化、インシデント時の原因究明効率化コンプライアンス対応強化企業信頼性向上など多岐にわたります。しかし効果を最大化するには自社に適した製品・サービスの選定、導入後の継続的なチューニング適切な監視・分析体制構築他対策との連携が極めて重要です。コスト、誤検知、専門知識の必要性といった注意点を理解し必要に応じてMSS活用も検討すべきです。不正侵入検知システムの導入と適切な運用はもはや単なるIT投資ではなく企業の事業継続性を守り競争力を強化するための戦略的な経営判断です。本記事を参考に貴社のセキュリティ対策を見直しより堅牢な防御体制構築への一歩を踏み出すことを願います。継続的な改善と投資で未来のリスクに備えましょう。

SFAは活用されてこそ意味がある

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