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SFA JOURNAL by ネクストSFA

MDRとEDRの違いとは?セキュリティ運用を最適化する選択ガイド【2025年版】

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

巧妙化・高度化の一途をたどるサイバー攻撃に対し、企業のエンドポイントセキュリティ対策はますます重要になっています。その中核としてEDR(Endpoint Detection and Response)が注目され、導入する企業が増えています。EDRは、従来のアンチウイルスでは防御困難な脅威を検知し、迅速な対応を可能にする強力なツールです。

しかし、「EDRを導入したはいいものの、運用が追いつかない」という声も少なくありません。「大量のアラートに対応できない」「分析できる専門家がいない」「24時間365日の監視は不可能」といった「運用」における深刻な課題に直面しているのです。EDRはあくまで「ツール」であり、その能力を最大限に引き出すには、適切な運用体制と専門知識が不可欠となります。

このようなEDR運用における課題を解決するアプローチとして、近年急速に普及しているのがMDR(Managed Detection and Response)です。MDRはEDRとは異なり、「サービス」として提供され、企業のセキュリティ運用を外部の専門家が支援します。

本記事では、企業の管理部・決裁者の皆様が適切な判断を下せるよう、EDRとMDRの根本的な違いを明確にし、MDRサービスがもたらす具体的な価値(メリット)、そして自社の状況に合わせてどちらを選択すべきかの判断基準について、分かりやすく徹底解説します。この記事を通じてEDRとMDRへの理解を深め、貴社のセキュリティ運用体制の最適化、そしてビジネスの保護に繋がる具体的な検討を進めるための一助となれば幸いです。

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CMS設定(WordPress、Movable Type、EC-CUBEの運用に適した設定を行います。)
アクセス制御
国別フィルタ
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レポート機能
専用フォーム(各種お問い合わせは専用フォームで承ります。履歴管理も可能です。)
Amazon Web Services, Inc. AWS WAF
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  • アカウント乗っ取り詐欺の防止
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  • フル機能 API
  • リアルタイムの可視性
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Web ACL 月あたり (時間で案分) USD 5.00
ルール 月あたり (時間で案分) USD 1.00
リクエスト USD 0.60/100 万件のリクエスト (最大 1500 WCU およびデフォルトの本文サイズの検査*)
Bot Control と Fraud Control 上記のタブによる追加費用
ウェブトラフィックフィルタリング
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フル機能 API
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株式会社ROCKETWORKS 詳細はこちら ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 イージスWAFサーバセキュリティ
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  • AWSをはじめ最新のクラウド環境にも対応
  • 人気ECサイト、Webサービスも安心の低負荷・低遅延
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イージスサーバセキュリティタイプ
月額/50,000円

イージスDDoSセキュリティタイプ
~2Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥40,000
~5Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥60,000
~10Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥120,000
~50Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥198,000
~100Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥250,000
~200Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥450,000
200Mbps以上 別途見積もり
サイバー攻撃の検出/遮断
月次レポート
サイバーセキュリティに関するアドバイザリー
法務相談(オプション)
SBテクノロジー株式会社
詳細はこちら
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Imperva WAF
  • 自動学習機能による導入運用負荷軽減
  • 細かなポリシー設定
  • 簡単に導入可能
  • Imperva 独自の研究機関『ADC』
  • 仮想パッチの適用
- Web Application Firewall
株式会社セキュアスカイ・テクノロジー Scutum
  • かんたん導入 約1週間
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~500kbps 初期費用 98,000円 月額 29,800円
~5Mbps 初期費用 98,000円 月額 59,800円
~10Mbps 初期費用 98,000円 月額 128,000円

~50Mbps 初期費用 198,000円 月額 148,000円
~100Mbps 初期費用 198,000円 月額 198,000円
~200Mbps 初期費用 198,000円 月額 298,000円
200Mbps 初期費用198,000円 100Mbps毎に100,000円加算
1 ブロック機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を遮断する機能
2 モニタリング機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を記録する機能 (通信自体は遮断されません)
3 防御ログ閲覧機能 ブロック(モニタリング)した通信をログとして保存し、閲覧できる機能
4 レポート機能 下記の内容を管理画面上で報告する機能
 ・攻撃元(IPアドレス)top5
 ・攻撃種別top5
 ・防御ログの月別ダウンロード
5 ソフトウェア更新機能 防御機能等を向上させるため、ソフトウェアを更新する機能
6 防御ロジック更新機能 防御効果の向上を図るため、不正な通信パターンを随時最新の状態に更新する機能
7 特定URL除外機能 Webサイト中のWAF機能を利用したくない箇所を防御対象から除外する機能
8 IPアドレスの拒否/許可設定機能 特定のIPアドレスからの通信を拒否、もしくは特定のIPアドレスからの通信のみ許可する機能
9 脆弱性検査用IPアドレス管理機能 Webサイトへの脆弱性診断等を行う際、設定したIPアドレスからの通信についてブロック/モニタリングを行わない機能
10 SSL/TLS通信機能 暗号化された通信についても解読し、防御する機能
11 API機能 Scutumで検知した防御ログや詳細な攻撃リクエスト内容をAPI経由で取得できる機能
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社 SmartConnect Network & Security
  • めんどうなセキュリティ対策をまるっとおまかせ
  • 変化するビジネス要件に、柔軟に対応できる
  • 安心・セキュアを継続できる品質と実績
- UTM
WAF
DDoS
Webプロキシ
メールセキュリティ
ロードバランサ
VPN
株式会社モニタラップ AIONCLOUD WAAP
  • ひとつのコンソールで提供する統合セキュリティ
  • 進化する脅威に対応するアプリケーションセキュリティサービス
- WAF
Webアプリケーションを既存の攻撃、ゼロデイ攻撃などから防御します。

APIセキュリティ
企業のAPIに対する可視性を提供し脅威を遮断します。

ボット緩和
ボットのトラフィックを管理し、Webサイトを保護します。

DDoS保護
アプリケーション階層のDDoS攻撃から企業のWebサイトを守ります。
フォーティネットジャパン合同会社 FortiWeb
  • WEBアプリケーション保護
  • 機械学習に基づいた脅威検知
  • セキュリティ ファブリックの統合
  • 高度な分析
  • 誤検知の減災
  • ハードウェアベースのアクセラレーション
- アプリケーションのセキュリティ
コンテンツセキュリティ
デバイスのセキュリティ
NOC/SOC セキュリティ
ウェブセキュリティ
管理された検出と対応
SOC-as-a-Service
インシデント対応サービス
サイバーセキュリティの評価と準備状況
バラクーダネットワークス Barracuda Web Application Firewall
  • Web攻撃とDDoSを確実に防止
  • 悪意のあるボットの動きを完全に静止
  • APIとモバイルアプリの保護
  • きめ細かなアクセス制御と安全なアプリ配信を実現
  • セキュリティの自動化と統合
  • 攻撃とトラフィックパターンの可視化
- WebアプリケーションとAPIの保護

+ OWASPおよびゼロデイ攻撃に対する保護
+ 高度なボット攻撃からアプリケーションを保護
+ API保護
+ サーバクローキング
+ URL暗号化
+ GEO IPとIPレピュテーションチェック
+ マルウェア対策とウィルス対策
+ マルチプロトコルサポート
+ アプリケーションDDoS対策
+ 大規模なDDoSの防止
+ JSONセキュリティ
+ XMLファイアウォール
+ アクティブ脅威インテリジェンス
+ クライアントサイドプロテクション

アプリケーションデリバリ
+ アプリケーションの負荷分散と監視
+ コンテンツルーティング
+ キャッシュ、圧縮、トラフィックの最適化

データ保護とコンプライアンス
+ アウトバウンドDLP
+ コンプライアンス認証

IAM
+ SAMLサポートとSSO
+ クライアント証明書ベースの認証
+ AD FSとの統合
+ LDAP、Kerberos、およびRADIUSとの統合
+ 2要素認証

レポート
+ Barracuda Active Threat Intelligenceダッシュボード
+ 直感的なドリルダウンレポート
+ 包括的なログ
+ SIEMとの統合

管理
+ HAクラスタリング
+ ロールベースの緻密なアクセス制御
+ REST APIによる自動化とスケーラビリティ
+ 統合的なDevSecOpsの有効化
+ デフォルトのセキュリティテンプレート

中央管理
+ 単一コンソール
+ 証明書の中央管理
+ 中央管理通知とアラート

使いやすさ
+ アプリケーション学習(アダプティブプロファイリング)
+ 仮想パッチと脆弱性スキャナとの統合
+ 自動構成エンジン
セコムトラストシステムズ株式会社 マネージドWAFサービス
  • AWS、Azure 等の、各種クラウド環境でも利用することができます。
  • メーカーシグネチャに加え、個別シグネチャを迅速に作成することができます。
  • クラウド型なので直ぐにご利用いただけます。(※大規模システム向けにはオンプレミス型(マネージドWAFサービス標準型)も提供できます)
  • ストラッツ(Struts)の脆弱性対策も実施することができます。
  • クレジットカード番号の外部流出を検知し防止することができます。
  • DDoS攻撃対策も実施することができます。(オプション)
- DDoS対策
ファイアウォール
IPS
WAF
Amazon Web Services, Inc. AWS Shield
  • AWS Shield Standard
    ↳基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
    ↳インラインの攻撃緩和
  • AWS Shield Advanced
    ↳アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
    ↳正常性に基づく検出
    ↳高度な攻撃緩和機能
    ↳自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
    ↳積極的なイベント応答
    ↳保護グループ
    ↳可視性と攻撃の通知
    ↳DDoS コスト保護
    ↳専門サポート
    ↳グローバルな可用性
    ↳一元化された保護管理
- AWS Shield Standard
基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
インラインの攻撃緩和

AWS Shield Advanced
アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
正常性に基づく検出
高度な攻撃緩和機能
自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
積極的なイベント応答
保護グループ
可視性と攻撃の通知
DDoS コスト保護
専門サポート
グローバルな可用性
一元化された保護管理

まずはEDRをおさらい:その機能と導入後の「運用」における課題

MDRとの違いを正確に理解するために、まずはEDR(Endpoint Detection and Response)の基本的な機能、役割、そして導入後に多くの企業が直面する運用上の課題について整理しておきましょう。

  • EDR(Endpoint Detection and Response)とは? 基本機能と目的 EDRは、PC、サーバー、モバイルデバイスなどのエンドポイント(端末)に導入されるセキュリティ製品(ソフトウェアツール)です。エンドポイント内部のプロセス実行、ファイル操作、ネットワーク通信、レジストリ変更といったアクティビティを継続的に監視・記録します。その主な目的は、従来のアンチウイルス(EPP)が主に既知のマルウェア侵入を防ぐ(防御)ことに焦点を当てるのに対し、EDRは「侵入されること」を前提として、侵入後にエンドポイント内部で発生する不審な挙動(振る舞い)を検知し、インシデントの調査と迅速な対応(Response)を支援することにあります。主な機能として、エンドポイント活動の監視・記録(テレメトリ収集)、振る舞い検知や機械学習を用いた脅威検知、インシデント調査支援(フォレンジック機能)、そして端末隔離やプロセス停止といったリモート対応機能が挙げられます。
  • EDR導入で期待される効果 EDRの導入により、企業は次のような効果を期待できます。
    • 高度な脅威への対策強化: 未知のマルウェア、ランサムウェア、ファイルレス攻撃など、EPPをすり抜ける脅威に対する防御力が向上します。
    • インシデント被害の極小化: 脅威を早期に発見し、感染端末を迅速に隔離・封じ込めることで、組織全体への被害拡大を防ぎます。
    • インシデント対応の迅速化と原因究明: 詳細なログと調査機能により、インシデント対応時間を短縮し、根本原因を特定することで効果的な再発防止策に繋げます。
  • EDR導入だけでは解決しない「運用」の壁 EDRは強力なツールですが、「導入すれば安心」というわけではありません。むしろ、その効果を最大限に引き出すためには、導入後の「運用」こそが重要であり、多くの企業がここで課題に直面します。
    • ① アラート対応の負荷: EDRは詳細な監視を行うがゆえに、多数のアラートを生成します。これらのアラートが真の脅威か誤検知かを見極めるトリアージ作業は、セキュリティ担当者に多大な負荷を強います。「アラート疲れ」から重要な脅威を見逃すリスクも指摘されています。
    • ② 高度な専門知識の必要性: EDRアラートの分析、脅威の深刻度判断、影響範囲調査、適切な対応策の実行には、サイバー攻撃、マルウェア、フォレンジックに関する高度な専門知識と経験が求められます。
    • ③ 24時間365日体制の困難さ: 攻撃は時間を問わず発生するため、常時監視と即時対応が理想ですが、これを自社で実現・維持するのは、コストと人員の両面で極めて困難です。
    • ④ 継続的なチューニングの必要性: 誤検知を減らし、自社環境に最適化された検知精度を維持するためには、EDR設定の継続的なチューニングが必要ですが、これにも専門知識と工数がかかります。
    • ⑤ セキュリティ人材の確保・維持: 上記スキルを持つ専門人材は市場で不足しており、採用・育成・維持には高額なコストがかかります。

これらの運用課題を自社リソースだけで解決できない場合、高価なEDRツールを導入しても、その価値を十分に引き出せない状況に陥る可能性があります。

 MDR(Managed Detection and Response)とは何か?EDR運用を支援するサービス

EDR導入後の運用課題に対する有力な解決策として注目されているのが、MDR(Managed Detection and Response)です。MDRはEDRのような特定の「製品」を指すのではなく、専門家によるセキュリティ運用を提供する「サービス」です。

  • MDRの定義:「EDR等を活用した」マネージド・セキュリティ・サービス MDRは、企業が導入しているEDR製品(あるいはMDRサービス提供側が用意するEDR)などのセキュリティツールから得られるデータ(ログやアラート)を、外部の専門家チーム(多くの場合、SOC: Security Operation Center)がリモートで24時間365日体制で監視・分析し、脅威の検知、インシデントの調査、そして対応までを代行または支援するマネージド型のセキュリティサービスです。MDRは、単にツールを監視するだけでなく、「人(高度なスキルを持つ専門家)」「プロセス(確立された運用手順)」「テクノロジー(EDR、脅威インテリジェンス等)」を効果的に組み合わせることで、高度なセキュリティ運用を実現します。企業のセキュリティチームの一員として、あるいはその代替として機能し、脅威の検知(Detection)と対応(Response)を専門的に行います。
  • MDRサービスの主な提供内容 提供される具体的なサービス内容はMDRベンダーによって異なりますが、一般的に以下のような要素が含まれます。
    • 24時間365日のリアルタイム監視: EDR等から送られてくるアラートやログを、セキュリティ専門家が常時監視します。
    • アラート分析・トリアージ: 大量のアラートの中から、誤検知を除去し、脅威の深刻度を評価。緊急度・重要度に応じて対応が必要なインシデントを特定し、顧客に通知します。
    • プロアクティブな脅威ハンティング: アラートとして顕在化していない潜在的な脅威の兆候を、専門家が能動的にログデータ等から探索します(Threat Hunting)。
    • インシデント調査支援・分析: 検知された脅威について、攻撃手法、侵入経路、影響範囲などを詳細に調査・分析し、分かりやすいレポートとして提供します。
    • 対応・復旧支援: 脅威の封じ込め(例:EDRへの端末隔離指示の実行支援)、マルウェア駆除、システム復旧など、具体的な対応策の提案や実行支援、アドバイスを提供します。
    • 定期的なレポート提供: 月次などで、監視状況、検知した脅威の傾向、対応状況、セキュリティ体制に関する評価や改善提案などを報告します。
  • MDRサービスを支える重要な要素 高品質なMDRサービスは、以下の要素によって成り立っています。
    • 高度なスキルを持つ専門家チーム: 経験豊富なセキュリティアナリスト、インシデントレスポンダー、脅威ハンターなどの人材。
    • 最新かつ広範な脅威インテリジェンス: グローバルな脅威情報を収集・分析し、サービスに活用する能力。
    • 確立された運用プロセスと技術基盤: 効率的かつ効果的なサービス提供を支えるSOP(標準作業手順書)、分析プラットフォーム、自動化ツールなど。

MDRは、EDRという強力な武器を最大限に活かすための「運用力」を外部から調達する手段と言えます。

 【徹底比較】MDRとEDRの決定的な違い:5つのポイントで明確化

EDRとMDRは連携して使われることが多いものの、その本質は全く異なります。EDRは「製品(ツール)」、MDRは「サービス」です。この根本的な違いを理解するために、5つの重要なポイントで両者を比較してみましょう。

  • 比較ポイント1:提供形態 ~「製品/ツール」か「サービス」か
    • EDR: エンドポイントにインストールして使用するソフトウェア(またはハードウェアアプライアンスの場合も)製品です。機能は提供されますが、それをどのように設定し、運用するかは購入した企業次第です。ライセンス購入またはサブスクリプション契約が必要です。
    • MDR: EDRなどのツール群に加えて、専門家による運用(監視・分析・対応支援)、確立されたプロセス、脅威インテリジェンスなどをパッケージとして提供する包括的なセキュリティ運用サービスです。通常、月額や年額のサービス利用料が発生します。
  • 比較ポイント2:運用主体 ~「自社」か「外部ベンダー」か
    • EDR: 導入後、アラートの監視、脅威分析、インシデント調査、対応といった日々の運用は、基本的に自社のセキュリティ担当者(または情報システム部など)が行います。
    • MDR: これらの運用業務の大部分、あるいは契約範囲によっては全てを、外部のMDRサービスプロバイダーが主体となって実施します。導入企業の担当者は、MDRからの報告・通知に基づき、連携して対応を進めたり、最終的な意思決定を行ったりします。
  • 比較ポイント3:必要なリソース ~「社内体制・人材」か「サービス利用料」か
    • EDR: 効果的な運用のためには、自社で専門知識を持つ人材を採用・育成し、場合によっては24時間365日の監視・対応体制や運用プロセスを構築・維持する必要があります。これには相応の人件費、教育費、体制維持コストがかかります。
    • MDR: 上記のような社内リソース(特に高度な専門人材や24/365体制)への投資を大幅に削減できます。必要なコストは主にMDRサービスの利用料となります(ただし、MDRとの連携や報告を受けるための社内担当者は必要です)。
  • 比較ポイント4:主な提供価値 ~「ツール機能」か「運用成果」か
    • EDR: 高度な脅威検知・対応といったツール自体が持つ機能が主な提供価値です。
    • MDR: 専門家による高度な分析・対応能力の提供24時間365日監視による安心感セキュリティ運用負荷の軽減、インシデント対応の迅速化・高度化という運用サービスのアウトプット(成果)が主な提供価値です。
  • 比較ポイント5:責任範囲 ~「自社責任」か「SLAに基づくベンダー責任」か
    • EDR: ツールを導入・運用する中でインシデントを見逃したり、対応が遅れたりした場合、その最終的な責任はツールを運用する自社にあります。
    • MDR: サービスレベル合意(SLA)に基づき、契約で定められた範囲内での脅威の検知や対応について、MDRサービスプロバイダーが一定の責任を負います。ただし、全てのインシデントの検知・防御を保証するものではなく、責任範囲は契約内容によって異なります。

このように、EDRは自社で運用するための「道具」、MDRはその道具を含む運用全体を専門家が代行・支援する「サービス」と理解することが、両者を検討する上での基本となります。

 MDRサービス導入のメリットと考慮点:なぜ注目されるのか?

EDR運用における課題を背景に、MDRサービスへの関心が高まっています。MDRを導入することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。また、導入にあたって考慮すべき点も合わせて解説します。

MDR導入の主なメリット

  • メリット1:高度な専門知識・スキルへの即時アクセス 最大のメリットは、採用・育成が困難なサイバーセキュリティの専門家(アナリスト、インシデントレスポンダー、脅威ハンター等)の知見と経験を、サービス利用を通じて即座に活用できる点です。自社だけでは対応が難しい高度な脅威分析やインシデント対応が可能になります。
  • メリット2:24時間365日の切れ目のない監視・対応体制 多くの企業にとって自社での構築・維持が困難な24時間365日体制でのセキュリティ監視とインシデント対応を実現できます。これにより、業務時間外や休日を狙った攻撃に対しても、迅速な検知と初動対応が可能となり、被害の最小化に繋がります。
  • メリット3:セキュリティ運用に関わる社内負荷の大幅な軽減 EDRアラートの常時監視、分析、トリアージ、誤検知判断、初期調査といった負荷の高い定常業務をMDRプロバイダーに委任できます。これにより、社内のセキュリティ担当者は、より戦略的な業務(セキュリティポリシー策定、脆弱性管理、従業員教育など)にリソースを集中させることが可能になります。
  • メリット4:最新かつ広範な脅威インテリジェンスの活用 MDRプロバイダーは、グローバルな情報網を通じて最新の脅威情報(攻撃手法、マルウェア、脆弱性情報など)を常に収集・分析し、それを検知ルールや分析プロセスに反映させています。利用企業は、常にアップデートされた知見に基づいた高度な防御を享受できます。
  • メリット5:迅速かつ効果的なインシデント対応能力の向上 重大なインシデント発生時、経験豊富な専門家による的確な分析と確立されたプロセスに基づいた、迅速かつ効果的な対応支援が受けられます。これにより、インシデント収束までの時間を短縮し、事業への影響を最小限に抑えることが期待できます。

MDR導入時の考慮点(デメリットとなりうる点)

  • コスト: 専門家による高度なサービスであるため、一般的にEDRツールのライセンス費用と比較してサービス利用料は高額になる傾向があります。特に中小企業にとっては予算的なハードルとなる可能性があります。ただし、自社で同等の体制を構築・維持するコスト(人件費、教育費等)と比較検討(TCO比較)する必要があります。
  • 外部への依存: セキュリティ運用の中核を外部に委託することになるため、MDRプロバイダーの選定が非常に重要になります。サービス品質、信頼性、コミュニケーション、契約内容(SLA、責任範囲)などを慎重に評価する必要があります。特定のベンダーにロックインされる可能性も考慮が必要です。
  • 自社環境への理解: MDRプロバイダーが効果的なサービスを提供するためには、自社のIT環境、ビジネス、セキュリティポリシーなどを正確に理解してもらう必要があります。導入初期や運用中の情報共有と円滑なコミュニケーションが不可欠です。

これらのメリットと考慮点を踏まえ、自社の状況にMDRサービスが合致するかを判断することが重要です。

 EDR自社運用 vs MDRサービス利用:自社に最適な選択肢は?

EDRを導入する際、自社で運用体制を構築するか、MDRサービスを利用するかは、企業のセキュリティ戦略における重要な分岐点です。どちらが「正解」というわけではなく、自社の状況やニーズに合わせて最適な選択をすることが重要です。ここでは、その判断を下すための主要な基準と、それぞれの選択肢が適していると考えられるケースについて解説します。

  • 判断基準1:社内のセキュリティ人材・専門知識のレベル
    • 考慮点: EDRのアラートを分析し、脅威ハンティングを行い、インシデント調査・対応を完遂できる高度なスキルを持つ人材が社内に十分にいますか?継続的なスキルアップや育成の体制は整っていますか?
    • EDR自社運用向き: 専門チームが存在し、必要なスキルセットが揃っている場合。
    • MDR利用向き: 専門人材が不足している、採用・育成が現実的に困難な場合。
  • 判断基準2:24時間365日監視・対応体制の必要性と実現可能性
    • 考慮点: 事業特性上、深夜や休日でもインシデント発生時に即時対応が求められますか?自社でシフト勤務などを組んで24/365体制を構築・維持することはコストや人員配置の観点から可能ですか?
    • EDR自社運用向き: 24/365体制が必須ではない、または自社で実現可能なリソースがある場合。
    • MDR利用向き: 24/365体制が必須であり、自社での構築が困難な場合。
  • 判断基準3:セキュリティ運用に投入できる予算とリソース(TCO比較)
    • 考慮点: EDRツールのライセンス費用だけでなく、運用に必要な人件費(専門人材の高給与含む)、教育費、体制維持費などを考慮したTCO(総所有コスト)を試算できますか?MDRのサービス利用料と比較して、どちらが長期的・総合的に見て合理的ですか?
    • EDR自社運用向き: 運用関連コストを含めても、自社運用の方がTCOを抑えられると判断できる場合。
    • MDR利用向き: 専門人材採用や体制構築のコストよりMDRサービス料の方が費用対効果が高い、あるいは予算管理がしやすい場合。
  • 判断基準4:求めるセキュリティレベルとインシデント対応速度
    • 考慮点: 最新の脅威インテリジェンスを活用した高度な分析や、プロアクティブな脅威ハンティングを求めますか?インシデント発生から検知、対応完了までの時間(MTTD, MTTR)をどれだけ短縮したいですか?
    • EDR自社運用向き: 自社の努力とリソースで目標とするレベルや速度を達成できる見込みがある場合。
    • MDR利用向き: より高度な分析能力や迅速な対応速度を、外部の専門知識・体制を活用して早期に実現したい場合。
  • 判断基準5:組織の規模と複雑性
    • 考慮点: エンドポイント数やネットワーク構成、利用しているシステム・アプリケーションはどの程度複雑ですか?
    • EDR自社運用向き: 比較的小規模でシンプルな環境の場合、自社運用も現実的な選択肢となりやすい。
    • MDR利用向き: 大規模で複雑な環境の場合、監視・分析対象が多くなり運用負荷が高まるため、MDRのメリットが大きくなる傾向がある。

推奨ケースのまとめ

  • EDR自社運用:専門人材・体制が整っており、24/365が必須でなく、TCOで有利、かつ独自の運用ポリシーを重視する場合。
  • MDRサービス利用専門人材不足、24/365体制が必要、運用負荷軽減を優先、最新の知見を活用したい、高度な対応力を早期に獲得したい場合。特に中堅・中小企業や、大企業でもセキュリティ運用リソースが限られている場合に有効な選択肢。

自社の状況をこれらの基準に照らし合わせ、冷静に評価・検討することが、最適な選択への道筋となります。

 まとめ:EDRとMDRの違いを理解し、自社のセキュリティ運用を最適化する

本記事では、「MDR EDR 違い」をキーワードに、EDR(Endpoint Detection and Response)とMDR(Managed Detection and Response)の基本的な役割、機能、そして両者の本質的な違いについて解説しました。さらに、MDRサービスがもたらすメリットと考慮点、そして企業の状況に応じてEDRの自社運用とMDRサービスのどちらを選択すべきかの判断基準についても具体的に示しました。

重要なポイントを改めて整理します。

  • EDRは「製品/ツール」: エンドポイントの高度な脅威検知と対応機能を提供しますが、その効果的な運用には専門知識と体制が不可欠です。
  • MDRは「サービス」: EDRなどのツールを活用し、外部の専門家チームが24時間365日体制で監視・分析・対応支援を提供する包括的なセキュリティ運用サービスです。
  • EDR運用の課題: アラート対応負荷、専門知識不足、24/365体制構築困難、人材確保難などが、EDR導入後の現実的な課題として挙げられます。
  • MDRの提供価値: これらの運用課題を解決し、高度な専門性へのアクセス、常時監視体制、運用負荷軽減、最新インテリジェンス活用、迅速なインシデント対応力を提供します。

どちらの選択肢が最適かは、自社のセキュリティ人材の状況、24時間体制の必要度、予算・リソース、そして求めるセキュリティレベルや対応速度などを総合的に評価して判断する必要があります。自社運用が可能であればEDRの導入・運用、それが困難であればMDRサービスの活用が有力な選択肢となります。

EDRという強力な「武器」を導入しても、それを効果的に使いこなす「運用力(人・プロセス・知見)」が伴わなければ、その価値は半減してしまいます。MDRは、その運用力を外部から補完・強化するための有効な手段です。両者の違いを正しく理解し、自社の実情に合った最適な選択を行うことが、持続可能で効果的なセキュリティ体制を構築し、巧妙化するサイバー脅威からビジネスを守るための鍵となります。

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