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SFA JOURNAL by ネクストSFA

最適なEDR選定ガイド:企業規模別比較と導入成功の鍵

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

現代のビジネス環境において、サイバーセキュリティは単なるIT部門の課題ではなく、経営の根幹を揺るがしかねない最重要課題として認識されています。ランサムウェアによる事業停止、標的型攻撃による機密情報の窃取といったインシデントは、金銭的損失だけでなく、企業の社会的信用失墜にも直結します。企業を狙う脅威は日々高度化・巧妙化しており、従来のセキュリティ対策の中心であったアンチウイルスソフトウェア(EPP:Endpoint Protection Platform)だけでは対応が困難なケースが増加しています。EPPは既知のマルウェア検知には有効ですが、未知の脅威やファイルレス攻撃など、シグネチャに依存しない攻撃手法の前では限界があります。侵入を100%防ぐことが現実的に不可能な今、「侵入されること」を前提とした対策、すなわち侵入後の迅速な検知と対応(Detection and Response)が不可欠です。ここで中核的な役割を担うのがEDR(Endpoint Detection and Response)です。本記事では、EDRの基本から、製品比較選定のポイント、そして最も重要な企業規模(中小・大・グローバル)に応じた最適な選び方、導入成功のための注意点までを網羅的に解説します。セキュリティ担当者様、そして最終的な意思決定を行う決裁者様が、自社に最適なEDRソリューションを見極めるための一助となれば幸いです。

おすすめの不正侵入検知サービス一覧

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会社名 サービス名 特長 費用 主なサービス
株式会社サイバーセキュリティクラウド 株式会社サイバーセキュリティクラウド 詳細はこちら 攻撃遮断くん
  • 一社通貫の万全なサポート体制で、稼働率99.999%・解約率約0.97%の圧倒的な運用力を誇る
  • 20,000サイト以上の豊富な導入実績あり! SBI証券や厚生年金基金などの金融機関からANA、PARCO、代ゼミまで規模や業界問わず幅広く対応
  • 万が一サイバー攻撃により損害を受けた場合に、最大1,000万円を補償する保険を付帯可能
1サイト月額11,000円~
※別途、初期導入費用がかかる
お問い合わせ
攻撃検知AIエンジン搭載
サイバー攻撃対策
サイバー保険付帯
株式会社AndGo 株式会社AndGo 詳細はこちら Aikido Security
  • さまざまな脆弱性診断機能をオールインワンツールで提供、幅広いセキュリティ課題に包括的に対応
  • SaaS事業者からオンプレミスインフラを扱うエンタープライズまで世界3,000社で導入実績あり
  • アラートの自動トリアージ機能により、誤検知や過検知による重要アラートの見過ごしを防止
ベーシック:52,500円/月
プロ:105,000円/月
カスタム:要お問い合わせ
Webアプリケーション診断
プラットフォーム診断
クラウド診断
手動脆弱性診断
伴走サポート
株式会社スリーシェイク 株式会社スリーシェイク 詳細はこちら Securify(セキュリファイ)
  • 初期費用0円・最短1営業日でワンストップのセキュリティ対策を開始できる
  • 簡単3ステップで、3300項目以上の診断を実施
  • シンプルかつストレスフリーな操作性
  • リリースやアップデート時に課金なしで何度も診断可能
  • 【新機能リリース】攻撃対象になり得るIT資産を自動で棚卸し、管理できるASMを搭載!
ASMプラン:お見積り
BASICプラン:10万円/月額
STARTERプラン:5万円/月額
Freeプラン:0円/月額
※契約は年単位
お問い合わせ
ASM
Webアプリケーション診断
Wordpress診断
SaaS診断
トレンドマイクロ株式会社 TippingPoint
  • 機械学習による脅威の検知によりネットワーク全体を防御
  • 拡張性の高いシステム構成で大容量のネットワークに対応可能
  • 高性能な検知と対応の優先度を提供
要お問い合わせ 要お問い合わせ
株式会社東計電算 Total Security Function Service
  • 高機能、高セキュリティのマルウェア対策サービスが低コストで利用可能
  • 自社データセンターを活用したSaaS型サービス
  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
  • リアルタイムで侵入防御シグネチャを分析展開し、連携したネットワーク対応を実現
要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

EDRとは?基本機能とEPPとの決定的違い

EDR(Endpoint Detection and Response)とは、PC、サーバー、モバイルデバイスといった「エンドポイント」の動作を継続的に監視し、サイバー攻撃の兆候や疑わしい活動を検知・分析、そして迅速に対応するためのセキュリティソリューションです。従来のEPP(Endpoint Protection Platform)が、主にマルウェアの「侵入前」の防御(水際対策)に重点を置いているのに対し、EDRは「侵入後」のエンドポイント内部での脅威の振る舞いに着目し、インシデント対応能力を強化することを目的としています。EPPが玄関の鍵や警備員だとすれば、EDRは建物内部の監視カメラと、異常発生時に駆けつける対応チームのような役割を果たします。EDRの主要な機能は以下の4つに大別されます。

  • 監視とログ収集: エンドポイント上で発生するプロセス生成、ファイル操作、レジストリ変更、ネットワーク通信など、様々なイベントをリアルタイムで詳細に記録・収集します。これがインシデント発生時の状況把握と原因究明の基礎となります。
  • 脅威の検知: 収集したログデータやエンドポイントの動作を分析し、既知・未知のマルウェア、ファイルレス攻撃、不正な内部活動などを検知します。AI(人工知能)、機械学習、振る舞い検知、脅威インテリジェンスといった高度な技術が活用されます。
  • 分析と調査: 検知された脅威がどのような影響を及ぼすのか、攻撃の全体像、侵入経路、影響範囲などを調査・分析します。管理コンソール上でのログ可視化や相関分析により、インシデントの詳細把握を支援します。
  • 対応(レスポンス): 検知・分析された脅威に対し、被害拡大を防ぐための措置を迅速に講じます。感染端末のネットワークからの隔離、不正プロセスの強制終了、ファイルの削除といった対応をリモートから実行できます。

これらの機能を連携させることで、EDRはエンドポイントにおける脅威のライフサイクル全体に対応し、インシデント発生時の被害を最小限に抑え、ビジネス継続性を確保することに貢献します。

EDR導入で企業が得る戦略的メリット

EDRの導入は、単に新しいセキュリティツールを追加するという以上に、企業経営に対して多岐にわたる戦略的なメリットをもたらします。これらのメリットを理解することは、導入の意思決定において重要です。

  • インシデント被害の最小化: EDRはエンドポイント内部の不審な活動を早期に検知し、迅速な対応(隔離、プロセス停止等)を可能にします。これにより、マルウェア感染や不正アクセスが組織全体に拡大する前に封じ込め、事業停止や情報漏洩といった最悪の事態に至るリスクを大幅に低減します。結果として、復旧コスト、法的対応費用、ブランドイメージ毀損といった有形無形の損害を最小限に抑えることに繋がります。
  • インシデント原因の迅速な特定と再発防止: インシデント発生後、なぜ、どのように攻撃が成功したのかを正確に把握することは、効果的な再発防止策を講じる上で不可欠です。EDRが記録する詳細な操作ログや挙動データは、攻撃経路の特定、影響範囲の正確な把握、根本原因の究明を強力に支援します。これにより、調査時間を短縮し、より的確な対策立案を可能にします。
  • 潜在的脅威の可視化と排除: 従来の対策では見過ごされていた可能性のある、組織内に潜伏する脅威を発見できる点も大きなメリットです。攻撃者は検知を回避し長期間潜伏することがあります。EDRの継続的な監視と高度な分析能力は、このような隠れたリスクをあぶり出し、プロアクティブに排除することを可能にします。
  • セキュリティ運用負荷の軽減: 高度なEDR製品には、脅威検知後の一次対応(例:端末隔離)を自動化する機能が備わっています。これにより、セキュリティ担当者の初動対応負荷が軽減され、より高度な分析や戦略的な業務にリソースを集中させることができます。また、分析支援機能により、アラートのトリアージや調査も効率化されます。
  • コンプライアンスとガバナンスの強化: 各国の法規制や業界ガイドラインでは、インシデント発生時のログ記録保持や迅速な報告が求められることが増えています。EDRによる詳細なログ収集・保管機能は、これらのコンプライアンス要件への対応を支援し、企業のガバナンス体制強化にも寄与します。

このようにEDRは、単なる防御ツールではなく、リスク管理、運用効率化、コンプライアンス遵守といった経営課題の解決に貢献する戦略的な投資と位置づけることができます。

失敗しないEDR比較・選定の重要ポイント

市場には多種多様なEDR製品が存在するため、自社に最適なソリューションを選定するには、明確な比較軸に基づいた評価が不可欠です。機能の多さだけでなく、自社のセキュリティ要件、運用体制、予算、既存環境との整合性などを総合的に考慮する必要があります。以下に主要な比較・選定ポイントを挙げます。

  • 検知・分析能力: EDRの根幹機能です。既知・未知のマルウェア、ランサムウェア特有の挙動、ファイルレス攻撃などをどれだけ正確かつ迅速に検知できるか。AI機械学習、振る舞い検知の精度、脅威インテリジェンスの質と更新頻度、誤検知・過検知の少なさが重要です。
  • 対応(レスポンス)機能: 脅威検知後の対応オプションの豊富さと、その実行の迅速性・柔軟性が問われます。端末隔離、プロセス停止、ファイル削除などの基本的な自動・手動対応に加え、スクリプト実行などのカスタム対応が可能かも確認しましょう。
  • 管理コンソールの使いやすさ: 日々の運用効率に直結します。直感的で分かりやすいUIか、必要な情報に素早くアクセスできるか、レポート機能は充実しているか、日本語対応は十分かなどをデモ等で確認することが推奨されます。
  • 運用体制・サポート: ベンダーのサポート体制は重要です。日本語での技術サポート、対応時間、ナレッジベースの充実度を確認します。また、自社にSOC(Security Operation Center)がない、またはリソースが不足している場合、運用監視やインシデント対応を代行するMDR(Managed Detection and Response)サービスの提供有無とその質も重要な判断材料です。
  • 導入形態: クラウド(SaaS)、オンプレミス、ハイブリッドのいずれかを選択します。自社のITインフラ戦略、運用ポリシー、データ保管場所に関する要件(コンプライアンス)に基づいて決定します。
  • 他製品との連携: 既存のセキュリティエコシステム(SIEMSOAR、ファイアウォール、プロキシ等)とスムーズに連携できるかは、運用効率と分析能力向上に大きく影響します。API連携の可否や対応製品を確認します。
  • スケーラビリティ: 特に大企業や成長企業では、将来的なエンドポイント数の増加に対応できるスケーラビリティが重要です。
  • コスト: 初期導入費用、ライセンス費用(端末数課金、機能別課金など)、年間の保守費用、MDRサービス利用料など、TCO(総所有コスト)を把握し、予算内で最大の効果を得られる製品を選定します。

これらのポイントを基に優先順位をつけ、複数の製品を客観的に評価することが、EDR選定で失敗しないための鍵となります。

【規模別】最適なEDR選び方:中小・大企業・グローバル企業

EDR製品を選定する上で、自社の企業規模や特性を考慮することは極めて重要です。必要とされる機能、運用体制、予算感は規模によって大きく異なるため、それぞれに適した製品タイプを見極める必要があります。

1. 中小企業(SMB)向けの選び方

  • 重視すべきポイント:
    • コストパフォーマンス: 限られた予算内で最大限の効果を得られること。
    • 導入・運用の容易さ: IT専任担当者が少ない、または不在でも管理・運用できるシンプルさ。直感的な管理画面。
    • 必要十分な機能: 高度すぎる機能よりも、基本的な脅威検知・対応能力が確実に備わっていること。
    • 自動化機能: 運用負荷を軽減するための、検知後の一次対応(隔離など)の自動化。
    • 手厚いサポート/MDR: 自社運用が難しい場合の、ベンダーサポートやMDRサービスの活用。
  • 適した製品の特徴: クラウドベース(SaaS)提供が多く、サーバー管理不要。シンプルなライセンス体系。MDRサービスとのセット提供がある。
  • 注意点: 高度なカスタマイズ性や、非常に詳細な分析機能は限定的な場合がある。

2. 大企業向けの選び方

  • 重視すべきポイント:
    • 高度な検知・分析能力: ゼロデイ攻撃APT(持続的標的型攻撃)など、巧妙な脅威に対応できる高性能なエンジン(AI機械学習、脅威ハンティング機能)。
    • 柔軟な対応オプション: 自動対応に加え、インシデントの詳細調査や手動での高度な対応が可能であること。
    • スケーラビリティ: 数千~数万台規模のエンドポイントを管理できる拡張性。
    • 既存システムとの連携: SIEM/SOARなど、他のセキュリティツールとの高度な連携による運用効率化と分析深化。
    • カスタマイズ性と詳細レポート: 自社のポリシーに合わせた細かい設定変更や、詳細な分析レポート作成機能。
  • 適した製品の特徴: 高機能・高性能。オンプレミスやハイブリッド構成の選択肢。豊富なAPI連携。専任チーム向けの高度な分析ツール。
  • 注意点: 導入・運用に専門知識が必要な場合が多い。比較的高コストになる傾向。

3. グローバル展開企業向けの選び方 大企業の要件に加え、以下の点が特に重要になります。

  • 重視すべきポイント:
    • 多言語対応: 各国の拠点で利用可能な管理コンソールと言語サポート。
    • 地域別データ保護規制への対応: GDPR(EU一般データ保護規則)など、各国のデータプライバシー法規制に準拠したデータ処理・保管が可能であること。
    • グローバルなサポート体制: 世界各地の拠点からの問い合わせに対応できるベンダーサポート体制。
    • 統一されたポリシー管理: 複数の国・地域にまたがるエンドポイントに対し、一貫したセキュリティポリシーを適用・管理できる機能。
    • ハイブリッド環境対応: クラウドとオンプレミスが混在する複雑なITインフラへの対応力。
  • 適した製品の特徴: グローバル規模での運用実績が豊富。データセンターの地域選択が可能。コンプライアンスレポート機能が充実。
  • 注意点: ライセンス体系やサポート契約が複雑になる可能性がある。地域ごとの導入調整が必要。

自社の事業規模、組織体制、IT環境、セキュリティ成熟度、そして将来計画を総合的に評価し、最適なカテゴリのEDR製品群から比較検討を進めることが重要です。

EDR導入プロセスと成功のための注意点

高性能なEDRを選定しても、その導入と運用が適切に行われなければ期待した効果は得られません。EDR導入を成功させ、その価値を最大限に引き出すためには、計画的なプロセスといくつかの重要な注意点があります。

1. 導入準備フェーズ

  • ニーズ分析と要件定義の再確認: なぜEDRが必要なのか、解決したい具体的な課題は何か(例:ランサムウェア対策、内部不正検知、インシデント対応迅速化)、必要な機能は何かを明確にします。選定した製品がこれらの要件を満たしているか最終確認します。
  • PoC(概念実証)の実施: 可能であれば、実際の自社環境(またはそれに近いテスト環境)で候補製品を試用します。検知精度(誤検知含む)、パフォーマンスへの影響、管理コンソールの操作性、既存システムとの相性などを評価し、机上評価だけでは分からない適合性を確認します。これは導入後のミスマッチを防ぐ上で非常に重要です。
  • 運用体制の計画: EDRからのアラートを誰が監視し、どのように分析・対応するのか、エスカレーションフローはどうするかなど、具体的な運用体制を計画します。担当者のスキルセットや必要なトレーニングも考慮します。MDRサービスを利用する場合も、自社担当者との役割分担や連携プロセスを明確にします。

2. 導入・実装フェーズ

  • 導入計画の策定と展開: 全社展開のスケジュール、対象範囲、展開手順(パイロット導入→段階的展開など)、設定内容(ポリシー、除外設定等)を具体的に計画します。特に大規模環境では慎重な計画が必要です。
  • 初期チューニング: 導入直後は、正常な業務プロセスを誤検知することがあります。業務影響を最小限にしつつ検知精度を高めるため、環境に合わせて検知ルールやホワイトリストを調整する「チューニング」作業が不可欠です。これには一定の時間と知見が必要です。

3. 運用・改善フェーズ

  • 継続的な監視と分析: アラートを日常的に監視し、インシデントの兆候を見逃さない体制を維持します。検知されたアラートの分析を通じて、脅威の傾向や自社の弱点を把握します。
  • 定期的なアップデートとレビュー: EDR製品のソフトウェアや脅威定義ファイルは常に最新の状態に保ちます。また、運用状況や検知ルールの有効性を定期的にレビューし、必要に応じて設定を見直し、最適化を図ります。
  • インシデント対応訓練: 定期的にインシデント対応訓練を実施し、担当者のスキル向上と手順の習熟を図ります。
  • 他の対策との連携: EDRは万能ではありません。ファイアウォール、脆弱性管理、アクセス制御、従業員教育など、他のセキュリティ対策と組み合わせることで、多層的な防御を実現し、全体のセキュリティレベルを向上させます。

EDR導入はゴールではなく、継続的なセキュリティ強化プロセスの一部です。計画的な導入と適切な運用・改善を通じて、その効果を最大化しましょう。

EDRを取り巻く関連技術:XDRとMDRの基礎知識

EDRはエンドポイントセキュリティの中核ですが、その周辺にはXDR(Extended Detection and Response)やMDR(Managed Detection and Response)といった関連技術・サービスが存在します。これらを理解することは、より高度で効率的なセキュリティ体制を構築する上で役立ちます。

  • XDR (Extended Detection and Response): EDRがエンドポイントに焦点を当てるのに対し、XDRは検知・対応の範囲をネットワーク、サーバー、クラウド、メールなど、複数のセキュリティレイヤーに拡張します。異なるソースからのログやアラート情報を単一のプラットフォームで統合・相関分析することで、個々のツールでは見過ごされがちな、より巧妙で広範囲にわたる攻撃(例:APT攻撃)の全体像を早期に可視化し、迅速かつ的確な対応を目指すアプローチです。サイロ化しがちなセキュリティ情報を連携させ、より包括的な脅威インテリジェンスを提供します。EDRの自然な進化形とも言えますが、実現には対応製品間の連携や統合基盤が必要となります。
  • MDR (Managed Detection and Response): これは技術そのものではなく、EDRなどのセキュリティツールの「運用」を外部の専門家チーム(SOC: Security Operation Center)に委託するサービスモデルです。EDRを導入しても、24時間365日の監視体制や、高度な脅威分析、インシデント対応を行うための専門知識・リソースが自社内に不足している場合に有効な選択肢となります。MDRプロバイダーは、顧客の環境をリモートで監視し、脅威インテリジェンスや高度な分析プラットフォームを駆使して脅威を検知・分析。インシデント発生時には、封じ込め支援や復旧アドバイスなどの対応を行います。これにより、企業はセキュリティ運用の負荷を大幅に軽減し、専門家の知見を活用した高度な保護レベルを確保できます。

EDRを導入する際には、将来的なXDRへの拡張可能性を考慮に入れることや、自社の運用リソースに応じてMDRサービスの利用を検討することが、より効果的なセキュリティ戦略に繋がります。自社のセキュリティ成熟度や体制に合わせて、これらの関連技術・サービスとの組み合わせを検討しましょう。

まとめ:自社に最適なEDRを選定しセキュリティを次世代へ

本記事では、EDRの基本概念から、導入メリット、失敗しないための比較選定ポイント、企業規模(中小・大企業・グローバル企業)に応じた具体的な選び方、そして導入・運用の注意点、関連技術(XDR, MDR)に至るまで、包括的に解説しました。サイバー攻撃が高度化する現代において、侵入後の脅威を迅速に検知し対応するEDRは、企業のセキュリティ体制を強化し、事業継続性を確保するために不可欠なソリューションとなっています。最適なEDR製品を選定するためには、機能比較だけでなく、自社の規模、業種、運用体制、予算、将来計画といった固有のニーズと照らし合わせ、多角的に評価することが重要です。特に、検知・分析能力、対応機能、運用性、サポート体制、コストのバランスを見極める必要があります。EDR導入はゴールではなく、継続的な運用改善プロセスの一部です。PoCによる事前検証、導入後のチューニング、適切な運用体制の構築、そして他のセキュリティ対策との連携により、その効果は最大化されます。本ガイドが、貴社にとって最適なEDRソリューションを選定し、次世代のセキュリティ基盤を構築するための一助となれば幸いです。具体的な製品選定や導入計画については、信頼できるベンダーや専門家への相談、資料請求、デモンストレーションなどを通じて、さらに検討を深めることを推奨します。

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