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SFA JOURNAL by ネクストSFA

EDRで強化するリモートワークセキュリティ:課題解決と選定の要点

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

1. 導入:リモートワーク時代のセキュリティ課題とEDRの重要性

リモートワークやハイブリッドワークが多くの企業で定着する一方、セキュリティのあり方も大きな変革を迫られています。オフィスという物理的な境界が意味をなさなくなり、従業員は社外ネットワークや多様なデバイスから企業の重要リソースにアクセスします。これにより、従来の境界型防御モデルだけでは保護しきれない新たなリスクが顕在化しました。自宅Wi-Fiの安全性、公共ネットワーク利用時の危険性、私物端末(BYOD)利用に伴う管理の複雑化など、企業がコントロールすべき範囲は拡大の一途をたどっています。このような状況下では、従業員が利用するPCやモバイルデバイス、すなわち「エンドポイント」自体のセキュリティ確保が最重要課題となります。従来のアンチウイルス(EPP)では検知が難しい高度な脅威や内部不正のリスクも、管理者の目が届きにくいリモートワーク環境では増大します。そこで不可欠となるのがEDR(Endpoint Detection and Response)です。EDRは、場所を問わずエンドポイントの動作を常時監視し、脅威を早期に検知・分析、そして迅速に対応するソリューションであり、リモートワーク環境のセキュリティギャップを埋める上で極めて有効な手段となります。本記事では、リモートワーク特有のセキュリティ課題に対し、EDRがどのように貢献するのか、具体的な活用方法、リモートワーク環境に適したEDR選定ポイント、導入・運用の注意点までを解説します。リモートワーク環境のセキュリティ強化を検討中の管理部門、情報システム部門、そして決裁者の皆様にとって、最適な対策を講じるための一助となれば幸いです。

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要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
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要お問い合わせ 検知レポート
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月額38,500円~(税込)
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要お問い合わせ Webフィルタリング機能
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パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
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Google LLC Google Cloud IDS
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要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
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脅威警告の優先順位の提供
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2. リモートワーク環境特有のセキュリティリスクとは?

リモートワークは多くのメリットをもたらしますが、同時に企業を新たなセキュリティリスクに晒します。オフィス環境とは異なる、管理が行き届きにくい状況は、攻撃者にとって侵入や潜伏の好機となり得ます。具体的なリスクを理解することが、EDRをはじめとする適切な対策の第一歩です。

  • エンドポイントの可視性低下: 従業員のデバイスが常に社内ネットワークに接続されているわけではないため、IT管理者は各端末のOSバージョン、パッチ適用状況、不審な挙動などをリアルタイムで把握することが困難になります。脆弱性の放置やマルウェア感染の発見が遅れるリスクが高まります。
  • 安全でないネットワーク環境からの接続: 自宅のWi-Fiルーターの設定不備や、カフェなどの公共Wi-Fi利用時には、通信内容の盗聴、中間者攻撃、不正アクセスポイントへの誘導といったリスクが存在します。ネットワーク自体の安全性が担保されていない可能性を常に考慮する必要があります。
  • 私物端末(BYOD)利用に伴うリスク: BYODを許可している場合、端末のセキュリティレベル(OS、アプリ、対策ソフト)が不均一になりがちで、企業側での完全な管理は困難です。マルウェア感染端末からの社内侵入、個人領域からの情報漏洩、シャドーIT(未許可ツールの利用)といったリスクが増加します。
  • 攻撃対象領域(アタックサーフェス)の拡大: 保護すべき対象がオフィス内から社外に分散した多数のエンドポイントへと拡大します。これにより、攻撃者が侵入を試みる経路や標的が増え、防御すべき範囲が格段に広がります。
  • インシデント発生時の対応遅延: リモートワーク中の端末でセキュリティインシデントが発生した場合、物理的に端末を確保できないため、状況確認、原因調査、端末隔離といった初動対応に時間を要しがちです。対応が遅れるほど、被害が拡大する可能性が高まります。
  • 従業員のセキュリティ意識への依存度向上: オフィスのような管理された環境と異なり、リモートワーク中は従業員個々のセキュリティ意識や行動に依存する部分が大きくなります。フィッシング詐欺への対応、パスワード管理、機密情報の取り扱いなど、意識の差が直接的なリスクに繋がります。

これらのリスクは単独で存在するのではなく、相互に関連し合って企業のセキュリティ体制全体を脅かします。リモートワークを安全に推進するためには、これらのリスクを直視し、EDRのような効果的な技術的対策と運用体制を整備することが不可欠です。

3. EDRとは? リモートワークにおける役割を再確認

EDR(Endpoint Detection and Response)は、PC、サーバー、スマートフォンなどのエンドポイントデバイスの動作を継続的に監視・記録し、不審なアクティビティやサイバー攻撃の兆候をリアルタイムで検知・分析、そして迅速に対応(Response)を実行するためのセキュリティソリューションです。その役割をリモートワークという特定の文脈で捉え直すと、その価値が一層際立ちます。従来のアンチウイルス(EPP)が主に既知のマルウェアの「侵入阻止」を目的とするのに対し、EDRは「侵入を許してしまった後」の脅威、例えばゼロデイ攻撃ファイルレス攻撃、未知のマルウェア、内部不正などをエンドポイント内部で早期に発見し、被害を最小限に食い止めることに重点を置いています。リモートワーク環境では、従業員がオフィス外の様々なネットワークからアクセスするため、ファイアウォール等の境界防御をすり抜けるリスクが増加します。このような状況下で、EDRはエンドポイント自体を最後の砦として守る、極めて重要な役割を担います。具体的には、リモートワーク環境において以下の貢献が期待されます。

  • 場所を問わないエンドポイントの監視と可視化: EDRエージェントがインストールされていれば、従業員がどこで業務を行っていても、端末の動作状況、セキュリティイベント、プロセス活動などを継続的に収集し、管理コンソールに集約します。これにより、管理者はリモートワーク端末のセキュリティ状態を把握し、潜在的なリスクやインシデントの兆候を早期に発見できます。
  • 境界防御を超えた脅威への対抗: 社内ネットワークへのVPN接続後や、安全とは限らないネットワークからのアクセス中に侵入を試みる脅威に対し、エンドポイント内部での不審な挙動そのものを検知・分析します。ネットワーク経路に依存しない防御層を提供します。
  • 迅速かつ効果的なリモート対応: インシデント発生を検知した場合、管理者は遠隔地からでも、感染が疑われる端末をネットワークから隔離したり、不正なプロセスを強制終了させたりするなどの対応を迅速に実行できます。これにより、マルウェアの拡散や被害拡大を効果的に阻止します。

このように、EDRリモートワーク環境におけるセキュリティの主要課題である「可視性の低下」「多様な環境からのアクセスリスク」「インシデント対応の遅延」に対して、直接的かつ効果的な解決策を提供するのです。

4. 【核心】EDRはリモートワークの課題をどう解決するのか?

リモートワーク環境がもたらす特有のセキュリティリスクに対し、EDRがその機能をどのように活かして具体的な解決策を提供するのかを掘り下げてみましょう。EDRの能力は、リモートワークによって生じたセキュリティ上のギャップを埋める上で非常に有効です。

  • 課題1:エンドポイントの可視性低下 → 解決策:常時監視とログ収集 EDRのエージェントは、エンドポイント上で発生する様々なイベント(OSアクティビティ、プロセス生成、ファイル操作、ネットワーク通信等)を詳細に記録し、クラウド上の管理サーバーへ継続的に送信します。これにより、端末が社内ネットワークに接続されていなくても、管理者は各端末の稼働状況やセキュリティ状態(不審なプロセス、ポリシー違反等)をほぼリアルタイムで把握できます。ダッシュボードで一元管理が可能となり、異常の早期発見に繋がります。オフライン時のログ記録機能も、可視性のギャップを最小化します。
  • 課題2:多様なネットワーク環境からのアクセスリスク → 解決策:エンドポイント挙動ベースの検知 EDRは接続されているネットワーク環境に依存せず、エンドポイント自体の動作を監視・分析します。仮に安全でないWi-Fi経由でマルウェアに感染した場合でも、端末上での異常なプロセスの起動、外部への不審な通信、ファイルの不正な暗号化といった挙動を検知します。これにより、ネットワーク防御をすり抜けた脅威にも対応でき、エンドポイントレベルでの防御を実現します。
  • 課題3:私物端末(BYOD)利用に伴うリスク → 解決策:ポリシー適用と異常検知 企業がBYODを許可する場合、EDRエージェントを導入することで、私物端末に対しても企業のセキュリティポリシー(例:特定サイトへのアクセス禁止、不許可アプリケーションのブロック)を適用し、監視することが可能になります。マルウェア感染、不正アプリの動作、機密データへの不審なアクセス試行などを検知し、情報漏洩リスクを低減します(プライバシーへの配慮は別途必要)。
  • 課題4:攻撃対象領域の拡大 → 解決策:分散型防御の実現 地理的に分散した個々のリモートワーク端末にEDRを導入することで、それぞれの端末が防御拠点となります。万が一、一つの端末が侵害されたとしても、EDRが迅速に検知・対応することで、その端末を起点とした他の端末や社内システムへの感染拡大(横展開)を阻止します。
  • 課題5:インシデント発生時の対応遅延 → 解決策:迅速なリモートレスポンス EDRの核となる機能の一つです。管理者は、リモートワーク中の端末でインシデントを検知した場合、管理コンソールから遠隔操作で、該当端末をネットワークから即座に隔離、不正なプロセスを停止、悪性ファイルを削除するなどの対応を実行できます。これにより、被害が拡大する前に脅威を封じ込め、初動対応時間を大幅に短縮できます。詳細ログを用いたリモートでの原因調査も可能です。

このようにEDRは、リモートワークが抱える多様なセキュリティ課題に対し、その監視、検知、分析、対応能力を通じて具体的な解決策を提供し、安全な業務環境の構築に不可欠な役割を果たします。

5. リモートワーク環境に適したEDRの重要機能

リモートワーク環境でEDRを効果的に活用するためには、製品が持つ機能の中でも特に以下の点に注目することが重要です。管理の効率性、リモートユーザーの利便性、そしてセキュリティ効果の観点から、リモートワーク運用に適した機能を備えているかを見極めましょう。

  • クラウドベースの管理コンソール: 管理者が場所やデバイスを問わず、インターネット経由で全てのエンドポイントのセキュリティ状況を一元的に把握し、ポリシー設定、アラート確認、インシデント対応を行えることは、リモートワーク環境において必須です。これにより、迅速な状況判断と対応が可能になります。
  • 軽量なエンドポイントエージェント: リモートワークで使用されるPCやモバイルデバイスは、スペックが様々であり、時には私物端末(BYOD)である可能性もあります。EDRエージェントのCPUやメモリ使用量が少なく、通常の業務アプリケーションの動作を妨げない「軽量さ」は、従業員の生産性維持のために重要です。
  • オフライン時の監視・ログ記録能力: リモートワーク中は、従業員のデバイスが常にインターネットに接続されているとは限りません。オフライン状態でもエージェントが端末の監視やイベントログの記録を継続し、オンライン復帰時にデータをアップロードする機能は、監視の空白時間を作らないために不可欠です。高度な製品ではオフラインでもある程度の検知・対応が可能です。
  • リモートフォレンジック/インシデント調査機能: インシデント発生時、物理的に端末を回収することなく、遠隔から詳細な調査(メモリダンプ取得、ファイルシステム探索、特定ファイルの回収等)を行える機能があると、原因究明と根本的な解決策の策定が迅速化します。
  • 自動対応(Auto-Response)機能: 特定の脅威やポリシー違反を検知した場合、事前に定義されたルールに基づき、自動的に対応アクション(例:端末のネットワーク隔離、不正プロセスの停止、管理者への通知)を実行する機能です。管理者が即座に対応できない夜間や休日でも、初期対応を自動化し被害拡大を抑制できるため、24/365体制が難しい場合に特に有効です。
  • 脅威ハンティング機能: 受動的なアラート対応だけでなく、潜在的な脅威や攻撃者の痕跡(IoC: Indicator of Compromise)をプロアクティブにリモートワーク端末を含む全エンドポイントから探索・分析する機能です。隠れた脅威を早期に発見し、未然にインシデントを防ぐ活動を支援します。

これらの機能を備えたEDRを選択することで、リモートワーク環境特有の課題に対応し、管理者の運用負荷を軽減しながら、従業員が安全かつ快適に業務を遂行できる環境を構築できます。

6. リモートワーク時代のEDR選定:失敗しないためのチェックポイント

リモートワーク環境を前提としたEDR製品の選定においては、一般的な比較項目に加えて、リモート運用特有の要件を重視する必要があります。管理部門や決裁者が確認すべき主要なチェックポイントを以下に整理します。

  • 提供形態とアーキテクチャ: クラウドネイティブ/SaaS型であることは、リモートワーク環境での運用において大きな利点です。管理サーバーの構築・維持が不要で、場所を問わずアクセスでき、常に最新機能を利用できます。特別な理由がない限り、クラウドベースのソリューションを優先的に検討しましょう。
  • エージェントの展開・管理の容易性: 多数のリモートワーク従業員のデバイスに対し、EDRエージェントを効率的かつ確実に配布・インストール・アップデートできるかを確認します。メールリンクからのインストール、インストーラーパッケージの提供、MDM(Mobile Device Management)/UEM(Unified Endpoint Management)ツールとの連携などがスムーズに行えるか評価します。
  • 対応OS・プラットフォームの網羅性: 従業員が利用する可能性のあるデバイス(Windows、macOS、Linux、iOS、Android等)を幅広くサポートしているか確認します。特にBYODを許可する場合は、対応プラットフォームの広さが重要になります。
  • ネットワーク帯域への影響: エージェントが収集するログデータの送信が、リモートワーク従業員のインターネット回線(特に帯域が限られる場合)を圧迫しないか、データ送信量や頻度を調整できるかなどを確認します。業務への影響を最小限に抑える配慮が必要です。
  • VPN/ZTNAソリューションとの連携・互換性: 多くの企業がリモートアクセスのために利用しているVPNやZTNAソリューションと、EDRが競合せず安定して動作するか、連携機能(例:デバイスのセキュリティ状態をZTNAのアクセス判断に利用)があるかを確認します。ベンダーに連携実績や互換性情報を確認しましょう。
  • MDRサービスの提供有無と質: 24時間365日の監視体制や高度なインシデント対応を自社リソースだけで行うのが難しい場合、リモートワーク環境の監視・対応経験が豊富なMDR(Managed Detection and Response)サービスが利用できるかは重要な選択肢です。サービス内容、対応範囲、報告体制などを確認します。
  • ライセンス体系の柔軟性: リモートワーカー数の増減や導入範囲の変化に柔軟に対応できるライセンス体系かを確認します。サブスクリプションモデルが主流ですが、契約期間、課金単位、最低利用数などの条件を比較検討します。

これらのチェックポイントに基づき、複数の製品を客観的に比較し、可能であればデモンストレーションやPoC(概念実証)を通じて、自社のリモートワーク環境と運用体制に最も適合するEDRを選定することが、導入後の効果を最大化する鍵となります。

7. リモートワーク環境へのEDR導入と運用のポイント

最適なEDRを選定したとしても、その導入プロセスや日々の運用がリモートワーク環境の実態に即していなければ、期待されるセキュリティ効果を十分に発揮できません。オフィス中心の導入・運用とは異なる、特有の配慮事項と成功のためのポイントを解説します。

  • 導入前の丁寧なコミュニケーションと合意形成: なぜEDRが必要なのか、どのようなデータが収集され、プライバシーにどう配慮されるのか、導入によって従業員にどのような影響があるのか(操作、パフォーマンス等)を、リモートワーク従業員に対して事前に透明性をもって説明し、理解と協力を得ることが不可欠です。導入手順や問い合わせ先を明記したマニュアルの提供も有効です。
  • リモートワーク環境を考慮したポリシーチューニング: EDRの検知ルールや自動対応ポリシーを設定する際、リモートワーク特有の働き方(例:業務時間外のアクセス、通常と異なる場所からのアクセス、特定のクラウドサービスへのアクセス増)やリスクを考慮に入れます。オフィス勤務時と同じ基準では誤検知が増える可能性があるため、環境に合わせて閾値やルールを調整(チューニング)し、重要なアラートを見逃さず、かつ運用負荷を軽減するバランスが重要です。BYOD端末には、業務データ保護を主眼とした異なるポリシーを適用することも検討します。
  • 明確なインシデント対応フローの確立と周知: 遠隔地の従業員の端末でセキュリティインシデントが発生した場合の連絡体制、指示系統、対応手順(端末隔離、パスワード変更依頼等)、承認プロセスなどを具体的に定めたフローを確立し、管理者・従業員双方に周知徹底します。迅速かつ混乱なく対応を進めるための準備が不可欠です。
  • 従業員への継続的な教育と意識向上: EDRはあくまで技術的対策の一部であり、従業員自身のセキュリティ意識が低ければ効果は限定的です。フィッシング詐欺の見分け方、安全なパスワード管理、不審なメールやファイルへの対処法、EDRアラートが表示された際の報告手順などを、定期的なトレーニングや注意喚起を通じて浸透させ、リモートワーク環境における自己防衛意識を高めます。
  • パフォーマンスとプライバシーへの継続的な配慮: EDRエージェントの動作が従業員のPCパフォーマンスに与える影響を定期的に確認し、必要に応じて設定を見直します。特にBYOD端末の運用においては、業務と無関係な個人情報の収集を行わないこと、プライバシーポリシーを明確に定め遵守することを徹底し、従業員との信頼関係を維持します。

これらのポイントに留意し、技術的な導入だけでなく、人的・運用的な側面にも配慮することで、EDRリモートワーク環境における強力かつ持続可能なセキュリティ基盤となり得ます。

8. EDRを中心としたリモートワークセキュリティ全体の強化

EDRリモートワーク環境におけるエンドポイントセキュリティの中核を担いますが、それだけで万全とは言えません。巧妙化・複雑化するサイバー攻撃に対抗し、真に安全なリモートワーク環境を実現するためには、EDRを他のセキュリティ対策と有機的に連携させ、多層的な防御体制を構築することが極めて重要です。EDRと組み合わせることで効果を発揮する主要な対策要素を以下に示します。

  • ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(ZTNA): 「決して信頼せず、常に検証する」という原則に基づき、アクセス要求ごとにユーザー、デバイス、コンテキストを厳格に評価し、必要最小限の権限でリソースへのアクセスを許可するZTNAは、境界防御が曖昧なリモートワーク環境に最適です。EDRが収集するデバイスのセキュリティ状態(マルウェア感染の有無、脆弱性等)をZTNAのアクセス可否判断の条件に組み込むことで、脅威のある端末からのアクセスを未然に防ぐ、より強固なアクセス制御が実現します。
  • 多要素認証(MFA): IDとパスワードだけに頼る認証は、パスワードリスト攻撃や漏洩によって容易に突破される可能性があります。SMS認証コード、認証アプリ、物理トークン、生体認証などを組み合わせるMFAは、不正アクセスに対する基本的な防御策として、リモートワーク環境では必須と言えます。
  • クラウドセキュリティ(CASB, CSPM等): リモートワークでは、Microsoft 365Google Workspace、SalesforceといったSaaS利用が中心となります。これらのクラウドサービス利用における情報漏洩や不正利用を防ぐCASB(Cloud Access Security Broker)や、IaaS/PaaSの設定ミスによる脆弱性を防ぐCSPM(Cloud Security Posture Management)といったクラウド固有のセキュリティ対策も重要です。EDRと連携し、エンドポイントからクラウドまで一貫した脅威監視・分析を行うことで、リスクを低減できます。
  • 脆弱性管理: OSやアプリケーションに存在する脆弱性は、攻撃者にとって格好の侵入口となります。リモートワーク端末を含む全ての管理対象デバイスに対し、定期的な脆弱性スキャンを実施し、発見された脆弱性に対して迅速にパッチ適用や回避策を講じる運用プロセスを確立することが不可欠です。EDR製品によっては脆弱性管理機能を備えているものもあります。
  • 従業員への継続的なセキュリティ教育: 技術的な対策をすり抜けるソーシャルエンジニアリング(フィッシング詐欺等)への対策として、従業員のセキュリティ意識と知識レベルの向上は欠かせません。不審なメールへの対処法、パスワード管理のベストプラクティス、機密情報の取り扱いルールなどを定期的に教育・訓練し、セキュリティ文化を醸成することが重要です。

EDRをこれらの多様な対策と戦略的に組み合わせることで、リモートワーク環境におけるセキュリティリスクを包括的に低減し、より安全で生産性の高い働き方を支援することができます。

9. まとめ:EDRで実現する安全なリモートワーク環境

リモートワークの常態化は、企業に柔軟な働き方をもたらす一方で、エンドポイントセキュリティの確保という新たな課題を突きつけています。本記事では、リモートワーク特有のセキュリティリスクに対し、EDRがいかに有効な解決策となり得るか、その活用法、選定ポイント、導入・運用の注意点、そして他の対策との連携の重要性を解説しました。EDRは、場所を問わずエンドポイントを監視し、脅威を早期に検知・分析、そして迅速にリモート対応できる能力により、リモートワーク環境の可視性低下やインシデント対応遅延といった問題を解決する上で中心的な役割を果たします。クラウドベースの管理、軽量な動作、オフライン対応、自動化機能などを備えたEDRは、管理者の負担を軽減し、従業員の生産性を維持しながら高度な保護を提供します。しかし、EDRは万能薬ではありません。ZTNA、MFA、クラウドセキュリティ脆弱性管理、従業員教育といった多層的なアプローチと組み合わせることで、初めて堅牢なリモートワークセキュリティ体制が完成します。自社の状況を正しく評価し、最適なEDRを選定・導入、そして継続的に運用改善していくことが、安全で持続可能なリモートワーク環境を実現する鍵となるでしょう。

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