BtoBサービス、SaaS、IT製品を徹底比較!企業のDX推進、課題を解決!

SFA JOURNAL by ネクストSFA

経営層・管理職向け:ファイアウォール導入がもたらす5つのメリットと解決すべきセキュリティ課題

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

なぜ今、ビジネスに「強固な境界防御」としてのファイアウォールが必要なのか?

サイバー攻撃の脅威は、その手法、頻度、そして巧妙さにおいて日々増大しています。企業を取り巻く環境は絶えず変化し、クラウドサービスの利用拡大やリモートワークの普及など、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進むにつれて、攻撃対象となるネットワークの境界は曖昧になり、その防御はより複雑になっています。情報漏洩、ランサムウェアによる業務停止、ウェブサイトの改ざん、サービス妨害(DoS/DDoS)攻撃といったサイバーインシデントは、企業の存続を脅かす重大な経営リスクです。ひとたび被害が発生すれば、事業継続の危機だけでなく、顧客からの信頼失墜、巨額の損害賠償責任、規制当局からの罰則など、多方面に深刻な影響を及ぼします。このような状況下で、企業のネットワークセキュリティの基礎として、外部ネットワークと内部ネットワークの「境界」を護るファイアウォールの重要性が改めて見直されています。ファイアウォールは、企業の情報資産を守るための第一線であり、適切に機能させることで多くのセキュリティ課題を解決に導きます。本稿では、WEBセキュリティサービスの導入をご検討されている経営層や管理職の皆様に向けて、ファイアウォール導入がもたらす5つの主要なメリットと、それがどのように現代ビジネスが直面するセキュリティ課題を解決するのかを詳説します。単なる技術的な解説に留まらず、経営的な視点から見たファイアウォールの価値と、投資対効果についても考慮に入れて解説を進めます。

おすすめの不正侵入検知サービス一覧

scroll →

会社名 サービス名 特長 費用 主なサービス
株式会社サイバーセキュリティクラウド 株式会社サイバーセキュリティクラウド 詳細はこちら 攻撃遮断くん
  • 一社通貫の万全なサポート体制で、稼働率99.999%・解約率約0.97%の圧倒的な運用力を誇る
  • 20,000サイト以上の豊富な導入実績あり! SBI証券や厚生年金基金などの金融機関からANA、PARCO、代ゼミまで規模や業界問わず幅広く対応
  • 万が一サイバー攻撃により損害を受けた場合に、最大1,000万円を補償する保険を付帯可能
1サイト月額11,000円~
※別途、初期導入費用がかかる
お問い合わせ
攻撃検知AIエンジン搭載
サイバー攻撃対策
サイバー保険付帯
株式会社AndGo 株式会社AndGo 詳細はこちら Aikido Security
  • さまざまな脆弱性診断機能をオールインワンツールで提供、幅広いセキュリティ課題に包括的に対応
  • SaaS事業者からオンプレミスインフラを扱うエンタープライズまで世界3,000社で導入実績あり
  • アラートの自動トリアージ機能により、誤検知や過検知による重要アラートの見過ごしを防止
ベーシック:52,500円/月
プロ:105,000円/月
カスタム:要お問い合わせ
Webアプリケーション診断
プラットフォーム診断
クラウド診断
手動脆弱性診断
伴走サポート
株式会社スリーシェイク 株式会社スリーシェイク 詳細はこちら Securify(セキュリファイ)
  • 初期費用0円・最短1営業日でワンストップのセキュリティ対策を開始できる
  • 簡単3ステップで、3300項目以上の診断を実施
  • シンプルかつストレスフリーな操作性
  • リリースやアップデート時に課金なしで何度も診断可能
  • 【新機能リリース】攻撃対象になり得るIT資産を自動で棚卸し、管理できるASMを搭載!
ASMプラン:お見積り
BASICプラン:10万円/月額
STARTERプラン:5万円/月額
Freeプラン:0円/月額
※契約は年単位
お問い合わせ
ASM
Webアプリケーション診断
Wordpress診断
SaaS診断
トレンドマイクロ株式会社 TippingPoint
  • 機械学習による脅威の検知によりネットワーク全体を防御
  • 拡張性の高いシステム構成で大容量のネットワークに対応可能
  • 高性能な検知と対応の優先度を提供
要お問い合わせ 要お問い合わせ
株式会社東計電算 Total Security Function Service
  • 高機能、高セキュリティのマルウェア対策サービスが低コストで利用可能
  • 自社データセンターを活用したSaaS型サービス
  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
  • リアルタイムで侵入防御シグネチャを分析展開し、連携したネットワーク対応を実現
要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

ファイアウォールとは?企業ネットワークにおけるその役割と機能

ファイアウォール(Firewall)は、企業のネットワークと外部ネットワーク(主にインターネット)との間に設置されることで、不正な通信を遮断し、許可された通信のみを通過させる「防火壁」の役割を担います。これは、企業ネットワークの安全を確保するための最も基本的かつ不可欠なセキュリティ対策の一つです。ファイアウォールの主な目的は、外部からの悪意ある第三者による不正なアクセスやサイバー攻撃から社内システムや情報資産を保護すること、そして社内ネットワークから外部への不適切な通信や情報漏洩を防ぐことにあります。

ファイアウォールは、通信されるデータの塊である「パケット」の情報を検査し、通過させるか遮断するかを判断します。その判断基準は、あらかじめ設定されたセキュリティポリシーに基づいています。基本的な機能としては、送信元や宛先のIPアドレス、通信に利用されるポート番号、プロトコルといった情報を基に通信を制御する「パケットフィルタリング」があります。さらに高度なファイアウォールでは、通信の接続状態を継続的に監視し、正当な通信か不正な通信かを判断する「ステートフルインスペクション」や、特定のアプリケーション層(HTTPやFTPなど)の通信内容を深く解析し、ウェブ攻撃や特定のマルウェアのダウンロードなどを検知・防御する「アプリケーション層ゲートウェイ」機能を持つものもあります。

ファイアウォールは、通常、社内ネットワークとインターネットの境界に設置されますが、大規模な企業では、部門間ネットワークや重要なサーバーセグメントの間など、ネットワークを分割し、それぞれにファイアウォールを設置することで、攻撃が内部で横展開するのを防ぐ「内部ネットワーク分割」の役割を担うこともあります。また、クラウドサービスの利用が進む中で、仮想ファイアウォールとしてIaaSやPaaS環境のリソースを保護する役割も重要になっています。ファイアウォールが適切に構成・運用されることで、ネットワークトラフィックの可視化、通信ログの記録、不正通信の遮断といった基本的な防御に加え、サービス妨害攻撃の検知・軽減機能による可用性の維持にも貢献します。これは、企業のネットワーク全体を「見える化」し、制御することを可能にし、多層防御戦略の根幹を成す要素と言えます。

ファイアウォール導入の5つの主要メリット

ファイアウォールを導入し、適切に設定・運用することで、企業は以下のような5つの主要なメリットを享受できます。これらのメリットは、単に技術的な防御強化に留まらず、企業の事業継続性、情報資産の保護、コンプライアンス遵守といった経営課題の解決に直結します。

メリット1:外部からの不正アクセスを効果的に防御し、機密情報漏洩を防ぐ

ファイアウォール導入の最も直接的な効果は、インターネット経由での不正アクセスを水際で阻止できる点です。外部の攻撃者は常に企業のシステムへの侵入経路を探っており、ポートスキャンや脆弱性攻撃、パスワードの総当たり攻撃などを仕掛けてきます。ファイアウォールは、これらの悪意ある通信パターンを検知し、設定されたセキュリティポリシーに基づいて即座に遮断します。これにより、企業の重要なサーバーやデータベースへの不正な侵入を防ぎ、顧客情報や機密情報といった貴重な情報資産が外部に窃取されるリスクを大幅に低減できます。情報漏洩は企業の信頼性を失墜させ、事業継続を危うくする最も深刻なリスクの一つです。ファイアウォールによる強固な境界防御は、この重大な課題に対する最も基礎的かつ不可欠な解決策となります。特に個人情報やセンシティブな情報を扱う事業においては、ファイアウォールによる防御体制の確立は、コンプライアンス遵守の観点からも必須と言えます。

メリット2:マルウェアの侵入経路を遮断し、感染拡大とシステム被害を抑制

ファイアウォールは、ウイルスやランサムウェアを含むマルウェアの企業ネットワークへの侵入を防ぐ上で重要な役割を果たします。悪意のあるウェブサイトへのアクセス、不正な添付ファイルのダウンロード、脆弱性を悪用した攻撃など、マルウェアがネットワークに侵入する経路は多岐にわたります。ファイアウォールは、これらの通信を監視し、危険なサイトへのアクセスをブロックしたり、既知のマルウェアに関連する通信パターンを検知して遮断したりすることで、マルウェアが社内ネットワークに到達するのを防ぐ手助けをします。さらに、もし一部の端末がマルウェアに感染してしまった場合でも、ファイアウォールは感染端末からの外部への不正な通信や、他の社内端末への感染を広げようとする通信を検知・遮断することで、被害の拡大を最小限に食い止める効果が期待できます。ランサムウェアによるデータの暗号化やシステム停止は、事業に壊滅的な打撃を与えかねません。ファイアウォールによるマルウェア侵入の阻止と感染拡大の抑制は、企業のシステムやデータの可用性を守り、業務継続性を確保する上で不可欠な対策です。マルウェア感染によるシステムダウンやデータ損失という課題に対し、ファイアウォールは効果的な一次防御となります。

メリット3:業務に関係のない通信を制御し、情報セキュリティポリシー遵守と生産性向上を促進

ファイアウォールは、外部からの攻撃を防ぐだけでなく、社内ネットワークから外部への通信を制御する機能も持ち合わせています。これにより、企業が定める情報セキュリティポリシーに基づき、業務に不要または不適切と判断されるウェブサイトへのアクセスや、特定のアプリケーションの使用を制限することができます。例えば、業務時間中にギャンブルサイトやエンターテイメントサイトへのアクセスを制限することで、従業員の集中力を維持し、生産性の向上に繋がります。また、許可されていないクラウドストレージサービスへのアクセスをブロックするなど、シャドーITのリスクを低減し、意図しない情報漏洩を防ぐことができます。ファイアウォールによる通信制御は、従業員のセキュリティ意識の高低に関わらず、組織全体として一定の情報セキュリティレベルを維持するための効果的な手段です。ポリシー違反による潜在的なリスクを低減し、企業のネットワーク帯域を業務に必要な通信のために効率的に利用することにも貢献します。不適切な通信の横行によるセキュリティリスクや業務効率の低下といった課題に対し、ファイアウォールは明確な制御と可視化を提供します。

メリット4:通信ログの詳細な記録と可視化により、セキュリティ監視と迅速なインシデント対応を支援

ファイアウォールは、ネットワークを通過または遮断したすべての通信に関する詳細な活動ログを自動的に記録します。この通信ログは、企業ネットワークのセキュリティ状況を把握し、異常な通信や潜在的な脅威の兆候を早期に発見するための貴重な情報源となります。ログを分析することで、外部からの不審なアクセス試行パターン、社内からのポリシー違反が疑われる通信、マルウェア感染が疑われる端末からの不規則な通信など、通常とは異なる挙動を特定することが可能です。多くのファイアウォール製品は、これらのログを分かりやすいダッシュボードで可視化する機能を備えており、セキュリティ管理者はネットワーク全体の状況を一目で把握できます。さらに、万が一セキュリティインシデントが発生した場合、ファイアウォールの詳細な通信ログは、攻撃の発生源、侵入経路、被害範囲、情報漏洩の可能性などを迅速に特定するための決定的な証拠となります。これにより、インシデント対応チームは迅速かつ正確な状況把握に基づいた適切な封じ込め、復旧、原因究明といった対応を進めることができ、被害の拡大を防ぎ、事業停止時間を最小限に抑えることに貢献します。セキュリティ状況の「見える化」と、インシデント発生時の迅速な状況把握・対応能力の向上は、現代の企業にとって避けて通れない課題であり、ファイアウォールはその解決に向けた基盤を提供します。

メリット5:ネットワーク負荷の軽減とDDoS攻撃防御により、サービスの可用性を維持

ファイアウォールは、不要な通信や不正な通信をネットワークの入口で遮断することで、社内ネットワークにかかる不要な負荷を軽減します。これにより、正当な業務に必要な通信のためのネットワーク帯域を十分に確保し、通信遅延を防ぎ、ネットワーク全体のパフォーマンスを向上させることができます。結果として、従業員は快適かつ効率的に業務を遂行でき、生産性の向上に繋がります。また、多くのファイアウォールは、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃といった、大量の不正なトラフィックを特定のサーバーやネットワークに送り付け、サービスを停止させることを目的とした攻撃に対する防御機能も備えています。ファイアウォールで異常なトラフィックパターンを検知し、遮断することで、これらの攻撃によるサーバーダウンやネットワーク麻痺を防ぎ、企業のウェブサイトやオンラインサービスの可用性を維持することが可能です。サービスの可用性低下は、顧客満足度の低下、ビジネス機会の損失、ブランドイメージの棄損に直結するため、その維持は経営層にとって極めて重要な課題です。ファイアウォールによるネットワーク負荷の軽減とDDoS攻撃防御は、企業のデジタルサービスを安定的に提供し続け、ビジネスの信頼性を高める上で不可欠な役割を果たします。

ファイアウォール単体では限界が?統合的なセキュリティ対策による「多層防御」の重要性

ファイアウォールは企業のネットワークセキュリティの基礎であり、多くの脅威に対する効果的な防御策となりますが、これだけで全てのサイバー攻撃を防ぎきれるわけではありません。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、ファイアウォールが主に防御するネットワーク層やトランスポート層だけでなく、アプリケーション層の脆弱性を突く攻撃や、正規の通信を装った巧妙な手口も増加しています。例えば、ウェブアプリケーション自体の脆弱性を狙ったSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった攻撃は、ファイアウォールだけでは完全に防御することが困難な場合があります。このような攻撃には、WAF(Web Application Firewall)のようなアプリケーション層に特化したセキュリティ対策が必要です。また、ネットワーク内部に侵入したマルウェアによる潜伏活動や情報探索、あるいは標的型攻撃のように特定の企業を狙って長期間にわたり潜伏する高度な攻撃を検知するためには、ネットワークの異常な振る舞いを検知するIDS(不正侵入検知システム)や、さらに能動的に通信を遮断するIPS(不正侵入防御システム)、そして従業員の端末レベルでの不審な活動を監視・検知・対応するEDR(Endpoint Detection and Response)といった異なる層でのセキュリティ対策が必要となります。

現代のサイバーセキュリティ対策においては、ファイアウォールを「点」の対策と捉えるのではなく、WAF、IDS/IPS、EDR、そしてそれらのログを集約・分析するSIEM(Security Information and Event Management)などを組み合わせた「多層防御(Defense in Depth)」の考え方が不可欠です。それぞれのセキュリティ製品が異なる層や異なる種類の脅威に対して防御や検知を行い、互いに連携することで、より堅牢で包括的なセキュリティ体制を構築できます。ファイアウォールは、多層防御における最も外側の「境界防御」として極めて重要な第一防衛線となりますが、それに続く内部の防御層も強化することで、仮に一つの防御層が突破されても被害が致命的にならないようにリスクを分散・軽減することができます。変化し続けるサイバー脅威に対応するためには、ファイアウォールに加えて、企業の事業内容、ネットワーク構成、取り扱う情報の機密性などを考慮し、複数のセキュリティ対策を組み合わせた統合的なアプローチが不可欠です。

BtoB企業におけるファイアウォール導入ステップとシステム選定のポイント

ファイアウォールを単に導入するだけでなく、その効果を最大化し、企業のセキュリティ課題を確実に解決するためには、計画的な導入ステップと適切なシステム選定が重要です。特にBtoB企業においては、ビジネス要件とセキュリティ要件を両立させることが求められます。

導入ステップとしては、まず「要件定義」を行います。自社のネットワーク構成、取り扱う情報の種類、従業員の働き方(リモートワークの有無など)を詳細に把握し、どのような通信を許可・拒断すべきか、どのようなリスクから保護したいのかといったセキュリティポリシーを明確に策定します。将来的な事業拡大やIT環境の変化(クラウド移行など)も見据えた拡張性の要件定義も不可欠です。次に、複数の候補製品の中から、定義した要件を満たすものを選定するために「PoC(概念実証)」を実施することが推奨されます。実際のネットワーク環境に近い状態で候補製品の性能や機能を検証し、期待通りの防御効果が得られるか、業務への影響はないかなどを確認します。その上で、選定したファイアウォールを本番環境に「展開」します。可能であれば、影響範囲の少ない部門や拠点から段階的に導入し、問題がないことを確認しながら全体展開を進めるのが安全です。安定稼働のためには、冗長構成を実装し、単一障害点とならないような設計が重要です。導入後は、「運用設計」に基づき、ポリシーの変更管理、ログ監視、定期的なルール見直しといった運用プロセスを確立します。運用チームの負担軽減やインシデントの早期発見のために、ログ分析ツールやSIEMとの連携も検討すべきです。そして、セキュリティ対策は一度行えば完了するものではなく、「継続的な改善」が必要です。新たな脅威の出現や事業環境の変化に合わせて、ポリシーの見直しやシステムのアップデートを定期的に実施し、運用体制も継続的に強化していく必要があります。

システム選定においては、技術的な機能だけでなく、管理部や決裁者の視点から、以下のポイントを重視すべきです。第一に、セキュリティ機能の網羅性です。パケットフィルタリングやステートフルインスペクションに加え、アプリケーション層解析、IPS/IDS連携、未知の脅威への対応能力などを確認します。第二に、拡張性と連携性です。将来的なトラフィック増加やクラウド環境への対応能力、既存のセキュリティツール(SIEM、EDRなど)との連携のしやすさを確認します。API連携が可能かどうかも重要なポイントです。第三に、可用性と性能です。障害発生時の冗長構成オプションや、企業のネットワーク規模に見合った十分な通信処理能力(スループット、同時セッション数)があるかを確認します。第四に、コストとライセンス体系です。初期導入費用だけでなく、年間のライセンス費用、保守費用、運用にかかる人件費なども含めたTCO(Total Cost of Ownership)で比較検討します。買い切り型かサブスクリプション型かによってもコスト構造は大きく変わります。最後に、サポート体制とSIパートナーの質です。トラブル発生時の迅速なサポート対応、日本語でのサポート可否、導入から運用までのサポート体制、信頼できるSIパートナーの存在は、特に社内のセキュリティ専門人材が限られている場合に重要となります。これらの観点を総合的に評価し、自社のビジネス戦略とリスク許容度に最適なファイアウォールを選択することが、導入成功の鍵となります。

まとめ:ファイアウォールで盤石なセキュリティ基盤を構築し、ビジネスリスクを低減

本稿では、企業のサイバーセキュリティ対策の根幹をなすファイアウォールについて、その導入がもたらす5つの主要なメリットと、現代ビジネスが直面するセキュリティ課題の解決におけるその重要性を、BtoBの管理部・決裁者様向けに解説しました。ファイアウォールは、外部からの不正アクセスやマルウェア侵入の防御、不適切な通信の制御による情報漏洩リスクの低減、通信ログによるセキュリティ状況の可視化、そしてネットワーク負荷の軽減とDDoS攻撃防御によるサービスの可用性維持といった多岐にわたる機能を提供します。これにより、情報漏洩やシステム停止、コンプライアンス違反といった企業の経営リスクを効果的に低減し、安全で安定したビジネス運営を支える強固な基盤を構築できます。しかし、サイバー攻撃の高度化に対応するためには、ファイアウォール単体での対策には限界があり、WAFやIDS/IPS、EDRといった他のセキュリティソリューションと連携した「多層防御」の考え方が不可欠です。導入にあたっては、自社の要件定義からシステム選定、計画的な展開、継続的な運用・改善に至るステップを踏むことが成功の鍵となります。システム選定時には、単なる機能だけでなく、拡張性、可用性、コスト、そしてサポート体制といった経営的な視点も重要です。変化し続ける脅威環境において、ファイアウォールは企業のデジタル資産を守る要石であり、その適切な導入と運用は、ビジネスの持続的な成長のために経営層が優先的に取り組むべき課題と言えるでしょう。

ページ先頭へ戻る