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SFA JOURNAL by ネクストSFA

【要点解説】不正侵入検知システム(IDS/IPS)の効果とは?情報漏洩対策から業務効率化まで

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

1. はじめに:なぜ今「不正侵入検知」が経営課題なのか?高まるサイバーリスク

現代企業にとって、サイバーセキュリティは事業継続に直結する経営課題です。DXの加速は利便性をもたらす一方、サイバー攻撃のリスクをかつてないレベルまで引き上げています。特に「不正侵入」は、ランサムウェアによる業務停止、標的型攻撃による機密情報窃取、Webサイト改ざんによる信用失墜など、壊滅的な被害をもたらす脅威です。一度インシデントが発生すれば、金銭的損失、信用の失墜、最悪の場合は事業継続の危機に瀕します。

従来のファイアウォールやアンチウイルスソフトだけでは、巧妙化する攻撃や内部からの脅威への対応は困難です。ファイアウォールは許可された通信経路を悪用する攻撃を防げず、アンチウイルスソフトは未知のマルウェアやファイルレス攻撃に対応しきれません。

そこで不可欠となるのが、不正侵入検知システム(IDS)および不正侵入防御システム(IPS)です。これらはネットワークやシステム内部を監視し、ファイアウォールを通過した脅威や内部の不審な動きを検知・防御する役割を担います。IDSは脅威を検知して管理者に警告し、IPSはさらに一歩進んで脅威を自動的に防御します。

本記事では、WEBセキュリティサービス導入を検討中の管理部門や決裁者の皆様へ、IDS/IPS導入がもたらす**具体的な「効果」**を、情報漏洩対策、インシデント対応、コンプライアンス、業務効率化、コストといった多角的な視点から解説します。併せて、選定ポイント、注意点、導入後の運用についても要点を絞ってご紹介します。貴社のセキュリティ強化と事業基盤安定化の一助となれば幸いです。IDS/IPSの重要性をご理解いただき、対策検討のきっかけとしてください。企業のセキュリティレベルを引き上げ、将来のリスクに備えるための具体的なステップを考える上で、本記事が実践的な情報を提供できればと考えております。サイバー脅威は待ってくれません。今こそ、プロアクティブな対策が求められています。

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アクセス制御
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レポート機能
専用フォーム(各種お問い合わせは専用フォームで承ります。履歴管理も可能です。)
Amazon Web Services, Inc. AWS WAF
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ルール 月あたり (時間で案分) USD 1.00
リクエスト USD 0.60/100 万件のリクエスト (最大 1500 WCU およびデフォルトの本文サイズの検査*)
Bot Control と Fraud Control 上記のタブによる追加費用
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株式会社ROCKETWORKS 詳細はこちら ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 イージスWAFサーバセキュリティ
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  • 日本人エンジニア執筆による「読んでわかる」レポートを毎月送付
イージスサーバセキュリティタイプ
月額/50,000円

イージスDDoSセキュリティタイプ
~2Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥40,000
~5Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥60,000
~10Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥120,000
~50Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥198,000
~100Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥250,000
~200Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥450,000
200Mbps以上 別途見積もり
サイバー攻撃の検出/遮断
月次レポート
サイバーセキュリティに関するアドバイザリー
法務相談(オプション)
SBテクノロジー株式会社
詳細はこちら
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Imperva WAF
  • 自動学習機能による導入運用負荷軽減
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  • 簡単に導入可能
  • Imperva 独自の研究機関『ADC』
  • 仮想パッチの適用
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~5Mbps 初期費用 98,000円 月額 59,800円
~10Mbps 初期費用 98,000円 月額 128,000円

~50Mbps 初期費用 198,000円 月額 148,000円
~100Mbps 初期費用 198,000円 月額 198,000円
~200Mbps 初期費用 198,000円 月額 298,000円
200Mbps 初期費用198,000円 100Mbps毎に100,000円加算
1 ブロック機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を遮断する機能
2 モニタリング機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を記録する機能 (通信自体は遮断されません)
3 防御ログ閲覧機能 ブロック(モニタリング)した通信をログとして保存し、閲覧できる機能
4 レポート機能 下記の内容を管理画面上で報告する機能
 ・攻撃元(IPアドレス)top5
 ・攻撃種別top5
 ・防御ログの月別ダウンロード
5 ソフトウェア更新機能 防御機能等を向上させるため、ソフトウェアを更新する機能
6 防御ロジック更新機能 防御効果の向上を図るため、不正な通信パターンを随時最新の状態に更新する機能
7 特定URL除外機能 Webサイト中のWAF機能を利用したくない箇所を防御対象から除外する機能
8 IPアドレスの拒否/許可設定機能 特定のIPアドレスからの通信を拒否、もしくは特定のIPアドレスからの通信のみ許可する機能
9 脆弱性検査用IPアドレス管理機能 Webサイトへの脆弱性診断等を行う際、設定したIPアドレスからの通信についてブロック/モニタリングを行わない機能
10 SSL/TLS通信機能 暗号化された通信についても解読し、防御する機能
11 API機能 Scutumで検知した防御ログや詳細な攻撃リクエスト内容をAPI経由で取得できる機能
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社 SmartConnect Network & Security
  • めんどうなセキュリティ対策をまるっとおまかせ
  • 変化するビジネス要件に、柔軟に対応できる
  • 安心・セキュアを継続できる品質と実績
- UTM
WAF
DDoS
Webプロキシ
メールセキュリティ
ロードバランサ
VPN
株式会社モニタラップ AIONCLOUD WAAP
  • ひとつのコンソールで提供する統合セキュリティ
  • 進化する脅威に対応するアプリケーションセキュリティサービス
- WAF
Webアプリケーションを既存の攻撃、ゼロデイ攻撃などから防御します。

APIセキュリティ
企業のAPIに対する可視性を提供し脅威を遮断します。

ボット緩和
ボットのトラフィックを管理し、Webサイトを保護します。

DDoS保護
アプリケーション階層のDDoS攻撃から企業のWebサイトを守ります。
フォーティネットジャパン合同会社 FortiWeb
  • WEBアプリケーション保護
  • 機械学習に基づいた脅威検知
  • セキュリティ ファブリックの統合
  • 高度な分析
  • 誤検知の減災
  • ハードウェアベースのアクセラレーション
- アプリケーションのセキュリティ
コンテンツセキュリティ
デバイスのセキュリティ
NOC/SOC セキュリティ
ウェブセキュリティ
管理された検出と対応
SOC-as-a-Service
インシデント対応サービス
サイバーセキュリティの評価と準備状況
バラクーダネットワークス Barracuda Web Application Firewall
  • Web攻撃とDDoSを確実に防止
  • 悪意のあるボットの動きを完全に静止
  • APIとモバイルアプリの保護
  • きめ細かなアクセス制御と安全なアプリ配信を実現
  • セキュリティの自動化と統合
  • 攻撃とトラフィックパターンの可視化
- WebアプリケーションとAPIの保護

+ OWASPおよびゼロデイ攻撃に対する保護
+ 高度なボット攻撃からアプリケーションを保護
+ API保護
+ サーバクローキング
+ URL暗号化
+ GEO IPとIPレピュテーションチェック
+ マルウェア対策とウィルス対策
+ マルチプロトコルサポート
+ アプリケーションDDoS対策
+ 大規模なDDoSの防止
+ JSONセキュリティ
+ XMLファイアウォール
+ アクティブ脅威インテリジェンス
+ クライアントサイドプロテクション

アプリケーションデリバリ
+ アプリケーションの負荷分散と監視
+ コンテンツルーティング
+ キャッシュ、圧縮、トラフィックの最適化

データ保護とコンプライアンス
+ アウトバウンドDLP
+ コンプライアンス認証

IAM
+ SAMLサポートとSSO
+ クライアント証明書ベースの認証
+ AD FSとの統合
+ LDAP、Kerberos、およびRADIUSとの統合
+ 2要素認証

レポート
+ Barracuda Active Threat Intelligenceダッシュボード
+ 直感的なドリルダウンレポート
+ 包括的なログ
+ SIEMとの統合

管理
+ HAクラスタリング
+ ロールベースの緻密なアクセス制御
+ REST APIによる自動化とスケーラビリティ
+ 統合的なDevSecOpsの有効化
+ デフォルトのセキュリティテンプレート

中央管理
+ 単一コンソール
+ 証明書の中央管理
+ 中央管理通知とアラート

使いやすさ
+ アプリケーション学習(アダプティブプロファイリング)
+ 仮想パッチと脆弱性スキャナとの統合
+ 自動構成エンジン
セコムトラストシステムズ株式会社 マネージドWAFサービス
  • AWS、Azure 等の、各種クラウド環境でも利用することができます。
  • メーカーシグネチャに加え、個別シグネチャを迅速に作成することができます。
  • クラウド型なので直ぐにご利用いただけます。(※大規模システム向けにはオンプレミス型(マネージドWAFサービス標準型)も提供できます)
  • ストラッツ(Struts)の脆弱性対策も実施することができます。
  • クレジットカード番号の外部流出を検知し防止することができます。
  • DDoS攻撃対策も実施することができます。(オプション)
- DDoS対策
ファイアウォール
IPS
WAF
Amazon Web Services, Inc. AWS Shield
  • AWS Shield Standard
    ↳基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
    ↳インラインの攻撃緩和
  • AWS Shield Advanced
    ↳アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
    ↳正常性に基づく検出
    ↳高度な攻撃緩和機能
    ↳自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
    ↳積極的なイベント応答
    ↳保護グループ
    ↳可視性と攻撃の通知
    ↳DDoS コスト保護
    ↳専門サポート
    ↳グローバルな可用性
    ↳一元化された保護管理
- AWS Shield Standard
基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
インラインの攻撃緩和

AWS Shield Advanced
アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
正常性に基づく検出
高度な攻撃緩和機能
自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
積極的なイベント応答
保護グループ
可視性と攻撃の通知
DDoS コスト保護
専門サポート
グローバルな可用性
一元化された保護管理

2. 不正侵入検知システム(IDS/IPS)とは?基本機能と仕組みを分かりやすく解説

不正侵入検知システム(IDS)と不正侵入防御システム(IPS)は、企業のネットワークやシステムをサイバー攻撃から守るための防御ラインの中核です。ネットワークの入口を守るファイアウォールとは異なり、内部の通信やサーバーの挙動を監視し、より巧妙な攻撃や内部からの脅威を発見・対処します。

● IDSとIPS:検知と防御の違い

  • IDS (Intrusion Detection System:不正侵入検知システム)
    • 機能: 不正アクセスや攻撃の兆候を**「検知」し、管理者に「警告」**を発します。
    • 動作: 通信を監視しますが、通信自体を止める機能は通常ありません。対応は管理者の判断に委ねられます。
    • 特徴: 既存ネットワークへの影響が少なく導入しやすい。
  • IPS (Intrusion Prevention System:不正侵入防御システム)
    • 機能: IDSの検知機能に加え、不正な通信や攻撃を**「自動的に防御(ブロック)」**します。
    • 動作: 通信経路上(インライン)で動作し、脅威をリアルタイムで阻止します。
    • 特徴: 被害を未然に防ぐ効果が高いですが、通信への影響や誤検知時のリスクを考慮する必要があります。

● 主な検知方式

IDS/IPSは複数の検知方式を組み合わせて精度を高めています。

  • シグネチャベース: 既知の攻撃パターン(シグネチャ)と照合して検知。既知の脅威に強く高速ですが、未知の攻撃には対応できません。頻繁な更新が必須です。
  • アノマリベース: 通常の通信パターンから逸脱する**「異常」**を検知。未知の攻撃や内部不正の検知に有効な場合がありますが、誤検知の可能性もあり、適切なチューニングが重要です。
  • ヒューリスティックベース: 攻撃特有の挙動やコード断片など、経験則に基づいて検知。新しい攻撃への対応力を補強します。

● 設置場所による分類

  • ネットワーク型(NIDS/NIPS): ネットワーク上の特定箇所を通過する通信全体を監視。広範囲の脅威に対応。
  • ホスト型(HIDS/HIPS): 個別サーバーや端末に導入し、そのホスト内部の挙動(ログ、ファイル変更、プロセス実行など)を監視。より詳細な内部脅威に対応。

● 多層防御における役割

IDS/IPSは単体で完結するものではなく、多層防御戦略の重要な一要素です。

  • ファイアウォール: 基本的なアクセス制御。
  • IDS/IPS: ファイアウォール通過後の脅威検知・防御。
  • WAF: Webアプリケーション層への攻撃防御。
  • アンチウイルス/EDR: エンドポイント(端末)でのマルウェア対策とインシデント対応。

これらの対策は守備範囲が異なり、組み合わせることでセキュリティホールを最小化します。IDS/IPSは、特にネットワーク内部の脅威やファイアウォールをすり抜ける攻撃に対する防御を強化する上で欠かせません。自社の環境やリスクに応じて、IDS/IPSのタイプ(IDSかIPSか、ネットワーク型かホスト型か)や必要な検知方式を備えた製品を選ぶことが重要です。他のセキュリティ対策との連携も視野に入れ、全体最適の観点から導入を検討しましょう。

3. 【本題】不正侵入検知システムの導入効果5選:情報漏洩防止から業務効率化まで

不正侵入検知システム(IDS/IPS)の導入は、単なるセキュリティ強化に留まらず、企業の事業活動全体に多大なプラスの効果をもたらします。ここでは、管理部門や決裁者が特に注目すべき5つの主要な導入効果を解説します。

効果1:情報漏洩リスクの大幅低減

企業の最重要資産である機密情報や個人情報の保護に直結します。

  • 外部攻撃からの防御: 不正アクセス試行、脆弱性攻撃、マルウェア通信などを早期検知・遮断(IPSの場合)し、情報が外部に流出するリスクを根本から低減します。
  • 内部不正の抑止と検知: 従業員等による不正なデータ持ち出しや権限乱用といった内部脅威の兆候(通常と異なるデータアクセス、大量転送など)を検知し、抑止力としても機能します。

効果2:サイバー攻撃被害の最小化と事業継続性の確保

インシデント発生時のダメージコントロールに不可欠です。

  • 早期発見・迅速対応: リアルタイムでの脅威検知とアラート通知により、インシデント対応の初動を早め、被害が深刻化する前に対処できます。
  • 事業停止リスクの軽減: IPSによる攻撃通信の自動遮断は、ランサムウェアによるシステム停止やDDoS攻撃によるサービスダウンといった事業継続を脅かす事態を未然に防ぐ可能性を高めます。
  • 原因究明の効率化: IDS/IPSの詳細なログは、インシデント発生後の攻撃経路や手法の特定、影響範囲の調査を迅速かつ正確に行うための重要な情報源となります。

効果3:コンプライアンス遵守と企業信用の向上

法規制対応とステークホルダーからの信頼獲得に貢献します。

  • 法令・業界基準への対応: PCI DSSなど、特定の規制やガイドラインでIDS/IPSの導入・運用が要件とされている場合があります。導入により、これらのコンプライアンス要件を満たすことができます。
  • 監査対応の円滑化: システムのアクセスログやイベントログは、監査時の有効な証跡となり、監査対応の負荷を軽減します。
  • 企業評価の向上: 高度なセキュリティ対策を講じていることは、顧客や取引先からの信頼を高め、企業のブランドイメージ向上につながります。

効果4:インシデント対応プロセスの迅速化

インシデント発生時の対応スピードと精度を高めます。

  • リアルタイムな状況把握: 脅威検知と同時に、攻撃元情報、攻撃種別などの関連情報が提供されるため、担当者は迅速に状況を把握できます。
  • 対応時間の短縮: 自動検知・通知により、脅威の発見から対応開始までの時間を大幅に短縮し、被害拡大を防ぎます。
  • 対応自動化の促進: SOARツール等と連携し、アラートに基づいた初期対応(例:IPアドレス遮断)を自動化することで、さらなる迅速化が可能です。

効果5:セキュリティ運用業務の効率化

日々のセキュリティオペレーションの負荷軽減に繋がります。

  • ログ分析作業の軽減: 膨大なログの中から人手で脅威を探す作業を自動化し、担当者は重要なアラートの分析に集中できます。
  • 監視業務の省力化: 24時間365日の自動監視により、人的な監視負荷を軽減し、リソースを有効活用できます。夜間や休日のセキュリティレベルも維持されます。
  • 状況把握の容易化: レポート機能により、セキュリティ状況や脅威の傾向を容易に可視化・把握でき、経営層への報告も効率化します。

これらの効果は相互に作用し、企業のセキュリティレベルを底上げするだけでなく、事業の安定性、信頼性、そして生産性の向上にも貢献します。IDS/IPS導入は、将来のリスクに備えるための重要な戦略的投資なのです。

4. 失敗しない!不正侵入検知システム(IDS/IPS)選定の重要ポイント

不正侵入検知システム(IDS/IPS)の効果を最大限に得るためには、自社に最適な製品・サービスを選ぶことが極めて重要です。以下のポイントを参考に、慎重に比較検討を進めてください。

1. 検知精度と網羅性

  • 検知能力: 既知の攻撃だけでなく、未知の脅威(ゼロデイ攻撃等)や巧妙な攻撃をどれだけ正確に検知できるか。シグネチャ、アノマリ、ヒューリスティックなど、複数の検知方式を組み合わせているか。
  • 誤検知率: 正常な通信を攻撃と誤判定する**誤検知(フォールスポジティブ)**が少ないこと。誤検知が多いと運用負荷が増大し、IPSの場合は正常な業務通信を止めてしまうリスクがあります。チューニングによる精度向上の余地も確認。
  • 脅威情報の更新: 最新の脅威に対応するため、シグネチャ等の脅威定義ファイルが迅速かつ頻繁に、信頼できるソースから提供・更新されるか。

2. 防御機能(IPSの場合)

  • 防御能力と柔軟性: どのような防御アクション(遮断、通知等)が可能か。また、ネットワーク性能(速度・遅延)への影響が許容範囲内か。特に通信量が多い、または低遅延が求められる環境では、**性能検証(PoC)**の実施を推奨。
  • バイパス機能: 機器障害時に通信を止めない迂回機能の有無。

3. 運用管理の容易性

  • 管理画面: 設定、監視、分析を行う管理コンソールが直感的で分かりやすいか。日本語対応は十分か。
  • レポート機能: セキュリティ状況や脅威トレンドを視覚的に把握できるレポート機能が充実しているか。
  • アラート・通知: アラートの重要度に応じた通知設定や、閾値のカスタマイズなど、柔軟な設定が可能か。運用負荷軽減につながります。
  • 外部連携: SIEMやSOARなど、既存の運用ツールとの連携が可能か。

4. パフォーマンスと拡張性

  • 処理能力: 現在および将来のネットワークトラフィック量に対して十分な性能を持つか。
  • 拡張性(スケーラビリティ): 事業拡大や監視対象増加に伴い、容易に拡張できるか。ライセンス体系も確認。

5. サポート体制

  • 導入支援: 設定支援や技術コンサルティングの有無。
  • 運用サポート: 障害発生時の対応速度と質、問い合わせ対応、日本語サポートの有無は重要。
  • 情報提供: 最新の脅威情報や対策に関する情報提供、トレーニングの有無。

6. 導入形態

  • アプライアンス型: 専用ハードウェア。高性能だが初期コスト高。
  • ソフトウェア型: 既存サーバーに導入。ハードコスト抑制可能だがリソース管理必要。
  • クラウド型(SaaS): サービスとして利用。初期投資抑制、運用負荷軽減、高い拡張性がメリット。サービス内容やセキュリティ要件の確認が必要。自社の環境、リソース、予算に応じて選択。

7. コスト(TCO)

  • **総所有コスト(TCO)**で評価。初期費用(機器、ライセンス、構築費)だけでなく、**ランニングコスト(保守、更新、運用人件費/委託費)**も考慮。
  • 単純な価格比較ではなく、機能、性能、サポート、リスク低減効果を総合的に評価し、費用対効果が最も高いものを選定。

これらのポイントを軸に情報収集と比較検討を行い、必要であれば専門家の意見も参考にしながら、自社に最適なシステムを選定してください。

5. 導入前に確認すべき注意点とコスト(初期・ランニング)

不正侵入検知システム(IDS/IPS)の導入を成功させるためには、事前にいくつかの注意点を理解し、必要なコストを把握しておくことが不可欠です。これらを計画段階で考慮することで、導入後のトラブルを未然に防ぎ、システムの効果を最大限に引き出すことができます。

● 導入検討時の主な注意点

  1. 適切な設定・チューニングが必須
    • 「導入しただけ」では効果は限定的です。自社のネットワーク環境やポリシーに合わせた**検知ルールの最適化(チューニング)**が不可欠。これを怠ると、**誤検知(正常通信をブロック)検知漏れ(攻撃の見逃し)**のリスクが高まります。
    • チューニングは導入時だけでなく、運用開始後も継続的に見直しが必要です。ネットワーク環境の変化や新たな脅威に対応するため、専門知識が求められる場合もあります。
  2. 運用体制の確立が必要
    • 発生するアラートを24時間365日監視し、分析・評価・対応する体制が必要です。
    • 自社で対応する場合は、担当者のスキルと工数を確保しなければなりません。
    • リソースが不足している場合や高度な対応が必要な場合は、**外部のセキュリティ監視サービス(SOC)**の利用が有効な解決策となります。アラートに対応できない体制では、システムの価値は半減します。
  3. IDS/IPSは万能ではない
    • これは多層防御の一部であり、単体で全ての脅威を防げるわけではありません。暗号化通信の内容、USB経由のマルウェアなどは検知困難な場合があります。
    • ファイアウォール、WAF、EDRなど、他のセキュリティ対策との連携・補完が重要です。それぞれの役割と限界を理解し、組み合わせることが大切です。
  4. パフォーマンスへの影響
    • 特にインラインで動作するIPSは、通信速度や応答時間に影響を与える可能性があります。
    • 導入前に、自社のネットワーク要件を満たす十分な性能を持つ製品か確認し、必要に応じて**性能検証(PoC)**を行うことを推奨します。

● 把握しておくべきコスト(TCO:総所有コスト)

予算策定時には、初期費用だけでなく、運用にかかる費用も含めた**総所有コスト(TCO)**で評価することが重要です。

  1. 初期費用(イニシャルコスト)
    • 機器/ライセンス費用: ハードウェア購入費(アプライアンス型)またはソフトウェアライセンス費。
    • 導入・構築費用: 設置、設定、初期チューニングなどの作業費用(外部委託の場合)。
    • トレーニング費用: 運用担当者向けトレーニング費用。
  2. 運用費用(ランニングコスト)
    • 保守サポート費用(必須): ハードウェア保守、ソフトウェア更新、技術サポート費用(通常は年額)。
    • 脅威情報更新費用: 最新シグネチャ等の更新費用(保守に含まれることが多い)。
    • クラウドサービス利用料: クラウド型の場合の月額/年額費用。
    • 運用人件費/委託費用: 自社運用なら人件費、SOC利用なら委託費用。
    • その他: ログ保管ストレージ費用、電気代など。

これらの注意点とコストを事前に把握し、計画に盛り込むことで、導入後のギャップをなくし、スムーズな運用と効果の最大化を目指しましょう。

6. 導入後の安定運用と効果測定のポイント

不正侵入検知システム(IDS/IPS)は、「導入したら終わり」ではありません。その効果を持続させ、投資対効果を高めるためには、導入後の適切な運用管理、定期的な評価、そして継続的な改善が不可欠です。

● 安定運用のための体制とプロセス

  1. 明確な運用体制と役割分担:
    • アラート監視、分析、インシデント判断、対応指示、実施、報告といった各プロセスの担当者と責任範囲を明確にします。自社運用・外部委託(SOC)いずれの場合も、連携フローを定義します。
    • 担当者のスキル確保と、必要に応じたトレーニング計画が重要です。
    • 重大インシデント発生時のエスカレーション(報告・相談)ルールを整備し、迅速な意思決定を可能にします。
  2. インシデント対応プロセスの標準化:
    • 検知から復旧、事後対応までの手順を文書化し、関係者間で共有します。これにより、対応の一貫性と品質を保ちます。
    • 定期的なインシデント対応訓練(机上訓練、シミュレーション等)を実施し、手順の有効性を検証し、担当者のスキルを向上させます。
  3. 継続的なチューニングとメンテナンス:
    • ネットワーク環境の変化や新たな脅威に対応するため、**検知ルールや設定を定期的に見直し、最適化(チューニング)**します。誤検知の抑制と検知漏れの防止に努めます。
    • ベンダーから提供されるソフトウェアアップデート、パッチ、最新の脅威定義ファイル(シグネチャ)を速やかに適用し、システムの脆弱性をなくし、最新の脅威への対応力を維持します。

● 効果測定と改善活動(PDCAサイクル)

導入効果を可視化し、継続的な改善につなげます。

  1. 評価指標(KPI)の設定:
    • 有効性を測る指標を設定します。(例:検知/防御したインシデント数、誤検知率、インシデント対応時間(MTTD/MTTR)、重大インシデント発生状況など)
  2. 定期的なレポートとレビュー:
    • KPIに基づき運用状況レポート(脅威傾向、対応状況、誤検知状況等)を作成します。
    • レポートを基に定期的なレビュー会議を実施し、現状評価、課題特定、改善策を検討・決定します。
  3. 改善策の実施と効果確認:
    • 決定した改善策(チューニング、プロセス見直し、トレーニング等)を実行します。
    • 実施後、KPIの変化を追跡し、改善効果を確認します。この評価→改善のサイクルを継続します。
  4. 組織内へのフィードバックと教育:
    • 運用から得られた知見(脅威トレンド等)を組織内に共有し、従業員のセキュリティ意識向上を図ります。
    • 定期的なセキュリティ教育を実施することも、IDS/IPSの効果を高める上で重要です。

これらの活動を継続することで、IDS/IPSは組織のセキュリティレベルを維持・向上させるための生きたシステムとなり、その価値を最大限に発揮します。

7. まとめ:不正侵入検知は未来への投資~安全で効率的な事業基盤の構築へ~

本記事では、不正侵入検知システム(IDS/IPS)の重要性、具体的な導入効果、選定や運用におけるポイントを解説しました。日々進化するサイバー脅威に対し、IDS/IPSは企業の情報資産と事業継続性を守る上で不可欠なセキュリティ基盤です。

導入効果は、情報漏洩リスクの低減サイバー攻撃被害の最小化といった直接的な防御効果に加え、コンプライアンス遵守による信用の維持・向上、そしてセキュリティ運用の効率化による担当者の負荷軽減など、多岐にわたります。

確かに、導入・運用にはコストや専門知識、適切な体制構築が必要です。しかし、これらは計画段階での十分な検討や外部サービスの活用により対応可能です。重要なのは、IDS/IPSを単なるコストではなく、**将来の甚大な被害を防ぎ、安全で効率的な事業環境を維持するための「戦略的投資」**と捉えることです。インシデントによる損失は、対策コストを遥かに超える可能性があります。

この機会に、ぜひ貴社のセキュリティ体制を再評価し、不正侵入対策の現状をご確認ください。そして、IDS/IPSが貴社のリスク低減、信頼性向上、そして持続的な成長にいかに貢献できるか、具体的な導入検討を進めることを強く推奨いたします。専門家の意見も参考に、最適な対策を講じ、サイバー脅威に負けない強固な事業基盤を築きましょう。

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