IT資産管理システム導入ガイド コスト削減とセキュリティ強化を実現する必須知識

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
デジタルトランスフォーメーションDX、リモートワーク、クラウド活用といった現代のビジネス環境の変化は、企業のIT環境を急速に、そして複雑に進化させています。PC、サーバー、スマートフォン、多種多様なソフトウェア、ライセンス、ネットワーク機器など、企業が管理すべき「IT資産」は増え続けており、これらを正確に把握し、適切に管理することは、今や経営上の重要な課題です。
IT資産管理(ITAM – IT Asset Management)とは、企業が保有または利用するIT資産(ハードウェア、ソフトウェア、ライセンス、関連契約など)を、その調達から廃棄に至るライフサイクル全体を通じて正確に把握し、最適に管理する活動を指します。この管理が不十分な場合、見えないコストの増大、ソフトウェアライセンスのコンプライアンス違反、そして重大なセキュリティインシデント発生のリスクを高めることになります。
「Excelでの管理に限界を感じている」「IT資産の現状が把握できていない」「コスト削減やセキュリティ強化のために何をすべきか」… このような課題意識を持つ管理部門や決裁者の方々は少なくないでしょう。
これらの課題を解決し、IT資産管理を効率化・高度化するための強力なソリューションがIT資産管理システムの導入です。IT資産管理システムは、散在するIT資産情報を一元的に集約・可視化し、管理プロセスを自動化することで、大幅なコスト削減とセキュリティレベルの向上という、経営に直結する価値を提供します。
この記事では、IT資産管理システムの導入を検討されている企業の皆様に向け、その基本からメリット、機能、そして導入成功のためのステップと選定ポイントまで、網羅的かつ分かりやすく解説します。
おすすめのWebセキュリティサービス一覧
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会社名 | サービス名 | 特長 | 費用 | 主なサービス |
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株式会社サイバーセキュリティクラウド
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攻撃遮断くん |
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1サイト月額11,000円~ ※別途、初期導入費用がかかる お問い合わせ |
攻撃検知AIエンジン搭載 サイバー攻撃対策 サイバー保険付帯 |
株式会社スリーシェイク
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Securify(セキュリファイ) |
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ASMプラン:お見積り BASICプラン:10万円/月額 STARTERプラン:5万円/月額 Freeプラン:0円/月額 ※契約は年単位 お問い合わせ |
ASM Webアプリケーション診断 Wordpress診断 SaaS診断 |
株式会社アイロバ ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 | BLUE Sphere |
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~1.004TB 月額/45,000円 ~5.022TB 月額/78,000円 ~10.044TB 月額/154,000円 |
WAF DDos攻撃からの防御 改ざん検知 DNS監視サービス サイバーセキュリティ保険 |
ペンタセキュリティ株式会社 ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 |
Cloudbric WAF+ |
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月額サービス料金 28,000円~ 初期導入費用 68,000円~ |
WAFサービス DDoS攻撃対策サービス SSL証明書サービス 脅威IP遮断サービス 悪性ボット遮断サービス |
バルテス株式会社 ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 | PrimeWAF |
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1サイト限定プラン 初期費用 55,000円 0GB以上160GB未満 14,300円 160GB以上10TB未満 33,000円 10TB以上32TB未満 110,000円 サイト入れ放題プラン 初期費用 55,000円 0TB以上10TB未満 110,000円 10TB以上32TB未満 220,000円 |
ペネトレーションテストサービス クラウド診断サービス セキュアプログラミングのソフトウェア品質セミナー WAF |
EGセキュアソリューションズ株式会社 ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 | SiteGuard Cloud Edition |
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通信量 400GBまで 初期費用 ¥100,000 価格 (月額) ¥25,000 通信量 1TBまで 初期費用 ¥100,000 価格 (月額) ¥50,000 通信量 4TBまで 初期費用 ¥100,000 価格 (月額) ¥80,000 通信量 10TBまで 初期費用 ¥200,000 価格 (月額) ¥170,000 通信量 20TBまで 初期費用 ¥200,000 価格 (月額) ¥280,000 通信量 40TBまで 初期費用 ¥200,000 価格 (月額) ¥520,000 |
シグネチャ検査(更新、設定はマネージドサービスとして提供します。) CMS設定(WordPress、Movable Type、EC-CUBEの運用に適した設定を行います。) アクセス制御 国別フィルタ ダッシュボード レポート機能 専用フォーム(各種お問い合わせは専用フォームで承ります。履歴管理も可能です。) |
Amazon Web Services, Inc. | AWS WAF |
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Web ACL 月あたり (時間で案分) USD 5.00 ルール 月あたり (時間で案分) USD 1.00 リクエスト USD 0.60/100 万件のリクエスト (最大 1500 WCU およびデフォルトの本文サイズの検査*) Bot Control と Fraud Control 上記のタブによる追加費用 |
ウェブトラフィックフィルタリング AWS WAF Bot Control アカウント乗っ取り詐欺の防止 アカウント作成詐欺防止 フル機能 API リアルタイムの可視性 AWS Firewall Manager への統合 |
株式会社ROCKETWORKS ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 | イージスWAFサーバセキュリティ |
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イージスサーバセキュリティタイプ 月額/50,000円 イージスDDoSセキュリティタイプ ~2Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥40,000 ~5Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥60,000 ~10Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥120,000 ~50Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥198,000 ~100Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥250,000 ~200Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥450,000 200Mbps以上 別途見積もり |
サイバー攻撃の検出/遮断 月次レポート サイバーセキュリティに関するアドバイザリー 法務相談(オプション) |
SBテクノロジー株式会社 ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 |
Imperva WAF |
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- | Web Application Firewall |
株式会社セキュアスカイ・テクノロジー | Scutum |
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~500kbps 初期費用 98,000円 月額 29,800円 ~5Mbps 初期費用 98,000円 月額 59,800円 ~10Mbps 初期費用 98,000円 月額 128,000円 ~50Mbps 初期費用 198,000円 月額 148,000円 ~100Mbps 初期費用 198,000円 月額 198,000円 ~200Mbps 初期費用 198,000円 月額 298,000円 200Mbps 初期費用198,000円 100Mbps毎に100,000円加算 |
1 ブロック機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を遮断する機能 2 モニタリング機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を記録する機能 (通信自体は遮断されません) 3 防御ログ閲覧機能 ブロック(モニタリング)した通信をログとして保存し、閲覧できる機能 4 レポート機能 下記の内容を管理画面上で報告する機能 ・攻撃元(IPアドレス)top5 ・攻撃種別top5 ・防御ログの月別ダウンロード 5 ソフトウェア更新機能 防御機能等を向上させるため、ソフトウェアを更新する機能 6 防御ロジック更新機能 防御効果の向上を図るため、不正な通信パターンを随時最新の状態に更新する機能 7 特定URL除外機能 Webサイト中のWAF機能を利用したくない箇所を防御対象から除外する機能 8 IPアドレスの拒否/許可設定機能 特定のIPアドレスからの通信を拒否、もしくは特定のIPアドレスからの通信のみ許可する機能 9 脆弱性検査用IPアドレス管理機能 Webサイトへの脆弱性診断等を行う際、設定したIPアドレスからの通信についてブロック/モニタリングを行わない機能 10 SSL/TLS通信機能 暗号化された通信についても解読し、防御する機能 11 API機能 Scutumで検知した防御ログや詳細な攻撃リクエスト内容をAPI経由で取得できる機能 |
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社 | SmartConnect Network & Security |
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UTM WAF DDoS Webプロキシ メールセキュリティ ロードバランサ VPN |
株式会社モニタラップ | AIONCLOUD WAAP |
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WAF Webアプリケーションを既存の攻撃、ゼロデイ攻撃などから防御します。 APIセキュリティ 企業のAPIに対する可視性を提供し脅威を遮断します。 ボット緩和 ボットのトラフィックを管理し、Webサイトを保護します。 DDoS保護 アプリケーション階層のDDoS攻撃から企業のWebサイトを守ります。 |
フォーティネットジャパン合同会社 | FortiWeb |
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アプリケーションのセキュリティ コンテンツセキュリティ デバイスのセキュリティ NOC/SOC セキュリティ ウェブセキュリティ 管理された検出と対応 SOC-as-a-Service インシデント対応サービス サイバーセキュリティの評価と準備状況 |
バラクーダネットワークス | Barracuda Web Application Firewall |
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WebアプリケーションとAPIの保護 + OWASPおよびゼロデイ攻撃に対する保護 + 高度なボット攻撃からアプリケーションを保護 + API保護 + サーバクローキング + URL暗号化 + GEO IPとIPレピュテーションチェック + マルウェア対策とウィルス対策 + マルチプロトコルサポート + アプリケーションDDoS対策 + 大規模なDDoSの防止 + JSONセキュリティ + XMLファイアウォール + アクティブ脅威インテリジェンス + クライアントサイドプロテクション アプリケーションデリバリ + アプリケーションの負荷分散と監視 + コンテンツルーティング + キャッシュ、圧縮、トラフィックの最適化 データ保護とコンプライアンス + アウトバウンドDLP + コンプライアンス認証 IAM + SAMLサポートとSSO + クライアント証明書ベースの認証 + AD FSとの統合 + LDAP、Kerberos、およびRADIUSとの統合 + 2要素認証 レポート + Barracuda Active Threat Intelligenceダッシュボード + 直感的なドリルダウンレポート + 包括的なログ + SIEMとの統合 管理 + HAクラスタリング + ロールベースの緻密なアクセス制御 + REST APIによる自動化とスケーラビリティ + 統合的なDevSecOpsの有効化 + デフォルトのセキュリティテンプレート 中央管理 + 単一コンソール + 証明書の中央管理 + 中央管理通知とアラート 使いやすさ + アプリケーション学習(アダプティブプロファイリング) + 仮想パッチと脆弱性スキャナとの統合 + 自動構成エンジン |
セコムトラストシステムズ株式会社 | マネージドWAFサービス |
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- |
DDoS対策 ファイアウォール IPS WAF |
Amazon Web Services, Inc. | AWS Shield |
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- |
AWS Shield Standard 基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護 インラインの攻撃緩和 AWS Shield Advanced アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出 正常性に基づく検出 高度な攻撃緩和機能 自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策 積極的なイベント応答 保護グループ 可視性と攻撃の通知 DDoS コスト保護 専門サポート グローバルな可用性 一元化された保護管理 |
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1. IT資産管理の基本:目的、対象、そして重要性
IT資産管理の具体的な内容に入る前に、その基本的な目的、管理対象、そしてなぜ現代においてその重要性が増しているのかを理解しておきましょう。IT資産管理は単なる「棚卸し」ではなく、戦略的な経営活動の一環です。
IT資産管理の主な目的
- コストの最適化・削減: IT資産の利用状況を正確に把握し、ハードウェアの過剰購入や未使用ソフトウェアライセンスなどの無駄を発見・排除します。遊休資産の再利用や計画的な購買により、IT関連コスト全体を最適化します。
- コンプライアンス遵守: ソフトウェアライセンス契約違反は、高額な損害賠償や追徴金に繋がるリスクがあります。ライセンス規約や個人情報保護法などの各種法令、社内セキュリティポリシー等を遵守するための管理基盤を構築します。
- セキュリティリスクの低減: 管理されていないデバイスやソフトウェアは、サイバー攻撃の格好の標的となります。脆弱性の放置、不正ソフトウェアの使用、情報漏洩などを防ぎ、セキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えます。
- ITガバナンスの強化: 社内のIT資産が「いつ、どこで、誰が、どのように」利用しているかを可視化・統制し、適切な管理体制を確立します。内部統制の強化にも寄与します。
IT資産管理の対象
- ハードウェア資産: PC(デスクトップ、ノート)、サーバー、ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、無線LANアクセスポイント等)、プリンター、複合機、スマートフォン、タブレット、その他周辺機器。
- ソフトウェア資産: OS、Office製品、業務アプリケーション(会計、人事、CRM、ERP等)、開発ツール、セキュリティ対策ソフト、その他ツール類。
- ライセンス情報: 上記ソフトウェアのライセンス契約の種類(永続、サブスクリプション、ボリュームライセンス等)、保有数、割当状況、契約期間、関連ドキュメント。
- その他関連情報: ハードウェアのリース・レンタル契約、保守サービス契約、IPアドレス、MACアドレスなどのネットワーク関連情報。
IT資産管理の重要性が増す背景
- 管理対象資産の増加と多様化: 一人複数台のデバイス利用、BYOD(私物端末利用)、多種多様なソフトウェアやクラウドサービスの普及により、管理すべき資産の種類と数が爆発的に増加しています。
- IT環境の複雑化: リモートワークの常態化で社外デバイスの管理が必須となり、オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境も管理を複雑にしています。
- ライセンス形態の進化: サブスクリプションモデルの普及など、ソフトウェアライセンスの形態が多様化し、正確な管理が一層困難になっています。
- セキュリティ脅威の高度化: ランサムウェア、標的型攻撃、サプライチェーン攻撃など、巧妙化する脅威に対抗するため、資産管理とセキュリティ対策の連携が不可欠です。管理されていない資産は重大なセキュリティホールとなり得ます。
- DX推進とIT投資最適化: 企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で、現状のIT資産を正確に把握することは、適切なIT戦略立案と投資判断を行うための大前提となります。
これらの背景から、Excel台帳や手作業による従来の管理方法では、もはや対応が追いつかず、非効率かつ高リスクな状態に陥りがちです。IT資産管理システムの導入は、これらの課題を解決し、企業経営の安定化と効率化を図るための重要な一手なのです。
2. 【最重要メリット】IT資産管理システム導入によるコスト削減効果
IT資産管理システムの導入を検討する上で、経営層や管理部門が最も注目するのはコスト削減効果でしょう。システム導入は、これまで見過ごされてきた様々な無駄を可視化し、直接的・間接的なコスト削減を実現します。ここでは、その具体的な効果を詳しく見ていきましょう。
- ハードウェアコストの削減
- 遊休資産の発見と有効活用: システムを使えば、「どの部署に、使われていないPCが何台あるか」「倉庫に眠っているネットワーク機器は何か」といった遊休資産の状況を正確に把握できます。新規にPCや機器が必要になった際に、まずこれらの遊休資産を再割り当てすることで、不要な新規購入コストを大幅に抑制できます。
- データに基づいた購入計画: 各デバイスの利用状況、スペック、使用年数、リース期間などの情報を基に、勘や経験ではなく、客観的なデータに基づいた購入・リプレース計画を立てられます。これにより、オーバースペックな機器の購入や、不必要な前倒し更新を防ぎ、ハードウェア関連予算を最適化できます。
- リース・レンタル契約の見直し: 契約期間や台数が現状のニーズに合っているかを定期的に評価し、不要な契約の解約や条件交渉を行うことで、固定費を削減できます。
- ソフトウェアライセンスコストの削減
- ライセンスの過剰購入防止: 全社的なライセンス保有状況と、各PCへのインストール・利用状況を一元管理することで、「既に保有しているのに重複して購入してしまう」「必要数以上に購入してしまう」といった無駄なライセンス購入を防止します。
- 未使用ライセンスの棚卸しと再割り当て: 「高価なソフトウェアライセンスを購入したが、ほとんど使われていない」「退職者のPCにライセンスが割り当てられたままになっている」といった死蔵ライセンスを特定できます。これらを回収し、必要としている他の従業員に再割り当てすることで、新規ライセンス購入費用を大幅に削減できます。
- ライセンス違反による罰金リスク回避: ライセンス契約は複雑であり、意図せず違反してしまう可能性があります。監査で違反が発覚した場合、高額な損害賠償や不足ライセンスの購入を求められることがあります。システムで利用状況を常に監視し、違反リスクを検知・アラートすることで、こうしたコンプライアンス違反に伴う予期せぬ出費を未然に防ぎます。
- ライセンス形態の最適化支援: 利用実態データを分析し、ボリュームライセンスやサブスクリプションなど、よりコスト効率の高いライセンス契約への移行検討を支援します。
- 運用・保守コストの削減
- 棚卸し作業工数の劇的削減: 従来、膨大な時間と労力を要していた手作業によるIT資産の棚卸しを自動化できます。これにより、担当者の作業時間を大幅に短縮し、人件費を抑制するとともに、より戦略的な業務へリソースを振り向けることが可能になります。手作業による計上ミスや情報の不整合も防げます。
- ヘルプデスク業務の効率化: 従業員からの問い合わせ対応時に、システム上で対象デバイスの構成情報やソフトウェア導入状況などを即座に確認できるため、原因究明や問題解決までの時間を短縮し、ヘルプデスクの対応効率を高めます。
これらの直接的なコスト削減に加え、次項で述べるセキュリティ強化は、インシデント発生時の対応費用や事業停止による機会損失、信用回復コストといった莫大な間接コストを削減する効果も期待できます。IT資産管理システムの導入は、多方面から企業のコスト構造を改善する力を持っているのです。
3. コスト削減だけじゃない!IT資産管理システム導入の多岐にわたるメリット
IT資産管理システムの導入は、コスト削減という直接的な効果だけでなく、企業のコンプライアンス体制の強化、セキュリティレベルの向上、ITガバナンスの確立といった、経営の根幹を支える多様なメリットをもたらします。特にWEBセキュリティに関心のある管理部・決裁者にとっては、セキュリティ強化の側面は非常に重要です。
- コンプライアンス強化によるリスク回避
- ソフトウェアライセンス監査への迅速・正確な対応: ソフトウェアメーカーによる監査は突然やってくる可能性があります。システムによってライセンスの保有・使用状況が正確に管理されていれば、監査要求に対して迅速かつ正確なレポートを提出できます。これにより、監査対応の負担を軽減し、ライセンス違反による高額なペナルティリスクを回避できます。
- 法令・社内規定遵守の徹底: 個人情報保護法や業界ガイドライン、自社のセキュリティポリシーなど、企業が遵守すべきルールは数多く存在します。システムを活用することで、「個人情報を扱うPCの特定と管理状況の確認」「社内ルールで禁止されているソフトウェア利用の防止」など、コンプライアンス遵守状況を効率的にチェックし、徹底することが可能になります。
- セキュリティレベルの向上
- 脆弱性対策の迅速化と網羅性向上: OSやソフトウェアの脆弱性はサイバー攻撃の主要な侵入口です。システムは、社内のどのPCにセキュリティパッチが未適用か、古いバージョンのOSやソフトが残存しているかを即座に特定します。さらに、パッチの自動配布機能などを活用すれば、脆弱性を迅速かつ網羅的に解消し、攻撃リスクを大幅に低減できます。
- 不正ソフトウェア・デバイスの排除: 業務に不要なソフトウェアや、セキュリティリスクの高いフリーソフトなどのインストールを検知・禁止できます。また、USBメモリ等の外部デバイスの利用を制御することで、マルウェア感染経路や情報持ち出しルートを遮断し、内部からの脅威にも備えることができます。
- 情報漏洩対策の強化: PCの操作ログ(ファイルアクセス、Web閲覧、印刷など)を取得・監視することで、内部不正の抑止力となるとともに、万が一インシデントが発生した際の原因究跡にも役立ちます。管理されていないPCの発見・管理も情報漏洩防止に繋がります。
- IT資産ライフサイクル管理の効率化 IT資産は導入から廃棄まで管理が必要です。システムは、調達計画、キッティング(初期設定)、利用状況の把握、保守契約管理、リース期間管理、そして最終的なデータ消去を含む廃棄プロセスまで、資産のライフサイクル全体を一元的に管理することを可能にし、管理の抜け漏れを防ぎます。
- 業務効率化とITガバナンス強化
- IT資産情報のリアルタイム可視化: Excel管理などの属人化しやすい状況から脱却し、全社のIT資産情報をダッシュボードなどでリアルタイムに可視化します。これにより、管理者だけでなく経営層も現状を正確かつ迅速に把握でき、適切な意思決定が可能になります。
- データに基づくIT投資判断: 正確な資産情報と利用状況に基づいて、将来のIT投資計画や予算策定をより効果的かつ効率的に行うことができます。無駄な投資を抑制し、戦略的なIT活用を促進します。
- リモートワーク環境の統制: 社外でのデバイス利用が増えるリモートワーク環境においても、システムを通じてデバイスのセキュリティ状態の確認やポリシー適用が可能となり、場所を問わずITガバナンスを維持・強化できます。
このように、IT資産管理システムは、コスト、コンプライアンス、セキュリティ、ガバナンスといった多角的な側面から企業経営を支援する、強力なプラットフォームとなるのです。
4. IT資産管理システムの主な機能:何ができるのか?
IT資産管理システムが具体的にどのような機能を提供し、管理業務をどのように効率化・高度化するのか、その代表的な機能を見ていきましょう。これらの機能を理解することで、自社の課題解決にどの機能が役立つのか、システム選定の際の比較検討ポイントが明確になります。
- IT資産台帳管理機能: これがシステムの根幹となる機能です。社内ネットワーク上のPC、サーバー等のハードウェア情報(機種名、CPU、メモリ、IPアドレス等)や、インストールされているソフトウェア情報(OS、アプリ名、バージョン等)を自動収集し、一元的なデータベース(台帳)として管理します。これにより、常に最新かつ正確な資産情報を維持でき、手作業による更新の手間やミスをなくします。収集した情報は様々な条件で検索・抽出が可能です。
- インベントリ情報収集機能: 資産台帳の情報を最新に保つための機能です。ネットワーク上の各デバイスから、ハードウェア構成、ソフトウェア構成、パッチ適用状況などの詳細なインベントリ情報を定期的・自動的に収集します。多くの場合、各デバイスにエージェントと呼ばれる小さなプログラムを導入して情報を収集しますが、エージェントレス方式もあります。これにより、管理者は「どのPCに、何が、いつから」インストールされているかを正確に把握できます。
- ソフトウェアライセンス管理機能: コンプライアンス遵守とコスト削減に不可欠な機能です。企業が保有するソフトウェアライセンスの情報(購入数、契約形態、有効期限等)を登録・管理し、インベントリ情報として収集した実際のインストール・利用状況と自動的に突合します。これにより、ライセンスの過不足状況(余剰または不足)を正確に把握し、違反の可能性がある場合はアラートで通知します。ライセンスの割り当て管理も行えます。
- ソフトウェア配布・パッチ管理機能: セキュリティ強化と運用効率化に貢献します。OSのアップデート、セキュリティパッチ、業務アプリケーションなどを、管理コンソールから対象となる複数のPCへリモートで一括配布・インストールできます。配布・適用状況も管理画面から確認できるため、脆弱性対策の徹底やソフトウェア環境の均一化を効率的に推進できます。ユーザーに作業を依頼する手間や適用漏れのリスクを減らします。
- セキュリティ関連機能: IT資産管理とセキュリティは表裏一体であり、多くのシステムが以下のようなセキュリティ強化機能を提供します。
- 外部デバイス制御: USBメモリやスマートフォン、CD/DVDドライブ等の利用をPC単位やユーザー単位で細かく制御し、マルウェア感染や機密情報の不正持ち出しリスクを防ぎます。
- 操作ログ監視: PC上でのファイル操作、アプリケーション利用、Webアクセス、印刷などのログを取得・監視します。不正操作の抑止や、インシデント発生時の原因調査に役立ちます。
- セキュリティポリシー適用・監視: ウイルス対策ソフトの定義ファイルが最新か、パスワードポリシーが守られているか、スクリーンセーバーロックが有効かなど、社内ポリシーの遵守状況をチェック・強制します。
- 禁止ソフトウェア制御: P2Pソフトやゲームなど、業務に不要、またはセキュリティリスクのあるソフトウェアの起動を禁止します。
- レポート作成機能: 管理対象資産の一覧、ライセンスの過不足レポート、パッチ適用状況レポート、ソフトウェア利用統計レポートなど、様々な管理状況をまとめたレポートを自動生成・出力します。定期的な状況把握、経営層への報告、監査対応資料として活用できます。
これらの機能は、製品によって標準搭載かオプションか、また機能の詳細度が異なります。自社の課題解決に必要な機能を明確にし、各製品の機能仕様を比較検討することが重要です。
5. IT資産管理システム導入を成功させるためのステップと選定ポイント
IT資産管理システムの導入効果を最大限に引き出すためには、ツールを導入するだけでなく、計画的なプロセスと自社に合った慎重な製品選定が不可欠です。ここでは、導入を成功に導くための基本的なステップと、製品選定における重要なポイントを解説します。
導入を成功させるためのステップ
- 現状分析と目的設定:
- まず、「なぜ導入するのか」=導入目的を明確化します。「コスト削減」「コンプライアンス強化」「セキュリティ向上」「業務効率化」など、具体的なゴールを設定しましょう。
- 次に、現在のIT資産管理方法とその課題(Excel管理の限界、情報の不正確さ、棚卸しの手間など)を洗い出し、管理対象となる資産の範囲と規模を把握します。これがシステムに求める要件の基礎となります。
- 要件定義:
- 設定した目的と現状課題に基づき、新しいシステムに必要な機能、管理レベル、対象範囲などを具体的に定義します。「インベントリ情報の自動収集は必須」「ライセンス管理の精度はここまで求めたい」「USBデバイス制御機能が必要」など、Must(必須)要件とWant(希望)要件に分けて整理すると、後の製品比較がしやすくなります。
- 製品リサーチと比較選定:
- 定義した要件に基づき、市場にあるIT資産管理システムの情報を収集します(Webサイト、比較サイト、展示会など)。クラウド型かオンプレミス型か、自社の環境や方針に合う導入形態も検討します。
- 候補となる製品を複数ピックアップし、機能、コスト、サポート体制、導入実績などを比較検討します。
- デモンストレーションや無料トライアルを活用し、実際の操作性や管理画面の見やすさを担当者自身が評価することが重要です。「使いこなせるか」は導入後の成否を分けます。
- 各ベンダーから詳細な見積もりを取得し、ライセンス費用だけでなく、導入支援、保守サポートを含めたトータルコストで比較します。
- 導入計画と実行:
- 導入する製品が決定したら、具体的な導入計画を策定します。導入スケジュール、担当者の役割分担、既存データからの移行方法、ネットワーク設定、社内への周知・教育計画などを盛り込みます。
- 計画に基づき、ベンダーの支援を受けながらシステムのインストール、設定、カスタマイズを行います。その後、テスト環境での動作検証やデータ移行テストを入念に行います。
- 運用定着と評価改善:
- テスト完了後、本番運用を開始します。システム導入の効果を最大化するには、社内に運用を定着させることが重要です。担当者向けトレーニングの実施や、運用ルールの策定・周知徹底を図ります。
- 導入後は、定期的に効果測定(コスト削減額、作業工数削減、セキュリティインシデント発生状況など)を行い、導入目的が達成されているか評価します。評価結果に基づき、運用方法の見直しやシステム設定の最適化など、継続的な改善活動を行います。
システム選定で失敗しないためのポイント
- 機能の適合性: 定義した必須要件を過不足なく満たしているか。将来的な拡張性も考慮しつつ、不要な機能が多くて複雑化・高コスト化していないか。
- コストの妥当性: ライセンス費用(初期/継続)、導入支援費用、保守費用を含めたトータルコストで比較。料金体系が明確で理解しやすいか。
- 導入形態: クラウド型(SaaS)は初期投資を抑えやすく運用負荷も低いが、カスタマイズ性に制限がある場合も。オンプレミス型はカスタマイズ性が高いが、初期費用やサーバー管理・運用負荷が大きい。自社のIT環境、運用体制、セキュリティポリシーに合わせて選択。
- 操作性・使いやすさ: 管理画面が直感的で分かりやすいか。専門知識がなくても担当者が使いこなせるか。デモやトライアルでの確認が必須。
- サポート体制: 導入時の支援(設定代行、トレーニング等)は充実しているか。運用開始後の問い合わせ対応(時間、方法、質、日本語対応)は信頼できるか。
- 拡張性・連携性: 将来の管理対象デバイス増加に対応できるスケーラビリティがあるか。Active Directoryや人事・会計システムなど、他の社内システムとの連携が可能か。
これらのステップとポイントを踏まえ、焦らず慎重に導入プロジェクトを進めることが、IT資産管理システム導入の成功確率を高めます。
6. まとめ
本記事では、IT資産管理の基本概念から、システム導入によって得られるコスト削減効果やセキュリティ強化といった具体的なメリット、さらには導入を成功させるためのステップと製品選定のポイントまで、幅広く解説してきました。
PC、ソフトウェア、ライセンスなどのIT資産は、現代の企業活動を支える不可欠な経営資源です。これらを正確に把握し、ライフサイクルを通じて最適に管理するIT資産管理は、もはや単なる「管理業務」ではなく、コスト削減、コンプライアンス遵守、セキュリティリスク低減、そして適切なIT投資判断に直結する、戦略的な経営活動として位置づけるべきです。
特に、Excel等での手作業による管理に限界を感じている企業、IT環境の複雑化やセキュリティ脅威の増大に課題を抱える企業にとって、IT資産管理システムの導入は、これらの課題を解決し、経営基盤を強化するための極めて有効な投資となります。
しかし、その導入効果を最大限に享受するためには、自社の導入目的を明確化し、現状の課題と照らし合わせて必要な要件を定義した上で、機能、コスト、操作性、サポート体制などを多角的に比較検討し、自社に最適なシステムを慎重に選定することが何よりも重要です。そして、計画的な導入プロセスを経て、社内に運用を定着させ、継続的に改善していく姿勢が求められます。
IT資産管理システムの導入は、企業のITガバナンスを向上させ、より安全で効率的な事業運営を実現するための重要な一歩です。この記事が、貴社のIT資産管理体制の見直し、そしてシステム導入検討のきっかけとなり、ビジネスの成長に貢献できれば幸いです。より具体的な情報やアドバイスが必要な場合は、信頼できるベンダーや専門家への相談も検討してみてください。