BtoBサービス、SaaS、IT製品を徹底比較!企業のDX推進、課題を解決!

SFA JOURNAL by ネクストSFA

主要MDRサービス徹底比較:BtoB向け 機能・コスト・対応範囲から選ぶ最適解

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

近年、サイバー攻撃は組織の規模や業種を問わず深刻な脅威となり、その手口はますます巧妙化、悪質化しています。ランサムウェアによる事業停止、機密情報の窃取と二重脅迫、サプライチェーンを悪用した侵入など、企業活動に致命的な影響を与えるインシデントが後を絶ちません。従来のファイアウォールやアンチウイルスといった境界型防御だけでは、これらの高度な脅威を完全に防ぐことは困難であり、「侵入されること」を前提とした対策、すなわち侵入後の迅速な検知と対応が不可欠となっています。

こうした背景から、WEBセキュリティサービス導入を検討する企業の管理部門や決裁者の間で注目されているのがMDR(Managed Detection and Response)サービスです。MDRは、セキュリティ専門家チームが24時間365日体制で企業のIT環境を監視し、脅威の検知、分析、そして対応支援までを提供するアウトソースサービスです。

しかし、MDRサービスは提供ベンダーによって機能、コスト、対応範囲、サポート体制が大きく異なります。自社のニーズや状況に合わないサービスを選んでしまうと、期待した効果が得られないばかりか、コストが無駄になる可能性すらあります。

この記事では、MDRサービスの導入を検討されているBtoB企業の皆様に向けて、主要なMDRサービスを比較検討する上での重要なポイント(機能、コスト、対応範囲など)を明確にし、自社に最適なサービスを選び抜くための具体的なステップを解説します。適切なMDRサービスを選定し、堅牢なセキュリティ体制を構築するための一助となれば幸いです。

おすすめの不正侵入検知サービス一覧

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会社名 サービス名 特長 費用 主なサービス
株式会社サイバーセキュリティクラウド 株式会社サイバーセキュリティクラウド 詳細はこちら 攻撃遮断くん
  • 一社通貫の万全なサポート体制で、稼働率99.999%・解約率約0.97%の圧倒的な運用力を誇る
  • 20,000サイト以上の豊富な導入実績あり! SBI証券や厚生年金基金などの金融機関からANA、PARCO、代ゼミまで規模や業界問わず幅広く対応
  • 万が一サイバー攻撃により損害を受けた場合に、最大1,000万円を補償する保険を付帯可能
1サイト月額11,000円~
※別途、初期導入費用がかかる
お問い合わせ
攻撃検知AIエンジン搭載
サイバー攻撃対策
サイバー保険付帯
株式会社AndGo 株式会社AndGo 詳細はこちら Aikido Security
  • さまざまな脆弱性診断機能をオールインワンツールで提供、幅広いセキュリティ課題に包括的に対応
  • SaaS事業者からオンプレミスインフラを扱うエンタープライズまで世界3,000社で導入実績あり
  • アラートの自動トリアージ機能により、誤検知や過検知による重要アラートの見過ごしを防止
ベーシック:52,500円/月
プロ:105,000円/月
カスタム:要お問い合わせ
Webアプリケーション診断
プラットフォーム診断
クラウド診断
手動脆弱性診断
伴走サポート
株式会社スリーシェイク 株式会社スリーシェイク 詳細はこちら Securify(セキュリファイ)
  • 初期費用0円・最短1営業日でワンストップのセキュリティ対策を開始できる
  • 簡単3ステップで、3300項目以上の診断を実施
  • シンプルかつストレスフリーな操作性
  • リリースやアップデート時に課金なしで何度も診断可能
  • 【新機能リリース】攻撃対象になり得るIT資産を自動で棚卸し、管理できるASMを搭載!
ASMプラン:お見積り
BASICプラン:10万円/月額
STARTERプラン:5万円/月額
Freeプラン:0円/月額
※契約は年単位
お問い合わせ
ASM
Webアプリケーション診断
Wordpress診断
SaaS診断
トレンドマイクロ株式会社 TippingPoint
  • 機械学習による脅威の検知によりネットワーク全体を防御
  • 拡張性の高いシステム構成で大容量のネットワークに対応可能
  • 高性能な検知と対応の優先度を提供
要お問い合わせ 要お問い合わせ
株式会社東計電算 Total Security Function Service
  • 高機能、高セキュリティのマルウェア対策サービスが低コストで利用可能
  • 自社データセンターを活用したSaaS型サービス
  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
  • リアルタイムで侵入防御シグネチャを分析展開し、連携したネットワーク対応を実現
要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

MDRサービスとは?その基本機能と導入メリット

MDR(Managed Detection and Response)サービスとは、組織のIT環境全体(エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど)を対象に、サイバー脅威をプロアクティブに検知・分析し、迅速に対応するためのマネージド型セキュリティサービスです。単にアラートを通知するだけでなく、セキュリティ専門家(アナリスト)がそのアラートの重要度を判断(トリアージ)し、脅威の実態を調査、そして具体的な対応策の提示や実行支援までを行う点に大きな特徴があります。

類似のサービスとの違いを簡単に整理しましょう。

  • MSSP(Managed Security Service Provider): ファイアウォール運用やログ監視など、より広範なセキュリティ運用を代行しますが、MDRは脅威検知と対応に特化しています。
  • EDR(Endpoint Detection and Response): PCやサーバーなどエンドポイントでの脅威検知・対応ツールですが、MDRはEDRを含む様々な技術やログを活用し、アナリストの分析・判断を加えたサービスです。
  • SIEM(Security Information and Event Management): ログを集約・分析し脅威を可視化するプラットフォームですが、MDRはSIEMの情報を活用しつつ、より踏み込んだ分析と対応を行います。

MDRサービスが提供する主要な機能には以下のようなものがあります。

  • 24時間365日の監視とインシデント対応: セキュリティ侵害は昼夜を問わず発生します。専門のアナリストチームが常時監視を行い、不審なアクティビティやマルウェア感染の兆候を早期に発見し、定義された手順に従って迅速に対応を開始します。リアルタイム監視、ログ分析、アラート通知が含まれます。
  • プロアクティブな脅威ハンティングと分析: 受動的にアラートを待つだけでなく、システムやネットワーク内に潜む未知の脅威や攻撃の痕跡を能動的に探索(脅威ハンティング)します。データ分析やAI・機械学習技術も活用し、通常とは異なる振る舞いを検知します。検知された脅威に対しては、根本原因や影響範囲を特定するための詳細な分析が行われます。
  • EDR/XDR等との連携・活用: 多くのMDRサービスは、EDRや、より広範なソース(ネットワーク、クラウド、メール等)から情報を収集・分析するXDR(Extended Detection and Response)と連携します。これにより、脅威の可視性を高め、より迅速かつ効果的な対応を実現します。
  • レポートティング: 定期的にセキュリティ状況、検知した脅威、対応内容などをまとめたレポートが提供され、組織内の状況把握やコンプライアンス要件への対応に役立ちます。

MDRサービス導入による主なメリットは以下の通りです。

  • 高度なセキュリティ体制の実現: 専門家による24時間監視と最新の脅威インテリジェンス活用により、高度化するサイバー攻撃への対応力を大幅に強化できます。
  • インシデント対応の迅速化と被害最小化: 早期検知と専門家による迅速な対応により、事業停止や情報漏洩などの被害を最小限に抑えます。
  • セキュリティ人材不足の解消とコスト効率: 高度なスキルを持つ人材の確保・育成や高価なツールの導入・維持にかかるコストと労力を削減できます。
  • 社内担当者の負荷軽減: 大量のアラート対応やインシデント調査から解放され、より戦略的な業務に集中できます。
  • プロアクティブな防御: 脅威ハンティングにより、潜在的なリスクを未然に発見・対処できます。

MDRサービス選定のための重要比較ポイント

MDRサービスは多種多様であり、最適なサービスを選ぶためには、いくつかの重要なポイントを比較検討する必要があります。ここでは、選定時に特に注目すべき比較ポイントを解説します。

  • 機能面:
    • 検知技術: どのような技術(シグネチャ、振る舞い検知、AI/機械学習、脅威インテリジェンスなど)を用いて脅威を検知するのか、その精度はどうか。未知の脅威やゼロデイ攻撃への対応能力は重要です。
    • 対応レベル: アラート通知と分析のみか、具体的な対応策の推奨までか、リモートでの封じ込め・駆除といった対応代行まで含まれるか。脅威ハンティングの有無やその内容も確認が必要です。
    • 基盤技術: どのようなEDR/XDR製品、SIEMプラットフォームを基盤としているか。自社の既存環境との連携性も考慮すべき点です。
    • レポート: 提供されるレポートの内容、粒度、頻度、カスタマイズ性はどうか。
  • コスト面:
    • 料金体系: 課金の単位(保護対象のエンドポイント数、ユーザー数、データ量など)やサービスレベルに応じたティア制など、様々なモデルがあります。主なモデルとして、エンドポイント単位料金制(端末数に応じ変動、中小規模向け)、月額固定料金制(予算化しやすい、大規模向け)、カスタム見積もり制(個別要件に対応、柔軟性が高い)などがあります。自社の規模や利用状況に合った、透明性の高い料金体系かを確認しましょう。
    • 費用項目: 初期費用、月額費用に加え、オプション機能(追加の分析、レポートカスタマイズ等)や追加サポートに対する費用、隠れたコストがないかを精査します。
    • 契約期間: 最低契約期間や更新条件も確認が必要です。
  • 対応範囲(スコープ):
    • 監視対象: どこまで監視・保護してくれるのかが重要です。対象はエンドポイント(PC、サーバー、モバイル)のみか、ネットワーク機器やトラフィック、クラウド環境(AWS, Azure, Google Cloud等)、さらにはSaaSアプリケーション(Microsoft 365, Google Workspace等)まで含まれるかを確認します。自社のIT環境全体をカバーできるかを見極める必要があります。
    • プラットフォーム: 対応可能なOS(Windows, macOS, Linuxなど)やプラットフォームの種類を確認します。
  • サポート体制:
    • サービス提供時間: 24時間365日対応はMDRサービスの基本ですが、サポート窓口の対応時間や言語を確認します。
    • SLA(Service Level Agreement): 脅威検知から通知、分析、対応開始までの目標時間(応答時間保証)がどの程度か。これはインシデント対応の迅速性に直結します。
    • コミュニケーション: 緊急時の連絡手段(電話、メール、専用ポータル等)や、平常時のコミュニケーション方法、報告体制を確認します。
    • 導入支援(オンボーディング): サービスの導入・設定支援や、導入後の運用サポート、トレーニングの有無、手厚さも重要です。「導入のしやすさ」は、スムーズな運用開始に影響します。
  • ベンダーの信頼性:
    • 実績と経験: MDRサービスの提供実績、特定業界や業種での経験、類似規模の企業への導入実績などを確認します。
    • アナリスト体制: どのようなスキルや経験を持つアナリストが、どの程度の規模で対応しているのか。アナリストの質はサービス品質に直結します。
    • 第三者評価: Gartnerなどの調査会社による評価や、業界の認定資格なども参考になります。

これらのポイントを自社の状況や要件(予算、保護対象、求めるサービスレベルなど)と照らし合わせ、優先順位をつけて評価することが、最適なMDRサービス選定への第一歩となります。

主要MDRサービスのタイプ別特徴と比較

MDRサービスは、提供するベンダーの出自や特徴によって、いくつかのタイプに分類できます。ここでは代表的な3つのタイプと、それぞれの一般的な傾向を解説します。これにより、自社のニーズに合ったサービスの方向性を見極める手助けとなるでしょう。なお、これは一般的な分類であり、個々のサービスは異なる特徴を持つ場合があります。

  • タイプA: 大手セキュリティベンダー提供型
    • 概要: 自社開発のEDR/XDR製品などを基盤とし、グローバルでサービスを提供する大手ベンダー。
    • 機能面: 自社製品との緊密な連携が強み。最新の脅威情報や検知技術が迅速に反映される傾向。グローバルな脅威インテリジェンスを活用した高度な分析能力や、充実した脅威ハンティング機能を持つことが多い。
    • コスト面: 比較的高価な傾向だが、機能やサポートレベルに応じたティア制が一般的。自社製品ユーザーには割引がある場合も。
    • 対応範囲: 基本は自社製品が対応する範囲だが、他社製品連携やクラウド、ネットワーク監視など広範化が進んでいる。
    • サポート体制: グローバル標準の安定したサポート体制。SLAも明確なことが多いが、日本市場へのローカライズ度は要確認。
    • 信頼性: ベンダーとしての実績、ブランド力は高い。
  • タイプB: MSSP系ベンダー提供型
    • 概要: 従来のマネージドセキュリティサービス(MSSP)の延長としてMDRを提供するベンダー。
    • 機能面: ファイアウォールやSIEM運用など、幅広いセキュリティ運用経験を活かした多様なログソースの相関分析に長ける場合がある。利用するEDR等は他社製品の場合も多く、技術の先進性はベンダーによる。
    • コスト面: 既存のMSSP契約とのバンドルや、比較的柔軟な料金プランが期待できる。中堅・中小企業向けプランを持つ場合も。
    • 対応範囲: ネットワーク機器やサーバー監視など、従来得意としてきた領域を含む広範な監視スコープを提供できる可能性がある。
    • サポート体制: 日本国内でのサポート実績が豊富で、国内の商習慣に合わせた対応が期待できる場合が多い。アナリストのスキルには差がある可能性も。
    • 信頼性: 長年の運用実績を持つベンダーが多いが、MDRサービスとしての専門性や先進性は個別に確認が必要。
  • タイプC: MDR専業・新興ベンダー提供型
    • 概要: MDRサービスを主力事業とする、比較的新しいベンダーや専業ベンダー。
    • 機能面: 最新のAI技術や自動化技術を積極的に採用し、特定の脅威検知や対応の自動化、脅威ハンティングに強みを持つ場合がある。ニッチな領域に特化していることも。
    • コスト面: 大手と比較して競争力のある価格設定や、シンプルな料金体系を提示することがある。初期費用を抑えたプランも。
    • 対応範囲: 特定のプラットフォーム(例:クラウドネイティブ環境)やエンドポイントに特化している場合があるため、自社要件との適合性確認が重要。
    • サポート体制: 少数精鋭による手厚いサポートをアピールする場合がある一方、大規模インシデントへの対応力や体制の安定性は要確認。
    • 信頼性: 実績面では他タイプに劣る場合もあるが、独自の技術力やサービスの機敏性で評価される。第三者評価や事例が判断材料。

タイプ選定のポイント: 自社の既存セキュリティ環境(特定ベンダー製品の利用状況)、重視する点(技術の先進性、コスト、国内サポート、特定領域への対応力など)、企業規模などを考慮し、どのタイプのサービスが自社に合いそうか、大まかな方向性を見定めることが有効です。

自社に最適なMDRサービスを選び抜く実践ステップ

MDRサービスの比較検討ポイントとタイプ別特徴を理解したら、次は自社にとって最適なサービスを選び抜くための具体的なステップに進みましょう。体系的なアプローチで、後悔のない選定を目指します。

  • ステップ1: 自社の状況と要件の明確化
    • 保護対象アセットの特定: 何を守るべきか?PC、サーバー、ネットワーク機器、クラウド上のデータやアプリケーションなど、保護対象を具体的にリストアップします。特に重要な情報資産やシステムを明確にします。
    • 現行セキュリティ体制と課題分析: 社内にセキュリティ担当者はいるか?スキルレベルは?既存ツール(アンチウイルス、EDR、SIEM等)との連携は?現在抱える課題(インシデント対応経験不足、アラート過多、リソース不足等)を整理します。
    • 予算規模とコスト要件: MDRサービスに割り当て可能な予算(初期費用、月額費用)を明確にし、費用対効果の判断基準を設定します。
    • コンプライアンス要件: 自社が属する業界の規制(金融、医療等)や、ISMS、PCIDSS、個人情報保護法など、遵守すべき法的・業界要件を確認し、必要な機能(ログ保管期間、レポート等)を洗い出します。
    • 求めるサービスレベル: どこまでの対応をMDRサービスに期待するか?脅威の通知のみか、分析・対応策提案までか、インシデント対応代行まで必要か。脅威ハンティングの要否なども含め、自社の運用体制に合わせて定義します。
  • ステップ2: 比較ポイントの優先順位付け
    • ステップ1で明確化した自社の要件に基づき、「機能」「コスト」「対応範囲」「サポート」「ベンダー信頼性」といった比較検討ポイントに優先順位をつけます。例えば、高度な標的型攻撃対策が最優先なら「検知技術」「脅威ハンティング」「アナリストの質」を重視。コスト最優先なら価格と機能のバランス。24時間365日の迅速対応が必須なら「SLA」「サポート体制」を最重要視します。この優先順位が、後のサービス比較と絞り込みの明確な基準となります。
  • ステップ3: 候補サービスの絞り込みと詳細情報収集
    • 設定した優先順位と、前述のサービスタイプ別特徴などを参考に、候補となるMDRサービスを複数(通常は3社程度)に絞り込みます。
    • 絞り込んだ候補サービスについて、ベンダーのウェブサイトや資料請求を通じて、サービスの詳細仕様、提供条件、SLAなどを確認します。
    • ベンダーへのヒアリングが非常に重要です。以下の点などを具体的に質問し、比較検討します。
      • 具体的な検知シナリオと対応フロー
      • 利用技術(EDR/XDR、SIEM、脅威インテリジェンス)の詳細
      • アナリストチームの経験、スキル、体制、規模
      • レポートのサンプルとカスタマイズ可否
      • 類似企業(規模・業種)での導入実績
      • 詳細な料金体系と見積もり
      • オンボーディング(導入支援)のプロセス、期間、内容
    • 導入のしやすさの確認も重要です。可能であれば、トライアルやPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施し、実際の運用イメージ、検知能力、自社環境との適合性、サポートの質などを評価することをお勧めします。複数のベンダーと対話し比較することで、より客観的で納得のいく選定が可能になります。

まとめ

現代のビジネス環境において、巧妙化・悪質化するサイバー攻撃への対策は、もはや避けて通れない経営課題です。その有効な解決策の一つとして、MDRサービスは高度な脅威検知能力迅速なインシデント対応体制を、専門家へのアウトソーシングによって効率的に実現する手段を提供します。24時間365日の監視、プロアクティブな脅威ハンティング、専門家による分析と対応支援は、自社だけでの構築・維持が困難なセキュリティレベルを可能にします。

しかし、MDRサービスは決して万能薬ではなく、その効果は自社のニーズや状況に最適なサービスを選べるかにかかっています。本記事で解説したように、サービス選定にあたっては、機能(検知技術、対応レベル)、コスト(料金体系、総費用)、対応範囲(監視対象)、サポート体制(SLA、導入支援)、そしてベンダーの信頼性といった複数の比較ポイントを、自社の要件と照らし合わせて慎重に評価することが不可欠です。

明確な要件定義、比較ポイントの優先順位付け、そして候補ベンダーとの十分なコミュニケーションを通じて、最適なMDRサービスを選定してください。適切なMDRパートナーと共に、堅牢なセキュリティ基盤を構築し、ビジネスリスクを低減させることが、企業の持続的な成長と信頼確保に繋がります。

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