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SFA JOURNAL by ネクストSFA

SIEMとAIの融合が変える次世代セキュリティ管理:機能・メリット・選び方【2025年版】

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

サイバー攻撃の高度化と企業が扱うデータ量の爆発的増加は、従来のセキュリティ対策に限界をもたらしています。組織全体のログを収集・分析し脅威を検知するSIEM(Security Information and Event Management)は、セキュリティ運用の中心的存在ですが、膨大なアラートへの対応、未知の脅威の見逃し、専門人材の不足といった課題も顕在化しています。これらは管理部や決裁者にとって無視できない問題です。

この状況を打破する鍵として注目されているのが、AI(人工知能)、特に機械学習(ML)技術です。AIとSIEMの融合は、単なる機能強化に留まらず、セキュリティ運用のパラダイムシフトを促す可能性を秘めています。より高度で、より効率的な脅威検知と対応を実現する次世代のセキュリティ管理が見えてきました。

本記事では、「SIEM AI」をテーマに、従来のSIEMの課題から、AIの具体的な活用法、導入による明確なメリット、そして選定・導入時の注意点将来展望まで、企業の管理部・決裁者の方々が知るべき情報を網羅的に、かつ分かりやすく解説します。AIとSIEMが織りなす新しいセキュリティの世界を理解し、貴社の戦略的な投資判断にお役立てください。

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  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
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  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
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  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
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フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
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要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
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保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
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Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
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要お問い合わせ 脅威防御
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URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
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Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
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  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

 従来のSIEMが直面する課題とは?なぜAIが必要なのか

SIEMは長年にわたりセキュリティ運用を支えてきましたが、近年の環境変化により、その限界が露呈しています。これらの課題を克服するために、AIの能力が強く求められています。

  • 1. 膨大なログデータと「アラートの洪水」問題 サーバー、ネットワーク機器、クラウド、IoTなど、ログソースの多様化と増加により、SIEMが処理すべきデータ量はテラバイト、ペタバイト級に達しています。このデータ洪水の中から真の脅威を見つけ出すことは、人手では極めて困難です。結果、SIEMは大量のアラートを発し、セキュリティ担当者はその選別と対応に忙殺され、「アラート疲労」に陥りがちです。重要なインシデントの兆候がノイズに埋もれてしまうリスクが高まっています。
  • 2. ルールベース検知の限界と未知の脅威 従来のSIEMの脅威検知は、主に既知の攻撃パターンやIoC(Indicator of Compromise)に基づいた事前定義ルール(相関ルール)に依存します。これは既知の脅威には有効ですが、シグネチャが存在しない未知の脅威(ゼロデイ攻撃)や、正規ツールを悪用するファイルレス攻撃、常に変化する巧妙な標的型攻撃など、ルール化されていない、あるいは定義が難しい脅威を捉えることは苦手です。攻撃者は常に防御策を回避しようとするため、ルールベースだけでは後追いにならざるを得ません。
  • 3. 誤検知(フォールスポジティブ)による運用負荷の増大 相関ルールは、その設定次第で大量の誤検知(脅威ではない正常な活動をアラートとして報告してしまうこと)を発生させる可能性があります。個々のアラートが本物か否かを調査・判断(トリアージ)する作業は、担当者の運用負荷を著しく増大させます。また、誤検知が多いとアラートへの信頼性が低下し、本当に危険な警告が見過ごされるリスクも生じます。継続的なルールチューニングも必要ですが、これには専門知識と多大な工数がかかります。
  • 4. 高度な分析・運用に必要な専門人材の不足 SIEMを真に有効活用するには、膨大なデータを分析し、脅威を正確に特定・評価し、インシデントに対応するための高度なスキルを持つセキュリティアナリストが不可欠です。しかし、このような専門人材は世界的に不足しており、多くの企業で採用・育成が追いついていません。結果として、SIEMを導入しても十分に活用しきれない、あるいは運用が形骸化してしまうといった問題が生じています。

これらの課題、すなわち「データの量」「検知の質(未知の脅威、誤検知)」「人材の不足」を解決するために、膨大なデータからパターンを学習し、未知の異常を検知し、分析プロセスを自動化・効率化できるAI(特に機械学習)の能力が必要とされているのです。

 SIEMにおけるAI(人工知能)の具体的な活用法

AI、特に機械学習(ML)や深層学習(DL)は、従来のSIEMの限界を補い、その能力を拡張するために、様々な形で組み込まれています。AIの統合により、SIEMはよりインテリジェントなセキュリティプラットフォームへと進化しています。その具体的な活用例を見ていきましょう。

  • 1. 機械学習(ML)による「異常検知」とベースライン分析 AI(ML)は、SIEMに集約された膨大なログデータを継続的に学習し、組織やシステム、ユーザーごとの「平常時の活動パターン(ベースライン)」を自動的に構築します。そして、このベースラインから統計的に逸脱する「異常」なアクティビティを検知します。例えば、通常とは異なる時間帯のログイン、異常な量のデータ転送、普段アクセスしない機密情報へのアクセス試行などを、事前にルールを定義することなく発見できます。これにより、未知の脅威予期せぬ内部リスクの早期発見が可能になります。
  • 2. UEBA(ユーザーおよびエンティティ行動分析)による高度な脅威検知 UEBAはAIを活用した行動分析技術であり、SIEMと統合されることで特に効果を発揮します。ユーザー(従業員、特権ID等)やエンティティ(サーバー、端末、IPアドレス等)の過去の行動履歴から通常のパターンを学習し、それから逸脱するリスクの高い不審な行動(例:退職予定者による異常なファイルアクセス、侵害された可能性のあるアカウントによる権限昇格要求、マルウェア感染端末の特異な通信パターン)を高精度で検知します。内部不正アカウント乗っ取りの兆候発見に有効です。
  • 3. AIによるインシデントの自動分析と優先順位付け(トリアージ支援) SIEMが生成する大量のアラートに対し、AIは自動的に内容を分析し、脅威の深刻度、影響範囲、関連性などを評価します。類似のアラートをグルーピングしたり、過去のインシデントデータや最新の脅威インテリジェンスと照合したりすることで、対応すべきアラートの優先順位を判断し、セキュリティ担当者に提示します。これにより、担当者は最も重要なインシデントに迅速に集中できるようになります。
  • 4. 脅威インテリジェンスの活用高度化と脅威予測 AIは、日々更新される膨大な脅威インテリジェンス情報(不正IP、マルウェア情報等)を効率的に分析し、自社の環境にとって真に関連性の高い情報を抽出・評価する能力を向上させます。さらに、過去の攻撃トレンドや自社の脆弱性情報などを学習・分析することで、将来どのような攻撃を受けるリスクが高いか、あるいは攻撃の兆候を早期に捉える脅威予測への応用も期待されています。
  • 5. 誤検知の自動削減とルールチューニング支援 AIは、アラートが誤検知(フォールスポジティブ)である可能性を自動的に分析し、フィルタリングしたり、担当者に判断根拠を提供したりします。また、どのルールが頻繁に誤検知を発生させているかを特定し、ルールの自動調整や改善提案を行うことで、継続的なチューニング作業の負荷軽減に貢献します。

これらのAI機能により、SIEMは単なる事後対応ツールから、より予測的でプロアクティブな脅威管理プラットフォームへと進化しています。

 AI搭載SIEM導入のメリット:セキュリティ運用はどう変わる?

AI技術を統合したSIEM(AI搭載SIEM)の導入は、企業のセキュリティ運用に具体的なメリットをもたらし、その効率性と効果性を大きく向上させます。管理部や決裁者が理解すべき主な導入メリットを5つ挙げます。

  • メリット1:未知の脅威・ゼロデイ攻撃への対応力強化 AIの最大の強みの一つは、過去のデータから学習し、未知のパターンや異常を検知する能力です。これにより、シグネチャやルールに依存する従来の方法では見逃しがちだった未知のマルウェア(ゼロデイ攻撃)、ファイルレス攻撃、巧妙に偽装された標的型攻撃などを検知できる可能性が格段に向上します。日々進化する脅威への対応力を高め、プロアクティブな防御体制の構築に貢献します。
  • メリット2:運用負荷の大幅な軽減と「アラート疲労」からの解放 AIは、SIEMが生成する膨大なアラートを自動的に分析・評価し、誤検知を削減するとともに、対応すべきアラートの優先順位付けを行います。これにより、セキュリティ担当者は、重要度の低いアラートの調査に時間を費やすことなく、本当に危険なインシデントにリソースを集中できます。結果として、「アラート疲労」が軽減され、セキュリティ運用全体の効率が大幅に向上し、コスト削減にも繋がります。
  • メリット3:インシデント調査・対応の迅速化と精度向上 AIは、検知した脅威に関する関連情報(影響範囲、攻撃経路、関連イベント等)を自動的に収集・分析し、インシデントの背景情報(コンテキスト)として担当者に提供します。これにより、担当者はインシデントの内容を迅速かつ正確に把握でき、調査にかかる時間を大幅に短縮できます。また、AIが推奨する対応策などを参考にすることで、より的確な初動対応が可能となり、被害の最小化に貢献します。
  • メリット4:内部不正やアカウント乗っ取りの早期発見・抑止 UEBA(ユーザーおよびエンティティ行動分析)機能を備えたAI搭載SIEMは、従業員や特権アカウントなどの通常とは異なる不審な行動パターンを高精度で検知します。これにより、内部関係者による機密情報の持ち出し不正操作の兆候、あるいは外部からの攻撃者によって侵害されたアカウントが悪用されている可能性などを早期に発見できます。問題が深刻化する前に対策を講じることで、重大な情報漏洩やシステム侵害のリスクを低減します。
  • メリット5:セキュリティ人材不足問題の緩和 高度なセキュリティスキルを持つ人材の確保は多くの企業にとって課題ですが、AI搭載SIEMは、従来は専門家が行っていた高度な分析業務の一部を自動化・効率化します。アラートのトリアージ、基本的な調査、相関分析、レポート作成支援などをAIが担うことで、限られたセキュリティ人材の能力を最大限に引き出し、業務負荷を軽減します。完全に専門家が不要になるわけではありませんが、スキルの補完や業務効率化を通じて、人材不足問題の緩和に貢献します。

これらのメリットにより、AI搭載SIEMは、より少ないリソースで、より高いレベルのセキュリティを実現するための強力な武器となります。

 AI搭載SIEMを選定・導入する際の注意点とポイント

AI搭載SIEMは大きな可能性を秘めていますが、その導入と活用を成功させるためには、技術的な特性や限界を理解し、いくつかの重要な点に注意する必要があります。「AI搭載」という言葉だけで判断せず、以下のポイントを慎重に評価することが求められます。

  • 1. AIモデルの精度・信頼性と実績の検証 AIによる検知精度は、利用されているAIアルゴリズム学習データの品質・量に大きく左右されます。ベンダーがどのようなAI技術を採用しているか、その検知精度(True Positive Rate)や誤検知率(False Positive Rate)に関する客観的なデータや実績(第三者機関による評価、導入企業での実績など)を確認することが重要です。「AI搭載」を謳う製品は多数ありますが、その性能にはばらつきがあることを認識し、具体的な根拠に基づき評価しましょう。
  • 2. ブラックボックス問題と「説明可能性(XAI)」の重要性 特に高度なAIモデルでは、なぜその判断に至ったのか(例:なぜこの通信を異常と判断したのか)の根拠やプロセスが人間には理解しにくい「ブラックボックス」状態になることがあります。セキュリティ運用では、アラートの最終的な判断と対応責任は人間が負うため、AIの判断根拠が不明瞭だと適切な対応が困難になる場合があります。近年は、AIの判断根拠を提示する「説明可能なAI(Explainable AI: XAI)」技術が重視されています。選定時には、AIの判断プロセスがどの程度透明化されているか、説明能力も確認ポイントとなります。
  • 3. 導入後のチューニングと継続的な学習・評価の必要性 AI搭載SIEMは「導入すれば終わり」ではありません。AIモデルも、自社の環境に合わせて初期設定や継続的なチューニングが必要です。平常時の活動パターン(ベースライン)の調整や、誤検知・過検知に対するフィードバックを通じたモデルの再学習が、精度維持・向上のためには不可欠です。また、新たな攻撃手法に対応できるよう、AIモデル自体の継続的な更新・改善が行われるか、そのプロセスも確認が必要です。AIを効果的に活用するには、「育てる」という運用視点が求められます。
  • 4. 自社データとAIモデルの「相性」確認(PoCの推奨) AIモデルの性能は、学習対象となるデータの特性に影響されます。ある環境で高い性能を示したモデルが、自社の環境やログデータの特性(種類、量、質)ではうまく機能しない可能性も考慮すべきです。そのため、可能であればPoC(概念実証)を実施し、実際の自社データを使ってAI機能の精度、有効性、運用負荷などを事前検証することを強く推奨します。これにより、導入後の「期待外れ」のリスクを大幅に低減できます。
  • 5. 求められる運用体制とスキルセット AIは運用負荷を軽減しますが、完全に人手を不要にするわけではありません。AIの分析結果を解釈・評価し、最終的な意思決定を行い、必要に応じてAIをチューニングできるスキル、あるいはAIと協働してセキュリティ運用を遂行できる体制が必要です。AIの特性を理解し、その出力を鵜呑みにせず、適切に活用できる人材の育成や、場合によっては外部専門家(MSSPなど)との連携も視野に入れる必要があります。

これらの点を事前に検討・評価し、対策を計画することで、AI搭載SIEMの導入効果を最大限に引き出すことが可能になります。

 AIとSIEMの未来:SOAR連携、XDR、そして予測・自律型セキュリティへ

AIとSIEMの融合は、セキュリティ運用のあり方を根本から変えつつあり、その進化は今後さらに加速すると予想されます。SOARとの連携深化、XDRへの発展、そしてより自律的なセキュリティ体制の実現など、AIとSIEMが切り拓く未来のトレンドについて考察します。

  • 1. SOARとの連携深化:インシデント対応の「完全自動化」へ AI搭載SIEMによる高度な脅威検知・分析・優先順位付けと、SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)による対応プロセスの自動化は、ますます緊密に連携していきます。AIが検知・判断した脅威に対し、SOARが人間を介さずに最適な対応プレイブックを実行し、ファイアウォールでの通信遮断、EDRでの端末隔離、ID管理システムでのアカウント無効化といった一連の対応措置を完全に自動化する流れが加速するでしょう。これにより、インシデント対応時間は劇的に短縮され、被害を最小限に抑えることが可能になります。
  • 2. XDR(Extended Detection and Response)におけるAIの中心的役割 XDRは、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メール、IDなど、複数のセキュリティドメインからのデータを統合・相関分析し、サイロ化を排除して高度な脅威検知と効率的な対応を目指すアプローチです。このXDRにおいて、多様かつ膨大なデータを横断的に分析し、人間では見つけられない脅威の関連性や兆候を発見するためには、AI(特に機械学習)の能力が不可欠です。AIはXDRプラットフォームのインテリジェンス中核として機能し、SIEM自身がXDR機能を取り込む、あるいはXDRプラットフォームと深く連携する形で、より統合的なセキュリティ分析・対応基盤へと進化していきます。
  • 3. 「検知」から「予測」へ:プロアクティブな防御の実現 現在のAI活用は、主に発生した事象の「検知」や「分析」が中心ですが、今後は「予測」の領域での活用が本格化すると期待されます。過去の膨大な攻撃データ、グローバルな脅威インテリジェンス、自社の脆弱性情報、資産情報などをAIが複合的に分析し、次にどのような攻撃を受ける可能性が高いか、どの資産が狙われやすいかを高い精度で予測します。この予測に基づき、攻撃を受ける前にプロアクティブ(先回り)に防御策(脆弱性へのパッチ適用優先度変更、特定通信の監視強化、アクセス制御の見直し等)を講じることが可能になり、未然防止の効果を高めます。
  • 4. 「自律型SOC」への道:AIによる自己判断・自己修復 これらの進化の先に、AIがより主体的にセキュリティ運用を担う「自律型SOC(Security Operation Center)」のコンセプトがあります。脅威の検知から分析、影響評価、最適な対応策の選択、そして対応の実行までを、AIが人間の介入を最小限にして自律的に行うことを目指します。完全な自律化には、倫理面や信頼性、想定外事象への対応など多くの課題がありますが、AI技術の継続的な進歩により、将来的にはより自己学習能力と自己修復能力を備えたセキュリティシステムが登場する可能性を秘めています。

AIとSIEMの融合は、セキュリティ対策を事後対応型から、より予測的、予防的、そして自律的なものへと変貌させていくでしょう。これらの未来像を見据え、自社のセキュリティ戦略を継続的に見直していくことが重要です。

 まとめ:AIとの融合で進化するSIEMを理解し、未来のセキュリティ対策へ

本記事では、「SIEM AI」をテーマに、AI技術が従来のSIEMの課題を克服し、次世代のセキュリティ管理にもたらす変革について、その具体的な活用法、メリット、注意点、そして将来展望を解説しました。

AI、特に機械学習は、膨大なログデータの効率的な分析、未知の脅威や内部不正の高度な検知、アラートの自動優先順位付け、誤検知の削減などを可能にし、従来のSIEMが抱えていた「データ量」「検知の質」「人材不足」といった課題に対する有力な解決策となります。AI搭載SIEMの導入は、検知精度の向上、運用負荷の大幅な軽減、インシデント対応の迅速化といった明確なメリットをもたらし、企業のセキュリティ体制をより強固で効率的なものへと進化させます。

しかし、AIは万能ではありません。導入にあたっては、AIモデルの精度・信頼性の検証、ブラックボックス問題への理解、継続的なチューニングと学習の必要性、PoCによる事前検証、そしてAIと協働できる運用体制・スキルセットといった点を十分に考慮する必要があります。AIの能力を過信せず、その特性を理解した上で活用することが成功の鍵です。

今後、AIとSIEMの融合はさらに加速し、SOARとの連携による自動化の深化、XDRへの発展、そして予測・自律型セキュリティへと進化していくでしょう。

企業の管理部・決裁者の皆様には、本記事で得られた知見をもとに、自社のセキュリティ戦略においてAI技術をどのように位置づけ、活用していくべきか、具体的な検討を進めていただくことを推奨します。AIとの融合によって進化し続けるSIEMを理解し、戦略的に導入・活用することが、未来のサイバー脅威に打ち勝ち、ビジネスを守り抜くための重要なステップとなるはずです。

SFAは活用されてこそ意味がある

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