SIEMとEDRの違いとは?機能比較から導入優先度、連携メリットまで徹底解説

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
企業のサイバーセキュリティ対策において、SIEMとEDRは重要な役割を果たしますが、その違いは複雑です。「自社に必要なのはどちらか?」「導入順序は?」こうした疑問は、管理部や決裁者にとって重要な課題です。適切な理解なしの導入は、投資効果を損なうリスクがあります。
本記事では、SIEMとEDRの基本から、目的、機能、監視対象の違いを7つの観点で明確に比較します。さらに、両者の連携メリット、企業の状況に応じた導入優先度の判断基準、そして最適な体制構築のためのアクションステップまで、要点を絞って解説します。
この記事を通じて、SIEMとEDRの特性と関係性を正確に把握し、貴社のセキュリティ課題に対する効果的かつ合理的な投資判断を行うための知識を提供します。
おすすめの不正侵入検知サービス一覧
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会社名 | サービス名 | 特長 | 費用 | 主なサービス |
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株式会社サイバーセキュリティクラウド
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攻撃遮断くん |
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1サイト月額11,000円~ ※別途、初期導入費用がかかる お問い合わせ |
攻撃検知AIエンジン搭載 サイバー攻撃対策 サイバー保険付帯 |
株式会社AndGo
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Aikido Security |
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ベーシック:52,500円/月 プロ:105,000円/月 カスタム:要お問い合わせ |
Webアプリケーション診断 プラットフォーム診断 クラウド診断 手動脆弱性診断 伴走サポート |
株式会社スリーシェイク
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Securify(セキュリファイ) |
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ASMプラン:お見積り BASICプラン:10万円/月額 STARTERプラン:5万円/月額 Freeプラン:0円/月額 ※契約は年単位 お問い合わせ |
ASM Webアプリケーション診断 Wordpress診断 SaaS診断 |
トレンドマイクロ株式会社 | TippingPoint |
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要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
株式会社東計電算 | Total Security Function Service |
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月額600円~/1台 | ウィルス対策機能 マルウェア対策機能 ファイアウォール ヒューリスティック分析 デバイス制御 など |
Broadcom Inc. | Symantec Endpoint Security |
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要お問い合わせ | 脆弱性の修復 デバイス制御 マルウェアの防止 ファイアウォール 分析・調査 など |
エクスジェン・ネットワークス株式会社 | L2Blocker |
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オンプレミス版:25,000円~ クラウド版:月額3,000円~ |
社内端末の管理機能 利用状況の可視化 不正に接続した端末への通知 未登録機器の利用申請 レポート分析 など |
株式会社セキュアソフト | SecureSoft Sniper IPS |
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要お問い合わせ | リアルタイムモニター 統合報告書 システム監査 環境設定 セキュリティ設定 など |
ソフォス株式会社 | Sophos Firewall |
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要お問い合わせ | ディープパケットインスペクション ゼロデイ対策 SD-WAN接続 セグメンテーション機能 レポート機能 など |
株式会社IDCフロンティア | 不正侵入検知/防御サービス |
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要お問い合わせ | 検知レポート 機器監視 設定管理 故障時機器交換 変更監視 など |
ソースネクスト株式会社 | ZERO スーパーセキュリティ |
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4,950円~ |
マルウェア検出 メール検査 ファイアウォール 迷惑メール対策 詐欺対策 など |
フォーティネットジャパン合同会社 | FortiGuard IPS |
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要お問い合わせ | ネットワーク保護 OT保護 リアルタイム展開 IOT保護 保護ライフサイクル など |
NTTスマートコネクト株式会社 | クラウド型UTM |
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月額38,500円~(税込) ※初期費用110,000円(税込) |
ファイアウォール機能 IPS(不正侵入防御)機能 アンチウィルス(アンチマルウェア)機能 アンチスパム機能 Webフィルタリング機能 など |
サクサ株式会社 | サクサのUTM |
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要お問い合わせ | Webフィルタリング機能 アンチウイルス機能 迷惑メールブロック機能 侵入検知・防止機能 |
パロアルトネットワークス株式会社 | PA-SERIES |
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要お問い合わせ | 脅威防御 SD-WAN URLフィルタリング WildFireマルウェア分析 DNSセキュリティ など |
Google LLC | Google Cloud IDS |
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要お問い合わせ | ネットワークベースの脅威検出 トラフィックの公開設定 コンプライアンス目標の支援 脅威警告の優先順位の提供 アプリのマスカレード検出 など |
SIEMとは?基本目的・機能・得意分野を理解する
SIEM(Security Information and Event Management)は、組織全体のセキュリティ情報を集約・管理・分析する基盤です。
- SIEMの定義と目的:組織全体のログ分析による脅威可視化 SIEMは、サーバー、ネットワーク機器、セキュリティ製品、アプリ、クラウドなど多様なITシステムからログデータを一元収集・保管し、横断的に分析します。主な目的は、ログを相関分析することで、単一ログでは見えない高度な攻撃の兆候や内部不正、システム全体の異常を早期に発見し、インシデントの全体像を可視化することです。組織のセキュリティ状況を俯瞰的に監視する「司令塔」の役割を担います。
- SIEMの主要機能
- ログ収集・正規化: 多様なログを収集し、統一形式に変換。
- リアルタイム相関分析: ルールに基づき複数イベントを分析し、脅威を検知。
- 脅威インテリジェンス連携: 最新の脅威情報を活用。
- ダッシュボードと可視化: セキュリティ状況を直感的に表示。
- レポート生成: コンプライアンス監査等に必要なレポートを作成。
- インシデント調査支援: 関連ログを横断検索。
- SIEMの強みとメリット
- 包括的な脅威可視化: 外部攻撃、内部不正、設定ミスなど広範なリスクを可視化。
- インシデント全体像把握: 攻撃の流れや影響範囲を理解。
- コンプライアンス遵守支援: ログ管理体制強化と監査対応効率化。
- セキュリティ運用改善: 客観的な状況把握と対策優先順位付け。
SIEMは、組織全体のセキュリティレベルとガバナンスを向上させるための包括的な基盤です。
EDRとは?基本目的・機能・得意分野を理解する
EDR(Endpoint Detection and Response)は、PCやサーバーといった「エンドポイント(端末)」のセキュリティに特化したソリューションです。
- EDRの定義と目的:エンドポイントでの脅威検知と迅速な対応 EDRは、エンドポイント上の内部アクティビティ(プロセス実行、ファイル操作、通信等)を継続的に監視・記録します。主な目的は、従来のアンチウイルス(EPP)では検知困難な未知のマルウェアやファイルレス攻撃、正規ツール悪用など、エンドポイント侵入後の不審な「振る舞い」を検知し、インシデントの調査と迅速な対応(封じ込め等)を行い、被害拡大を最小限に抑えることです。「侵入前提」で事後対応能力を高める点に重点があります。
- EDRの主要機能
- エンドポイント活動の継続的監視・記録: 詳細なアクティビティログ(テレメトリ)を収集。
- 高度な脅威検知・分析: 振る舞い検知、機械学習、サンドボックス等を活用し、シグネチャ非依存の検知を実現。
- インシデント調査支援(フォレンジック): 攻撃経路や影響範囲の特定に必要な詳細情報を提供。
- リモート対応(Response)機能: 端末隔離、プロセス停止、ファイル削除等を遠隔実行。
- EDRの強みとメリット
- 高度なエンドポイント脅威対策: EPPをすり抜ける脅威(ランサムウェア等)への防御力を向上。
- インシデント被害の最小化: 迅速な検知と封じ込めで被害拡大を阻止。
- 詳細なインシデント原因究明: 攻撃手法を特定し、再発防止に貢献。
- 多様な働き方への対応: リモートワーク環境下の端末保護強化。
EDRは、攻撃の最前線であるエンドポイントの防御とインシデント対応能力を高める「守護神」です。
【徹底比較】SIEMとEDRの決定的違いは?7つの観点から解説
SIEMとEDRは役割が異なります。その違いを7つの観点から比較し、特性を明確にします。
- 比較観点1:主たる目的
- SIEM: 組織全体のログ分析による脅威の可視化、早期発見、全体像把握。コンプライアンス支援。
- EDR: エンドポイントへの侵入後の脅威検知、調査、迅速な対応(封じ込め)。被害極小化。
- 比較観点2:監視対象とデータソース
- SIEM: サーバー、NW機器、FW、アプリ、クラウド等の広範なITインフラのログデータ。
- EDR: PC、サーバー等のエンドポイント。内部のアクティビティ情報(テレメトリ)。
- 比較観点3:検知対象となる主な脅威
- SIEM: 複数システム横断攻撃、内部不正、認証情報の悪用、設定ミス、既知脅威。
- EDR: マルウェア(未知・既知)、ランサムウェア、ファイルレス攻撃、不正スクリプト、権限昇格、横展開、C&C通信。
- 比較観点4:主要な分析・検知テクノロジー
- SIEM: ログ相関分析(ルールベース)が中心。統計分析、異常検知、ML、脅威インテリジェンス。
- EDR: 振る舞い検知(プロセス監視等)が中心。ML、AI、サンドボックス、脅威インテリジェンス、シグネチャ(補助)。
- 比較観点5:「対応(Response)」機能の性質
- SIEM: 主にアラート通知と調査支援。SOAR連携で自動化可能だが直接介入は限定的。
- EDR: エンドポイントへの直接的・強制的な対応(端末隔離、プロセス停止、ファイル削除等)をリモート実行。
- 比較観点6:提供される可視性(Visibility)
- SIEM: 広く浅く。組織全体の状況、イベント間の関連性を俯瞰的に把握。
- EDR: 狭く深く。個々のエンドポイントの挙動を詳細に把握。
- 比較観点7:導入によって得られる主な効果
- SIEM: セキュリティ運用全体の可視化・効率化、早期発見能力向上、コンプライアンス強化。
- EDR: エンドポイント防御力強化、侵入後被害極小化、迅速なインシデント対応能力獲得。
このようにSIEMとEDRは補完関係にあります。違いを理解し、連携させることが重要です。
SIEMとEDR連携の真価:セキュリティ効果を最大化する相乗効果
SIEMとEDRは、単独でも有効ですが、連携させることで互いの強みを活かし、弱点を補い、セキュリティレベルを飛躍的に向上させます。その理由と具体的なメリットを解説します。
- 1. なぜ連携が重要か?:多段階攻撃への対抗 現代の攻撃は、エンドポイント侵入から内部拡散、最終目的達成へと複数の段階を経ます。EDRが捉える「点」の情報と、SIEMが捉える「線・面」の情報を繋ぎ合わせなければ、攻撃の全体像把握と効果的な対処は困難です。連携は多層防御戦略の要です。
- 2. 連携メリット①:検知能力向上と誤検知削減 EDRの詳細な脅威情報をSIEMに連携し、他のログ情報と相関分析することで、脅威の確度をより正確に判断できます。これにより、重大なインシデントの早期発見が可能になると同時に、誤検知を削減し、分析の効率を高めます。
- 3. 連携メリット②:インシデント調査の迅速化・精度向上 SIEMで検知したアラートに対し、EDRで関連エンドポイントの詳細情報をドリルダウン調査したり、逆にEDRで検知したマルウェア感染端末が組織内のどこへアクセス試行したかをSIEMで確認したりすることで、攻撃の全体像(侵入経路、内部活動、被害範囲)を迅速かつ正確に把握できます。調査時間の大幅な短縮が可能です。
- 4. 連携メリット③:インシデント対応の自動化・効率化 SIEM(または連携SOAR)が重大な脅威と判断した場合、EDRに対して自動的に対応アクション(端末隔離、プロセス停止等)を指示するワークフローを構築できます。これにより、迅速な初動対応を実現し、被害拡大をリアルタイムで阻止します。
- 5. XDR(Extended Detection and Response)への発展 SIEMとEDRの連携は、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メールなど複数のセキュリティレイヤーを統合的に分析・対応するXDRのコンセプトを実現するための重要な基盤となります。
SIEMとEDRの連携は、検知・調査・対応の全プロセスを強化し、組織のサイバーレジリエンスを向上させる鍵です。
SIEMかEDRか?導入優先度を決定する判断基準とシナリオ
SIEMとEDRの連携が理想ですが、予算やリソースの制約から段階的な導入が必要な場合、「どちらを先に導入すべきか」は重要な問題です。自社の状況や優先課題に応じて判断する必要があります。そのための判断基準と導入シナリオを示します。
- 1. 優先度判断のためのチェックポイント 以下の点を評価し、自社の状況を客観的に把握しましょう。
- ① 既存対策と弱点: ログ管理基盤は?エンドポイント保護レベルは?最も手薄な領域は?
- ② 最大の懸念リスク: ランサムウェア?標的型攻撃?内部不正?コンプライアンス違反?
- ③ 主要保護対象: 機密情報サーバー?多数のエンドポイント?
- ④ 予算と運用リソース: 各ツールのTCOは?運用担当者(スキル含む)は確保可能か?
- ⑤ コンプライアンス要件: ログ収集・保管・監視義務はあるか?
- 2. SIEM優先導入が推奨されるシナリオ
- ログ管理基盤の不在: ログが散在し、横断分析ができない。まずログ集約・可視化が必要。
- 内部不正対策強化: 従業員等の不審行動監視・追跡が急務。
- 厳格なコンプライアンス対応: 法規制等で広範なログ収集・保管・レポートが必須。
- インシデント全体像把握重視: 複数システムにまたがる攻撃の把握・影響範囲特定を迅速化したい。
- 3. EDR優先導入が推奨されるシナリオ
- 高度マルウェア被害リスクが高い: ランサムウェア等の実被害発生、またはその懸念が極めて高い。
- エンドポイントからの情報漏洩対策: 主要な漏洩経路がエンドポイントである、またはそのリスクが高い。
- 迅速な封じ込め能力強化: 感染時の被害拡大防止(端末隔離等)が最優先課題。
- リモートワーク環境保護: 社外端末のセキュリティ強化が急務。
- 4. 段階的導入と将来連携の考慮 リソース制約下では段階的導入が現実的です。どちらを先に導入する場合でも、将来的なSIEMとEDRの連携を必ず見据え、連携しやすい製品を選定することが重要です。連携実績やAPIの有無を確認しましょう。
自社の状況を冷静に分析し、短期的な課題解決と中長期的な戦略の両面から最適な導入計画を立てることが肝要です。
次のステップへ:自社に最適な体制構築のための推奨アクション
SIEMとEDRの違いや導入優先度を理解したら、次は具体的な行動に移す段階です。最適なセキュリティ体制を構築するために推奨されるアクションステップを以下に示します。
- ステップ1:現状セキュリティ体制とギャップの客観的評価 まずは自社の現状を正確に把握することがスタートラインです。ログ管理、エンドポイント保護、ネットワークセキュリティ、クラウドセキュリティ、インシデント対応体制など、各領域の対策状況を評価し、どこに脆弱性や対策の不足(ギャップ)があるのかを明確にします。この評価に基づき、SIEMやEDR導入の必要性や優先度、あるいは他の対策の必要性を判断します。
- ステップ2:長期的な視点でのセキュリティ戦略策定 場当たり的なツール導入ではなく、3~5年先を見据えたセキュリティ戦略を策定し、その中でSIEMやEDRの位置づけを明確にします。目指すべきセキュリティレベルを定義し、現状とのギャップを埋めるためのロードマップを描きます。将来的なSIEMとEDRの連携、さらにはXDRのような統合アプローチも視野に入れ、他のセキュリティ対策との全体最適化を目指します。
- ステップ3:コスト・リソース評価と具体的な導入計画への落とし込み 策定した戦略に基づき、具体的な導入計画を作成します。導入するソリューションのTCO(総所有コスト)をライセンス、インフラ、運用人件費、教育などを含めて試算します。誰がどのように運用するのか(社内人材、外部委託/MSSP)、必要なスキルセットなどを明確にした運用体制を計画します。要件と予算に合う製品候補を選定し、可能であればPoC(概念実証)で効果や運用負荷を確認します。無理のない導入スケジュールと体制を確保することが成功の鍵です。
これらのステップを着実に実行することで、自社の実情に合った、効果的で持続可能なセキュリティ体制の構築へと進むことができます。
まとめ:SIEMとEDRを理解し、最適なセキュリティ戦略を
本記事では、「SIEM EDR 違い」を軸に、両ソリューションの基本、機能比較、連携メリット、導入優先度の判断基準、そして具体的なアクションステップまで解説しました。
SIEMとEDRは、それぞれ異なる役割を持つ重要なセキュリティツールです。SIEMは組織全体のログ分析による広範な脅威可視化(司令塔)、EDRはエンドポイントに特化した高度な脅威検知と迅速な対応(守護神)に強みを持ちます。
両者は相互補完的であり、連携させることで単体利用時を大きく上回るセキュリティ効果を発揮します。どちらを先に導入すべきかは、自社のセキュリティ課題、リスク、リソース、コンプライアンス要件などを総合的に評価して判断する必要があります。
最終的には、SIEMとEDRを含む多層的な防御アプローチを採用し、それらを効果的に連携・運用していくことが、巧妙化するサイバー脅威に対抗するための鍵となります。本記事が、SIEMとEDRへの正しい理解に基づき、貴社にとって最適で効果的なセキュリティ戦略と投資判断を行うための一助となれば幸いです。まずは現状評価から始め、戦略的な計画に基づき、着実にセキュリティ体制を強化していきましょう。