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SFA JOURNAL by ネクストSFA

SOAR導入メリットを最大化:セキュリティ運用最適化とコスト削減を実現する方法

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

この記事の目次はこちら

なぜ今SOARなのか?セキュリティ運用の課題と解決への期待

企業を狙うサイバー攻撃は日々その手口を巧妙化させ、インシデント発生時の経営リスクはかつてないほど高まっています。一方で、セキュリティ人材は慢性的に不足しており、多くの企業のセキュリティチームは増え続けるアラート対応に追われ疲弊しているのが現状です。

このような状況下で、従来の人手に頼ったインシデント対応プロセスは、対応遅延、見落とし、担当者による品質のばらつき(属人化)、ヒューマンエラーといった深刻な課題を抱え、もはや限界に達しつつあります。これらの課題はインシデント被害の拡大に直結し、企業の事業継続性や社会的信用を大きく損なう原因となり得ます。

WEBセキュリティサービスの導入や強化を検討されている企業の管理部や決裁者の皆様にとって、この状況を打破し、限られたリソースでいかに効果的かつ効率的なセキュリティ運用を実現するかは喫緊の経営課題でしょう。その有力な解決策として今大きな注目を集めているのがSOAR(ソアー:Security Orchestration Automation and Response)です。

SOARは、セキュリティ運用における様々なプロセスを自動化し、複数のツールを連携させることで、インシデント対応を迅速化・標準化する技術です。本記事ではこのSOARについて、その基本的な仕組みから導入によって得られる具体的なメリット、そして導入を成功させるために不可欠な選定と運用のポイントまでを徹底的に解説します。

SOAR メリットというキーワードで情報を収集されている皆様が、SOARの真の価値を理解し、自社のセキュリティ戦略における有効な投資として検討するための一助となれば幸いです。

おすすめの不正侵入検知サービス一覧

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会社名 サービス名 特長 費用 主なサービス
株式会社サイバーセキュリティクラウド 株式会社サイバーセキュリティクラウド 詳細はこちら 攻撃遮断くん
  • 一社通貫の万全なサポート体制で、稼働率99.999%・解約率約0.97%の圧倒的な運用力を誇る
  • 20,000サイト以上の豊富な導入実績あり! SBI証券や厚生年金基金などの金融機関からANA、PARCO、代ゼミまで規模や業界問わず幅広く対応
  • 万が一サイバー攻撃により損害を受けた場合に、最大1,000万円を補償する保険を付帯可能
1サイト月額11,000円~
※別途、初期導入費用がかかる
お問い合わせ
攻撃検知AIエンジン搭載
サイバー攻撃対策
サイバー保険付帯
株式会社AndGo 株式会社AndGo 詳細はこちら Aikido Security
  • さまざまな脆弱性診断機能をオールインワンツールで提供、幅広いセキュリティ課題に包括的に対応
  • SaaS事業者からオンプレミスインフラを扱うエンタープライズまで世界3,000社で導入実績あり
  • アラートの自動トリアージ機能により、誤検知や過検知による重要アラートの見過ごしを防止
ベーシック:52,500円/月
プロ:105,000円/月
カスタム:要お問い合わせ
Webアプリケーション診断
プラットフォーム診断
クラウド診断
手動脆弱性診断
伴走サポート
株式会社スリーシェイク 株式会社スリーシェイク 詳細はこちら Securify(セキュリファイ)
  • 初期費用0円・最短1営業日でワンストップのセキュリティ対策を開始できる
  • 簡単3ステップで、3300項目以上の診断を実施
  • シンプルかつストレスフリーな操作性
  • リリースやアップデート時に課金なしで何度も診断可能
  • 【新機能リリース】攻撃対象になり得るIT資産を自動で棚卸し、管理できるASMを搭載!
ASMプラン:お見積り
BASICプラン:10万円/月額
STARTERプラン:5万円/月額
Freeプラン:0円/月額
※契約は年単位
お問い合わせ
ASM
Webアプリケーション診断
Wordpress診断
SaaS診断
トレンドマイクロ株式会社 TippingPoint
  • 機械学習による脅威の検知によりネットワーク全体を防御
  • 拡張性の高いシステム構成で大容量のネットワークに対応可能
  • 高性能な検知と対応の優先度を提供
要お問い合わせ 要お問い合わせ
株式会社東計電算 Total Security Function Service
  • 高機能、高セキュリティのマルウェア対策サービスが低コストで利用可能
  • 自社データセンターを活用したSaaS型サービス
  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
  • リアルタイムで侵入防御シグネチャを分析展開し、連携したネットワーク対応を実現
要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

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SOAR(ソアー)とは?基本概念と登場背景、セキュリティを変える3つの力

まず、SOAR(ソアー)という言葉の基本的な意味と、それが生まれた背景について理解を深めましょう。SOARはSecurity Orchestration Automation and Responseの略であり、日本語ではセキュリティオーケストレーション、自動化及びレスポンスと訳されます。これは、複数のセキュリティツールや運用プロセスを連携(オーケストレーション)させ、定型的な作業を自動化(オートメーション)し、サイバー攻撃などのインシデントへの対応(レスポンス)を全体として最適化するための技術プラットフォームを指します。

登場背景:なぜSOARが必要になったのか

SOARが登場した背景には、従来のセキュリティ運用が抱えるいくつかの深刻な課題がありました。

  • SIEMの限界とアラート洪水: SIEM(Security Information and Event Management)はログを集約・分析し、脅威を検知する上で重要な役割を果たしますが、検知されるアラートの数が膨大になり、人間が全てを確認・分析し対応することが困難になりました。結果として、アラート疲れや重要な脅威の見逃しが発生し、インシデント対応の遅延(MTTR:平均対応/復旧時間の長期化)を招いていました。
  • 運用負荷増大と人材不足: SOC(Security Operation Center)の運用やインシデント対応には高度なスキルを持つ人材が必要ですが、セキュリティ人材は世界的に不足しています。限られた人員で増え続ける業務をこなすことは困難であり、手動での繰り返し作業は運用負荷を増大させ、人的ミスのリスクも高めていました。また、知識やノウハウが特定の担当者に偏る属人化も課題でした。
  • 攻撃の高度化と迅速な対応の必要性: ランサムウェア、標的型攻撃、ゼロデイ攻撃など、攻撃はますます巧妙化し、被害が拡大するスピードも速まっています。インシデント発生後の初動対応の遅れは致命的な結果を招くため、より迅速かつ標準化された対応が不可欠となりました。

これらの課題を解決し、セキュリティ運用を次のレベルへ引き上げるためにSOARは開発されたのです。

SOARを構成する3つの力

SOARの価値は、以下の3つの主要な機能要素によってもたらされます。

  1. オーケストレーション(連携): 異なるベンダーの様々なセキュリティツール(SIEM、EDR、TIP、ファイアウォール、脆弱性スキャナー等)やIT運用ツール(チケットシステム、チャットツール等)をAPIなどを介して連携させ、あたかも一つのシステムのように統合的に動作させます。これにより、ツール間の情報の受け渡しや操作が自動化され、サイロ化を解消し、プロセス全体を効率化します。
  2. オートメーション(自動化): インシデントの種類や状況に応じて予め定義されたプレイブック(対応手順書、ワークフロー)に基づき、定型的なタスクを自動実行します。例えば、アラート情報の収集、外部脅威情報との照合、リスク評価、危険なIPアドレスのブロック、感染端末の隔離、関係者への通知などが自動化の対象となります。これにより、対応速度と一貫性が飛躍的に向上します。
  3. レスポンス(対応): インシデント対応プロセス全体(検知、トリアージ、調査、封じ込め、根絶、復旧、教訓化)を管理・支援します。インシデントごとの対応状況、担当者、証拠ログなどを一元的に記録・管理するケースマネジメント機能や、状況を可視化するダッシュボード機能などにより、効率的な対応とレポーティングを支援します。

これらの機能が連携することで、SOARはセキュリティ運用を効率化、高度化、標準化し、企業を脅威から守る力を強化します。

【メリット徹底解説】SOARがもたらす5つの経営的価値

SOAR(Security Orchestration Automation and Response)の導入は、単なるセキュリティツールの追加ではなく、企業の経営全体にポジティブな影響を与える可能性を秘めています。ここでは、決裁者の皆様が特に理解すべきSOAR導入がもたらす5つの主要なメリットについて、その経営的価値に焦点を当てて解説します。

メリット1:インシデント対応の劇的な迅速化による事業影響の最小化

サイバーインシデント発生時、対応の遅れは被害の拡大に直結し、事業停止、顧客信用の失墜、賠償責任といった深刻な経営ダメージを引き起こします。SOARは、検知から調査、封じ込めといった初動対応プロセスを自動化することで、MTTD(平均検知時間)とMTTR(平均対応/復旧時間)を劇的に短縮します。例えば、危険なマルウェアを検知した場合、数分以内に自動で端末隔離や通信遮断を実行できます。この迅速性は、インシデントによる事業影響を最小限に抑え、早期の復旧を可能にし、事業継続性を確保する上で計り知れないメリットです。迅速な対応能力は、企業のレジリエンス(回復力)の高さを示すことにも繋がります。

メリット2:セキュリティ運用業務の大幅な効率化によるコスト削減

セキュリティチームは日々、大量のアラート処理、定型的な調査、繰り返し作業に多くの時間を費やしています。SOARはこれらのルーチンタスクを自動化することで、担当者の作業負荷を大幅に軽減します。調査によれば、SOAR導入によりインシデント対応にかかる時間を最大90%削減できたという報告もあります。これにより、セキュリティ担当者は疲弊から解放され、脅威ハンティング、セキュリティ戦略立案、インシデントの根本原因分析といったより高度で戦略的な業務に注力できるようになります。これは深刻なセキュリティ人材不足に対する有効な解決策であり、人的リソースの最適活用を可能にします。長期的には、運用コスト、人件費の削減にも繋がり、企業の収益性改善に貢献します。

メリット3:対応プロセスの標準化による属人化排除とガバナンス強化

インシデント対応は従来、担当者のスキルや経験に依存しがちで、対応品質にばらつきが出る属人化が課題でした。SOARでは、事前に承認されたプレイブックに基づいて対応が実行されるため、誰が対応しても常に一貫性のある標準化されたプロセスが保証されます。これにより、対応品質の安定化と向上が図られ、特定の担当者への過度な依存リスクも解消されます。担当者の異動や退職があっても業務品質を維持しやすくなります。また、標準化されたプロセスは、内部統制の強化やコンプライアンス遵守の観点からも重要なメリットです。

メリット4:ヒューマンエラー削減による対応精度向上と監査対応効率化

人間による手作業にはミスがつきものです。特に緊急時や大量のアラート処理時には、確認漏れ、操作ミス、判断ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすく、これがインシデント対応の失敗や被害拡大の原因となることもあります。SOARによる自動化は、これらの人的ミスを根本的に排除し、より正確で信頼性の高い対応を実現します。また、SOARは実行された全てのアクション、対応プロセス、ログを自動的に記録するため、インシデント対応の証跡が明確に残ります。これは事後の原因分析や改善に役立つだけでなく、監査や規制当局への報告においても客観的な証拠として活用でき、対応の効率化と信頼性向上に繋がります。

メリット5:脅威インテリジェンス連携によるプロアクティブな防御

SOARは、外部の脅威インテリジェンスフィードと容易に連携し、最新の脅威情報(不正IP、マルウェア情報など)をリアルタイムに取り込み活用できます。これにより、検知したアラートのリスク評価を自動化したり、新たな脅威に対して即座に防御策(例:ファイアウォールルールの自動更新)を講じたりすることが可能になります。また、収集・分析された情報を基に、潜在的な脅威を能動的に探索する脅威ハンティング活動を支援するなど、受動的なインシデント対応からプロアクティブな脅威防御へとセキュリティ運用を進化させる推進力となります。

これらのメリットは、SOARが単なる効率化ツールではなく、企業のセキュリティ体制全体を強化し、経営リスクを低減するための戦略的な投資であることを示しています。

SOAR導入の現実:事前に理解すべきデメリットと課題

SOAR(Security Orchestration Automation and Response)がもたらすメリットは大きいものの、その導入と運用が常に順風満帆とは限りません。導入を成功させ、投資対効果を最大化するためには、事前にそのデメリットや潜在的な課題を現実的に理解し、対策を検討しておくことが不可欠です。決裁者として注意すべき主な点を解説します。

課題1:初期導入コストと継続的なTCO(総所有コスト)

SOARソリューション自体のライセンス費用は一般的に安価ではなく、特に高機能な製品や大規模環境向けの製品では多額の初期投資が必要となります。加えて、効果的な運用のためには、SIEM、EDR、TIPなど連携させる他のセキュリティツールの整備や、API連携のための開発費用も発生する可能性があります。さらに、プレイブックの設計・開発・維持管理には専門的なスキルを持つ人材が必要であり、その人件費や外部委託費用も継続的に発生します。導入効果(ROI)を考慮する際には、これらの初期コストだけでなく、ライセンス更新、保守サポート費用などを含めた長期的なTCO(総所有コスト)を正確に見積もる必要があります。

課題2:プレイブック設計・実装の難易度と維持管理の負荷

SOARのメリットの核となるプレイブックですが、その設計と実装は複雑で難易度が高い作業です。自社の業務プロセスやシステム環境、インシデント対応手順、リスクシナリオを深く理解し、それらを効果的かつ安全な自動化ワークフローに落とし込むには、高度な専門知識と経験が必要です。また、脅威の状況や社内環境は常に変化するため、プレイブックも継続的に見直し・更新(メンテナンス)しなければ陳腐化し、役に立たなくなります。この維持管理の負荷は予想以上にかかる可能性があり、デメリットとなり得ます。

課題3:既存ツールとの連携依存性と相互運用性の問題

SOARのオーケストレーション機能は、連携するツールのAPIに依存します。しかし、全てのセキュリティツールが十分なAPIを提供しているとは限りません。また、ツール間のバージョン互換性の問題やAPI仕様の変更などによって、連携がうまくいかなくなるリスクもあります。連携させるツールの選定やAPI連携の実現性、事前検証が不十分だと、SOARを導入しても期待した自動化や連携が実現できない可能性があります。

課題4:自動化に伴うリスク管理と想定外の影響

自動化は効率化をもたらしますが、誤った自動化は深刻な問題を引き起こすリスクもはらんでいます。プレイブックの設計ミスや、連携するツールの誤検知(False Positive)により、正常な通信をブロックしてしまったり、重要なシステムを誤って隔離してしまったりするなど、業務に悪影響を及ぼす可能性があります。自動化の範囲やレベルを慎重に検討し、特に影響の大きいアクションの前には人間の確認・介入ステップを設けるなどのリスク管理策が必要です。また、実装前の十分なテストは不可欠です。

課題5:専門人材の確保・育成の難しさ

SOARの運用管理、プレイブックの開発・維持、API連携設定などを効果的に行うためには、セキュリティインシデント対応の知識に加え、プログラミング、自動化スクリプティング、APIなどに関する技術的なスキルも求められる場合があります。このようなスキルセットを持つ専門人材を確保・育成することは、多くの企業にとって大きな課題です。外部の専門家(MSSP、コンサルタント等)の活用も有効ですが、その場合でも社内に連携窓口となる担当者や基本的な知識は必要となります。

これらのデメリットや課題を十分に認識し、適切な計画、準備体制、そして段階的な導入アプローチによってリスクを管理していくことが、SOAR導入を成功させる上で極めて重要です。

SOAR導入成功の鍵:失敗しないための選定・運用ポイント

SOAR(Security Orchestration Automation and Response)の導入プロジェクトを成功させ、そのメリットを最大限に享受するためには、導入前の選定段階から導入後の運用改善フェーズまで一貫して重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、失敗を避け、SOAR導入を成功に導くための実践的なポイントを、計画準備、選定導入、運用改善の3つのフェーズに分けて解説します。

【計画準備フェーズ】成功の土台を築く

1. 目的・スコープ・KPIの明確化

  • 導入目的の定義: なぜSOARを導入するのか?解決したい具体的な課題は何か?(例:アラート対応工数削減、MTTR短縮、属人化解消)を明確にします。
  • スコープ(適用範囲)の設定: 最初から全てを自動化しようとせず、優先度の高いユースケース(例:フィッシングメール対応、マルウェア感染初期対応)に絞ってスモールスタートします。
  • KPI(重要業績評価指標)の設定: 目的達成度を測るための測定可能な指標(例:MTTR短縮率、自動化率、削減工数、誤検知率)を設定します。

2. 既存プロセスの可視化と標準化

  • 現状分析: 現在の手動によるインシデント対応プロセス、ワークフロー、担当者の役割などを可視化し、課題やボトルネックを洗い出します。
  • 標準化: 可視化したプロセスを基に、あるべき標準対応プロセスを定義します。これがプレイブック設計の基礎となります。

3. ROI(投資対効果)試算と経営層への説明

  • TCO(総所有コスト)試算: 初期費用から数年間の運用費用まで含めて算出します。
  • 効果試算: KPIに基づいて削減される工数や回避されるであろう損害額などを試算します。
  • 経営層への説明: 試算結果に基づき、SOAR導入の投資対効果を明確に示し、理解と承認を得ます。

【選定導入フェーズ】最適なツールと基盤を構築

1. 要件定義とベンダー製品比較

  • 機能・性能要件: 定義したユースケースを実現するために必要なSOARの機能、連携可能なツール、処理性能、可用性などを明確にします。
  • 非機能要件: 管理画面の使いやすさ、サポート体制(SLA、日本語対応)、アップデート頻度、セキュリティコンプライアンス対応などを評価します。
  • ベンダー比較: 複数のベンダー製品を上記要件に基づいて比較検討します。

2. PoC(Proof of Concept:概念実証)の実施

  • 実環境での検証: 候補製品を実際の環境に近い状況でテスト導入し、性能、運用性、連携性などを実機で検証します。

3. 連携ツールの整備とAPI連携計画

  • 連携対象の選定: SOARと連携させるSIEM、EDR、TIPなどを確定し、必要に応じて導入・整備します。
  • API連携確認: 各ツールとのAPI連携の仕様、実現性、制限事項を確認し、連携計画を策定します。

4. プレイブック初期設計・実装・テスト

  • 優先ユースケースから実装: スモールスタートで定義したユースケースに対応するプレイブックを設計・実装します。
  • 段階的な自動化: 最初は人間の確認を挟む半自動から始め、徐々に自動化レベルを上げていくことも有効です。
  • 厳密なテスト: 実装したプレイブックが意図通りに動作し、悪影響がないことを十分にテストします。

【運用改善フェーズ】効果を持続・最大化

1. 運用体制整備と人材育成

  • 役割定義: SOAR運用管理者、プレイブック開発者などを明確にします。
  • スキルアップ: 必要なトレーニングを実施します。外部専門家(MSSP等)の活用も検討します。

2. 継続的な効果測定と改善サイクル(PDCA)

  • KPIモニタリング: 設定したKPIを定期的に測定し、効果を評価します。
  • プレイブックレビュー・改善: 運用実績や新たな脅威を踏まえ、プレイブックを定期的に見直し改善します。
  • 運用プロセス改善: ログレビュー、インシデント対応フローなどを継続的に改善します。

デント対応フローなどを継続的に改善します。

3. インシデント対応訓練

  • 定期的な訓練: 模擬インシデントなどを利用し、SOARを使った対応訓練を実施します。

4. 最新情報の追従と機能評価

  • 脅威動向の把握: 最新の脅威情報や攻撃手法を収集し、プレイブックや設定に反映します。
  • SOAR新機能評価: ベンダーから提供される新機能などを評価し、活用を検討します。

これらのポイントを着実に実行することで、SOAR導入のメリットを最大限に引き出し、デメリットを管理しながらセキュリティ運用を継続的に最適化していくことが可能となります。

まとめ:SOARを戦略的に活用し、セキュリティ運用を次世代へ

本記事では、SOAR(Security Orchestration Automation and Response)に関して、その基本的な概念から導入によって得られる5つの主要メリット、そして考慮すべきデメリットや課題、導入を成功させるための実践的な選定・運用ポイントまでを網羅的に解説してきました。

SOARは、インシデント対応の迅速化、運用業務の効率化、対応プロセスの標準化、ヒューマンエラーの削減、そして脅威インテリジェンスの活用促進といった計り知れないメリットを提供し、アラート洪水や人材不足といった現代のセキュリティ運用が抱える深刻な課題に対する強力な解決策となり得ます。これは、企業のセキュリティ体制を根本から強化し、経営リスクを低減するための戦略的な一手と言えるでしょう。

ただし、その導入効果を最大限に引き出すためには、導入・運用コスト、プレイブック設計の難易度、ツール連携、自動化リスク、専門人材の確保といったデメリットや課題への十分な理解と対策が不可欠です。成功の鍵は、明確な目的設定に基づきスモールスタートで始め、既存プロセスの標準化、効果的なプレイブック設計と厳密なテスト、連携ツールの整備、運用体制の構築、そして何よりも継続的な効果測定と改善サイクル(PDCA)を回していくことにあります。

SOARは単なる自動化ツールではなく、セキュリティ運用プロセス全体を最適化し、セキュリティ担当者がより高度で戦略的な業務に集中できる環境を実現するためのプラットフォームです。SOARを戦略的に活用することで、企業は変化し続ける脅威に対してより迅速かつ効果的に対応できる、効率的で強靭な次世代のセキュリティ運用体制を構築し、そのメリットを享受することができるのです。

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