BtoBサービス、SaaS、IT製品を徹底比較!企業のDX推進、課題を解決!

SFA JOURNAL by ネクストSFA

SOAR費用対効果(ROI)を最大化!算出方法・指標・実践ポイント解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

サイバー攻撃の脅威が増大し続ける中、セキュリティ運用の効率化と高度化はあらゆる企業にとって喫緊の課題です。その解決策としてSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)への期待が高まっていますが、導入には相応の投資が伴います。そのため、特に予算を管理する部門や最終的な投資判断を下す決裁者にとって、「SOAR 費用対効果(ROI)」は極めて重要な検討事項となります。

「SOAR導入で具体的にどれくらいのコスト削減が見込めるのか?」「投資額はどのくらいの期間で回収できるのか?」「ROIを正確に算出し、さらに最大化するためにはどうすれば良いのか?」こうした疑問に明確な答えを示すことが、導入プロジェクトを成功に導く鍵となります。

本記事では、SOAR導入を検討している企業の管理部・決裁者の皆様に向けて、「SOAR 費用対効果」を正しく理解し、評価するための基礎知識から、具体的なROI算出方法、費用対効果を測定するための主要指標、そしてROIを最大化するための実践的なポイントまでを網羅的に解説します。適切な投資判断と、導入効果を最大化するための戦略策定に、本記事をお役立てください。

おすすめの不正侵入検知サービス一覧

scroll →

会社名 サービス名 特長 費用 主なサービス
株式会社サイバーセキュリティクラウド 株式会社サイバーセキュリティクラウド 詳細はこちら 攻撃遮断くん
  • 一社通貫の万全なサポート体制で、稼働率99.999%・解約率約0.97%の圧倒的な運用力を誇る
  • 20,000サイト以上の豊富な導入実績あり! SBI証券や厚生年金基金などの金融機関からANA、PARCO、代ゼミまで規模や業界問わず幅広く対応
  • 万が一サイバー攻撃により損害を受けた場合に、最大1,000万円を補償する保険を付帯可能
1サイト月額11,000円~
※別途、初期導入費用がかかる
お問い合わせ
攻撃検知AIエンジン搭載
サイバー攻撃対策
サイバー保険付帯
株式会社AndGo 株式会社AndGo 詳細はこちら Aikido Security
  • さまざまな脆弱性診断機能をオールインワンツールで提供、幅広いセキュリティ課題に包括的に対応
  • SaaS事業者からオンプレミスインフラを扱うエンタープライズまで世界3,000社で導入実績あり
  • アラートの自動トリアージ機能により、誤検知や過検知による重要アラートの見過ごしを防止
ベーシック:52,500円/月
プロ:105,000円/月
カスタム:要お問い合わせ
Webアプリケーション診断
プラットフォーム診断
クラウド診断
手動脆弱性診断
伴走サポート
株式会社スリーシェイク 株式会社スリーシェイク 詳細はこちら Securify(セキュリファイ)
  • 初期費用0円・最短1営業日でワンストップのセキュリティ対策を開始できる
  • 簡単3ステップで、3300項目以上の診断を実施
  • シンプルかつストレスフリーな操作性
  • リリースやアップデート時に課金なしで何度も診断可能
  • 【新機能リリース】攻撃対象になり得るIT資産を自動で棚卸し、管理できるASMを搭載!
ASMプラン:お見積り
BASICプラン:10万円/月額
STARTERプラン:5万円/月額
Freeプラン:0円/月額
※契約は年単位
お問い合わせ
ASM
Webアプリケーション診断
Wordpress診断
SaaS診断
トレンドマイクロ株式会社 TippingPoint
  • 機械学習による脅威の検知によりネットワーク全体を防御
  • 拡張性の高いシステム構成で大容量のネットワークに対応可能
  • 高性能な検知と対応の優先度を提供
要お問い合わせ 要お問い合わせ
株式会社東計電算 Total Security Function Service
  • 高機能、高セキュリティのマルウェア対策サービスが低コストで利用可能
  • 自社データセンターを活用したSaaS型サービス
  • ヒューリスティック分析の多層防御で未知のマルウェア対策が可能
月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
  • 完全日本語化対応かつ直感的に操作ができるように設計
  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
  • リアルタイムで侵入防御シグネチャを分析展開し、連携したネットワーク対応を実現
要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

なぜSOARの費用対効果(ROI)が重要視されるのか

近年、「SOAR 費用対効果」に対する関心が急速に高まっている背景には、複数の要因が存在します。まず、セキュリティ投資の最適化が強く求められている点が挙げられます。サイバー脅威は無限に増殖・進化しますが、企業の予算やセキュリティ人材といったリソースは有限です。限られた資源の中で最大の防御効果と運用効率を達成する必要があり、投資判断には費用対効果の明確な根拠が不可欠となっています。特に、直接的な売上を生み出さないセキュリティ対策はコストとして認識されやすいため、ROIによる投資の正当化が重要になります。

次に、経営層への説明責任です。SOAR導入にはライセンス費用や構築費用、継続的な運用コストなど、決して少なくない費用が発生します。この投資について経営層や株主の承認を得るためには、導入によってどのような具体的なメリット(コスト削減、リスク低減、効率向上など)が得られるのかを、定量的・定性的に示し、納得してもらう必要があります。ROIはこの説明責任を果たすための強力なツールとなります。

また、SOAR導入コストそのものへの懸念も存在します。SOARは強力なソリューションである一方、比較的高価な投資となるケースも多いため、「本当に投資額に見合う効果が得られるのか」「導入したものの、複雑で使いこなせないのではないか」といった不安が生じやすいのです。事前に費用対効果を精緻に評価し、導入計画の妥当性を検証することで、これらの懸念を払拭し、導入への意思決定を後押しすることができます。

さらに、セキュリティ対策効果の可視化ニーズも背景にあります。従来、セキュリティ対策の成功は「インシデントが起きなかったこと」であり、その効果を具体的に示すのは困難でした。しかし、SOARによる運用効率化(例:インシデント対応時間の短縮、処理アラート数の増加)は比較的定量的に測定しやすいため、ROIという指標を用いて投資効果を可視化し、評価しようとする動きが強まっています。

これらの理由から、SOAR導入検討においては、技術的な側面だけでなく、「SOAR 費用対効果」をデータに基づいて分析し、戦略的な投資判断を行うことが不可欠となっているのです。

SOAR導入の「費用対効果」を構成する要素

「SOAR 費用対効果」を正確に評価するためには、その構成要素である「効果」と「費用」を正しく理解し、測定可能な状態にする必要があります。「効果」には定量的なものと定性的なものがあり、「費用」はTCO(総所有コスト)で捉えることが重要です。

【効果】SOAR導入がもたらす価値

SOAR導入による効果は多岐にわたります。ROI算出においては特に定量的な効果が重視されますが、定性的な効果も投資判断における重要な補足情報となります。

  • 定量的な効果(測定可能な効果):
    • 人件費削減: アラート対応、インシデント調査、レポート作成など、定型業務の自動化による工数削減。これがROI向上への最も直接的な貢献となることが多いです。
    • インシデント被害額の低減: 対応迅速化による被害拡大防止、事業停止時間の短縮、情報漏洩リスク低減、罰金・訴訟コスト回避など。
    • ツールコスト最適化: SOARによる機能代替での既存ツールライセンス費用削減の可能性。
    • 監査対応コスト削減: 対応記録の自動化による監査準備工数の削減。
  • 定性的な効果(金額換算しにくいが重要な効果):
    • インシデント対応能力向上: 対応の迅速化、標準化、品質向上。
    • セキュリティレベル向上: 対応漏れ削減、プロアクティブな活動へのリソースシフト。
    • 属人化解消とノウハウ蓄積: 標準化されたプロセスによる組織的能力向上。
    • 担当者の負荷軽減と満足度向上: モチベーション向上、離職率低下への貢献。
    • 企業信頼性向上: セキュリティ体制強化によるブランドイメージ向上。
    • コンプライアンス遵守強化: 法規制や業界標準への対応支援。
  • 費用対効果を評価する主要指標(B案要素): これらの効果を具体的に測定するための指標例です。
    • MTTR(平均復旧時間): インシデント発生から復旧までの時間。導入前後で比較。
    • 年間工数削減量: 自動化された業務の工数(時間)×人件費単価で算出。
    • 自動化率: 全対応プロセスにおける自動化シナリオの適用率。
    • KPIレポート自動生成件数/時間: 手動作成からの移行効果を測定。

【費用】総所有コスト(TCO)で考える

ROI算出の分母となる費用は、導入時だけでなく、運用期間全体を見据えたTCO(Total Cost of Ownership)で評価する必要があります。

  • 初期費用: ライセンス初期費、構築・導入支援費、コンサルティング費、初期トレーニング費など。
  • ランニングコスト: ライセンス継続費(サブスクリプション/保守)、運用管理人件費、継続トレーニング費、インフラ費用(クラウド利用料/オンプレミス維持費)など。
  • 隠れコスト: 特定システム連携の追加開発費、プレイブックの継続的なメンテナンス工数、社内プロセス変更コストなども考慮。

費用対効果を評価する際は、これらの「効果」(定量的・定性的・主要指標)と「費用」(TCO)の両面を正確に把握し、分析することが不可欠です。

実践!SOARの費用対効果(ROI)算出方法とモデル

「SOAR 費用対効果」を具体的に数値化し、投資判断や効果測定に活用するために、ROI(投資対効果)を算出するステップと、その計算モデルについて解説します。

ROIの基本計算式

ROIは、投資に対してどれだけのリターン(効果)が得られたかを示す指標です。

ROI (%) = ((一定期間の導入効果額 – 一定期間の導入コスト) ÷ 一定期間の導入コスト) × 100

  • 一定期間の導入効果額: 設定した期間内にSOAR導入によって得られた効果の合計金額。
  • 一定期間の導入コスト: 設定した期間内のSOAR導入・運用にかかる総コスト(TCO)。

ROI算出の具体的なステップ

  1. 効果測定期間の設定: ROIを評価する期間(例:3年間)を決定します。TCO算出期間と一致させます。
  2. 導入コスト(TCO)の算出: 設定期間(3年間)のTCOを算出します。初期費用と3年分のランニングコスト(ライセンス継続費、保守費、運用人件費、インフラ費など)を合計します。
    • 例:初期費用600万円、年間ランニングコスト400万円の場合、3年TCO = 600 + (400×3) = 1800万円
  3. 導入効果の金額換算: 設定期間(3年間)の効果を金額換算します。
    • 人件費削減効果:
      • 現状の年間対応総工数を把握 (例: 6000時間)
      • SOAR導入による工数削減率を見積もる (例: 45%)
      • 削減年間工数 = 6000時間 × 45% = 2700時間
      • 年間削減額 = 削減年間工数 × 平均時間単価 (例: 4500円) = 2700 × 4500 = 1215万円/年
      • 3年間の削減額 = 1215万円/年 × 3年 = 3645万円
    • インシデント被害低減効果 (見積もり):
      • 過去データや業界平均から年間低減額を見積もる (例: 250万円/年)
      • 3年間の低減額 = 250万円/年 × 3年 = 750万円
    • その他定量効果 (見積もり): ツールコスト削減、監査対応コスト削減など (例: 3年間で150万円)
    • 導入効果額の合計: 3645万円 + 750万円 + 150万円 = 4545万円
  4. ROIの計算:
    • ROI (%) = ((4545万円 – 1800万円) ÷ 1800万円) × 100
    • = (2745万円 ÷ 1800万円) × 100 ≒ 152.5%
    • この試算では、3年間で投資額を回収し、さらに投資額の約1.5倍の効果が得られる見込みとなります。

ROI試算モデルの要素(B案要素)

より精緻なROI試算を行うために、以下の要素をモデルに組み込むことを検討します。

  • 工数削減効果: 自動化対象業務ごとの削減時間 × 担当者の人件費単価
  • MTTR短縮効果: (MTTR短縮時間 × 影響を受ける業務の機会損失単価) や (復旧遅延による想定損害額の削減分) などで試算。
  • リスクコスト低減: 情報漏洩発生時の想定損害額(調査費用、賠償費用、信用失墜による損失等)× 発生確率の低減率 などで試算。
  • 投資コスト: 初期構築費、ライセンス費(3年分)、保守費(3年分)、運用人件費(3年分)、インフラ費(3年分)などを詳細に積み上げ。

ROI算出・評価の注意点

  • 定性効果の補足: ROI計算に含めにくい定性効果の価値も、必ず補足情報として説明資料に盛り込みましょう。
  • 前提条件の明記と妥当性: 計算に使用した数値(工数削減率、人件費単価、被害額見積もり等)の根拠を明確にし、その妥当性を検証します。
  • 効果発現のタイミング: 効果が最大化するまでには時間がかかることを考慮し、期間設定や効果見積もりを行います。
  • 予測値であることの認識: ROIはあくまで様々な仮定に基づく予測値です。

このステップとモデルを参考に、自社の状況に合わせて「SOAR 費用対効果」を具体的に算出・評価してください。

【重要】SOARの費用対効果を高める主要ポイント

SOARの導入効果を最大化し、高いROIを実現するためには、計画段階から運用段階まで一貫した戦略的なアプローチが必要です。ここでは、「SOAR 費用対効果」を高める上で特に重要なポイントを、B案で提示された3つの主要なアプローチ(段階的導入、業務プロセス標準化、インフラ最適化)を軸に整理し、導入フェーズごとに解説します。

《導入前フェーズ:ROI最大化の土台作り》

  • 1. 目的明確化とKPI設定、現状把握(ポイント2, 3の前提):
    • なぜSOARを導入するのか? 解決したい課題(例:アラート対応遅延、運用負荷増大)と達成したい目標(例:MTTRを50%削減、特定業務の工数を60%削減)を具体的に定義します。
    • 目標達成度を測るKPIを設定し、現状の対応工数、コスト、MTTRなどのベースラインを正確に測定します。これがROI算出と効果測定の基礎となります。
    • 現実的なROI目標値を設定し、関係者間で合意形成を行います。
  • 2. 業務プロセス標準化によるカスタマイズ工数削減:
    • SOAR導入前に、既存のインシデント対応プロセスを可視化し、標準化を進めます。重複・抜け漏れを排除し、定型化可能な作業と人間の判断が必要な作業を分類します。
    • アラート分類ルール、エスカレーション基準、通知テンプレートなどを整理・共通化することで、プレイブックの設計・開発が効率化され、ベンダーへの要件定義も明確になります。
    • これにより、カスタマイズにかかる工数と費用を大幅に削減でき、導入期間の短縮にもつながります。結果として初期投資を抑え、ROI向上に貢献します。

《導入時フェーズ:賢明な投資と基盤構築》

  • 3. 段階的導入(フェーズアプローチ)によるリスク分散と早期効果実証:
    • 最初から大規模な導入を目指すのではなく、最もROIが見込める、あるいは効果を実証しやすい範囲(例:フィッシングメール対応)からスモールスタートします(PoC: 概念実証)。
    • PoCで得られた具体的な効果(MTTR短縮率、工数削減率など)を数値化し、それを基に経営層へ説明することで、次のステップへの追加投資承認を得やすくなります。
    • フェーズごとに予算を設定し(例:基礎自動化→連携拡張→高度自動化)、段階的に導入を進めることで、初期投資リスクを低減し、予期せぬコスト超過を防ぎます。
  • 4. TCOと提供価値に基づく最適な製品・ベンダー選定:
    • ライセンス価格だけでなく、TCO(総所有コスト)を算出し、長期的な視点でコストを評価します。
    • 価格に見合う、あるいはそれ以上の価値(必要な機能、連携性、サポート、将来性など)を提供してくれる製品・ベンダーを選定することが、結果的にROIを最大化します。(詳細は次章)

《導入後フェーズ:継続的な改善による効果最大化》

  • 5. クラウド利用とハイブリッド運用によるインフラコスト最適化:
    • クラウド型SOARは、初期のサーバー調達や構築コスト、運用管理負荷を削減できるため、TCO削減に有効です。リソースの弾力的な調整により、利用状況に応じたコスト最適化も可能です。
    • セキュリティ要件等でオンプレミスが必要な場合も、機密性の高い部分のみオンプレミスとし、他をクラウド化するハイブリッド構成を検討することで、コストとセキュリティの両立を図れます。
  • 6. プレイブックの継続的な改善と自動化範囲の拡大:
    • SOARは導入したら終わりではありません。運用を通じて得られた知見や、新たな脅威、内部プロセスの変化に合わせて、プレイブックを定期的に見直し、改善・最適化します。
    • 運用の習熟度に合わせて、自動化できる業務範囲を段階的に拡大していくことで、さらなる効率化とコスト削減を実現し、ROIを継続的に向上させます。
  • 7. 定期的な効果測定とレポーティング:
    • 導入前に設定したKPIに基づき、定期的に効果を測定・評価します。SOARのレポート機能を活用し、ROIの進捗状況を可視化します。
    • 測定結果を分析し、改善点を見つけ出し、次のアクションにつなげます。結果を経営層や関係者に報告し、投資の有効性を示し続けることも重要です。

これらのポイントを意識し、計画的かつ継続的に取り組むことが、「SOAR 費用対効果」を最大化するための最も確実な道筋です。

ROI最大化に向けたSOARベンダー選定の着眼点

「SOAR 費用対効果」を最大化するには、自社のニーズに合致し、長期的に価値を提供してくれる製品・ベンダーを選定することが不可欠です。ここでは、ROI向上の観点から特に重要となるベンダー選定の着眼点を解説します。

  1. 価格モデルとTCO(総所有コスト)の評価:
    • 価格モデルの比較:
      • 定額型: コスト予測が容易だが、利用上限超過時の追加費用に注意。
      • 従量型: スモールスタートに適しているが、利用量増加に伴うコスト増をシミュレーションする必要あり。
      • サブスクリプション型: 初期コストを抑えやすいが、長期利用時のTCOを比較検討。
    • TCO評価: 初期構築費、ライセンス料(複数年)、年間保守/運用コスト、インフラ費、トレーニング費、想定される追加開発費などを3~5年程度の期間で試算し、TCOを比較します。隠れたコストがないか見積もり内容を精査することが重要です。ROI算出の基礎となる費用を正確に把握します。
  2. 機能適合性とプレイブックの柔軟性・拡張性:
    • 自社が自動化したいインシデント対応プロセスに必要な機能(脅威インテリジェンス連携、特定アクションの自動化など)が備わっているかを確認します。
    • プレイブックの作成・編集が容易か(ローコード/ノーコード対応か)、自社のプロセスに合わせて柔軟にカスタマイズできるかは、運用効率とROIに直結します。
    • 将来的に自動化範囲を拡大したり、新たな脅威に対応したりできるよう、プレイブックの拡張性や再利用性も評価します。柔軟性と拡張性が高いほど、長期的な投資価値が高まります。
  3. 連携性(エコシステムの広さと深さ):
    • 既存のセキュリティツール(SIEM, EDR等)やITシステム(ITSM等)とスムーズに連携できるかは、導入効果を最大化し、追加開発コストを抑制する上で極めて重要です。
    • 標準APIや連携コネクタが豊富で、対応製品のエコシステムが広いほど、将来的な拡張性が高まり、ROI向上に貢献します。ベンダーに具体的な連携実績を確認しましょう。
  4. 分析・レポーティング機能の充実度:
    • ROIを測定・評価し、継続的な改善活動を行うためには、導入効果(MTTR短縮、工数削減、自動化率など)を容易に可視化・分析できる機能が必要です。
    • KPI追跡やROI算出に必要なデータを簡単に抽出・レポートできるダッシュボード機能などが充実しているかを確認します。効果測定の効率化は、ROI向上のためのPDCAサイクルを回す上で不可欠です。
  5. ベンダーのサポート体制と技術力・信頼性:
    • 導入後の技術サポート(日本語対応、対応時間、SLA)、保守体制はもちろんのこと、プレイブックの最適化支援や活用コンサルティングなど、ROI向上に貢献するプロアクティブな支援を期待できるか評価します。
    • ベンダーの導入実績(特に同業種・同規模)、認定エンジニアのスキルレベル、セキュリティ認証(ISO27001等)、事業継続性なども、長期的なパートナーとして信頼できるか判断する上で重要です。

これらの着眼点を持ち、評価マトリクスを作成するなどして客観的に比較検討することで、単なる価格競争に陥ることなく、真に「SOAR 費用対効果」を最大化できるベンダーを選定することが可能になります。

導入準備:ROI試算と稟議承認を円滑に進めるために

SOAR導入プロジェクトを成功させ、「SOAR 費用対効果」を社内に示し承認を得るためには、導入前の周到な準備が鍵となります。特に、ROI試算と稟議プロセスを円滑に進めるための要点を解説します。

1. 現状業務の棚卸しと課題・コストの定量化:

  • まず、現状のインシデント対応プロセスを詳細に把握します。どのような種類のアラートが、どれくらいの頻度で発生し、その対応に誰が、どれくらいの工数(時間)を費やしているかを具体的に記録・集計します。
  • 手動で行っている定型作業と、高度な判断が必要な作業を明確に切り分けます。
  • 対応遅延によるビジネス影響や、担当者の残業時間なども含め、現状の課題とそれに伴うコスト(人件費、機会損失など)を可能な限り定量化します。これがROI試算のベースラインとなります。

2. ROI試算モデルの構築とシミュレーション:

  • 現状把握の結果と、SOAR導入による想定効果(工数削減率、MTTR短縮率など)に基づき、具体的なROI試算モデルを構築します。(前々章の「ROI算出方法とモデル」参照)
  • 工数削減効果(削減時間×人件費単価)、MTTR短縮による効果(損害低減額など)、その他の効果を金額換算し、合計します。
  • 導入にかかるTCO(初期費用+複数年のランニングコスト)を算出し、ROI計算式に当てはめます。
  • 複数のシナリオ(保守的な見積もり、標準的な見積もり、楽観的な見積もりなど)でシミュレーションを行い、結果の幅を把握しておくことも有効です。

3. 予算項目の明確化と段階的計画:

  • ROI試算で使用したコストを、「構築費」「ライセンス費」「保守費」「トレーニング費」「インフラ費」などの具体的な費目に分解し、明細として整理します。
  • 可能であれば、プロジェクト全体をフェーズ分け(例:PoC→フェーズ1→フェーズ2)し、各フェーズで必要な予算案を作成します。これにより、稟議承認のハードルを下げ、段階的な投資判断を促すことができます。

4. リスクマネジメントとマイルストーン設定:

  • プロジェクト進行中に想定されるリスク(例:要件変更、追加開発、連携トラブル)を洗い出し、その対策と影響を考慮した予備費(予算の10~15%程度)を確保します。
  • 主要なマイルストーン(PoC完了、契約、本番移行、運用安定化など)を設定し、各段階での達成目標と承認ポイントを明確にしておくことで、プロジェクト管理と関係者への報告が容易になります。

5. 説得力のある稟議書作成と承認フロー:

  • ここまでの準備内容を基に、決裁者向けの稟議資料を作成します。以下の要素を、図やグラフを用いて分かりやすく、簡潔にまとめます。
    • 課題背景: なぜSOARが必要なのか(現状の課題とリスク)
    • 期待される効果: SOAR導入によるメリット(定量的効果、定性的効果)
    • ROI試算結果: 具体的なROI数値とその算出根拠
    • 費用内訳とスケジュール: 詳細な予算項目と導入計画
    • リスクと対策: 想定されるリスクとその対応策
  • 既存の運用コストや、SOARを導入しなかった場合のリスクと比較し、投資の必要性と妥当性を強調します。
  • 事前に主要な関係者(情報システム部、セキュリティ部門、経営企画部など)に根回しを行い、承認プロセスを円滑に進めるための準備も重要です。

これらの手順を丁寧に踏むことで、「SOAR 費用対効果」に基づいた客観的なデータを示し、稟議承認を得て、プロジェクトをスムーズにスタートさせることができます。

まとめ:費用対効果と総合価値を見据えた戦略的SOAR導入

本記事では、「SOAR 費用対効果(ROI)」をテーマに、その重要性、効果と費用の内訳、具体的なROI算出方法、ROIを高めるための主要ポイント、そしてROI最大化に繋がるベンダー選定の着眼点、導入準備の要点について詳しく解説しました。

SOAR導入の投資判断において、ROIは極めて重要な指標です。定量的な効果(人件費削減、被害低減など)を可能な限り測定し、TCO(総所有コスト)と比較することで、投資の妥当性を客観的に評価し、経営層や関係者の理解を得ることが可能になります。

しかし、ROIの数値だけにとらわれず、定性的な効果(セキュリティレベル向上、属人化解消、担当者満足度向上など)も含めた総合的な価値を評価することが、SOAR導入の真の意義を理解する上で不可欠です。

そして何よりも重要なのは、「SOAR 費用対効果」は、導入後の継続的な改善活動によって最大化されるということです。明確な目標設定、現状把握、最適な製品選定に加え、導入後もプレイブックの改善、自動化範囲の拡大、定期的な効果測定とレポーティングといったPDCAサイクルを回し続けることが成功の鍵となります。

適切なSOARの導入と戦略的な運用は、単なるコスト削減や効率化に留まらず、組織全体のサイバーレジリエンスを高め、事業継続性を確保し、企業の信頼性を向上させる、価値ある投資です。本記事が、貴社における費用対効果の高いSOAR導入検討、そしてその成功の一助となることを願っています。

ページ先頭へ戻る