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SFA JOURNAL by ネクストSFA

UTM導入メリット・デメリット徹底比較:決裁者が知るべきコスト効果と注意点

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

サイバー攻撃の脅威が企業規模を問わず深刻化し、テレワークやクラウド活用が加速する現代において、堅牢なセキュリティ対策はもはやオプションではなく、事業継続のための必須要件です。このような状況下で、多くの企業がネットワークセキュリティの中核としてUTM(統合脅威管理)の導入を検討しています。

UTMは複数のセキュリティ機能を1台に集約し、運用効率とコスト削減を実現するソリューションとして広く認知されていますが、その導入はメリットばかりではありません。安易な導入は期待した効果が得られないどころか、パフォーマンスの低下や運用負荷の増大といった新たな問題を引き起こす可能性も秘めています。

WEBセキュリティサービスの導入を検討されている企業の管理部や決裁者の皆様にとって、UTMが本当に自社の課題を解決し投資に見合う価値をもたらすのか、そのメリットを最大化しデメリットを最小化するにはどうすればよいのかを冷静に見極めることが重要です。

本記事では、UTMの基本的な概念から導入によって得られる具体的なメリット、そして見落としてはならないデメリットと注意点を徹底的に比較解説します。さらに、どのような企業にUTMが適しているのか、導入判断のポイントや選定・運用で失敗しないための実践的な知見も提供します。

この記事がUTM導入に関する貴社の賢明な意思決定をサポートし、最適なセキュリティ戦略を構築するための一助となることを目指します。

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シグネチャ検査(更新、設定はマネージドサービスとして提供します。)
CMS設定(WordPress、Movable Type、EC-CUBEの運用に適した設定を行います。)
アクセス制御
国別フィルタ
ダッシュボード
レポート機能
専用フォーム(各種お問い合わせは専用フォームで承ります。履歴管理も可能です。)
Amazon Web Services, Inc. AWS WAF
  • ウェブトラフィックフィルタリング
  • AWS WAF Bot Control
  • アカウント乗っ取り詐欺の防止
  • アカウント作成詐欺防止
  • フル機能 API
  • リアルタイムの可視性
  • AWS Firewall Manager への統合
Web ACL 月あたり (時間で案分) USD 5.00
ルール 月あたり (時間で案分) USD 1.00
リクエスト USD 0.60/100 万件のリクエスト (最大 1500 WCU およびデフォルトの本文サイズの検査*)
Bot Control と Fraud Control 上記のタブによる追加費用
ウェブトラフィックフィルタリング
AWS WAF Bot Control
アカウント乗っ取り詐欺の防止
アカウント作成詐欺防止
フル機能 API
リアルタイムの可視性
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株式会社ROCKETWORKS 詳細はこちら ※IT製品の情報サイト「ITトレンド」へ遷移します。 イージスWAFサーバセキュリティ
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  • AWSをはじめ最新のクラウド環境にも対応
  • 人気ECサイト、Webサービスも安心の低負荷・低遅延
  • 日本人エンジニア執筆による「読んでわかる」レポートを毎月送付
イージスサーバセキュリティタイプ
月額/50,000円

イージスDDoSセキュリティタイプ
~2Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥40,000
~5Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥60,000
~10Mbps 初期費用/¥98,000 月額/¥120,000
~50Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥198,000
~100Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥250,000
~200Mbps 初期費用/¥198,000 月額/¥450,000
200Mbps以上 別途見積もり
サイバー攻撃の検出/遮断
月次レポート
サイバーセキュリティに関するアドバイザリー
法務相談(オプション)
SBテクノロジー株式会社
詳細はこちら
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Imperva WAF
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  • 仮想パッチの適用
- Web Application Firewall
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~5Mbps 初期費用 98,000円 月額 59,800円
~10Mbps 初期費用 98,000円 月額 128,000円

~50Mbps 初期費用 198,000円 月額 148,000円
~100Mbps 初期費用 198,000円 月額 198,000円
~200Mbps 初期費用 198,000円 月額 298,000円
200Mbps 初期費用198,000円 100Mbps毎に100,000円加算
1 ブロック機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を遮断する機能
2 モニタリング機能 Webサイトに対する攻撃と思われる通信を記録する機能 (通信自体は遮断されません)
3 防御ログ閲覧機能 ブロック(モニタリング)した通信をログとして保存し、閲覧できる機能
4 レポート機能 下記の内容を管理画面上で報告する機能
 ・攻撃元(IPアドレス)top5
 ・攻撃種別top5
 ・防御ログの月別ダウンロード
5 ソフトウェア更新機能 防御機能等を向上させるため、ソフトウェアを更新する機能
6 防御ロジック更新機能 防御効果の向上を図るため、不正な通信パターンを随時最新の状態に更新する機能
7 特定URL除外機能 Webサイト中のWAF機能を利用したくない箇所を防御対象から除外する機能
8 IPアドレスの拒否/許可設定機能 特定のIPアドレスからの通信を拒否、もしくは特定のIPアドレスからの通信のみ許可する機能
9 脆弱性検査用IPアドレス管理機能 Webサイトへの脆弱性診断等を行う際、設定したIPアドレスからの通信についてブロック/モニタリングを行わない機能
10 SSL/TLS通信機能 暗号化された通信についても解読し、防御する機能
11 API機能 Scutumで検知した防御ログや詳細な攻撃リクエスト内容をAPI経由で取得できる機能
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社 SmartConnect Network & Security
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- UTM
WAF
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Webプロキシ
メールセキュリティ
ロードバランサ
VPN
株式会社モニタラップ AIONCLOUD WAAP
  • ひとつのコンソールで提供する統合セキュリティ
  • 進化する脅威に対応するアプリケーションセキュリティサービス
- WAF
Webアプリケーションを既存の攻撃、ゼロデイ攻撃などから防御します。

APIセキュリティ
企業のAPIに対する可視性を提供し脅威を遮断します。

ボット緩和
ボットのトラフィックを管理し、Webサイトを保護します。

DDoS保護
アプリケーション階層のDDoS攻撃から企業のWebサイトを守ります。
フォーティネットジャパン合同会社 FortiWeb
  • WEBアプリケーション保護
  • 機械学習に基づいた脅威検知
  • セキュリティ ファブリックの統合
  • 高度な分析
  • 誤検知の減災
  • ハードウェアベースのアクセラレーション
- アプリケーションのセキュリティ
コンテンツセキュリティ
デバイスのセキュリティ
NOC/SOC セキュリティ
ウェブセキュリティ
管理された検出と対応
SOC-as-a-Service
インシデント対応サービス
サイバーセキュリティの評価と準備状況
バラクーダネットワークス Barracuda Web Application Firewall
  • Web攻撃とDDoSを確実に防止
  • 悪意のあるボットの動きを完全に静止
  • APIとモバイルアプリの保護
  • きめ細かなアクセス制御と安全なアプリ配信を実現
  • セキュリティの自動化と統合
  • 攻撃とトラフィックパターンの可視化
- WebアプリケーションとAPIの保護

+ OWASPおよびゼロデイ攻撃に対する保護
+ 高度なボット攻撃からアプリケーションを保護
+ API保護
+ サーバクローキング
+ URL暗号化
+ GEO IPとIPレピュテーションチェック
+ マルウェア対策とウィルス対策
+ マルチプロトコルサポート
+ アプリケーションDDoS対策
+ 大規模なDDoSの防止
+ JSONセキュリティ
+ XMLファイアウォール
+ アクティブ脅威インテリジェンス
+ クライアントサイドプロテクション

アプリケーションデリバリ
+ アプリケーションの負荷分散と監視
+ コンテンツルーティング
+ キャッシュ、圧縮、トラフィックの最適化

データ保護とコンプライアンス
+ アウトバウンドDLP
+ コンプライアンス認証

IAM
+ SAMLサポートとSSO
+ クライアント証明書ベースの認証
+ AD FSとの統合
+ LDAP、Kerberos、およびRADIUSとの統合
+ 2要素認証

レポート
+ Barracuda Active Threat Intelligenceダッシュボード
+ 直感的なドリルダウンレポート
+ 包括的なログ
+ SIEMとの統合

管理
+ HAクラスタリング
+ ロールベースの緻密なアクセス制御
+ REST APIによる自動化とスケーラビリティ
+ 統合的なDevSecOpsの有効化
+ デフォルトのセキュリティテンプレート

中央管理
+ 単一コンソール
+ 証明書の中央管理
+ 中央管理通知とアラート

使いやすさ
+ アプリケーション学習(アダプティブプロファイリング)
+ 仮想パッチと脆弱性スキャナとの統合
+ 自動構成エンジン
セコムトラストシステムズ株式会社 マネージドWAFサービス
  • AWS、Azure 等の、各種クラウド環境でも利用することができます。
  • メーカーシグネチャに加え、個別シグネチャを迅速に作成することができます。
  • クラウド型なので直ぐにご利用いただけます。(※大規模システム向けにはオンプレミス型(マネージドWAFサービス標準型)も提供できます)
  • ストラッツ(Struts)の脆弱性対策も実施することができます。
  • クレジットカード番号の外部流出を検知し防止することができます。
  • DDoS攻撃対策も実施することができます。(オプション)
- DDoS対策
ファイアウォール
IPS
WAF
Amazon Web Services, Inc. AWS Shield
  • AWS Shield Standard
    ↳基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
    ↳インラインの攻撃緩和
  • AWS Shield Advanced
    ↳アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
    ↳正常性に基づく検出
    ↳高度な攻撃緩和機能
    ↳自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
    ↳積極的なイベント応答
    ↳保護グループ
    ↳可視性と攻撃の通知
    ↳DDoS コスト保護
    ↳専門サポート
    ↳グローバルな可用性
    ↳一元化された保護管理
- AWS Shield Standard
基盤となる AWS サービスの静的しきい値 DDoS 保護
インラインの攻撃緩和

AWS Shield Advanced
アプリケーショントラフィックパターンに基づいてカスタマイズされた検出
正常性に基づく検出
高度な攻撃緩和機能
自動アプリケーションレイヤー DDoS 緩和策
積極的なイベント応答
保護グループ
可視性と攻撃の通知
DDoS コスト保護
専門サポート
グローバルな可用性
一元化された保護管理

この記事の目次はこちら

UTM(統合脅威管理)とは?基本機能と従来製品との違い

UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)という言葉はよく耳にするものの、その本質を正確に理解しておくことが、メリット・デメリットを正しく評価する上での第一歩です。UTMとは、従来個別の機器やソフトウェアで提供されていた複数のセキュリティ機能を単一のプラットフォーム(多くは専用ハードウェアアプライアンス)に統合したソリューションを指します。

登場背景と進化

かつてネットワークセキュリティの主役はファイアウォールでしたが、マルウェアの巧妙化、不正アクセスの増加、標的型攻撃の出現といった脅威の多様化に伴い、ファイアウォールだけでは十分な防御ができなくなりました。そこでIPS/IDS、アンチウイルスゲートウェイ、Webフィルタリングといった機能が次々と登場しましたが、これらを個別に導入・運用することは、コストと管理負荷の増大という新たな課題を生み出しました。

この課題を解決するために2000年代に登場したのがUTMです。UTMはこれらの主要なセキュリティ機能を一つにまとめ、導入と運用を効率化することを目指して開発され、その後も進化を続け、近年ではアプリケーション制御、サンドボックス、SSL/TLSインスペクション、クラウド連携、AIによる脅威検知といった高度な機能を取り込む製品も増えています。

UTMと従来ファイアウォールとの主な違い

  • 機能範囲: 従来のファイアウォールが主にパケットフィルタリング(IPアドレス、ポート番号での制御)を行うのに対し、UTMはそれに加えてIPS/IDS、アンチウイルス、Webフィルタリング、アプリケーション制御などより広範なセキュリティ機能を提供します。通信内容を詳細に検査するDPI(Deep Packet Inspection)技術が用いられるのが一般的です。
  • 管理性: UTMは統合された管理コンソール(GUI)を提供し、全ての機能の設定、ポリシー適用、ログ監視、レポート作成などを一元的に行うことができます。これにより管理者の運用負荷が大幅に軽減されます。
  • コスト効率: 複数の機能をパッケージとして導入するため、個別に製品を揃えるよりもTCO(総所有コスト)を抑制できる可能性があります。

UTMの基本構成要素(代表例)

  • ファイアウォール: アクセス制御の基本
  • IPS/IDS: 不正侵入検知防御
  • アンチウイルス/アンチマルウェア: マルウェア対策
  • Webフィルタリング: 不正サイト、有害サイトへのアクセス制御
  • アプリケーション制御: 特定アプリの利用制御
  • VPN: 安全なリモートアクセス、拠点間通信
  • SSL/TLSインスペクション: 暗号化通信の検査(オプションの場合あり)
  • ログレポート機能: 統合ログ管理と状況可視化

この統合という特性がUTMの最大のメリットであると同時に、いくつかのデメリットも生み出す要因となっています。

【メリット解説】UTM導入がもたらす経営上の利点

UTM(統合脅威管理)の導入は、単なるセキュリティ強化に留まらず、企業経営全体に様々なメリットをもたらす可能性があります。ここでは特に管理部や決裁者の皆様が注目すべき経営上の利点を5つに絞って具体的に解説します。これらのメリットがコスト削減、運用効率化、リスク低減にどう貢献するのかご確認ください。

メリット1:運用負荷の大幅な軽減による生産性向上

これがUTM導入における最大のメリットと言っても過言ではありません。従来型の個別セキュリティ対策では、機器ごとに管理画面が異なり、設定変更、ログ確認、アップデート作業などが煩雑で多くの時間と手間を要していました。UTMならこれらの機能を単一の管理コンソールから一元的に管理できるため、運用が劇的に効率化されます。設定ミスやポリシーの不整合リスクも低減します。

これにより、情報システム部門の担当者は日々の煩雑な作業から解放され、より戦略的な業務や他のIT課題への対応に注力できるようになり、組織全体の生産性向上にも繋がります。特に専任のセキュリティ担当者が少ない、あるいはIT人材が限られている企業にとっては極めて大きなメリットです。

メリット2:導入・運用コストの削減(TCO抑制)

複数のセキュリティ専用機器やソフトウェアライセンスを個別に購入・維持管理する場合と比較して、UTMはオールインワンパッケージであるため、初期導入コストを抑えられる可能性があります。ベンダーによっては、個別購入より25~40%程度のコスト削減が可能との試算もあります。

さらに重要なのはTCO(総所有コスト)の観点です。保守サポート契約の一本化、ライセンス管理の簡素化により、継続的な運用コストも削減できる可能性があります。また、機器を集約することによる設置スペースの削減や消費電力の抑制も、地味ながら確実なコスト削減効果と言えます。これらのコスト削減メリットは企業の収益改善に直接貢献するため、決裁者にとって非常に魅力的なポイントです。

メリット3:多層防御による網羅的なセキュリティレベル向上

UTMは、ファイアウォール、IPS/IDS、アンチウイルス、Webフィルタリングなど複数の防御機能を組み合わせることで、ネットワークの入り口で多層的な防御体制を構築します。これにより、不正アクセス、マルウェア感染、不正サイトへのアクセスといった多様な脅威ベクトルに対して網羅的な対策を施すことができ、企業全体のセキュリティレベルを効果的に引き上げることができます。

基本的なセキュリティ対策が手薄だった企業にとっては、UTM導入によりセキュリティ基盤を迅速に強化できるというメリットがあります。結果として、情報漏洩などの重大インシデント発生リスクを低減し、企業の信用の維持や事業継続性の確保に貢献します。

メリット4:セキュリティポリシーの統一とガバナンス強化

企業全体、あるいは複数拠点を持つ企業において、セキュリティポリシーの一貫性を保つことは、コンプライアンスや内部統制の観点から非常に重要です。UTMの一元管理機能を活用すれば、全社・拠点間で標準化されたセキュリティポリシーを容易に適用・展開することが可能になります。

これにより、拠点ごとにセキュリティレベルにばらつきがあるといった問題を解消し、企業全体のセキュリティガバナンスを強化することができます。監査対応などにおいても、ポリシーの適用状況を証明しやすくなるというメリットもあります。

メリット5:比較的迅速かつ容易な導入

基本的なセキュリティ機能が予め統合されているため、個別の製品を選定し連携設定を行うプロセスと比較して、UTMは導入プロセスが比較的シンプルであり、短期間で基本的な防御体制を構築できる可能性があります。もちろん適切な設定やチューニングは不可欠ですが、導入までのリードタイムを短縮できる点は、迅速なセキュリティ強化が求められる場合に大きなメリットとなります。

これらの経営上のメリットを最大化するためには、後述するデメリットを理解し、適切な製品選定と運用を行うことが重要です。

【デメリット解説】UTM導入前に把握すべきリスクと注意点

UTM(統合脅威管理)は多くのメリットを持つ一方で、導入・運用にあたっては看過できないデメリットや注意点も存在します。これらのリスクを事前に把握し対策を検討しなければ、期待した効果が得られないばかりか、かえって問題を引き起こす可能性もあります。決裁者がUTM導入を判断する上で必ず考慮すべき主なデメリットを5つ解説します。

デメリット1:パフォーマンス低下の懸念と業務影響リスク

UTMの最大のデメリットの一つがパフォーマンスへの影響です。多くのセキュリティ機能を単一のハードウェアで処理するため、特にファイアウォール、IPS、アンチウイルス、SSL/TLSインスペクションといった複数の機能を同時に有効化すると、機器のCPUやメモリに高い負荷がかかり、ネットワーク全体の通信速度(スループット)が低下したり、応答時間(レイテンシ)が増加したりする可能性があります。

特に暗号化通信(HTTPS)の割合が高い現代のネットワーク環境において、その内容を検査するSSL/TLSインスペクションは極めて負荷が高く、有効化によってパフォーマンスが大幅に劣化するケースが少なくありません。これにより、Webサイトの表示が遅くなったり、業務アプリケーションの応答が悪化したりするなど、業務に直接的な支障をきたすリスクがあります。適切なサイジング(性能設計)が行われていない場合、この問題はより深刻になります。

デメリット2:運用複雑化と高度な専門知識の必要性

「統合管理で運用負荷軽減」はメリットですが、それはあくまで適切に設定・運用できる体制があっての話です。多機能であるがゆえに設定項目が多岐にわたり、各機能間の連携や影響を考慮したポリシーチューニングは複雑になりがちです。最大限の効果を発揮させつつ、誤検知や業務影響を最小限に抑えるためには、高度なセキュリティ知識や製品に対する深い理解が求められます。設定ミスはセキュリティホールに直結するリスクもあります。

また、膨大なログの分析やシグネチャアップデートの管理なども継続的な負担となります。専門知識を持つ担当者が不足している場合、適切な運用が困難になる可能性があり、結果的にUTMが形骸化してしまうというデメリットが生じます。

デメリット3:機能過剰によるコスト非効率とROIの不透明性

UTMは多くの機能がパッケージ化されていますが、実際に自社で必要とする機能は一部であるケースも少なくありません。利用しない機能が多く含まれていても、パッケージ全体のライセンス費用や保守費用が発生するため、結果的に機能がオーバースペックとなりコスト効率が悪くなる可能性があります。これはROI(投資対効果)の観点からは明確なデメリットです。

また、ハードウェアのリプレイス費用、ライセンス更新費用、保守サポート費用、運用人件費といった隠れたコストを含めたTCO(総所有コスト)を正確に把握しないと、導入効果が見えにくくなるという問題もあります。

デメリット4:境界型防御の限界とクラウド時代のミスマッチ

UTMは主にネットワークの境界を守る境界型防御の思想に基づいています。しかし、クラウドサービスの利用が一般化し、リモートワークが普及した現代では、守るべき境界は曖昧になり、UTMを経由しない通信(インターネットブレイクアウト)も増えています。そのため、UTMだけでは全ての脅威をカバーできないという限界があります。特にゼロトラストセキュリティモデルへの移行を目指す場合、境界に依存するUTMだけではその要件を満たすことは困難です。

デメリット5:単一障害点(SPOF)のリスクと事業継続性への影響

ネットワークの関所に位置し、全ての通信とセキュリティ機能を担うUTMは、単一障害点(Single Point of Failure)となりやすいというデメリットがあります。UTM機器が故障した場合、ネットワーク通信が完全に停止したり、全てのセキュリティ機能が失われたりして、事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。これを回避するには、機器の冗長化(HA構成)が推奨されますが、追加コストと設定・運用の複雑化が伴います。

これらのデメリットを十分に理解し、リスクを許容できるか、軽減策を講じられるかを慎重に検討することが、UTM導入判断において不可欠です。

UTM導入の適性診断:自社にメリットは大きいか?

UTM(統合脅威管理)は魅力的なメリットを持つ一方で、無視できないデメリットも存在します。では、自社にとってUTM導入は果たして最適な選択なのでしょうか。ここでは、これまでのメリット・デメリットの解説を踏まえ、どのような企業特性を持つ場合にUTMが適しており、逆にどのような場合に他の選択肢を検討すべきか、導入の適性を診断するためのポイントを整理します。

UTM導入のメリットが大きいと考えられる企業像

以下の特徴に当てはまる場合、UTM導入による恩恵を受けやすいと考えられます。

企業規模・ネットワーク環境

  • 中小規模の企業: 従業員数が数百名程度までで、ネットワーク構成が比較的シンプルな場合、UTMの導入・運用効率やコストメリットを享受しやすいです。パフォーマンスへの懸念も比較的小さく済みます。
  • 複数拠点を持つ企業(特に支店・営業所): 各拠点に標準的なセキュリティ対策を効率的に展開したい場合、UTMによる管理の一元化とポリシー統一のメリットが活きます。本社側でより高度な対策を補完する構成も可能です。
  • オンプレミス環境が主体: 社内にサーバーやシステムを多く保有し、クラウド利用が限定的な場合、UTMによる境界型防御が依然として有効に機能します。

運用体制・リソース

  • セキュリティ専任担当者が不在または少数: 情報システム部門が他の業務と兼務しているなど、IT担当者のリソースが限られている場合、UTMの統合管理による運用負荷軽減は大きなメリットです。
  • 高度な専門知識を持つ人材が不足: 複雑な個別製品の組み合わせよりも、比較的シンプルな運用が可能なUTMの方が現実的な場合があります(ただし、適切な設定・運用知識は必要)。

セキュリティ要件・ニーズ

  • 基本的なセキュリティ対策を網羅的に強化したい: ファイアウォール、IPS、アンチウイルス、Webフィルタリングなど、基本的な防御機能を手早く効率的に導入し、全体のセキュリティレベルを底上げしたいというニーズに合致します。
  • コストを抑えつつ多層防御を実現したい: 限られた予算内でできるだけ多くの脅威に対応したい場合に、コスト効率のメリットが魅力となります。

UTM導入の見直し・他の選択肢を検討すべき企業像

以下の特徴を持つ場合、UTMのデメリットが顕在化しやすく、他のソリューションがより適している可能性があります。

企業規模・ネットワーク環境

  • 大規模ネットワーク・高トラフィック環境: 通信量が非常に多い本社、データセンターなどでは、UTMのパフォーマンスがボトルネックになるリスクが高いため、より高性能なNGFWや分散型アーキテクチャ(SASEなど)を検討すべきです。
  • クラウド利用・リモートワーク中心: 従業員の多くが社外からクラウドサービスへ直接アクセスする環境では、UTMの境界型防御の限界が露呈します。SASEやZTNAといったクラウドネイティブなアプローチが有効です。

運用体制・リソース

  • 高度なセキュリティ運用体制を持つ: SOC(Security Operation Center)などを有し、専門家による高度な分析やチューニング、インシデント対応が可能な場合、UTMの機能では物足りず、より専門的な製品(NGFW、EDR/XDR、SIEMなど)を組み合わせる方が効果的な場合があります。

セキュリティ要件・ニーズ

  • 極めて高いパフォーマンスが必須: 金融取引、オンラインゲームなど、ミリ秒単位の遅延も許容されないシステムでは、UTMの処理遅延がデメリットとなり得ます。
  • 特定の高度な脅威対策が最優先: ゼロデイ攻撃対策、Webアプリケーションの脆弱性対策、内部不正対策(高度DLP)など、特定の領域で最高レベルの防御を求める場合、UTMの標準機能では不足し、専用ソリューションが必要です。
  • ゼロトラストアーキテクチャへの完全移行を目指す場合: UTMは構成要素の一つにはなり得ますが、中心ではなく、ID管理、デバイス管理、アクセス制御などを強化する他のソリューションが主役となります。

自社の状況をこれらの特徴と照らし合わせ、メリットがデメリットを十分に上回ると判断できるか、将来的なIT戦略との整合性も考慮して慎重に導入の可否を判断してください。

UTM選定・運用で失敗しないための実践ポイント

UTM(統合脅威管理)の導入を決定した場合、あるいは既に利用中のUTMの効果を最大化するためには、メリットを活かしデメリットを抑制するための戦略的なアプローチが不可欠です。ここでは、UTMの選定から導入後の運用改善に至るまで、失敗を避け成果を出すための実践的なポイントを解説します。

【選定フェーズ】失敗しないためのチェックポイント

導入前の選定段階での見極めが成否を分けます。

1. 性能・機能要件の明確化と検証

  • スループット試算: 現状および将来予測されるトラフィック量、特にSSL/TLS通信の割合とそのインスペクション(復号検査)を行う前提で必要な実効スループットを算出します。カタログスペックだけでなく、全機能有効時の性能を確認することが重要です。
  • 必須機能の特定と評価: 自社のリスク分析に基づき必須となるセキュリティ機能(例:特定のアプリケーション制御、DLP、サンドボックス等)をリストアップし、候補製品がその要件を満たすか、機能の深さ(検知精度、ポリシー柔軟性)も評価します。
  • 可用性要件: 事業継続性の観点から冗長化構成(HA)が必要か、その場合の切り替え時間やコストを確認します。

2. 管理運用性とサポート体制の評価

  • 管理画面(GUI)の操作性: 直感的で分かりやすいか、ダッシュボードは必要な情報を的確に表示するか、ポリシー設定やログ確認が容易かなどを評価します。運用担当者のスキルレベルに合わせます。
  • サポート体制(SLA): 障害発生時の対応時間(24/365か)、復旧目標、オンサイト保守の有無、日本語サポートなどを確認します。
  • アップデート体制: ファームウェアや脅威定義ファイルの更新頻度、提供期間、自動適用の可否を確認します。

自動適用の可否を確認します。

3. コストとROI(投資対効果)の評価

  • TCO(総所有コスト)試算: 初期費用だけでなく、最低でも3~5年間の運用コスト(ライセンス更新、保守、ハードウェアリプレイス含む)を算出し比較します。
  • ROIの見える化: メリット(コスト削減、リスク低減)とTCOを比較し、投資対効果を評価します。情報漏洩発生時の想定損害額との比較も有効です。

4. PoC(Proof of Concept:概念実証)の実施

可能であれば、候補製品を実際のネットワーク環境に近い状況でテスト導入し、性能、運用性、既存システムとの相性などを実機で検証します。これにより、机上検討だけでは見えなかった課題を発見できます。

【運用フェーズ】効果を最大化するための継続的改善

導入後も継続的な取り組みが必要です。

1. 適切な初期設定と継続的なチューニング

導入時の初期設定はベンダー任せにせず、自社のポリシーに合わせて最適化します。導入後も定期的にログをレビューし、誤検知や過剰なブロックがないか確認し、ポリシーを継続的にチューニングします。不要な機能は無効化し、パフォーマンスを最適化します。

2. KPI設定と効果測定・レポート

UTMの稼働状況や防御効果を測るKPI(脅威検知数、ポリシー違反数など)を設定し、定期的に測定・レポートします。これにより、対策の効果を可視化し、経営層への説明責任を果たすとともに改善点を発見します。

3. インシデント対応体制と訓練

UTMがアラートを発した場合の対応フローを明確にし、担当者の役割と連絡体制を整備します。定期的なインシデント対応訓練も有効です。

4. アップデートの迅速な適用

ファームウェアや脅威定義ファイルは常に最新の状態に保ち、新たな脅威に備えます。

5. 他のセキュリティ対策との連携

UTMのデメリットや限界を補うために、EDR/XDR、CASB、ZTNAなど他のソリューションとの連携を検討し、多層防御体制を構築します。

6. 従業員への教育啓発

技術対策と並行して、従業員のセキュリティ意識を高めるための教育を継続的に実施します。

これらのポイントを実践することで、UTMのメリットを最大限に引き出し、デメリットを管理しながらセキュリティレベルを維持・向上させることが可能になります。

まとめ:UTMのメリット・デメリットを理解し、賢明な判断を

本記事では、UTM(統合脅威管理)について、その導入メリットとデメリットを多角的に徹底解説してきました。UTMは、複数のセキュリティ機能を1台に集約することで、運用負荷の軽減、コスト効率の向上、多層防御による基本的なセキュリティレベルの向上といった多くのメリットを提供します。特にセキュリティ専任の担当者が限られている企業や複数の拠点を持つ企業にとっては、依然として魅力的で有効な選択肢となり得ます。

しかしその一方で、パフォーマンスへの懸念、設定・運用の複雑さ、機能過剰のリスク、境界型防御の限界、単一障害点といった無視できないデメリットも存在することも事実です。

UTM導入で成功を収めるためには、これらのメリット・デメリット双方を正確に理解し、自社の状況(規模、環境、要件、リソース、将来計画)を客観的に分析した上で導入の是非を判断することが不可欠です。メリットがデメリットを上回り、かつそれが自社のセキュリティ戦略と合致しているかを見極める必要があります。

UTM導入を決めた場合でも、デメリットを軽減するための対策(適切なサイジング、冗長化構成、運用支援活用など)を講じることが重要です。そして、UTMは万能ではないことを常に念頭に置き、エンドポイント対策、クラウドセキュリティ、ID管理、従業員教育といった他の対策と連携させ、多層的な防御体制を構築していく視点が求められます。

最終的な目標は、UTMというツールを導入すること自体ではなく、それを通じて企業の重要な情報資産を守り、事業継続性を確保することです。本記事で得られた知見が、貴社にとって最適かつ賢明なセキュリティ投資判断を行うための一助となれば幸いです。

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