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SFA JOURNAL by ネクストSFA

クラウドWAF導入ガイド2025:メリット・従来型との違い・選定ポイントを経営層向けに解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

なぜ今「クラウド型WAF」なのか?経営リスクとセキュリティ新潮流

企業活動におけるクラウドサービスの利用は、もはや特別なことではなくなりました。サーバーインフラから業務アプリケーションに至るまで、多くのITリソースがクラウドへと移行する中で、セキュリティ対策の考え方にも変革が求められています。特に、企業の顔であり、顧客との重要な接点となるWebサイトやWebアプリケーションは、ビジネスの生命線であると同時に、サイバー攻撃者にとって格好の標的です。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった脆弱性を狙う攻撃は後を絶たず、その手口はますます巧妙化・自動化しています。

ひとたび攻撃が成功すれば、顧客情報の漏洩による損害賠償や法的責任、サービス停止による機会損失、そして何よりも企業の信用失墜といった、深刻な経営リスクに直結します。このような背景から、Webアプリケーションを保護するWAF(Web Application Firewall)の導入は、事業継続のための必須要件となりつつあります。

そして近年、WAFの導入形態として主流になりつつあるのが「クラウド型WAF」です。従来の自社で機器を導入・運用する「従来型WAF(アプライアンス型/ソフトウェア型)」と比較し、クラウド型WAFには多くのメリットがあるため、多くの企業が導入を検討しています。

しかし、「クラウド」という言葉だけで安易に飛びつくのは危険です。「自社の状況に本当に合っているのか?」「従来型と比べて具体的に何が優れていて、何に注意すべきなのか?」「投資対効果(ROI)は?」といった疑問を解消し、自社のリスクレベルや運用体制、予算に照らして最適な選択をすることが、管理部・決裁者の皆様には求められます。

本記事では、クラウド型WAFの導入を検討されている皆様に向けて、その基本的な仕組みから、経営視点で見た導入メリット、従来型との明確な違い、そして失敗しないための選定基準までを、2025年現在の最新動向も踏まえながら網羅的に解説します。正しい知識に基づき、自社にとって最適なセキュリティ投資判断を行うための一助となれば幸いです。

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月額600円~/1台 ウィルス対策機能
マルウェア対策機能
ファイアウォール
ヒューリスティック分析
デバイス制御 など
Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
  • 全体のセキュリティ強化で日々の業務を維持
  • 持続性の高い脅威を検出修復しAD資格情報の窃盗を防ぐ
  • 一元管理により作業負荷を軽減
要お問い合わせ 脆弱性の修復
デバイス制御
マルウェアの防止
ファイアウォール
分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
  • 不正端末を排除し低コストでセキュリティレベルの向上を実現
  • シンプルなアプライアンス構成のため簡単に導入ができる
  • 2005年の販売開始より、10,000センサー以上の出荷実績あり
オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
不正に接続した端末への通知
未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
  • 高スループット高検知性能で適切なセキュリティ対策を実現
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  • バイパス機能を内蔵し障害時も通信の継続が可能
要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
セキュリティ設定 など
ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
  • 期限延長や契約更新が不要で高いコストパフォーマンスを実現
  • 世界的な第三者機関による性能テストで防御力を高評価
  • 充実の機能とサービスで使いやすさに定評あり
4,950円~
マルウェア検出
メール検査
ファイアウォール
迷惑メール対策
詐欺対策 など
フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
  • 豊富なIPS機能を提供し悪意のあるトラフィックの検知阻止が可能
  • 効率的なアーキテクチャを基盤に、大規模データセンターのパフォーマンスを確実に安定
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要お問い合わせ ネットワーク保護
OT保護
リアルタイム展開
IOT保護
保護ライフサイクル など
NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
  • UTMログ保管インターネット接続高度セキュリティオペレーションをワンストップで提供
  • 安価で簡単なセキュリティ対策が可能
  • オンプレミスの設定をクラウド移行可能
月額38,500円~(税込)
※初期費用110,000円(税込)
ファイアウォール機能
IPS(不正侵入防御)機能
アンチウィルス(アンチマルウェア)機能
アンチスパム機能
Webフィルタリング機能 など
サクサ株式会社 サクサのUTM
  • サイバー攻撃によるデータの破壊や流出から、メール誤送信などのヒューマンエラーまで対策可能
  • セキュリティ状況の見える化で、社内のセキュリティ意識を向上
  • 情報システム担当がいなくても導入運用できる充実したサポート体制
要お問い合わせ Webフィルタリング機能
アンチウイルス機能
迷惑メールブロック機能
侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
  • 世界中の65,000件以上に信頼できるサービスとして選ばれている実績あり
  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
  • 簡単に導入運用が可能でセキュリティの簡素化と強化を実現
要お問い合わせ 脅威防御
SD-WAN
URLフィルタリング
WildFireマルウェア分析
DNSセキュリティ など
Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
  • 脅威分析エンジンと調査チームにより新しい脅威や検出メカニズムを特定
  • IDSを活用してコンプライアンス目標の達成をサポート
要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
トラフィックの公開設定
コンプライアンス目標の支援
脅威警告の優先順位の提供
アプリのマスカレード検出 など

クラウド型WAFとは?基本概念と主なサービス形態

「クラウド型WAF」とは、クラウドコンピューティング基盤を利用して提供されるWAF機能やサービスの総称です。従来のWAFのように、企業が自社内に物理的な機器(アプライアンス)を設置したり、サーバーに専用ソフトウェアをインストールしたりする必要がなく、サービス提供事業者(ベンダー)がクラウド上で管理・運用するWAFを利用する点が最大の特徴です。

基本的な動作原理は、保護対象のWebサイトやWebアプリケーションへのアクセス(HTTP/HTTPS通信)を、まずインターネット上にあるクラウドWAFのプラットフォームに経由させることです。そこで通信内容が詳細に検査され、SQLインジェクションやXSSなどの攻撃パターン、あるいは不正な挙動が検知された場合は、その通信がブロックまたは無害化されます。安全と判断された通信のみが、本来のWebサーバーへ転送され、ユーザーは通常通りサービスを利用できます。この通信誘導には、主にDNS設定の変更や、WAFが代理サーバーとなるリバースプロキシといった技術が用いられます。

クラウド型WAFは、その提供・運用形態によって、大きく以下の二つに分類できます。

  • 1. SaaS型WAF(WAF SaaS): 現在のクラウド型WAFの主流となっている形態です。ベンダーがWAF機能だけでなく、その稼働に必要なインフラ、ソフトウェアの維持管理(アップデート、パッチ適用)、セキュリティルールの更新(シグネチャ更新など)、24時間365日の監視体制までを一つのサービスとして提供します。利用者はWebベースの管理画面から設定変更やレポート確認を行いますが、インフラやソフトウェアの運用管理からは基本的に解放されます。「Software as a Service」の名の通り、ソフトウェアをサービスとして利用するモデルです。
  • 2. IaaS連携型 / マーケットプレイス型WAF: AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといった主要なIaaS(Infrastructure as a Service)プラットフォーム上で提供されるWAF製品を利用する形態です。各クラウドベンダーが提供するネイティブなWAFサービスや、サードパーティベンダーが仮想アプライアンスやソフトウェアとしてマーケットプレイスで提供するWAF製品を、利用者が自身のクラウド環境内に構築・運用します。SaaS型に比べて構成の自由度やカスタマイズ性は高いですが、その分、インフラ設定やWAF自体の運用管理責任は利用者側にあります。

本稿では、特に明記しない限り、多くの企業にとって導入・運用のメリットが大きいSaaS型WAFを中心に「クラウド型WAF」として解説を進めます。この形態が、クラウドの利便性を最も享受できるモデルと言えるでしょう。

導入すべきか?クラウド型WAFがもたらす経営メリット5選

クラウド型WAF(特にSaaS型)は、技術的な利点だけでなく、経営的な観点からも多くのメリットをもたらします。なぜ多くの企業が従来型からクラウド型へ移行、あるいは新規導入でクラウド型を選択するのか、その主な理由を5つに絞って解説します。

  • メリット1:迅速な導入と初期コストの大幅削減
    • スピード: 従来のオンプレミス型WAFでは、機器の選定・調達・設置・設定に数週間から数ヶ月かかることも珍しくありませんでした。クラウド型WAFは、物理的な作業がほとんど不要で、多くの場合DNS設定の変更などにより数日で導入が可能です。これにより、セキュリティ対策を迅速に展開でき、ビジネスチャンスを逃しません。
    • コスト効率: アプライアンス型のような高額な初期投資(ハードウェア購入費など)が不要です。多くは初期費用が無料または低額で、月額・年額の利用料(サブスクリプション)で利用できるため、導入時の財務的負担を大幅に軽減できます。これは、予算化しやすく、特にスタートアップや中小企業にとっては大きな魅力です。コスト構造が変動費(OPEX)中心になる点も特徴です。
  • メリット2:運用管理負荷の劇的な軽減
    • アウトソーシング効果: WAFの運用には、ソフトウェアアップデート、脆弱性パッチ適用、シグネチャ(攻撃パターン定義)の更新、インフラ監視など、専門知識と継続的な工数が必要です。クラウド型WAFでは、これらの運用管理の大部分をサービス提供ベンダーに委託できます。
    • リソースの最適化: これにより、社内のIT担当者やセキュリティ担当者の負荷が大幅に軽減され、より戦略的な業務に集中できます。専門人材の採用や育成コストを抑制できる効果も期待できます。
  • メリット3:ビジネス変化に追随する柔軟な拡張性(スケーラビリティ)
    • 容易なスケール調整: Webサイトへのアクセス数は、事業の成長やキャンペーンなどによって大きく変動します。クラウド型WAFは、クラウド基盤の特性を活かし、トラフィックの増減に合わせて処理能力を柔軟かつ迅速に調整できます。
    • 過剰投資の回避: オンプレミス型のように将来の最大負荷を見越してサイジング(機器の性能決定)する必要がなく、常に最適なリソース量で運用できるため、無駄なコストが発生しにくくなります。
  • メリット4:常に最新のセキュリティレベルを維持
    • 自動アップデート: クラウド型WAFのベンダーは、専門チームが最新の脅威情報を収集・分析し、防御ルールやシグネチャを迅速にサービスへ反映します。利用者は、自動的に最新の防御状態を維持できるため、新たな攻撃手法への対応遅れのリスクを低減できます。
    • 高度な機能: AIを活用した未知の攻撃検知など、先進的なセキュリティ機能もクラウドを通じて提供されやすい傾向にあります。
  • メリット5:DDoS攻撃対策機能の統合
    • 付加価値: 多くのクラウド型WAFサービスには、Webアプリケーション攻撃対策に加え、DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)の緩和機能が標準またはオプションで搭載されています。ベンダーの大規模インフラにより、大量の攻撃トラフィックを効果的に吸収・分散し、サービス停止リスクを低減できます。

これらのメリットにより、クラウド型WAFは、セキュリティ強化と同時に、コスト効率、運用効率、ビジネスの俊敏性向上に貢献する、経営的に合理的な選択肢となり得るのです。

【徹底比較】クラウド型WAF vs 従来型WAF 何が違うのか?

クラウド型WAFの導入を検討する上で、従来のオンプレミス中心のWAF(アプライアンス型、ソフトウェア型)との違いを明確に理解しておくことは非常に重要です。それぞれの特性を知ることで、自社の状況にどちらがより適しているかを客観的に判断できます。ここでは、主要な比較軸に沿って、両者の違いを解説します。

  • 比較軸1:導入コスト
    • クラウド型: 初期費用は低い傾向(特にSaaS型は無料や低額が多い)。ハードウェア購入が不要なため、導入時のまとまった投資を抑えられます。ただし、月額/年額のランニングコスト(利用料、従量課金など)が継続的に発生します。
    • 従来型: 初期費用は高い傾向(アプライアンス機器購入費、ソフトウェアライセンス費など)。ランニングコストは保守費用や運用人件費が主で、クラウド型のような利用料は発生しないことが多いですが、TCO(総保有コスト)で見ると必ずしも安価とは限りません。
  • 比較軸2:導入期間
    • クラウド型: 比較的短い(数日~数週間)。物理的な設置作業がなく、主にDNS設定変更などで導入できるため、スピーディな展開が可能です。
    • 従来型: 比較的長い(数週間~数ヶ月)。機器の選定・調達から設置、ネットワーク設定、テストまで、多くの工程が必要です。
  • 比較軸3:運用管理(負荷・専門知識)
    • クラウド型: 運用負荷は低い傾向(特にSaaS型)。インフラ管理、ソフトウェア更新、シグネチャ管理などはベンダーが実施。利用者はポリシー設定やログ監視が中心となり、高度な専門知識がなくても運用しやすい場合があります。
    • 従来型: 運用負荷は高い傾向。ハードウェア/ソフトウェアの管理、アップデート、チューニング、障害対応などを自社で行う必要があり、専門知識を持つ人材が不可欠です。
  • 比較軸4:カスタマイズ性・柔軟性
    • クラウド型: 制限がある場合も(特にSaaS型)。標準化されたサービスであるため、提供される機能範囲内での利用が基本となります。IaaS連携型の場合は比較的高い柔軟性を持ちます。
    • 従来型: カスタマイズ性は高い。自社のネットワーク構成や独自のセキュリティポリシーに合わせて、詳細な設定やチューニング、独自ルールの実装が可能です。
  • 比較軸5:パフォーマンス・遅延
    • クラウド型: ベンダーのインフラ性能やネットワーク経路に依存します。通信が外部を経由するため、遅延(レイテンシ)が発生する可能性があります。ただし、多くのベンダーは低遅延化技術(エッジコンピューティングなど)を採用しています。
    • 従来型(特にアプライアンス型): 一般的に高性能で低遅延が期待できます。通信が自社ネットワーク内で完結するためです。
  • 比較軸6:拡張性(スケーラビリティ)
    • クラウド型: 容易かつ迅速。クラウドの特性を活かし、トラフィックの増減に合わせてリソースを柔軟に調整できます。
    • 従来型: 事前のキャパシティプランニングが重要となり、リソース拡張には計画的な機器増設やライセンス追加が必要で、時間とコストがかかります。

まとめ: 「手軽さ」「運用負荷軽減」「拡張性」「コスト平準化」を重視するならクラウド型が、「高度なカスタマイズ性」「完全な自社コントロール」「超低遅延」が必須要件なら従来型が候補となり得ます。ただし、近年はクラウド型の性能・機能向上が著しく、多くの企業にとってクラウド型が現実的かつ有力な選択肢となっています。

クラウド型WAF導入の注意点:事前に把握すべきリスクと対策

クラウド型WAFは多くの利点をもたらしますが、導入を成功させるためには、その特性から生じる可能性のある注意点やリスクを事前に理解し、対策を講じておくことが不可欠です。導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、以下の点を考慮しましょう。

  • 注意点1:カスタマイズの制約と適合性 SaaS型を中心とするクラウドWAFは、多くのユーザーに共通のサービスを提供するため、独自の要件に合わせた細かいカスタマイズには限界がある場合があります。非常に特殊なアプリケーションや、厳格な社内セキュリティポリシーがある場合、クラウドWAFの標準機能だけでは対応できない可能性があります。
    • 対策: 導入前に、自社に必要なカスタマイズ要件(特定のルール設定、外部システム連携など)を明確にし、候補となるクラウドWAFサービスがそれに対応可能か、提供される設定オプションの範囲をベンダーに詳細に確認しましょう。トライアル等で実際に試してみることも有効です。
  • 注意点2:パフォーマンス(レイテンシ)への影響評価 通信がベンダーのクラウド基盤を経由するため、ネットワーク経路やWAFの処理によっては遅延が発生し、Webサイトの応答速度に影響を与える可能性があります。
    • 対策: ベンダーが公表しているパフォーマンスデータやSLAを確認するだけでなく、トライアル期間などを利用して、実際のトラフィックに近い状況でパフォーマンス測定を行い、遅延がビジネスやユーザーエクスペリエンスに与える影響が許容範囲内であるかを確認しましょう。特にリアルタイム性が重要なサービスでは必須の評価項目です。
  • 注意点3:ベンダー依存のリスク管理 サービスの安定性や品質は提供ベンダーに依存します。ベンダーの障害やサービス終了は、自社のビジネスに直接的な影響を及ぼすリスクとなります。
    • 対策: ベンダーの信頼性、事業継続性、財務状況、セキュリティ分野での実績などを十分に調査しましょう。SLA(サービス品質保証)の内容、特に障害発生時の対応プロセスや補償内容を契約前にしっかり確認しておくことが重要です。また、特定のベンダーに過度に依存しないよう、将来的な移行の可能性も考慮に入れておくと良いでしょう。
  • 注意点4:データ管理とコンプライアンス遵守 通信ログなどのデータがベンダーの管理下に置かれるため、データの取り扱いポリシーや保管場所について確認が必要です。
    • 対策: データの保管場所(国内/国外)、保管期間、アクセス制御、暗号化の有無などが、自社のセキュリティポリシーや個人情報保護法、GDPRなどの関連法規に適合するかを確認します。特にデータの国外移転には注意が必要です。監査対応に必要なログが適切に取得・保管・提供されるかも重要な確認ポイントです。契約前にこれらの点についてベンダーに明確な回答を求めましょう。
  • 注意点5:想定外のコスト発生リスク クラウドサービスの料金体系、特に従量課金部分は、利用状況によってコストが変動します。
    • 対策: 料金体系(何に対して課金されるか、超過料金の単価など)を正確に理解し、将来的なトラフィック増加なども考慮してコストを試算しましょう。DDoS対策や高度なサポートなど、オプション機能の費用も忘れずに確認し、TCO(総保有コスト)ベースで評価することが重要です。

これらの注意点を踏まえ、事前の調査、評価、ベンダーとのコミュニケーションを十分に行うことが、クラウド型WAF導入の成功確率を高めます。

失敗しないクラウドWAF選び:管理部・決裁者が押さえるべき6つの選定基準

数多くのクラウド型WAFサービスの中から、自社のニーズに本当に合致するものを選ぶためには、表面的な魅力だけでなく、本質的な価値を見極めるための客観的な評価基準が必要です。ここでは、管理部・決裁者の皆様が特に重視すべき「6つの選定基準」を解説します。これらを基に、候補サービスを比較検討してください。

  1. 基準1:防御能力と検知精度 ~本当に守れるか?~ WAFの核心的な価値は、Webアプリケーションを脅威から守る能力です。
    • 対応脅威の網羅性: SQLインジェクションやXSSなど基本的な攻撃はもちろん、OWASP Top 10のような主要な脅威リストにどれだけ対応しているか。API保護、悪性Bot対策、ゼロデイ攻撃への対応(AI/機械学習の活用度)など、自社のリスクに応じた機能があるか。
    • 検知の正確性: 攻撃を確実に見抜く能力(検知率)と、正常な通信を誤って攻撃と判断しない能力(誤検知率の低さ)のバランスが重要です。第三者機関による評価や、トライアルでの検証結果を参考にします。
    • 脅威情報の鮮度: 最新の攻撃手法に対応するため、防御ルール(シグネチャ等)がどれくらいの頻度で、どのように更新されるか。ベンダーの脅威インテリジェンス収集・分析能力も確認します。
    • チューニングの柔軟性: 自社のアプリケーションに合わせて、カスタムルールを作成したり、既存ルールを調整したりできるか。
  2. 基準2:パフォーマンスと可用性(SLA) ~ビジネスを止めないか?~ セキュリティ強化のために、Webサイトの応答速度が低下したり、サービスが停止したりしては本末転倒です。
    • 処理能力と遅延: ピーク時の想定トラフィック量を処理できるか、導入による遅延(レイテンシ)は許容範囲か。ベンダーの提示値だけでなく、実測での確認が望ましいです。
    • SLA(サービス品質保証): サービスの稼働率保証(例: 99.99%)とその算出基準、未達成時の補償内容が明確に規定されているか。
    • 安定稼働のための基盤: サービスのインフラが冗長化されているか、障害発生時の復旧体制(DR)は整備されているか。
  3. 基準3:コスト体系と投資対効果(ROI) ~費用対効果は明確か?~ セキュリティ投資の妥当性を判断するための重要な基準です。
    • 料金の透明性: 初期費用、月額/年額基本料、課金の基準(サイト数、帯域、リクエスト数等)、超過料金、オプション費用などを全て把握し、隠れたコストがないか確認します。
    • TCO(総保有コスト): 数年間の利用を想定した総コストを算出し、サービス間で比較します。
    • ROI(投資対効果): 導入によって低減が期待できるリスク(インシデント発生時の想定損害額等)とTCOを比較し、投資の妥当性を評価します。経営層への説明責任を果たす上でも重要です。
  4. 基準4:運用支援とサポート体制 ~安心して任せられるか?~ 導入後の運用フェーズを見据えた評価が必要です。
    • 運用負荷の軽減度: 管理画面は直感的で使いやすいか。レポート機能は充実しているか。ポリシー設定やチューニングは容易か。
    • サポート品質: 日本語での問い合わせが可能か。サポート窓口の対応時間(24時間365日か)。問い合わせ方法(電話、メール等)と応答速度。導入支援や運用中の技術サポートの内容。
    • マネージドサービスの有無: 専門家による監視、チューニング代行、レポート提供、インシデント対応支援などの運用代行サービスが提供されているか、その内容と費用。
  5. 基準5:セキュリティ・コンプライアンス・データ管理 ~信頼できる基盤か?~ 自社のセキュリティ基準や法規制を満たしているかを確認します。
    • 第三者認証: ISO27001, SOC2などの国際的なセキュリティ認証を取得しているか。
    • データセンターの安全性: データセンターの物理的・論理的なセキュリティ対策レベル。
    • データ管理ポリシー: ログを含むデータの保管場所(国内/国外)、保管期間、暗号化、アクセス制御などが自社の要件や関連法規(個人情報保護法、GDPR等)に適合するか。
  6. 基準6:ベンダーの信頼性と将来性 ~長期的なパートナーとなりうるか?~ サービスの継続性と将来的な発展性を評価します。
    • 企業基盤: ベンダーの経営安定性、事業継続計画(BCP)、セキュリティ分野における実績と専門性。
    • 導入実績: 国内外での導入事例、特に同業種や類似規模の企業での採用状況。
    • 将来性: 新機能の開発計画(ロードマップ)、技術トレンドへの追随、サポート体制の継続性。

これらの基準に基づき、客観的な情報を収集・比較し、自社の優先順位に従って評価することで、最適なクラウド型WAFサービスを選定することが可能になります。

まとめ:自社のニーズを見極め、最適なWAF形態を選択する重要性

本記事では、クラウド時代におけるWebセキュリティの要請に応える「クラウド型WAF」に焦点を当て、その基本的な概念、導入によって得られる経営メリット、そして従来のオンプレミス型WAFとの違いについて詳しく解説しました。

クラウド型WAF、特に主流のSaaS型が提供する「導入の迅速性」「初期コストの抑制」「運用負荷の軽減」「柔軟な拡張性」「最新セキュリティレベルの維持」といったメリットは、多くの企業にとって魅力的であり、合理的な選択肢となり得ます。これにより、限られたリソースの中でも効果的にWebアプリケーションを保護し、ビジネスリスクを低減することが可能になります。

しかしながら、クラウド型WAFが全ての状況において最適解とは限りません。カスタマイズ性の制約やパフォーマンスへの潜在的影響、ベンダーへの依存性、データ管理に関するコンプライアンスなど、事前に考慮すべき点も存在します。

最も重要なのは、「クラウド型」という言葉のイメージだけで判断するのではなく、自社の具体的な状況、すなわち守るべきWebアプリケーションの特性、許容できるリスクレベル、予算規模、社内の運用体制、将来的な事業計画などを総合的に評価することです。その上で、本記事で解説したクラウド型と従来型の違いや、クラウドWAF選定の6つの基準などを参考に、自社にとって最も費用対効果が高く、持続可能な運用が見込めるWAFの導入形態を選択することが求められます。

適切なWAFを選び、継続的に運用していくことは、サイバー攻撃から企業を守るだけでなく、顧客からの信頼を獲得し、安定した事業運営を通じてビジネスの成長を支えるための重要な戦略的投資です。本ガイドが、皆様の賢明な意思決定プロセスの一助となり、より安全なデジタル環境の実現に貢献できれば幸いです。

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