クラウド型XDRの選び方と活用法

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
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はじめに
近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、多くの企業がIaaS、PaaS、SaaSを含むクラウドサービスを活用しています。ビジネスの俊敏性向上やコスト最適化、イノベーション促進といったメリットがある一方で、設定ミスによる情報漏洩やクラウド特有の高度な攻撃、シャドーITの増加、オンプレミスとクラウド混在環境の境界曖昧化など、複雑化したセキュリティリスクが顕在化しています。従来型の境界防御モデルや単一ツールでは対応しきれないため、クラウド型XDR(Extended Detection and Response)が注目を集めています。
クラウド型XDRは、エンドポイント/ネットワーク/クラウドログ/メールなど多層のテレメトリを一元収集し、AI/機械学習による相関分析と自動化ワークフローで、高度な脅威検知と迅速な対応を実現するプラットフォームです。特にBtoB環境では、限られた予算・人員で最大の防御態勢を構築する必要があり、クラウドで提供されるXDRは初期投資ゼロで導入でき、スケーラビリティと定常的な機能アップデートが魅力です。
本稿前半では、管理部・決裁者層に向けて、クラウド型XDRの基本概念と他ツールとの違い、および導入メリットを整理します。後半では、製品選定の7大ポイントと運用ベストプラクティスを解説しますので、まずは本節でXDRクラウドの価値を明確に理解してください。
おすすめの不正侵入検知サービス一覧
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会社名 | サービス名 | 特長 | 費用 | 主なサービス |
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株式会社サイバーセキュリティクラウド
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攻撃遮断くん |
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1サイト月額11,000円~ ※別途、初期導入費用がかかる お問い合わせ |
攻撃検知AIエンジン搭載 サイバー攻撃対策 サイバー保険付帯 |
株式会社AndGo
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Aikido Security |
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ベーシック:52,500円/月 プロ:105,000円/月 カスタム:要お問い合わせ |
Webアプリケーション診断 プラットフォーム診断 クラウド診断 手動脆弱性診断 伴走サポート |
株式会社スリーシェイク
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Securify(セキュリファイ) |
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ASMプラン:お見積り BASICプラン:10万円/月額 STARTERプラン:5万円/月額 Freeプラン:0円/月額 ※契約は年単位 お問い合わせ |
ASM Webアプリケーション診断 Wordpress診断 SaaS診断 |
トレンドマイクロ株式会社 | TippingPoint |
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要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
株式会社東計電算 | Total Security Function Service |
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月額600円~/1台 | ウィルス対策機能 マルウェア対策機能 ファイアウォール ヒューリスティック分析 デバイス制御 など |
Broadcom Inc. | Symantec Endpoint Security |
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要お問い合わせ | 脆弱性の修復 デバイス制御 マルウェアの防止 ファイアウォール 分析・調査 など |
エクスジェン・ネットワークス株式会社 | L2Blocker |
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オンプレミス版:25,000円~ クラウド版:月額3,000円~ |
社内端末の管理機能 利用状況の可視化 不正に接続した端末への通知 未登録機器の利用申請 レポート分析 など |
株式会社セキュアソフト | SecureSoft Sniper IPS |
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要お問い合わせ | リアルタイムモニター 統合報告書 システム監査 環境設定 セキュリティ設定 など |
ソフォス株式会社 | Sophos Firewall |
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要お問い合わせ | ディープパケットインスペクション ゼロデイ対策 SD-WAN接続 セグメンテーション機能 レポート機能 など |
株式会社IDCフロンティア | 不正侵入検知/防御サービス |
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要お問い合わせ | 検知レポート 機器監視 設定管理 故障時機器交換 変更監視 など |
ソースネクスト株式会社 | ZERO スーパーセキュリティ |
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4,950円~ |
マルウェア検出 メール検査 ファイアウォール 迷惑メール対策 詐欺対策 など |
フォーティネットジャパン合同会社 | FortiGuard IPS |
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要お問い合わせ | ネットワーク保護 OT保護 リアルタイム展開 IOT保護 保護ライフサイクル など |
NTTスマートコネクト株式会社 | クラウド型UTM |
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月額38,500円~(税込) ※初期費用110,000円(税込) |
ファイアウォール機能 IPS(不正侵入防御)機能 アンチウィルス(アンチマルウェア)機能 アンチスパム機能 Webフィルタリング機能 など |
サクサ株式会社 | サクサのUTM |
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要お問い合わせ | Webフィルタリング機能 アンチウイルス機能 迷惑メールブロック機能 侵入検知・防止機能 |
パロアルトネットワークス株式会社 | PA-SERIES |
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要お問い合わせ | 脅威防御 SD-WAN URLフィルタリング WildFireマルウェア分析 DNSセキュリティ など |
Google LLC | Google Cloud IDS |
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要お問い合わせ | ネットワークベースの脅威検出 トラフィックの公開設定 コンプライアンス目標の支援 脅威警告の優先順位の提供 アプリのマスカレード検出 など |
クラウド型XDRとは?
クラウド型XDRは、SaaS形式の提供モデルを前提とし、以下の特徴を兼ね備えます。
- 多層テレメトリの一元収集
- エンドポイント(Windows/Linux/Mac)
- ネットワーク機器ログ(FW/VDI/ロードバランサ)
- クラウドログ(AWS CloudTrail/Azure Monitor/GCP Audit)
- メールセキュリティログ
- エンドポイント(Windows/Linux/Mac)
- 相関分析エンジン
- AI/機械学習による振る舞い分析
- シグネチャ・IOC相関でステルス攻撃を可視化
- AI/機械学習による振る舞い分析
- 自動化ワークフロー
- アラートの優先度付けからチケット自動発行
- エンドポイント隔離・通信遮断などの即時対応
- アラートの優先度付けからチケット自動発行
- クラウドスケーラビリティ
- ログ量急増時も自動スケールで安定動作
- ログ量急増時も自動スケールで安定動作
- 継続的アップデート
- 最新の脅威インテリジェンスをベンダー管理で常時更新
- 最新の脅威インテリジェンスをベンダー管理で常時更新
従来型ツールとの違い
- オンプレミスXDR/EDR:エージェント中心でエンドポイント検知が主目的。クラウド検知はオプションが多い。
- SIEM:ログ集約・可視化に強み。検知後の自動対応は限定的。
- CSPM/CWPP:設定ミス検知やワークロード保護に特化。XDRはこれらを包含・連携し、検知から対応まで一連で実現。
これにより、クラウド型XDRはハイブリッド/マルチクラウド環境全体の可視化から、未知脅威への高度検知、自動化対応までを一貫して実現できる点が最大の強みです。
クラウド型XDR導入のメリット
管理部・決裁者が投資対効果を評価する際、以下の3大メリットに着目してください。
1 高度な脅威検知と誤検知低減
- 相関分析で複数ソースのアラートを統合し、真の攻撃シグナルを抽出
- AI振る舞い分析で未知マルウェアや侵害後の潜伏活動を検出
- 誤検知率50%削減により、運用負荷を大幅軽減
2 運用効率化とコスト最適化
- アラート対応からチケット発行・隔離までを自動化し、SOC作業工数を30~50%削減
- 初期インフラ不要のSaaSモデルで導入コストゼロ
- ベンダー運用で運用保守コストを定額化
3 迅速かつ柔軟なスケーラビリティ
- ログ増加・拠点拡大にも数クリックでリソース追加
- 10拠点→100拠点への運用拡張が容易
これらを実現することで、管理部門はROI最大化を果たし、経営層に対しても定量的指標(検知改善率・工数削減率・システム稼働率)を示しやすくなります。
クラウド型XDRの選び方7大ポイント
クラウド型XDRを選定する際は、以下7つの視点で比較・評価し、自社環境に最適なソリューションを見極めてください。
1 データソース網羅性
- クラウドネイティブログ(AWS CloudTrail、Azure Activity Log、GCP Audit Logs、VPC Flow Logs)
- ワークロード保護(仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数)
- 認証/ID管理ログ(AD、IDaaS、OAuthトークン利用履歴)
- メールセキュリティ(SMTP/MXログ)
- オンプレミスログ連携(EDR、FW、Proxy、SIEM)
→すべての脅威データが取り込まれなければ、可視化精度が低下します
2 クラウド脅威検知能力
- クラウド特化ルール:MITRE ATT&CK for Cloudに沿った検知シナリオ
- CSPM機能:設定ミス(パブリックS3、過剰権限IAM)の自動検知
- CWPP連携:ワークロード上のマルウェア・脆弱性検知
- AI/MLエンジン:未知脅威の振る舞いおよび異常検知
→高精度な検出で誤検知を抑制し、重要アラートに集中可能
3 統合/連携性
- SIEMとの双方向連携:長期ログ保管とコンプライアンスレポート
- SOAR自動化:インシデント対応Playbook自動実行
- チケット連携:ServiceNow、JIRA、Zendesk等への自動チケット発行
- MDR/MSSP連携:外部セキュリティ運用支援との情報共有
→既存投資を活かし、エコシステム全体で高度運用を実現
4 スケーラビリティとパフォーマンス
- ログ量急増対応:ピーク時の分析遅延を最小化
- ルール・シグネチャ上限:無制限追加が可能か
- 分散拠点対応:国内外拠点からのログ転送遅延を抑制
→成長フェーズの利用拡大にも運用負荷なくスケール
5 自動化レスポンス機能
- クラウドAPI連携:セキュリティグループ変更、インスタンス隔離、IAMロール一時停止
- 対応ワークフロー:低リスクは通知/チケットのみ、高リスクは隔離+遮断+通知
- プレイブックの柔軟性:承認フローを含めた段階的自動化
→対応速度を飛躍的に向上し、人為ミスを抑制
6 データ管理・コンプライアンス
- リージョン選択:データレジデンシー要件を満たす地理的保存
- 暗号化とアクセス制御:保存時/転送時の暗号化およびIAM統制
- 保持期間設定:業界規制/社内ポリシーに応じたログ保持
- 第三者認証:ISO27001、SOC2 Type2、PCI DSSなどを取得
→規制業種でも安心して利用可能
7 TCOとサポート体制
- 課金モデル:ログ量ベース、エージェント台数ベース、ユーザー数ベース
- 付帯コスト:データ転送Egress料金、追加インジェスト料金
- 日本語サポート可否:24時間対応、オンサイト支援オプション
- ロードマップ開示:SaaS連携/新機能追加計画の透明性
→長期的なコスト予測と安定稼働を担保
クラウド型XDRの活用法と運用ポイント
導入後に即効性を得て、効果を最大化するための5つの実践ポイントを紹介します。
継続的チューニングサイクル
- 月次誤検知レビュー:ノイズパターンをチームで分析
- 翌週ルール更新:アジャイルに検知ロジックを反映
- KPIダッシュボード:検知件数、誤検知率、対応時間を可視化
→運用初期のアラート疲れを防ぎ、検知精度を維持
CSPM/CWPP連携によるプロアクティブ対策
- CSPM:過剰権限IAM、公開ストレージなどを設定前段階で修正
- CWPP:ワークロード上の脆弱性/マルウェアをリアルタイム検知
→インシデント発生前にリスクを低減し、検知コストを削減
脅威シナリオベースユースケースの定義
- 機密データ不正アクセス:S3、Blob等への異常なGET/PUT
- 認証情報悪用:不審なアクセス元IP、サービスアカウントの不正利用
- クリプトジャッキング:CPU負荷急増、ポートスキャン検知
- コンテナ攻撃:Kubernetes Audit Logsで異常API呼び出し
→自社環境特有の脅威を踏まえ、優先順位を付けてチューニング
段階的自動化導入
- フェーズ1:通知・チケット発行自動化で運用負荷軽減
- フェーズ2:仮想マシン隔離、スナップショット取得など可逆アクション自動化
- フェーズ3:ネットワーク遮断、プロセス強制終了など強力アクション自動化
→誤作動リスクを低減しつつ自動化を進め、信頼度を向上
環境変化への継続的追従
- 定期レビュー:開発/IT部門と協働し、新規サービスや構成変更をXDR設定に反映
- 自動検出:Service Discovery連携で新リソースを自動登録
- 訓練演習:四半期ごとに模擬インシデント演習を実施し、対応手順を改善
→常に最新のIT環境をカバーし、XDR運用のドリフトを防止
導入時の注意点と考慮事項
クラウド型XDRの導入・運用にあたっては、以下の5つの落とし穴を事前に回避しましょう。
- マルチクラウド/ハイブリッドの複雑性
- 環境ごとに異なるAPI仕様・データ形式を正規化する設計コスト
- セキュリティポリシーの一元管理と適用漏れ防止のための運用ルール
- 環境ごとに異なるAPI仕様・データ形式を正規化する設計コスト
- データ量増加とコスト管理
- すべてのログ取り込みによるIngestion料金増
- クラウドプロバイダのEgress料金発生リスク
- 必要データ選定とコスト監視ツールの併用が必須
- すべてのログ取り込みによるIngestion料金増
- 専門スキル不足
- クラウド/脅威分析スキルを持つ人材育成 or MDR外部委託
- XDRプラットフォーム操作研修と脅威ハンティング演習の実施
- クラウド/脅威分析スキルを持つ人材育成 or MDR外部委託
- アラートチューニング負荷
- 動的環境で誤検知が多発しやすく、継続的なルール調整が必要
- 自動チューニング機能の活用と手動確認プロセスの設計
- 動的環境で誤検知が多発しやすく、継続的なルール調整が必要
- API制限とベンダーロックイン
- Rate Limit超過によるデータ欠落・機能停止リスク
- ベンダー依存度を下げるため、標準API連携とExport機能を重視
- Rate Limit超過によるデータ欠落・機能停止リスク
まとめ(400~500字)
本稿後半では、クラウド型XDRの7大選定ポイントと5つの活用法・運用ポイント、および導入時の注意点を解説しました。選定では、データソース網羅性、クラウド脅威検知精度、他ツール連携、自動レスポンス機能、スケーラビリティ、データ管理、TCO/サポートの7視点が不可欠です。導入後は、継続的なチューニングサイクル、CSPM/CWPP連携、脅威シナリオベースチューニング、段階的自動化、環境変化追従を実践し、効果を最大化しましょう。さらに、マルチクラウドの複雑性、データコスト、専門スキル不足、アラート負荷、API制限といった5つの落とし穴を事前に回避することで、スムーズな導入運用が可能です。管理部・決裁者層の皆様は、本稿をもとに要件定義シート作成→PoC→ROIシミュレーション→本番導入のロードマップを策定し、クラウド時代のセキュリティ戦略を加速してください。