XDR導入で実現する次世代セキュリティ:メリット・効果と失敗しない選定ポイント【決裁者向け】

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
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はじめに:なぜ今、セキュリティ対策に「XDR」が求められるのか?
現代のビジネス環境において、サイバー攻撃はもはや対岸の火事ではありません。ランサムウェアによる事業停止、機密情報の窃取と漏洩、サプライチェーンを悪用した間接的な攻撃など、その手口はますます巧妙化・悪質化しており、企業規模を問わず深刻な経営リスクとなっています。多くの企業では、ファイアウォールやアンチウイルスソフトに加え、EDR(Endpoint Detection and Response)といった先進的な対策を導入していますが、それでもなお、高度な攻撃を防ぎきれないケースが後を絶ちません。その背景には、いくつかの構造的な課題が存在します。第一に、セキュリティ製品のサイロ化です。エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど、各領域で導入されたセキュリティ製品がそれぞれ独立して動作し、収集した情報が分断されているため、複数の領域にまたがる巧妙な攻撃の全体像を捉えることが困難になっています。第二に、アラートの洪水と運用負荷の増大です。各製品から日々大量のアラートが発せられますが、その多くは誤検知であったり、単体では重要度が判断できなかったりするため、セキュリティ担当者は膨大なアラートのトリアージ(優先順位付け)に追われ疲弊しています。結果として、本当に危険な兆候を見逃してしまうリスクも高まります。第三に、深刻なセキュリティ人材不足です。これらの高度なセキュリティ製品を適切に運用し、インシデントに対応できる専門知識を持った人材は市場全体で不足しており、多くの企業で十分な運用体制を構築できていないのが実情です。このような従来の「個別最適」なセキュリティ対策の限界と課題を克服し、より統合的かつ効率的なアプローチで脅威に対抗する新しい概念・ソリューションとして、「XDR(Extended Detection and Response)」が急速に注目を集めています。XDRは、組織全体のセキュリティ情報を横断的に収集・分析し、脅威の検知から対応までを包括的に強化することで、セキュリティ運用のレベルを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。本記事では、企業のセキュリティ戦略やIT投資の意思決定を担う管理部門や決裁者の皆様が、XDRの本質的な価値を理解し、導入を検討する上で必要な経営メリット、選定のポイント、そして導入・運用における注意点について、ビジネスの視点から分かりやすく解説します。XDRへの正しい理解が、貴社のセキュリティリスクを低減し、将来にわたる事業継続性を確保するための重要な鍵となるでしょう。
おすすめの不正侵入検知サービス一覧
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会社名 | サービス名 | 特長 | 費用 | 主なサービス |
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株式会社サイバーセキュリティクラウド
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攻撃遮断くん |
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1サイト月額11,000円~ ※別途、初期導入費用がかかる お問い合わせ |
攻撃検知AIエンジン搭載 サイバー攻撃対策 サイバー保険付帯 |
株式会社AndGo
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Aikido Security |
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ベーシック:52,500円/月 プロ:105,000円/月 カスタム:要お問い合わせ |
Webアプリケーション診断 プラットフォーム診断 クラウド診断 手動脆弱性診断 伴走サポート |
株式会社スリーシェイク
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Securify(セキュリファイ) |
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ASMプラン:お見積り BASICプラン:10万円/月額 STARTERプラン:5万円/月額 Freeプラン:0円/月額 ※契約は年単位 お問い合わせ |
ASM Webアプリケーション診断 Wordpress診断 SaaS診断 |
トレンドマイクロ株式会社 | TippingPoint |
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要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
株式会社東計電算 | Total Security Function Service |
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月額600円~/1台 | ウィルス対策機能 マルウェア対策機能 ファイアウォール ヒューリスティック分析 デバイス制御 など |
Broadcom Inc. | Symantec Endpoint Security |
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要お問い合わせ | 脆弱性の修復 デバイス制御 マルウェアの防止 ファイアウォール 分析・調査 など |
エクスジェン・ネットワークス株式会社 | L2Blocker |
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オンプレミス版:25,000円~ クラウド版:月額3,000円~ |
社内端末の管理機能 利用状況の可視化 不正に接続した端末への通知 未登録機器の利用申請 レポート分析 など |
株式会社セキュアソフト | SecureSoft Sniper IPS |
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要お問い合わせ | リアルタイムモニター 統合報告書 システム監査 環境設定 セキュリティ設定 など |
ソフォス株式会社 | Sophos Firewall |
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要お問い合わせ | ディープパケットインスペクション ゼロデイ対策 SD-WAN接続 セグメンテーション機能 レポート機能 など |
株式会社IDCフロンティア | 不正侵入検知/防御サービス |
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要お問い合わせ | 検知レポート 機器監視 設定管理 故障時機器交換 変更監視 など |
ソースネクスト株式会社 | ZERO スーパーセキュリティ |
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4,950円~ |
マルウェア検出 メール検査 ファイアウォール 迷惑メール対策 詐欺対策 など |
フォーティネットジャパン合同会社 | FortiGuard IPS |
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要お問い合わせ | ネットワーク保護 OT保護 リアルタイム展開 IOT保護 保護ライフサイクル など |
NTTスマートコネクト株式会社 | クラウド型UTM |
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月額38,500円~(税込) ※初期費用110,000円(税込) |
ファイアウォール機能 IPS(不正侵入防御)機能 アンチウィルス(アンチマルウェア)機能 アンチスパム機能 Webフィルタリング機能 など |
サクサ株式会社 | サクサのUTM |
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要お問い合わせ | Webフィルタリング機能 アンチウイルス機能 迷惑メールブロック機能 侵入検知・防止機能 |
パロアルトネットワークス株式会社 | PA-SERIES |
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要お問い合わせ | 脅威防御 SD-WAN URLフィルタリング WildFireマルウェア分析 DNSセキュリティ など |
Google LLC | Google Cloud IDS |
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要お問い合わせ | ネットワークベースの脅威検出 トラフィックの公開設定 コンプライアンス目標の支援 脅威警告の優先順位の提供 アプリのマスカレード検出 など |
XDR(Extended Detection and Response)とは何か? ~EDRやSIEMとの本質的な違い~
XDR、すなわち「Extended Detection and Response(拡張された検知と対応)」は、近年セキュリティ分野で注目されている新しいアプローチ、またはそれを実現するソリューション群を指します。従来のセキュリティ対策が、エンドポイント(PCやサーバー)、ネットワーク、クラウドといった個別の領域(点)を守ることに主眼を置いていたのに対し、XDRはこれらの複数の領域(点)を繋ぎ合わせ、「面」として統合的に監視・防御することを目指します。その核心的なコンセプトは「統合」と「自動化」にあります。具体的には、以下のような特徴を持ちます。
- 広範なデータ収集: エンドポイント(EDRが収集するデータを含む)、ネットワーク機器(ファイアウォール、IDS/IPS等)、クラウド環境(IaaS/PaaS/SaaS)、メールシステム、ID管理システムなど、組織内の様々なセキュリティ関連ソースから、ログやイベント情報、テレメトリ(稼働状況データ)を自動的に収集・集約します。
- 高度な相関分析: 集約した膨大なデータを、単一のプラットフォーム上でAI(人工知能)や機械学習(ML)を活用して横断的に相関分析します。これにより、個別の製品のアラートだけでは見過ごされがちな、複数の領域にまたがる巧妙な攻撃(例:メール経由で侵入し、内部ネットワークで横展開し、最終的にクラウド上のデータを狙う攻撃など)の兆候や全体像を、より高い精度で早期に検知することが可能になります。
- 効率化・自動化された対応: 脅威を検知した後、関連情報の収集、影響範囲の特定、根本原因の分析といったインシデント調査プロセスを効率化します。さらに、事前に設定されたルールや対応手順(プレイブック)に基づき、感染端末のネットワークからの隔離、不正な通信の遮断、悪意のあるプロセスの停止といった対応措置を自動または半自動で実行する機能も備えています。これにより、インシデント対応に要する時間を劇的に短縮し、被害の拡大を最小限に食い止めることを目指します。 ここで、類似のソリューションであるEDRやSIEMとの違いを理解しておくことが重要です。
- EDR vs XDR: EDRは「エンドポイント」に特化した検知・対応ソリューションです。XDRはEDRの機能を包含しつつ、それをネットワーク、クラウド、メールなどより広範な領域に「拡張(Extended)」し、統合的な分析・対応を行う点で異なります。
- SIEM vs XDR: SIEMは主に様々なソースからの「ログ収集・管理・分析」に重点を置いたプラットフォームであり、脅威検知も可能ですが、対応機能は限定的です。XDRは、SIEMほど広範なログ管理機能は持たないことが多いですが、脅威の「検知」と「対応」により特化し、より自動化されたアクションを実行する能力を持ちます。しばしばXDRはSIEMと連携して利用されます。 決裁者の皆様にとっては、XDRは「バラバラだったセキュリティ情報を一つにまとめ、AIが脅威を見つけ出し、迅速かつ自動で対処してくれる、より賢く効率的なセキュリティシステム」と捉えることができます。これにより、複雑化する脅威に対して、より効果的かつ効率的な防御体制を構築することが期待されます。
なぜ導入すべきか? XDRがもたらす経営レベルのメリット
XDRの導入は、単に新しいセキュリティツールを増やすことではありません。それは、企業のセキュリティ体制と運用プロセスに変革をもたらし、経営レベルで測定可能なメリットを生み出す可能性を秘めた戦略的投資です。決裁者の皆様がXDR導入を検討する上で理解すべき、主な経営メリットを4つの観点から解説します。
1. 事業継続性の強化とインシデント被害額の最小化: 巧妙化するサイバー攻撃、特にランサムウェア攻撃などは、一度侵入を許すと業務システムを停止させ、復旧に莫大なコストと時間を要し、企業の事業継続性を著しく脅かします。XDRは、エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど複数の監視ポイントからの情報を統合・相関分析することで、潜行型の攻撃や複数経路を利用する複雑な攻撃の兆候を早期に捉える能力が格段に向上します。これにより、インシデントの発生を未然に防ぐ、あるいは発生しても被害が深刻化する前に検知・対応することが可能になります。結果として、事業停止期間の短縮、復旧コストの削減、データ損失の最小化に繋がり、企業の事業継続計画(BCP)の実効性を大幅に高めます。これは、企業の存続に関わるリスクを低減する上で極めて重要なメリットです。
2. インシデント対応コストの大幅な削減: セキュリティインシデントが発生した場合、その対応には多大なコストがかかります。原因調査、影響範囲の特定、システムの復旧、再発防止策の策定、そして場合によっては外部専門家(フォレンジック調査、法律顧問など)への依頼費用も発生します。XDRは、関連情報の自動収集、AIによる分析支援、対応措置の自動化・半自動化といった機能により、インシデント対応プロセス全体を大幅に迅速化・効率化します。従来、人手で数日かかっていた調査・対応が数時間、あるいは数分で完了するケースも期待できます。この対応時間の短縮は、そのまま人件費を中心とした対応コストの削減に直結します。
3. セキュリティ運用体制の効率化と人材不足問題の緩和: 多くの企業で、セキュリティ担当者は日々発生する膨大な量のアラートの処理に追われています。XDRは、AIなどを活用してアラートの精度を高め、誤検知を削減するとともに、関連性の高いアラートをインシデントとして自動的に集約し、対応の優先順位付けを支援します。これにより、担当者は本当に重要な脅威への対応に集中できるようになります。また、調査や対応の自動化機能は、担当者の作業負荷を大幅に軽減します。これは、慢性的なセキュリティ人材不足に悩む企業にとって大きな福音であり、限られたリソースでもセキュリティ運用の質を維持・向上させることを可能にします。
4. セキュリティ投資全体の最適化(TCO削減の可能性): 企業は様々な個別セキュリティ製品を導入・運用していますが、それぞれのライセンス費用や管理・運用コストは決して小さくありません。XDRは、これらの複数の製品の機能を統合・連携させるアプローチを取るため、機能が重複する製品の見直しや、より効率的なライセンス体系への移行などを通じて、セキュリティ関連の総所有コスト(TCO)を最適化できる可能性があります。もちろんXDR自体のコストは考慮する必要がありますが、インシデント被害の削減効果や運用効率化によるコスト削減効果と合わせて評価することで、全体として費用対効果の高い投資となることが期待されます。これにより、企業はセキュリティ予算をより効果的に活用し、継続的な防御力強化を図ることができます。
これらの経営メリットは、XDRが単なる技術的なソリューションではなく、企業の持続的な成長と安定を支えるための重要な経営戦略ツールとなり得ることを示しています。
XDR導入を成功させるための選定ポイントと比較基準【決裁者視点】
XDRソリューションは急速に進化しており、多くのベンダーが多様な製品・サービスを提供しています。自社の環境とニーズに合致し、期待される効果を確実に得るためには、導入前の慎重な比較検討と選定が不可欠です。IT・セキュリティ部門からの提案を評価し、最終的な投資判断を行う決裁者の皆様が、特に押さえておくべき選定ポイントと比較基準を以下に示します。技術的な詳細よりも、ビジネス上の影響や運用面での考慮事項に焦点を当てます。
1. 自社のセキュリティ課題と保護対象範囲への適合性:
- 何を解決したいか?: まず、XDR導入によって解決したい最も重要なセキュリティ課題(例:ランサムウェア対策強化、クラウドセキュリティの可視化、アラート疲れの解消、インシデント対応迅速化など)を明確にします。
- どこを守りたいか?: エンドポイント、ネットワーク、クラウド(どのクラウドサービスか)、メール、IDなど、自社にとって保護すべき重要な領域(データソース)を特定し、検討しているXDRソリューションがそれらを十分にカバーしているかを確認します。将来的な拡張計画も考慮に入れる必要があります。
2. 脅威検知と分析能力の信頼性:
- 検知精度: 未知の脅威や巧妙な攻撃をどれだけ正確に検知できるか。AI/機械学習の活用実績や、第三者評価機関によるテスト結果なども参考にします。誤検知が多すぎると運用負荷が増大するため、誤検知率の低さも重要です。
- 脅威インテリジェンス: 最新の脅威情報(攻撃手法、脆弱性情報など)をどれだけ迅速かつ広範に収集・活用しているか。質の高いインテリジェンスは検知能力の基盤となります。
- 分析能力: 収集した情報をどれだけ深く、かつ横断的に相関分析し、攻撃の全体像や根本原因を分かりやすく可視化できるか。
3. 対応と自動化機能の実用性:
- 自動化の範囲とレベル: 検知後の対応(端末隔離、通信遮断など)をどの程度自動化できるか。全て自動化するのではなく、管理者の承認を経て実行する半自動化など、運用に合わせた柔軟な設定が可能か。
- 対応シナリオ(Playbook): 事前に定義された対応手順をカスタマイズしたり、自社独自のシナリオを作成したりできるか。実運用に即した柔軟性が重要です。
4. 既存環境との連携・統合の容易さ:
- 連携オプション: 現在利用している主要なセキュリティ製品(特にEDR)やクラウドサービス、ネットワーク機器などとスムーズに連携できるか。APIの提供状況や連携実績を確認します。
- ネイティブ vs オープン: 同一ベンダー製品で固めるネイティブXDR(連携容易性・最適化)と、複数ベンダー製品と連携するオープンXDR(柔軟性・選択肢の広さ)のどちらが自社のIT戦略や将来計画に合致するか検討します。ベンダーロックインのリスクも考慮が必要です。
5. 運用管理の負担と必要なスキルレベル:
- 操作性: 管理画面(ダッシュボード)は直感的で分かりやすく、セキュリティ担当者が特別なトレーニングなしでもある程度操作できるか。日本語対応は万全か。
- レポート機能: 経営層への報告や監査対応に必要なレポートが容易に作成・カスタマイズできるか。
- 必要なスキル: XDRを効果的に運用するために求められるスキルレベルはどの程度か。自社の人材で対応可能か、あるいはMDRサービス等の外部委託が必要かを見極めます。
6. ベンダーのサポート体制と信頼性:
- サポート内容: 導入時の支援、運用開始後の技術サポート(対応時間、日本語対応)、インシデント発生時の緊急サポートなどは十分か。
- ベンダー評価: XDR分野における実績、技術力、市場での評価、将来性(ロードマップ)などを確認し、長期的なパートナーとして信頼できるか評価します。
7. トータルコスト(TCO)と費用対効果(ROI):
- コスト全体像: 初期費用、ライセンス費用(課金体系を確認)、保守費用、運用に関わる人件費(または外部委託費)を含めた総所有コスト(TCO)を把握します。
- ROI評価: 算出したTCOに対し、期待されるリスク低減効果(インシデント被害額の削減予測)や運用効率化効果(工数削減)などを可能な限り定量的に評価し、投資対効果を判断します。
これらのポイントに基づき、複数の候補を比較検討し、必要であればPoC(概念実証)などを実施した上で、自社にとって最適なXDRソリューションを選定することが、導入成功の鍵となります。
XDR導入・運用で注意すべき点と成功へのヒント
XDRはセキュリティ体制を大きく前進させる可能性を秘めていますが、その導入と運用にはいくつかの注意点が存在します。これらを事前に理解し、対策を講じることが、導入効果を確実に引き出し、「期待外れ」に終わらせないために重要です。決裁者としても把握しておくべきポイントと、成功へのヒントを以下に示します。
【注意点1】XDR運用には専門知識と体制が必要 XDRは高度な分析結果を提供しますが、その情報を解釈し、ビジネス影響を考慮した上で最終的な対応判断を下すには、セキュリティに関する専門知識と経験が求められます。「ツールを導入すれば終わり」ではなく、分析・対応できる人材の育成や、インシデント発生時に迅速に行動できる運用体制(CSIRT等)の整備が不可欠です。社内リソースだけでの対応が難しい場合は、早い段階からMDR(Managed Detection and Response)サービスのような外部の専門家による運用支援サービスの活用を検討することが現実的な解となる場合も多いです。
【注意点2】既存システムとの連携は必ずしも容易ではない 特に複数ベンダーの製品を組み合わせる「オープンXDR」の場合、各システム間のデータ連携設定、API連携、分析ルールの最適化(チューニング)など、導入・統合プロセスが複雑化し、想定以上の時間と工数がかかる可能性があります。連携実績の豊富なベンダーや経験豊富なインテグレーションパートナーの選定、そして導入前の綿密な連携設計と検証(PoCなど)が重要になります。
【注意点3】XDRは万能ではない!基本的な対策との組み合わせが前提 XDRは脅威の「検知」と「対応」を強化するものであり、脅威の「侵入」を完全に防ぐものではありません。また、全ての攻撃を100%検知できるわけでもありません。OSやソフトウェアの脆弱性を放置しない(パッチ管理)、不要なポートを閉じる、アクセス権限を適切に管理する、従業員へのセキュリティ教育を徹底するといった基本的なセキュリティ対策(セキュリティハイジーン)が疎かになっていては、XDRの効果も限定的になります。XDRは、これらの基本的な対策と組み合わせることで真価を発揮することを理解しておく必要があります。
【注意点4】ベンダー選定とロックインのリスク 「ネイティブXDR」は導入や連携が比較的容易ですが、特定のベンダー製品への依存度が高まり、将来的に他の優れたソリューションへ乗り換えにくくなる「ベンダーロックイン」のリスクを伴います。一方で「オープンXDR」は柔軟性が高いものの、連携の複雑さやサポート窓口が複数になる可能性があります。どちらのアプローチを選択するにしても、自社の長期的なIT戦略や、将来的な選択肢の確保という視点も持って検討することが重要です。
【成功へのヒント】
- 目的とスコープの明確化: まずはXDR導入で最も解決したい課題と、最初に適用する範囲(スモールスタート)を明確に定義します。
- PoC(概念実証)の実施: 本格導入前に、自社環境で候補製品をテストし、有効性(検知能力、誤検知率)、運用負荷、既存システムとの連携などを具体的に評価します。これにより、導入後のギャップを最小化できます。
- 段階的な導入と拡張: 最初から大規模導入を目指すのではなく、重要システムやリスクの高い領域から段階的に導入し、効果を確認しながら適用範囲を広げていくアプローチが現実的です。
- 運用体制の事前検討: 自社運用か外部委託(MDR)かを含め、XDR導入後の運用体制を具体的に計画しておきます。必要なスキルセットや人員、プロセスを定義します。
- 継続的な評価と改善: 導入後も、定期的にKPI(重要業績評価指標)を測定し、検知ルールのチューニングや運用プロセスの見直しを行う改善サイクルを確立します。
これらの点を考慮し、計画的かつ段階的に導入・運用を進めることが、XDR投資の効果を最大化し、持続的なセキュリティ強化を実現するための道筋となります。
まとめ:XDRによるプロアクティブ・セキュリティへの転換
巧妙化・複雑化する一方のサイバー攻撃に対し、従来の個別的なセキュリティ対策では限界が見えています。情報システムが企業の生命線となる現代において、セキュリティ体制の強化は喫緊の経営課題です。この課題に対する有力な解決策として、XDR(Extended Detection and Response)は、組織全体のセキュリティレベルを飛躍的に向上させる可能性を秘めた、次世代の統合セキュリティアプローチです。
XDRは、エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メールなど、これまでサイロ化されていた複数のセキュリティレイヤーからの情報を集約・相関分析することで、単一の製品では見逃しがちだった高度な脅威を早期に検知します。さらに、AIや自動化技術を活用することで、インシデント対応を迅速化・効率化し、セキュリティ運用担当者の負担を大幅に軽減します。これらの効果は、事業継続性の確保、インシデント対応コストの削減、セキュリティ人材不足への対応、そしてセキュリティ投資全体の最適化といった、具体的な経営メリットに繋がります。
しかし、XDR導入を成功させるためには、そのメリットだけでなく、適切な運用体制とスキルの必要性、既存システムとの連携の考慮、基本対策の重要性といった注意点を理解し、自社の状況に最適なソリューションを戦略的に選定することが不可欠です。製品機能だけでなく、ベンダーの信頼性やサポート体制、そしてTCO(総所有コスト)を含めた費用対効果を総合的に評価する視点が求められます。
XDRの導入は、単なるツール更新ではなく、脅威が発生してから対処する「リアクティブ」なセキュリティ運用から、脅威の兆候を早期に捉え、先回りして対処する「プロアクティブ」な運用への転換を促します。これは、変化し続ける脅威環境に対応し、企業の重要な資産と信頼を守り抜くための重要なステップです。
本記事で解説したポイントを踏まえ、次世代のセキュリティ体制構築に向けた戦略的な一手として、XDRの導入をぜひご検討ください。