更新日:2025/01/07
給与前払いサービスは違法? 法律面での注意点とリスク回避
【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
近年、給与前払いサービスを導入する企業が増えています。福利厚生の一環として導入を検討している一方で、違法ではないのかと不安を感じる方も多いようです。
原則、給与の前払いは違法ではありませんが、法律面でいくつかの注意点があります。本記事で、給与前払いサービスに関する法律上の注意点や、導入前に確認すべき法的リスクや対策を解説します。確認した上で前払いサービスを利用しましょう。
【比較】おすすめの給与前払いサービス一覧
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サービス名 | 企業名 | 特長 | 費用 |
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プリポケ | 株式会社マネーコミュニケーションズ |
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立替払い型:導入費用0円、月額費用0円、前払い申請額×1.5% 直接払い型:月額固定料金1万円、前払利用毎 200円 |
前給 | きらぼしテック株式会社 |
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初期導入費用:無料 月額費用:220円(前給を利用した1人当たり) |
即給 byGMO | GMOペイメントゲートウェイ株式会社 |
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要お問い合わせ |
CRIA | 株式会社メタップスペイメント |
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初期費用0円 月額費用0円 |
Payme | 株式会社ペイミー |
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要お問い合わせ |
フレックスチャージ | 株式会社三菱UFJ銀行 |
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要お問い合わせ |
Advanced pay SAISON | 株式会社セゾンパーソナルプラス |
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要お問い合わせ |
早トク給与 | 楽天カード株式会社 |
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要お問い合わせ |
前払いできるくんLITE | 株式会社Payment Technology |
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要お問い合わせ |
Q給 | 株式会社デジタルプラス |
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月額費用:11,000円 システム利用料:550円 |
この記事の目次はこちら
給与前払いサービスに関する法律上の注意点
給与前払いサービスとは、従業員が申請すれば、給与支給日より前にそれまで働いた分の給与を受け取れるサービスのことです。従業員が働いた分の給与の前払いは、違法ではありません。ただし、法律上の注意点があるため、確認しておきましょう。
賃金前払いは労働基準法で認められている
給与の前払いに関しては、労働基準法第25条で以下のように明記されています。
“第二十五条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。”
出典:e-GOV法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049/20250601_504AC0000000068(参照2024-11-23)
従業員の非常時に給与の前払いを行うことは労働基準法で認められているため、違法ではありません。
賃金の「前借り」はNG
給与の前払いで認められるのは、すでに働いた分の賃金です。労働基準法第25条でも「既往の労働に対する賃金」と明記されており、まだ働いていない分を前渡しすると労働基準法に抵触する可能性があります。
従業員から前払いの申請があった場合は勤怠データを確認して、すでに労働した分の給与のみ支払うようにしなくてはいけません。
まだ働いていない分の給与を前渡しするのは、前借りに該当します。従業員貸付制度を導入している場合は問題ありませんが、導入していない場合は前借りに応じる義務はありません。前払いと前借りは異なることに注意しておきましょう。
なお、前借りと賃金の相殺は、労働基準法第17条で以下のように禁止されています。
“第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。”
出典:e-GOV法令検索.「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」.
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049/20250601_504AC0000000068,(参照2024-11-23)
賃金支払いの5原則に則り支払うことが大切
労働基準法第24条に定められている、賃金支払いの5原則は次のとおりです(※)。
- 通貨払い
- 直接払い
- 全額払い
- 毎月1回以上
- 一定期日
給与前払いサービスを利用すると、手数料や振込手数料を従業員が負担する場合があるため、全額払いの原則に抵触する恐れがあります。違反を回避するためには、事前に従業員と賃金控除の労使協定を結び、給与前払いサービスの手数料や振込手数料を従業員が負担することに同意してもらう必要があります。
※参考:厚生労働省.「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html,(参照2024-12-02)
法的リスクを避けるために導入前に確認すべきポイント
給与前払い自体は違法ではありませんが、給与前払いサービスの中には法的リスクが発生するケースもあります。法を順守してサービスを利用するために、導入前に以下のポイントを確認しておきましょう。
貸金業登録しているか
給与前払いサービスには「立替払い型」と「自社払い型」の2種類があります。立替払い型は、従業員が給与の前払い申請をすると、サービス提供会社が立て替えて振込を行う仕組みです。立て替えた分は後日企業にまとめて請求されるため、貸付けと見なされる可能性があります。
貸付けと見なされる場合、サービス提供会社は貸金法により「貸金業登録」が必要です。貸金業の登録をせずに給与前払いを立て替えると、貸金業法違反になります。違反しているサービスを利用した場合、企業も罰則を受ける恐れがあるので注意が必要です。
違法な業者を利用しないためにも、サービス提供会社が貸金業登録をしているか確認しておきましょう。金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」を利用すれば、登録業者か確認できます。
ただし、サービス提供会社の中には、政府の「グレーゾーン解消制度」を利用して、貸金業に該当しないと回答された事例もあります。そのため、サービス提供会社が一概に貸金業に該当すると判断されるわけではありません。法務面で問題ないかは、サービス提供会社のホームページや資料を確認してみましょう。
なお、企業の支払い能力を補完するための資金の立替となっている場合や、手数料が導入企業の信用力によらず一定ではない場合など、実質的に貸付けを行っていると認められる場合は貸金業に該当する可能性が高いようです(※)。
※参考:金融庁.「確認の求めに対する回答の内容の公表」.
https://www.fsa.go.jp/policy/kyousouryokukyouka/grayzone/02.pdf,(参照2024-12-02)
手数料が高すぎないか
立替払い型の給与前払いサービスを使用する際には、従業員が利用する度に手数料が発生するため、手数料が高すぎないかをチェックしておくことが重要です。
給与前払いサービスの事業者の中には、法外な手数料を請求する違法な業者が紛れ込んでいることもあります。立替払いが貸付けと判断されると、給与前払いサービスによる手数料は貸付利息として扱われます。この貸付利息は、利息制限法によって上限金利が年15~20%と定められており、上限を超える場合は利息制限法に抵触する恐れがあるため注意が必要です。
サービスを提供する会社の手数料は適正な範囲内であるか、導入前に確認しておくとよいでしょう。
資金移動業に登録しているか
法的リスクを回避するために、資金移動業に登録しているサービス提供業者か、銀行と提携しているサービス提供業者を選ぶことも大切です。資金移動業者とは、銀行などの金融機関以外で、送金サービスを運営できる企業のことを指します。
給与前払いサービスの中には、企業がサービス提供会社に資金を委託し、その資金を使って従業員に給与を前払いするタイプがあります。ただし、企業から預かった資金を振り込む行為は為替取引と見なされ、基本的には銀行のみが許可されている行為です。無資格で行うと銀行法に違反する可能性がありますが、資金移動業者であれば100万円以下の資金送金が合法的に行えます。
給与ファクタリング業者ではないか
給与前払いサービスと給与ファクタリングを混同する人もいますが、両者には大きな違いがあるため、給与ファクタリング業者ではないかを確認しておくことも大切です。
ファクタリングとは企業の資金調達法の一つで、売掛債権などを買い取ってもらい、決済期日前に現金化できるサービスです。基本的には企業を対象としたサービスですが「給与ファクタリング」の名称で個人向けにサービスを提供している事業者もあります。
給与ファクタリングは、利用者が将来会社から受け取る予定の給与を債権として、買い取るサービスです。買い取る際は手数料を差し引き、給与日になれば利用者はファクタリング事業者に債権額を返済する仕組みです。
過去には、貸金業登録をしていないヤミ金業者や違法業者が法外な貸付けを行い、違法性が認められた判決もあります。万が一、違法な給与ファクタリングを利用した場合、金利上限を大幅に超える法外な手数料を支払わされたり、悪質な取り立ての被害に遭う危険性があるため注意が必要です。
また、高額な手数料を支払わされると、本来受け取るはずの賃金よりかなり少ない金額しか受け取れないため、経済状況が悪化するリスクもあるでしょう。
金融庁も給与の買い取りをうたった違法なヤミ金融の利用に注意喚起しています。給与前払いサービスと給与ファクタリングは、給与日前に給与を受け取れる仕組みは似ていますが、契約の内容や法的リスクが異なるため、注意しておきましょう。
給与前払いサービスを選ぶ際のその他のポイント
給与前払いサービスを導入する際は、法律上の注意点以外にも確認しておきたいことがあります。サービスを選ぶ際のその他のポイントを3つ解説します。
提携銀行が豊富であるか
給与前払いサービスを選ぶときは、提携している銀行が豊富であるかを確認しておきましょう。提携銀行が多ければ、自社や従業員が開設している銀行口座を利用できるため、新規で口座開設する手間がかかりません。
法人名義の口座は開設するのに手間がかかる上に、給与管理で使用している口座と分かれると処理が煩雑になります。既存口座を利用できるか確認しておきましょう。
システム連携しやすいか
給与前払いサービスは、基本的に勤怠管理システムや給与管理システムと連携して使用するため、自社で利用しているシステムと連携できるかも確認しましょう。
ほとんどの給与管理システムはCSVやAPIで連携できますが、連携方法はサービスによって異なります。自社のシステムと相性の良いサービスを選びましょう。
従業員が利用しやすいか
給与前払いサービスを利用するのは従業員なので、従業員が利用しやすいことも重視したいポイントです。具体的には、申請しやすさや申請から振込までの時間などが挙げられます。
前払いが必要なときにスマートフォンやアプリから申請できれば、従業員はいつでも手軽に申請できます。また、急を要する場合もあるため、申請から振込までにかかる時間が短ければ、従業員のニーズに応えられるでしょう。
違法性のない給与前払いサービスを選ぼう
給与前払い自体は原則として違法ではありませんが、賃金支払いの5原則に則り行う必要があります。貸金業や資金移動業に登録をしている業者や、手数料が高すぎない業者などを選び、法的リスクを避けましょう。給与ファクタリング業者でないことを確認することも大切です。また、提携銀行や連携できるシステムについても確認しておきましょう。
給与前払いサービスの導入を検討しているのであれば、複数のサービスを比較検討して信頼できるサービスかどうか、自社にあったサービスかどうかをチェックすることをおすすめします。
【2025年最新比較表あり】給与前払いサービス10社を比較!特徴やメリット、選ぶときのポイントを解説
【比較】おすすめの給与前払いサービス一覧
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サービス名 | 企業名 | 特長 | 費用 |
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プリポケ | 株式会社マネーコミュニケーションズ |
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立替払い型:導入費用0円、月額費用0円、前払い申請額×1.5% 直接払い型:月額固定料金1万円、前払利用毎 200円 |
前給 | きらぼしテック株式会社 |
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初期導入費用:無料 月額費用:220円(前給を利用した1人当たり) |
即給 byGMO | GMOペイメントゲートウェイ株式会社 |
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要お問い合わせ |
CRIA | 株式会社メタップスペイメント |
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初期費用0円 月額費用0円 |
Payme | 株式会社ペイミー |
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要お問い合わせ |
フレックスチャージ | 株式会社三菱UFJ銀行 |
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要お問い合わせ |
Advanced pay SAISON | 株式会社セゾンパーソナルプラス |
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要お問い合わせ |
早トク給与 | 楽天カード株式会社 |
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要お問い合わせ |
前払いできるくんLITE | 株式会社Payment Technology |
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要お問い合わせ |
Q給 | 株式会社デジタルプラス |
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月額費用:11,000円 システム利用料:550円 |