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アジャイル開発とは?アプリ開発における基本プロセスや手法などを解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

ソフトウェアやアプリ開発の手法では、これまでウォーターフォール開発が主流でした。しかし近年は、開発期間が短縮できるアジャイル開発が急激に増加しています。アプリ開発の主流は、なぜアジャイル開発へとシフトすることになったのでしょうか?

この記事では、アジャイル開発の基本やプロセス、メリット・デメリットなどを解説します。ソフトウェア、アプリ開発のヒントとして、役立ててください。

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アプリ開発におけるアジャイル開発とは

アジャイル開発とは、システムやアプリ・ソフトウェア開発において、顧客のニーズを柔軟に反映しながら短期間で開発を進める手法です。アジャイルは「素早い」「機敏な」「頭の回転が速い」という意味を持ちます。

アジャイル開発は、仕様の変更があることを前提として「計画→設計→実装→テスト」という、四段階の小単位で開発工程を繰り返していきます。時間をかけずに素早くリリースしますが、その後で実際の使用感を確認しながらブラッシュアップを行うことが不可欠です。

ブラッシュアップのサイクルは、通常2~4週間の短期間しかありません。このサイクルを繰り返すことで、より現場に即した要求をシステムにフィードバックできるとして注目を集めています。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い

ウォーターフォール開発は、綿密な計画のもとで上流から下流へ開発を進める手法です。アジャイル開発と違って計画があらかじめ固定されているため、途中での仕様変更が難しく、開発期間も長くなる傾向にあります。

アジャイル開発では、スピードを重視するため現状に即して臨機応変な対応をしますが、ウォーターフォール開発では要件と仕様を決めた上で全てを進めるため、仕様書通りに作業が完了していない場合は次の工程へ進むことができません。また、一度、作業段階が進んだら、後戻りをすることもありません。

ウォーターフォール開発には、スケジュール管理やコストコントロールがしやすいというメリットがある一方、アジャイル開発のようなスピード感や柔軟性は期待できないでしょう。

アジャイル開発のプロセス

アジャイル開発について知るために、アジャイル開発のプロセスを理解しておきましょう。

アジャイル開発は次のようなプロセスに沿って進められています。

リリース計画

リリース計画は、リリースの目標を定めて、大枠のプランを決める段階です。アジャイル開発においては頻繁にリリースが行われますが、その内容は状況によって変更することが前提となっているため、厳密な目標は立てません。

ただしこの段階で、改善のためのサイクルに該当するイテレーションの長さを定めておく必要があります。イテレーションについて詳細は後述しますが、サイクルのスパンが決められていることで小まめな目標管理ができ、迅速な開発が可能になるといえるでしょう。

また開発における進度の指標となるベロシティ、開発内容の優先順位なども決めておきます。

チームビルディング

必要とされている開発内容にあわせて、開発チームを結成することを、チームビルディングと呼びます。チームメンバーとなるのは、開発を行う企業の担当者、顧客側の担当者、他社メンバーなどです。

さらに集められたメンバーの中から、「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発者」をそれぞれ選びます。

プロダクトオーナー開発プロダクトの方向性を決める意志決定者開発に直接関与することはなく、アプリなどプロダクトの全体像を定義してチームを管理する
スクラムマスターチーム全体をまとめ、会議やミーティングを進行し、チーム内に問題があるときは解決に当たる
開発者実際に製品開発を行うメンバー

全体スケジュールの作成

全体スケジュールの作成では、プロジェクトを短いスパン(1〜4週間程度)で反復できるよう、細かく切り分けてリスト化する作業を行います。プロジェクトによって適切なスパンを定め、見直しを行いながら開発を進められるよう分割していきましょう。

イテレーション

リリース計画の段階で設定したイテレーションを実施していく段階です。

細かく切り分けられた開発の部分ごとに、「計画→設計→実装→テスト」を繰り返します。1つのサイクルに費やす期間は、リリース計画の際に定めた通りです。各イテレーションの終了時には、リリース可能な状態の成果物が得られることを目指します。

また、テストが完了した際は、顧客やステークホルダーからフィードバックを受け取ることが重要です。得られたフィードバックを次の計画に生かす形でイテレーションが繰り返されます。

アジャイル開発の手法

アジャイル開発とひとくちにいっても、その手法はさまざまです。

ここでは、アジャイル開発の手法の中から主要なものについて、具体的な内容やポイントを詳しく解説します。

スクラム

スクラムは、チームで開発を行うためのフレームワークです。語源はラグビー用語のスクラムで、スポーツのワンシーンのように、チームが一丸となって進めていくのが特徴です。そのため、チーム内のコミュニケーションが非常に重視されています。

スクラムでは、スプリントと呼ばれる1~4週間ごとに繰り返される開発工程を、以下の流れで実施します。

  1. スプリントプランニング:スプリントについて概要を計画するための会議
  2. デイリースクラム:毎日15分程度で行われる開発者会議
  3. スプリントレビュー:成果物の確認とフィードバックの収集
  4. スプリントレトロスペクティブ:スプリントの振り返り、改善点の洗い出し、次のスプリントに向けての改善計画

エクストリーム・プログラミング(XP)

エクストリーム・プログラミング(XP)とは、事前に綿密な計画を立てず、開発途中の変更に柔軟な対応をすることで、顧客ニーズを最大限反映させる手法です。XPの中でも代表的なのが、2名1組で開発を進めるペアプログラミングで、開発作業に沿って方針が左右することからプログラマー中心の手法だともいわれています。

一方、開発工程の中で方向性を固めるには、チーム内や顧客とのコミュニケーションがとても重要です。XPでは、チーム内で以下に挙げる4つの価値観を共有する必要があります。

  • コミュニケーション
  • シンプル
  • フィードバック
  • 勇気

それぞれ、迅速な開発のため密にコミュニケーションをとること、開発の内容をシンプルに保つこと、改善のためにフィードバックを得ること、柔軟に変化する勇気を持つことを指しています。

リーンソフトウェア開発(LSD)

リーンソフトウェア開発(LSD)とは、リーン生産方式をソフトウェア開発に応用した手法です。リーンとは「無駄のない」「痩せた」という意味で、LSDにおいては開発工程の無駄を排除し、高品質を維持しながらトータルコストを減らすことが重視されています。

リーンソフトウェア開発の7つの原則は、以下の通りです。

  • 無駄をなくす
  • 不具合を少なくして品質を高める
  • フィードバックから知識を作り出す
  • 決定を急がない
  • 素早くリリースする
  • 人を尊重する
  • 全体を最適化する

チームメンバーを互いに大切にし、かつ目の前の対応を厳選することで、スピード感をもって極力無駄のないものを開発できます。

カンバン

カンバンは、タスクボードを使って視覚的にプロジェクト管理をする手法です。タスクボードには「To-Do」「進行中」「完了」などのエリアを作り、各タスクを記したカードを配置します。

タスクが進行したら、状況に合わせてエリアを進めることで、そのときのプロジェクト進捗状況が一目で把握できることが特徴です。作業の流れが見えやすいため、一度に行う作業の数を制限したり、作業の滞り具合からボトルネックを特定したりすることに長けています。

適応型ソフトウェア開発(ASD)

適応型ソフトウェア開発(ASD)は、複雑な開発内容に対して、変化が起こることを前提に継続的な対応を行っていく手法です。

ASDでは、「思索」「協調」「学習」の三段階をイテレーションとし、これを繰り返しながら開発を進めます。最初から変化が前提となっているため、開発には大枠を決めた時点で着手し、イテレーションを繰り返しながら品質を高めるのが特徴です。

また、顧客との緊密なコラボレーションの中で、不確実なフィードバックも積極的に取り入れてプロジェクトが進行します。

ユーザー機能駆動開発(FDD)

ユーザー機能駆動開発(FDD)は、Feature Driven Developmentの略で、顧客にとってのfeature、すなわち機能価値を重視した手法です。顧客がどの機能に価値を置いているかを中心とし、機能ごとに開発を進めます。

FDDでは、まずビジネスモデリングを実施し、そこで作成したフィーチャーリストに沿ってシステムの計画、設計、構築のサイクルを実施します。このサイクルは、フィーチャーごとの小さな単位で繰り返されるのも特徴です。FDDのサイクルは多くが1~3日、長くても2週間未満の短期で、1つの機能を実装するために長い時間をかけません。

短期間で実装できる機能を積み重ねていくため、変更や修正があった場合は柔軟な対応が可能です。

アジャイル開発のメリット

近年、アジャイル開発が主流になっている背景には、そのメリットの大きさがあるといえます。

ここでは、アジャイル開発のメリットについて解説します。

柔軟な変更が可能

アジャイル開発では開発途中の仕様変更を前提としているため、初期の段階で仕様を細かく決めることはしません。そのため、顧客の要望やフィードバックを反映した柔軟な対応が可能となります。

開発中は顧客と綿密なコミュニケーションを取ることで、要望やフィードバックを得つつ品質を高めていくことが可能です。また、機能単位で開発を行っているため、フィードバックを迅速に得られ、早い段階で反映させやすいのも特徴といえます。

ユーザー満足度の向上

アジャイル開発では、どの手法であっても顧客の意見や要望を取り入れ、テストとリリースを繰り返しながら開発が進められます。従って顧客の要望がしっかりと反映されやすく、顧客満足度がアップするというメリットもあります。

また、サービス提供までの時間が短い点も、ユーザーの満足につながるでしょう。ひとまずサービスを提供し、運用の中で改善点を見出すため、現実に即したサービス改善が可能です。

チームワークの向上

アジャイル開発においては、少人数のチームで毎日ミーティングなどのコミュニケーションを取るため、チームワークが高まりやすい環境が整っています。自然と、団結力をもって1つの作業を進めようという姿勢が見られるようになるでしょう。

また、スムーズな開発のため、チームのメンバーそれぞれで役割分担が行われます。プロジェクトごとに別の役割を担うことで、さまざまなスキルが向上することがチームの成長につながることもメリットです。

アジャイル開発のデメリット

アジャイル開発にはメリットだけでなく、デメリットも存在しています。

どのような点がデメリットになるかを把握し、マイナスの影響をできるだけ避けるようにしましょう。

方向性がブレやすい

アジャイル開発では、初期の段階で詳細に仕様を決めないため、方向性がブレやすいのが難点です。

最初のうちは目的に沿ったリリースが行われていても、テストやフィードバックで仕様変更が繰り返されるうち、全体の方向性がブレることがあります。そのため、イテレーションごとの開発では、目の前の小さな目的を意識する必要があります。また、大枠の方向性がズレてしまわないよう、ミーティングでは全体的な振り返りも必要です。

スケジュール調整が困難

アジャイル開発のデメリットの一つに、スケジュールのコントロールが難しいことがあります。これは、柔軟な変更に備えて詳細な計画を立てないためです。

小単位での開発は、期間が短く作業量も少ないため、進捗を把握しやすいでしょう。一方で、全体のスケジュールは把握しにくくなります。度々の仕様変更でリリースが遅れてしまうことのないよう、全体のスケジュール感もあわせて確認しながら進める必要があります。

アジャイル開発が向いているケース

プロジェクトによって、アジャイル開発が向いているケースと、そうでないケースがあります。

ここでは、アジャイル開発が向いているのはどのようなケースかを解説します。

開発途中で仕様変更が予想される

アプリ開発やゲーム開発など、あとから仕様変更や機能追加が予想されるケースでは、アジャイル開発が向いているといえます。これらは、トレンドの移り変わりだけでなく、新しいデバイスの登場などによっても仕様変更が発生する可能性があるためです。

場合によっては、OSのアップデートで急ぎの対応をしなければならないこともあります。このように、迅速な変更対応が求められる分野では、アジャイル開発が適しているでしょう。

要件定義が固まっていない

要件の全体像が明確になっていないケースでも、アジャイル開発が便利です。

要件定義が固まっていないと、通常はシステムをリリースすること自体ができません。しかしアジャイル開発ならば、システムをリリースした後に、実際の状況を確認しながら残りの部分を作れます。

さらに、実際に使ってみた上で要望のあった機能を追加したり、不要な機能を削除したりすることも可能です。要件を明確にせずとも、顧客の要望を的確に反映したシステムを構築できるでしょう。

アジャイル開発が適さないケース

アジャイル開発が適していないケースもあるため、注意が必要です。

次のようなケースでは、アジャイル開発以外の方法を用いた方が良いでしょう。

スケジュールが厳格に決められている

納期や全体のスケジュールが厳格に決められているプロジェクトは、アジャイル開発に適していません。アジャイル開発は仕様変更が前提の開発手法で、仕様の変更に伴って納期の延期や調整が必要になることが多いためです。

的確なスケジュール管理が求められる場合は、従来型のウォーターフォール開発の方がスケジュールに沿って進められるため、適しています。ただし、ウォーターフォール開発には柔軟性が少ないため注意も必要です。

メンバー間のコミュニケーションが取りづらい

異なる拠点のメンバーでチームを組む場合など、メンバー同士でコミュニケーションが取りにくいケースは、アジャイル開発には適さないといえます。

アジャイル開発は、日々チーム内で意見交換をし、成果物の品質を高める手法です。従って、コミュニケーションが容易に取れない状態では、アジャイル開発の手法が成立しません。このようなケースでは、頻繁なコミュニケーションを必要としない方法での開発が適しています。

まとめ

アプリ開発の手法はさまざまですが、アジャイル開発の手法を用いれば、顧客の要望をできる限り反映した柔軟な対応が可能になります。現代は移り変わりの激しい時代で、あらかじめアプリの要件を定めていても、途中で路線変更が必要になるケースは多いでしょう。アプリやシステムを効果的に運用するためには、ある程度の柔軟さを持ち合わせておく必要があります。

アジャイル開発では他に、チームワークが必要とされることでチーム全体の実力が伸びる、迅速なリリースでアプリを素早く提供できる、といったメリットもあります。アプリ開発やシステム開発を考えている場合は、アジャイル開発の利用を検討してみると良いでしょう。

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