適性検査の選び方を3つのポイントから解説! 採用や人材管理など目的に合わせて選ぼう
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
適正検査とは候補者が組織に属したり、仕事をしたりする上で、適切な能力や資質を備えているか計るテストのことです。能力だけでなく、心理特性や価値観など多角的に評価できます。
適正検査といっても、採用向けから人材管理向けなど、さまざまなタイプがあるため、自社の目的にあったものの導入が大切です。
本記事では、適性検査の選び方や確認できる項目、適性検査サービスを導入するメリットや注意点を解説します。
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適性検査の選び方3つのポイント
適性検査と一口に言っても、用途や検査できる項目、受験方法にはさまざまなタイプがあります。適性検査を選ぶときは、自社の導入目的に合う機能が備わっていることが大切です。さらに、結果の品質が高いこと、使いやすい形で分析結果を得られることも不可欠です。
適性検査の選び方を3つのポイントから解説します。
導入目的を満たす機能を備えているか
まずは適性検査を導入する目的は何か明確にしましょう。採用選考か人材育成か、用途が明確になったらその用途を満たせる検査項目があるか、受験形態かどうか確認します。実際に導入を検討する段階では、検査に掛かる時間や導入費用も比較しましょう。
- 用途:採用選考、人材育成など
- 測定項目:基礎能力、性格、職場適応性、ストレス耐性など
- 受験形態:テストセンター、Web、ペーパーなど
- 試験時間:検査方法別にどの程度時間が掛かるか
- 導入費用:初期費用、月額利用料、受験費用など、どのようなコストが掛かるか
用途や測定項目、受験形態の違いは後ほど詳しく解説します。
検査結果の品質は保たれているか
検査結果は「標準性」を満たしているほど、正確な結果を得やすくなります。適性検査の結果は、比較対象の集団(母集団)内で候補者がどの位置に属するかにより判断されます。そのため、例えば候補者が営業職に適しているか知りたいのに、母集団が技術職ばかりの適性検査を導入しても正確な結果は得られないでしょう。
事業規模や業界、職種、役職、人種など、受験者のデータに偏りがないほど正確な結果を得やすくなります。適性検査の受験者の属性そのものの把握が難しいときは、導入数や総受検者数を確認するとよいでしょう。
検査結果を利用しやすいか
適性検査は結果の見やすさ・活用のしやすさも大切です。応募者の能力や性質を14段階で評価するものや、面談時に確認が必要な項目がまとめられているもの、フィードバックがしやすいものなどさまざまなタイプがあります。
例えば、面接で確認したい項目が自動抽出されるタイプであれば、採用経験が浅い社員でも使いやすいでしょう。導入目的にあった検査結果を得られるかどうかも確認しましょう。
適性検査の用途
適性検査は、採用だけでなく以下のようにさまざまな場面で活用できます。
- 採用活動
- 人材育成
- 人材マネジメント
- 職務分析
- 人事評価
- 退職者分析
適正検査サービスごとに適した検査対象が異なるため、自社ではどのように活用したいのか、事前に確認しましょう。それぞれ活用方法を紹介します。
採用活動
採用活動で利用されることが多い適性検査ですが、サービスにより、新卒採用・中途採用、アルバイト・管理職など適した対象が異なります。
例えば、新卒採用では能力検査と性格検査の双方からポテンシャルを評価したり、能力検査でふるい分けをしたりなどの目的で使うことが多いでしょう。一方、ある程度能力が把握できる中途採用では、社風とのミスマッチを防止するため、性格検査が充実しているものが適していることもあります。
人材育成
適性検査では、社員の能力や性格、考え方のクセなどを客観的に評価で人材育成時の資料にも活用できます。適性検査の結果を基にそれぞれの社員の強みや弱みを把握できれば、それらをサポートする研修を実施し個人の成長を促すことも可能です。
社員本人に返却できるフィードバックシートが出力できるタイプだと使いやすいでしょう。
人材マネジメント
社員の配属先や管理職候補者の検討など、人材マネジメントに適したタイプもあります。
従来の人事異動制度では、現在の部署の上司や人事部が配属先を決定するため、移動後の部署に適正があるか客観的な判断ができません。また、管理職と一般手社員では求められる能力が異なるものの、企業によっては一般社員時の業績を基に登用が決められることもあるでしょう。
適性検査では、検討対象の社員に部署や役職などそれぞれの配属先で求められる能力や資質があるか確認できます。そのため、検査結果は人材マネジメントをする上での資料としても有効です。
職務分析
自社の各部署ではどのようなスキルや能力が求められるのか、確認することもできます。職務分析とは仕事内容やその職務遂行に必要な知識・スキル、権限などを広く調査して職務内容を明らかにするものです。
職務分析の中でも、必要な性格特性や能力は実際に成果を挙げている社員の適性検査の結果から、共通する項目を洗い出すことで明確化が可能です。必要な資質が分かれば人材の雇用時、配置換え時、どちらでも活かすことができます。
人事評価
適性検査は人事評価制度の一つとして活用できます。直属の上司のみが成績を評価する方法では、主観的であるなどの理由から社員の不平・不満につながることもあるでしょう。
一方、適性検査は客観的で透明性の高いデータを基に評価できるため、公平性の担保につながります。
退職者分析
退職者が過去に受けた適性検査の結果から、能力や性格特性などの共通点を洗い出せれば、採用活動や既存社員の教育に活かせます。
共通する特質が分かれば、それらの特質のある候補者は自社とミスマッチを起こす可能性が高いため、採用時から注意を払うことが可能です。また、退職者に共通するスキル・能力の不足が分かれば、既存社員に対してはそれらを補う研修を行うことが可能です。
適性検査で測定できる項目
一般的な適性検査は大きく「能力検査」と「性格検査」に分かれており、能力検査では受験者の基礎能力や知的能力を確認できます。性格検査では、性格や職場適応性、ストレス耐性などの確認が可能です。なお、適性検査サービスにより、検査内容の詳細や結果の表示方法、それぞれの検査に掛かる時間が異なります。
基礎能力・知的能力
基礎能力や知的能力の検査では、仕事をする上で必要な一般常識や思考力、基礎的能力があるか確認できます。
能力はさらに言語分野(文章理解能力など)と非言語分野(論理的思考能力、数的処理能力、作業の正確性など)に分けて測定が可能です。この他に、必要に応じて英語などの外国語の基礎能力検査を追加できるものもあります。
正誤で判定できる検査のため、合格ラインを設け採用や昇進時の基準として用いられることもあります。
パーソナリティ
パーソナリティの検査では、受験者の人間性や思考方法、態度や行動特性を確認できます。これらの項目を数値化やグラフ化でき、採用担当者の感覚に頼らない判断が可能となります。
好奇心や勤勉さなど、個人的な性質は研修などで短期のうちに矯正できるものではないため、自社に合う人材か見極める際に重要な項目です。なお、性格の良し悪しを判断するものではないため注意しましょう。
職場適応性
職場適応性検査では、受験者のコンピテンシーや対人関係能力の把握が可能です。コンピテンシーとは、仕事上高いパフォーマンスを発揮する社員に共通する行動特性のことです。
仕事で成果を発揮できる特性があるかどうかだけでなく、能力はあるもののトラブルを起こす可能性の有無も確認できます。
ストレス耐性
ストレス耐性検査では、仕事上どのようなことがストレスになるのか、受験者自身のストレスに対する強さ、現在のストレス状況などを確認できます。
ストレス耐性を測ることで、採用の段階ではメンタル不調に陥りづらい社員を見極めることも可能です。また、既存社員に実施すれば、ストレスが掛かりづらい職場環境の整備や、ストレスマネジメントの実施に役立ちます。
適性検査の検査方法
検査方法は、受験方法と受験会場の組み合わせから選ぶことができます。それぞれ、メリット・デメリットがあるため、受験者の性質やコストに合わせて適した方法を選びましょう。
受験方法
受験方法では、以下の2つの方法があります。
- Webテスト
- ペーパーテスト
Webテスト
Webテストはパソコンやスマートフォンを使って適性検査を受ける方法です。会場によっては場所や時間に囚われず受験ができるので、採用時だけでなく既存社員向けの試験でも受験者の負担を抑えられます。ペーパーテストよりも時間やコストを抑えられ、受験後の集計や分析も容易です。
一方で、自宅受験やスマートフォン受験を許可すると、他者が受験者に代わって回答をする“なりすまし受験”がされやすいので注意しましょう。また、端末や環境によっては通信が途中で途切れたなどのトラブルが生じる恐れがあります。
ペーパーテスト
ペーパーテストは、筆記タイプの適性検査です。一般的には受験者を一つの会場に集め、監督者を配置し一斉にテストを受けてもらいます。このため、なりすまし受験のような不正の心配は少なくなります。また、Webテストのように通信の安定性に依存しない点もメリットです。
現在ではマークシートタイプが主流ではあるものの、Webテストと比較すると、集計やデータ分析に時間が掛かります。また、試験の開始から終了まで監督する必要があり、時間とコストが掛かる点がデメリットです。
受験会場
適性検査の受験会場では、以下の3つがあります。
- 共通会場(テストセンター)
- 自社(インハウス)
- 自宅
共通会場(テストセンター)
共通会場受験は、テストセンターなど指定の会場に受験者を集めて適性検査を実施する方法です。適性検査サービスの提供元が会場を用意するため、企業は開催の手間を削減することが可能です。
一方、開催を委託する分、費用負担は生じます。また、受験日時と場所が指定されるため、受験者によってはテストを受けられないことがあります。
自社(インハウス)
自社受験は、自社または企業が指定する会場で適性検査を受ける方法です。採用時であれば、適正試験と面接を1日で終わらせたり、社内案内をしたりなどもできます。運営コストを節約できる点もメリットです。
一方、試験中の監督を設置するなど、社員の負担は増えてしまいます。パソコン受験の場合、人数によっては一度に受験できず、複数回に分けて試験が必要なこともあります。
自宅
自宅受験は、受験者の自宅や学校、喫茶店などで適性検査を受ける方法です。Webテストが基本で受験者の都合に合わせられるため、多くの受験者にアプローチできる点がメリットです。また、テレワークを導入している企業であれば、受験者がある程度パソコンを使えるかどうかも事前に分かります。
一方、不正行為がしやすいので、合否判定を伴わない検査に限り実施する、カメラをつけた状態で受験してもらうなどの対策が必要です。
適性検査サービスを導入するメリット
適性検査サービスを導入すれば、人物評価を標準化・客観化できるだけでなく、人事部の手間の削減も可能です。採用時だけでなく社内の人材管理にも役立てられ、適材適所を実現しやすくなります。
人物評価を標準化・客観化できる
適性検査では、性格や行動特性のような定性的な要素も、母集団との比較により見える化して判断できます。面接担当者の主観に依存しないため、より客観的に人物の特性の理解が可能です。採用方法が標準化されれば担当者の属人化も防げ、採用時の不正の防止にも役立ちます。
人事部の手間を削減できる
適性検査サービスを導入すれば、人事部の手間削減にも役立ちます。サービスによっては、新卒・中途採用、配置転換、人材管理など、複数の検査に対応しているものもあり、人物評価に必要なデータの一元管理が可能です。また、データ収集や分析も容易に進められ、データを元に面接で追加すべき質問が自動生成されるタイプのように事前準備を効率化できるものもあります。
社内の人材管理にも役立つ
それぞれの社員が自身の能力や性質を発揮できる環境の整備は、企業が発展する上でも重要です。適性検査サービスは社内人材の特性把握もでき、適切な配置換えや効果的な社内研修の実施にも役立ちます。また、ストレス耐性や精神状態を数値化できる検査であれば、メンタルの変化を可視化できるため早期に適切なサポートを実施できます。
適性検査サービスを導入するときの注意点
適性検査では性格のような定性的な要素もある程度は定量化できるものの、全ての能力を数値化できる訳ではありません。また、インターネット上では過去問題集や対策方法も出回っているため、企業の希望とする人材像に寄せて回答される恐れがあります。このため、採用や管理職登用では、適性検査の結果のみに頼らないことが大切です。
測定が難しい能力や資質がある
特定の文化との適合性やホスピタリティなど、柔軟性の高いスキルは適性検査で正確に把握できないことがあります。また、スキルを数値化できても、実際にどのようにそのスキルを発揮するかは、グループワークなど別の試験でなければ判断しづらいでしょう。適性検査では見極めが難しい能力があることを忘れてはいけません。
テスト対策をして結果を操作される恐れがある
インターネット上では、能力試験だけでなくパーソナリティ試験もテスト対策方法が公開されています。そのため、企業が求める人物像に寄せた回答をして、採用の可能性を広げようとする受験者もいます。適性検査を実施する目的をあらかじめ伝えたり、対策が難しい検査を導入したりするなど、対処が必要です。
適性検査の結果だけで採用者を決定しない
以上のように、適性検査では計測が難しい性質や能力がある上、内容によっては事前の準備で対策されてしまうこともあります。そのため、適性検査の結果を過信しすぎると、採用や配置換えをしたもののミスマッチを起こす原因になります。
適性検査の結果はあくまでも採用や配置換えの一つの資料として用い、レポート作成やグループディスカッション、面接など、他の試験結果も踏まえた総合的な判断が大切です。
適性検査サービスは自社の目的に合ったものを導入しよう
適性検査といっても、新卒採用向けから既存社員の人材管理に適したものまで、さまざまなタイプがあります。そのため、導入するときは自社の目的に合ったものを選ぶことが大切です。また、受験方法では受験者の利用しやすいものを導入すれば、多くの候補者を集めることも可能です。
ただし、適性検査は受験者の人物像を完璧に把握できるものではありません。グループワークや面接など、他の検査方法と合わせて多角的に判断しましょう。