請求書は電子発行(電子化)するべき?電子化のメリットやデメリットについて解説

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
企業間取引における請求書発行は、売上の確定やキャッシュフローに直結する重要な業務です。これまで紙による郵送が主流でしたが、近年では電子発行へ切り替える企業が急増しています。背景には、働き方改革やコスト削減に加え、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応といった法制度の変化もあり、請求書の電子化は「できればやるべき」から「やらなければならない」へと変わりつつあります。一方で、社内の運用体制や取引先との調整が必要になるなど、慎重な検討が求められる側面もあります。
本記事では、請求書を電子発行にするべきかどうかを判断するために、電子化のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
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サービス名称 | 特長 | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
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請求管理ロボ
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請求書電子化 請求書作成 請求書送付 請求書テンプレート作成 など |
無 |
- (料金表DLあり、問い合わせにて見積り可能) お問い合わせ |
Bill One
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※1 出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「驚異的な成長を続けるクラウド請求書受領サービス市場」(ミックITリポート2023年11月号) ※2 Sansan株式会社が規定する条件を満たした場合のデータ化精度 |
請求書の正確なデータ化 請求書のスキャン代行 請求書の代理受領 請求書受領通知・リマインド 請求書発行 請求書の保管・仕訳入力 など |
デモを希望する場合、要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
invox発行請求書
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請求データ取り込み 請求書の発行・売上計上 入金消込・督促 会計システムとの連携 申請・承認ワークフロー チャットサポート など |
有 ※毎月15件までお試し可 |
フリー(毎月15件まで) 初期費用:0円 月額料金:0円 ミニマム 初期費用:0円 月額料金:1,980円 ベーシック 初期費用:0円 月額料金:9,800円 など お問い合わせ |
freee請求書
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請求書作成 基幹・販売管理システムと連携 メール送信・郵送代行 ダウンロード履歴の確認 入金消込 会計システムとの連携 など |
有 |
無料(ユーザー1~3人まで) 初期費用:0円 月額料金:0円 スタンダード 初期費用:0円 月額料金:1,980円 アドバンス 初期費用:0円 月額料金:10,000円 お問い合わせ |
Scalebase
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契約管理 商品マスタ管理 販売管理 売上管理 顧客管理 請求管理 請求書発行 従量料金計算 入金管理 サブスクリプション販売管理 SaaS販売管理 など |
オンラインデモ有 | 要お問い合わせ |
マネーフォワード クラウド請求書 |
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見積書、納品書、請求書、領収書作成 ロゴ/印影の登録 取引先自動入力 一括メール送信 一括郵送 売上レポート など |
有(法人向けスモールビジネス・ビジネス、個人向け全プラン) |
法人向け基本料金 ・年額プラン:2,980円/月(35,760円/年)~ ・月額プラン:3,980円/月~ 従量課金 ・月額:300円/名 |
楽楽明細 |
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メールアドレス収集機能 宛先まとめ機能 未ダウンロード顧客の確認 一括同封機能 CSVでの明細情報送付 など |
有 |
初期費用+月額費用 ・初期費用:100,000円(税抜) ・月額費用25,000円~(税抜) |
やよいの見積・納品・請求書 |
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帳票作成 帳票管理 得意先管理 商品管理 データ連携(はがき作成・宛名印刷ソフト・送り状システムと連携可能) など |
有(セルフプラン・ベーシックプランのみ) |
■「あんしん保守差オート」プラン別価格表 ・セルフプラン:1年間無料(通常年間価格:6,100円) ・ベーシックプラン:特別価格0円(通常年間価格:13,800円) ・トータルプラン:特別価格13,200円(通常年間価格:26,400円) 「あんしん保守サポート」付き直販価格 ■小規模・個人事業者向け(「あんしん保守サポート」付き初年度優待価格) ・セルフプラン付き ・5,500円+税 ・ベーシックプラン付き ・5,500円+税 ・トータルプラン付き ・18,700円+税 |
クロジカ請求管理 |
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請求書の1クリック送付 請求書の定期作成 CSVファイルで一括作成 印鑑付き請求書の作成 入金の消込 など |
有(無料プラン有) |
フリー ・無料 ・スタンダード ・月額:4,980円 ・プレミアム ・月額:29,800円 |
MakeLeaps |
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帳票作成 請求書送付 入金消込 外部システム連携 など |
有 |
【基本サービス(月額契約)】 MakeLeaps 月額 基本ライセンス(個人プラン) ・600円/ユーザー MakeLeaps 月額 基本ライセンス(法人プラン) ・1,000円/ユーザー MakeLeaps 月額 取引先追加ライセンス(11~25社) ・90円/社 MakeLeaps 月額 取引先追加ライセンス(26~100社) ・80円/社 MakeLeaps 月額 取引先追加ライセンス(101~500社) ・70円/社 MakeLeaps 月額 取引先追加ライセンス(501~1000社) ・60円/社 MakeLeaps 月額 取引先追加ライセンス(1001社~) ・40円/社 MakeLeaps 月額 エンタープライズ追加送付ライセンス(301件~) 30円/件 |
BConnectionデジタルトレード |
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請求書作成/発行 請求書受取 進捗(ステータス確認) ファイル添付 PDFデータダウンロード メッセージ |
無 | - |
SVF Cloud |
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PDF取り込み 紙帳票取り込み マルチレイアウト API連携 電子ファイル出力 ダイレクトプリント など |
有 |
初期費用+月額料金(初期費用について記載なし) 年間66,000枚(月次換算5,500枚) ・月額料金:50,000円~(税別) 価格表DLあり |
Scalebase |
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契約管理 商品マスタ プライシング 請求管理 ペイメント 分析レポート システム連携 など |
無 | 初期費用+月額費用(詳細は見積りにて) |
この記事の目次はこちら
請求書の電子化とは?
請求書の電子化とは、紙で発行・郵送していた請求書を、PDFやWeb発行などの電子データで作成・送付・保存する仕組みのことです。
メール添付による送付や、請求書管理システムを利用したWeb発行などが主な方法です。背景には、インボイス制度や電子帳簿保存法の対応といった法制度の変化に加え、業務効率化やコスト削減のニーズがあります。紙の保管や郵送にかかる手間や費用を省きつつ、ミス防止や情報の一元管理にもつながることから、多くの企業で導入が進んでいます。特にBtoB取引においては、取引先との信頼関係やコンプライアンスの観点からも、電子化への対応が急務となりつつあります。
請求書の電子化がもたらすメリット
「請求書 電子発行」システム導入は、単なる業務改善を超え、企業経営に多大なメリットをもたらします。コスト削減、業務効率化、ガバナンス強化、法対応といった観点から、その効果は明らかです。システム導入を検討する上で、これらのメリットを理解することは極めて重要です。
直接的・間接的なコスト削減
最も分かりやすい効果はコスト削減です。紙の請求書発行に必要な用紙、インク、トナー、封筒、郵送料といった物理的な費用が不要になります。年間で見れば、これらの費用は大きな額になります。加えて、紙の請求書控えを保管するためのファイル、キャビネット、保管スペース、場合によっては外部倉庫の賃貸料も不要です。さらに、印刷、封入、発送といった作業にかかる人件費も大幅に削減できます。システムにより作業が自動化・簡略化されるため、担当者はより付加価値の高い業務に時間を割くことが可能になります。システム導入には初期費用や月額費用がかかりますが、これらのコスト削減効果を考慮すれば、多くの場合、十分に投資対効果が見込めます。
業務プロセス全体の効率向上
「請求書 電子発行」は業務プロセスを劇的に効率化します。紙の場合、データ作成から郵送まで多くの手作業ステップが必要でした。システムを導入すれば、データ作成から送付までがシステム上で完結し、多くの場合数クリックで完了します。これにより、請求書発行にかかる時間が大幅に短縮され、特に繁忙期の担当者の負担が軽減されます。担当者はより重要な業務に集中でき、人的ミス(金額誤記、宛先間違い、送付漏れなど)もシステム制御により大幅に削減可能です。これは再発行の手間や信用の失墜を防ぎ、業務品質を高めます。発行済み請求書の検索も容易になります。日付、取引先、金額などで即座に検索でき、問い合わせ対応や監査時の資料提出が迅速になります。テレワーク環境下でも場所を選ばずに業務を行えるため、多様な働き方を支援します。
ガバナンス強化とコンプライアンス遵守
システムの利用は企業のガバナンス強化にも寄与します。操作ログにより「いつ、誰が、どの請求書を処理したか」が正確に記録され、不正抑止力となります。承認ワークフロー機能を使えば、承認プロセスが可視化され、内部統制が強化されます。電子データは紙より改ざんが困難であり、データの真正性確保に繋がります。法制度への対応も容易になります。改正電子帳簿保存法が義務付ける電子取引データの電子保存要件(真実性・可視性)に対応した機能を持つシステムが多く、法対応の負荷を軽減します。2023年開始のインボイス制度についても、適格請求書の要件を満たすフォーマットでの発行や、正確な税計算機能が搭載されており、制度への準拠を支援します。法改正への追従もベンダーが行うため、常にコンプライアンスを維持しやすくなります。
キャッシュフロー改善への貢献(期待効果)
間接的な効果として、キャッシュフロー改善も期待できます。紙の請求書は郵送に時間がかかり、取引先社内での処理にも時間を要します。電子発行であれば、請求情報をほぼリアルタイムで届けられるため、支払いまでのリードタイム短縮が期待できます。取引先での処理が早まれば、結果的に早期入金に繋がる可能性があります。システムによっては請求書の開封状況などを確認できるため、入金遅延の兆候を早期に把握し、迅速な督促アクションを取ることも可能になります。支払いサイトは取引先依存ですが、請求情報を迅速・確実に届けることは、早期入金を促す重要な要素です。
請求書の電子化がもたらすデメリット
請求書の電子化は多くのメリットがある一方で、導入や運用にあたってはいくつかの注意点やデメリットも存在します。導入後に「こんなはずではなかった」とならないように、あらかじめ課題を把握し、適切な準備や社内調整を行うことが大切です。ここでは、電子化によって生じる代表的なデメリットを3つご紹介します。
取引先との調整に手間がかかる
すべての取引先が電子請求書に対応しているわけではなく、紙での受領を希望されるケースもあります。電子発行に切り替える際には、取引先との合意や運用方法の確認が必要となり、初期段階では調整の手間が発生します。
システム導入や運用にコストがかかる
請求書の電子化を本格的に行うには、専用システムや電子帳簿保存法対応の環境整備が必要です。初期費用や月額費用がかかるほか、他システムとの連携開発費が発生することもあります。
社内の業務ルール変更と教育が必要
電子化によって業務フローや責任範囲が変わるため、社内ルールの整備が不可欠です。また、現場担当者への操作研修やマニュアルの作成が不十分だと、運用に支障をきたす恐れがあります。
請求書の電子化の具体的な方法
請求書の電子化には、主に二つの方法があります。自社の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
PDF化してメール添付:手軽さと限界
作成した請求書をPDF化し、メールに添付して送る方法は、特別な初期投資が不要で手軽に始められます。用紙代や郵送費は削減できます。しかし、発行件数が増えると手作業が煩雑になり、宛先間違いや添付ミスなどのヒューマンエラーリスクが高まります。送達確認や開封確認も困難で、履歴管理も手間がかかります。セキュリティ面でもメールは盗聴や改ざんリスクがあり、パスワード管理も煩雑です。さらに、電子帳簿保存法の保存要件(検索要件など)を満たすための運用ルール策定と管理が別途必要になり、インボイス制度対応での確認作業も増えます。本格的な効率化やコンプライアンス強化には限界があります。
請求書発行システムの活用:効率化と最適化
請求書発行システムは、作成から送付、保管、入金管理まで一連の業務を効率化する専用ツールです。多くはクラウドで提供されます。最大のメリットは業務全体の大幅な効率化と自動化です。テンプレートを用いた簡単な作成、ワンクリックでの電子送付(メール、Web発行、郵送代行連携など)、送付・開封ステータスの確認、他のシステム(会計ソフト等)との連携によるデータ入力自動化、自動消込による入金管理の効率化などが可能です。セキュリティ対策も堅牢で、電子帳簿保存法やインボイス制度といった法令要件に対応した機能が標準搭載されていることが多く、コンプライアンス遵守を支援します。デメリットは導入・運用コストがかかる点と、導入・定着にある程度の労力が必要な点ですが、コスト削減効果や生産性向上を考慮すれば、多くの場合投資価値は高いと言えます。業務全体の最適化を目指すなら、システム導入が最も有効な選択肢です。
遵守必須!請求書電子発行と法律・制度
「請求書 電子発行」を進める上で、電子帳簿保存法(電帳法)とインボイス制度への対応は不可欠です。これらの要件を正しく理解し、遵守しなければなりません。
電子帳簿保存法(電帳法)の要点
電帳法は、国税関係帳簿書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。「請求書 電子発行」に特に関連するのは「電子取引」の規定です。メールでのPDF授受やシステム経由での送受信は電子取引に該当し、そこで扱われたデータは電子データのまま保存する義務があります(2024年1月より完全義務化)。紙に印刷しての保存は認められません。保存要件として「真実性の確保」(改ざん防止措置:タイムスタンプ、訂正削除履歴の残るシステム利用、事務処理規程の整備など)と「可視性の確保」(速やかに確認できる措置:検索機能の確保(日付・金額・取引先)、ディスプレイ等の備付)を満たす必要があります。請求書発行システムは、これらの要件に対応しているか確認が重要です。JIIMA認証は信頼性の目安となります。
インボイス制度への対応
2023年10月開始のインボイス制度では、仕入税額控除のために適格請求書(インボイス)の保存が必要です。インボイスには登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額等の記載が求められます。電子データで発行・受領する「電子インボイス」も同様の要件を満たす必要があり、そのデータは電帳法の電子取引規定に従って保存しなければなりません。システム選定時には、インボイスの記載要件を満たしたフォーマットで発行できるか、正確な税計算が可能か、電帳法要件に沿った保存ができるかを確認することが不可欠です。将来的な標準規格(Peppol等)への対応も考慮点となります。インボイス制度への適切な対応は、取引の継続と自社のコンプライアンス確保のために必須です。
失敗しない「請求書発行システム」選定ポイント
多数存在する請求書発行システムの中から自社に最適なものを選ぶには、慎重な比較検討が必要です。以下のチェックポイントを確認しましょう。
機能と業務適合性
自社の業務フローに必要な機能が揃っているかを確認します。請求書作成(テンプレート、税計算、インボイス対応)、承認ワークフロー、多様な送付手段(メール、Web発行、郵送代行)、入金管理・消込連携、他帳票(見積書、納品書等)への対応などが主な確認点です。現状の課題を解決し、将来の拡張性も見据えて、機能の優先順位を明確にして比較します。
法令対応とセキュリティ
電子帳簿保存法(電子取引保存要件)およびインボイス制度への対応は必須です。JIIMA認証の有無も参考になります。法改正への迅速な対応実績や方針も確認しましょう。セキュリティ面では、データの暗号化、アクセス制御、不正アクセス対策、バックアップ体制、データセンターの安全性などを確認します。ISO27001(ISMS)などの第三者認証も判断材料です。
システム連携・サポート・料金
既存の会計ソフト、販売管理システム等との連携(API、CSV)が可能かを確認します。データ連携は二重入力の手間を省き、効率を大幅に向上させます。導入支援、操作トレーニング、運用後の問い合わせ対応(方法、時間)といったサポート体制も重要です。料金体系(初期費用、月額、従量課金など)を比較し、予算に合うか、隠れたコストがないかを確認します。無料トライアルで操作感を試すことも推奨されます。
「請求書 電子発行」導入成功へのステップ
システム導入を成功させるには、計画的なステップが重要です。
1. 現状分析と目的設定
現在の請求書業務プロセス、課題(時間、コスト、ミス)、電子化による達成目標(〇%削減、〇〇円削減など)を明確にします。電子化の対象範囲も決定します。
2. システム選定と比較検討
現状分析と目的に基づき、前述のチェックポイントを参考に複数のシステムを比較検討します。無料トライアルやデモを活用し、自社に最適なシステムを選びます。
3. 社内体制整備とルール策定
新しい業務フローを設計し、担当者の役割・責任を明確にします。承認プロセスを見直し、運用ルールを文書化して関係部署に周知徹底します。必要に応じて研修を実施します。
4. 取引先への事前告知と調整
電子化への移行時期、変更内容、メリットを取引先に丁寧に説明し、理解と協力を得ます。取引先の意向(希望する受取方法など)を事前にヒアリングし、対応策(郵送代行など)を検討します。十分な告知期間を設けます。
5. 段階的な導入と効果測定・改善
システム初期設定後、可能であれば一部でパイロット運用を実施し、課題を洗い出して修正します。本格運用開始後も、設定した目標に対する効果測定を定期的に行い、現場の声を聞きながら運用方法を継続的に見直し、改善を図ります。
まとめ
本稿では「請求書 電子発行」について、メリット、方法、法制度、システム選定、導入ステップを解説しました。紙ベースの請求書業務が抱える非効率性、コスト、ミス、法対応といった課題は、「請求書 電子発行」システムの導入により大きく改善できます。コスト削減、業務効率化、ガバナンス強化、コンプライアンス遵守は、企業経営に直接的な効果をもたらします。特に、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は、システム活用が極めて有効です。システム選定では、機能、法令対応、セキュリティ、連携性、サポート、料金を多角的に比較し、自社に最適なものを選ぶ必要があります。導入成功には、現状分析に基づく目的設定、社内体制整備、取引先との丁寧なコミュニケーション、段階的な導入と継続的な改善が不可欠です。「請求書 電子発行」は、単なる業務改善ではなく、企業の生産性向上と競争力強化に貢献する戦略的な取り組みです。自社の現状を見つめ直し、未来の業務改革に向けた第一歩として、導入を具体的に検討する価値は十分にあります。