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SFA JOURNAL by ネクストSFA

契約書保管方法の決定版!ファイリング術から電子化・システム導入まで徹底解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

企業活動において日々作成・締結される契約書は、取引の証拠となり、権利義務関係を明確にする極めて重要な文書です。これらの契約書を適切に保管・管理することは、コンプライアンス遵守、リスク回避、そして円滑な業務遂行のために不可欠と言えます。しかし、現実には「増え続ける契約書で保管スペースが足りない」「過去の契約書を探すのに膨大な時間がかかる」「紙と電子データが混在し管理が煩雑」「情報漏洩や紛失のリスクが心配」といった課題を抱えている企業は少なくありません。

本記事では、契約書の適切な保管方法について、紙媒体でのファイリングや物理的保管の基本から、電子データでの保管における法的要件や実践的なポイント、さらには社内ルールの策定や運用体制の構築、そして手作業による保管の限界と契約書管理システム導入のメリットや選定ポイントに至るまで、網羅的に解説します。管理部門や決裁者の皆様が、契約書管理システムの導入を検討するにあたり、現状の運用を見直し、より安全かつ効率的な保管方法を確立するための一助となれば幸いです。

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契約書保管の重要性 – なぜ適切な管理が不可欠なのか?

契約書を「ただ取っておく」のではなく、「適切に保管する」ことがなぜこれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、単に書類を整理整頓するという次元の話ではなく、企業の存続と成長に直結する複数の目的と、それを怠った場合に生じる重大なリスクにあります。

契約書保管の基本的な目的

契約書は、単なる紙片ではありません。それは、取引の証、業務の羅針盤、そして企業の信頼を支える基盤です。紛争時の решающий factor となる証拠保全、日々の業務を円滑にする迅速なアクセス、企業存続の根幹たる法令遵守、そして健全な経営を証明する内部統制。本稿では、契約書管理の徹底が、いかに企業の信頼と効率を高めるか、その多岐にわたる重要性を解説します。

証拠保全

契約書は、取引内容、当事者間の合意事項、権利義務関係を証明する最も強力な法的証拠です。万が一、取引先との間で紛争や訴訟が発生した場合、契約書の有無とその内容が、自社の主張の正当性を裏付け、法的に有利な解決を図る上で決定的な役割を果たします。適切な保管がなされていない場合、いざという時に証拠を提示できず、大きな不利益を被る可能性があります。

業務遂行の円滑化

過去の契約内容や取引条件を確認したい場面は日常業務で頻繁に発生します。例えば、類似の取引を行う際の参考、継続契約の条件交渉、契約に基づく業務の履行状況確認などです。必要な契約書に迅速かつ正確にアクセスできる保管体制は、業務の効率化と意思決定のスピードアップに不可欠です。

法令遵守(コンプライアンス)

会社法や法人税法など、多くの法律で契約書を含む重要書類の一定期間の保管が義務付けられています。これらの法的要件を遵守することは、企業が社会的な責任を果たし、信頼を維持するための基本です。保管義務違反は、過料などの行政罰や、税務調査での指摘につながる可能性があります。

内部統制・監査対応

適切な契約書の保管・管理体制は、企業の内部統制が有効に機能していることを示す重要な要素の一つです。契約締結プロセスや取引の正当性を担保し、内部監査や外部監査、あるいは上場審査などにおいて、要求された資料をスムーズに提出できる体制を整えることは、コーポレート・ガバナンスの観点からも極めて重要です。

2. 不適切な保管が招くリスク

これらの目的が達成されない、つまり不適切な保管が行われた場合に企業が直面するリスクは深刻です。

  • 法的リスク: 前述の訴訟での不利や行政罰に加え、許認可の取り消しなどに繋がる可能性も考えられます。
  • 経済的損失リスク: 有利な契約の更新漏れによる機会損失、逆に不利な条件での自動更新によるコスト増、支払い遅延によるペナルティ、二重契約による無駄な支出などが挙げられます。
  • 情報漏洩・紛失リスク: 企業の機密情報や取引先の重要情報が外部に流出することによる信用の失墜、ブランドイメージの毀損、そして多額の損害賠償請求に発展する可能性があります。
  • 業務非効率リスク: 契約書を探すための時間浪費、担当者不在時の業務停滞、意思決定の遅延などが常態化し、企業全体の生産性を低下させます。

したがって、契約書の適切な保管体制を構築するゴールは、単に書類を整理することではなく、「必要な契約情報を、必要な時に、必要な権限を持つ人が、安全かつ迅速に利用できる状態」を確立し、維持することにあるのです。この認識を持つことが、効果的な契約書保管方法を検討する上での出発点となります。

紙媒体での契約書保管 – ファイリングと物理的管理の鉄則

依然として多くの企業で主力となっている紙媒体の契約書。その保管においては、後で必要な時にすぐに見つけ出せる「検索性」と、紛失や劣化、情報漏洩を防ぐ「安全性」を両立させるための工夫が不可欠です。

1. ファイリングの基本ルールと効果的な分類方法

ファイリングの目的は、契約書を体系的に整理し、誰でも容易に目的の書類にアクセスできるようにすることです。そのためには、まず自社にとって最も合理的で分かりやすい「分類基準」を設定することが重要です。

  • 分類基準の設定例:
    • 契約相手先別: 取引先ごとにファイルを分け、社名や氏名の五十音順またはアルファベット順で並べる。
    • 契約締結日別: 年度別や月別にファイルを分け、その中で締結日順に並べる。
    • 契約の種類別: 売買契約、業務委託契約、秘密保持契約(NDA)など、契約の類型ごとに分類する。
    • 案件・プロジェクト別: 特定のプロジェクトに関連する契約書をまとめて管理する。
    • 主管部署別: 契約を主管する部署ごとに分類する。 これらの基準は単独で用いるだけでなく、組み合わせて使用することも効果的です(例:「年度別」の大分類の中に「契約相手先別」の小分類)。重要なのは、全社または関連部署で統一されたルールを定めることです。文書区分コード(例:IT-2024-A001)を用いるのも有効です。
  • 一貫性のあるラベリング: ファイルボックスや個別フォルダ、バインダーの背表紙などに、誰が見ても内容物が分かるようなラベルを貼ります。ラベルには、管理番号、契約書名、契約相手先、契約締結日、保管期間など、検索の手がかりとなる情報を統一されたフォーマットで記載しましょう。保存期限を明示したラベルを付けることで期限管理も徹底します。
  • 契約書管理台帳との連携: ファイリングした契約書が、具体的にどのキャビネットのどのファイルに保管されているのか、その物理的な保管場所情報を必ず契約書管理台帳に記録します。これにより、台帳で検索した契約書の原本にスムーズにアクセスできます。
  • 保管順序の最適化: 使用頻度の高い書類はアクセスしやすい位置へ配置します。期限管理の観点からは、保存期限の近い書類を目視で確認しやすいように目立たせる工夫も有効です。

2. 実践的なファイリング用品の選び方と使い方

契約書の量、種類、閲覧頻度、保管スペースなどを考慮して適切なものを選びましょう。

  • 個別フォルダ: 1契約ごとに書類を挟み込む形式。
  • ファイルボックス: 個別フォルダを立てて収納する箱。キャビネット内を整理しやすい。
  • バインダー(2穴、多穴)/リングファイル: 契約書に穴を開けて綴じる方式。穴を開ける際は、契約上の重要な印や文字にかからないよう注意が必要です。

3. 保管場所の選定と環境整備

契約書は機密情報を含む重要文書であり、長期間安全に保管するための環境整備が不可欠です。

セキュリティの確保

保管場所は、施錠可能なキャビネットや書庫、専用の保管室などを利用し、不正な持ち出しや盗難を防ぎます。アクセス権限を明確に定め、可能であれば入退室記録(ICカードや指紋認証)を取るなどの対策も有効です。管理部門が閲覧・編集権限を持ち、他部署は閲覧のみなど役割別に設定することも重要です。キャビネット開閉ログと照合し不審アクセスを検知する体制も検討しましょう。

防災・劣化対策

火災や水害、地震といった災害から契約書を守るため、耐火金庫や耐震性の高い書庫、耐火キャビネットの導入を検討します。立地選定では洪水や地震のリスクが低い地域を選び、ビルの階層も考慮します。紙の劣化を防ぐため、直射日光や蛍光灯の光が直接当たらず、高温多湿にならない環境(温度・湿度が管理された場所が理想)を選びます。防虫・防カビ対策も長期保管には重要であり、定期点検(年1回以上)も実施しましょう。

スペース効率と整理整頓

定期的な見直しと不要になった契約書の廃棄(適切な手続きを経た上で)を行い、保管スペースを効率的に利用します。

分散保管

本社と支社でバックアップコピーを保管するなど、一拠点災害時のデータ消失を防止する対策も考慮します。

4. 紙ベースでの保管・管理のメリット・デメリット

  • メリット: 書面の改ざんリスクが比較的低い、法的効力が視覚的に明確、インターネット環境がなくてもアクセスできる、原本が存在することによる安心感。
  • デメリット: 物理的な保管スペースが必要でコストが大きい、検索に時間がかかる、経年劣化や災害による紛失・消失リスク、複数人での同時閲覧や共有が難しい。

電子データでの契約書保管 – 電子帳簿保存法対応と実践ポイント

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や電子帳簿保存法の改正により、契約書を電子データで保管する動きが加速しています。電子保管は多くのメリットがある一方で、法的な要件の遵守と適切なセキュリティ対策が不可欠です。

1. 電子帳簿保存法の概要と契約書への適用

契約書の電子保管において最も重要な法律が「電子帳簿保存法」です。この法律では、国税関係書類(契約書も含まれる)を電子データで保存するためのルールが定められています。

  • 電子取引データ保存: 電子メールでの受領、クラウドサービス(電子契約サービス等)を利用して授受した契約書データなどが該当します。2024年1月からは、電子取引で受け取ったデータは、原則として電子データのまま保存することが義務化されました。
  • スキャナ保存: 紙で受け取った契約書をスキャナーやスマートフォンで読み取って電子化し、保存する場合です。これは任意対応ですが、ペーパーレス化を進める上で有効です。

これらの電子データを保存する際には、主に以下の要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保: 保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための措置です。
    • タイムスタンプが付与されたデータの授受・保存
    • データの訂正・削除の履歴が確認できるシステム、または訂正・削除ができないシステムを利用・保存
    • 改ざん防止のための事務処理規程を定め、それに沿った運用
  • 可視性の確保: 保存された電子データを、税務調査などの際に必要に応じて速やかに確認できる状態にしておくための要件です。
    • 保存場所に、電子計算機(PC等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、データを明瞭な状態で速やかに出力できること
    • 検索機能を確保すること(「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索条件として設定できること。※条件あり)

2. 電子契約の保管方法

電子契約サービスを利用して締結した契約書データは、通常、そのサービス上で保管されます。サービス選定時には、電子帳簿保存法の要件を満たしているか、セキュリティ対策、サービスの継続性を確認します。自社のファイルサーバー等にダウンロード保管する場合は、自ら法的要件を満たす運用体制を構築する必要があります。

3. 紙契約書のスキャナ保存(電子化して保管)

紙の契約書をスキャンする場合、スキャナ保存の要件(一定水準以上の解像度300dpi以上、カラー画像での読み取り(一般書類の場合)、タイムスタンプの付与、入力者情報の確認など)を満たす必要があります。PDF形式で保存し、重要文書は長期保存に適したPDF/A形式も検討します。スキャン時にOCR(光学的文字認識)処理を施すことで、画像データ内のテキスト情報が検索可能になり、利便性が向上します。ファイルサイズを最適化しつつ画質を維持する設定も重要です。要件を満たせば紙原本の廃棄も可能ですが、訴訟リスク等を考慮し慎重に判断すべきです。

4. 電子データのファイル管理と命名規則

  • フォルダ構成のルール化: 紙と同様に体系的で分かりやすいフォルダ構成ルール(例:取引先別/年度別/契約種別など)を定めます。フォルダ階層の深さを抑え、一覧性を高めることも意識しましょう。
  • ファイル名の標準化: 統一された命名規則(例:【契約締結日YYYYMMDD】契約書名_相手方名_管理番号.pdf、YYYYMMDD_取引先名_契約書種別_版数など)を設けます。日付は締結日または発効日を使用し、取引先名は法人登記上の正式名称を略さず記載します。
  • バージョン管理: 改訂時にはどのファイルが最新版かを明確に管理する仕組み(ファイル名に版数を付与など)が必要です。

5. 電子データのセキュリティ対策とバックアップ

  • アクセス権限設定: フォルダやファイルごとに、閲覧・編集・削除などの権限を必要最小限の担当者に限定します。部署・役職・プロジェクト単位で細かく設定し、最小権限の原則を徹底します。
  • セキュリティ対策: パスワード保護、データの暗号化(TLS/SSLによる通信暗号化、サーバー上のファイル暗号化AES256等)、ウイルス対策ソフト、不正アクセス監視システム、多要素認証(パスワード+ワンタイムパスワードやUSBトークン等)を導入します。
  • 操作ログ取得: 閲覧/ダウンロード/編集/削除操作をすべて記録し、定期監査でログをレビューします。
  • バックアップ: 定期的なバックアップは必須です。データセンターとクラウド双方にバックアップを保存するなど多重化し、複数世代を保持し、可能であれば遠隔地や異なる媒体に保管(3-2-1ルールなど)します。災害発生時の復旧手順書を整備し、訓練を通じて全担当者が迅速に対応できるよう備えます(BCP対応)。サーバー冗長化や高可用性クラスタ構成でシステムダウンを回避することも重要です。

6. 電子保管のメリット・デメリット

  • メリット: 物理スペース不要、検索性と共有性が高い、バックアップによるデータ保全が可能、BCP対策に有効。
  • デメリット: システム導入・維持コスト、厳格なセキュリティ対策の必要性、電子帳簿保存法などの法的要件への対応の複雑さ、サイバー攻撃やシステム障害のリスク。

契約書保管ルール策定と運用体制の構築 – 組織的な管理を実現するために

効果的な契約書保管方法を実現するためには、組織として統一された「保管ルール」を策定し、それを確実に運用していくための「体制」を構築することが不可欠です。

1. 社内保管ルールの必要性と策定ポイント

契約書保管ルールは、誰が読んでも理解でき、具体的にどのように行動すればよいかが明確になっている必要があります。分類マニュアルを作成し全担当者に周知徹底することも重要です。

  • 対象範囲の明確化: ルールの対象となる契約書を定義します。
  • 保管媒体の決定: 紙、電子、または併用か、基本方針を定めます。電子化を進める場合はスキャナ保存の対象や手順も含めます。
  • ファイリング・分類基準の具体化: 自社に合った分類基準、フォルダ構成、ファイル命名規則などを明記します。
  • 保管期間の設定: 法定保管期間を遵守し、社内独自の保管期間も設定し一覧化します。
  • 保管場所の指定: 紙の物理的保管場所と電子データの保存先を具体的に指定します。
  • アクセス権限の定義: 誰がどの契約書情報や原本・データにアクセスできるか、権限を具体的に定めます。
  • 更新・変更時の手続き: 新規契約、内容変更、終了・更新時に、誰がいつまでにどのような手順で情報を更新するか定めます。
  • 廃棄手順の明確化: 保管期間満了後の契約書について、廃棄の判断基準、承認プロセス(例:担当部署→法務部→管理部長承認)、安全な廃棄方法(シュレッダー、溶解処理、データ完全消去など)、廃棄記録の作成・保管方法(廃棄日、方法、担当者をシステムにログ保存し監査対応)を規定します。

2. 運用体制の確立と責任者の明確化

ルールを運用する体制がなければ意味がありません。契約書管理全体を統括する主管部署(例:総務部、法務部など)と責任者を明確に定めます。各部署にも担当者を決め、主管部署との連携方法や役割分担を明確にします。

3. 定期的な監査と見直し、改善

策定したルールが守られているか、形骸化していないかを確認するため、定期的な監査を実施します。監査結果に基づき問題点があれば改善策を講じます。運用状況分析(契約書登録件数、検索頻度、期限アラート対応率などをKPIとして定期可視化)を行い、PDCAサイクル(問題点抽出→ルール改定→教育→再評価を四半期ごと等)を回します。法令改正や事業内容の変化に合わせ、ルールや体制を定期的に見直し改訂する柔軟性も求められます。現場担当者からの改善要望を集約し、運用マニュアルやシステム設定に反映することも重要です。

4. 従業員への周知徹底と教育

作成したルールは全従業員、特に契約業務に関わる担当者に確実に周知徹底します。社内ポータル掲載、説明会、eラーニングなどを活用し、重要性を理解してもらいます。新入社員研修や定期的なコンプライアンス研修に契約書管理の内容を組み込むこと(オンボーディング)、操作手順やトラブルシューティングを文書化したマニュアル整備も有効です。問い合わせ窓口設置も運用を円滑にします。

手作業管理の限界と契約書管理システムの導入メリット・選定ポイント

紙ベースでのファイリングやExcel等を用いた手作業による契約書保管方法は、手軽に始められる一方で、企業規模の拡大や契約件数の増加に伴い、様々な限界点が露呈してきます。

1. 手作業保管が抱える共通の限界

  • ヒューマンエラーのリスク: ファイリングミス、台帳入力漏れ・ミス、期限管理の見落としなどが発生しやすく、重大な損失に繋がる可能性があります。
  • 検索・活用の非効率性: 紙の契約書は探し出すのに時間がかかり、Excel台帳もデータ量が増えると検索や複雑な条件での絞り込みが困難です。情報活用の限界は迅速な意思決定を阻害します。
  • セキュリティ面での脆弱性: 紙は不正持ち出しや災害時の原本消失リスクがあり、Excelファイルもコピーやメール送信が容易で情報漏洩リスクがあります。アクセスログ管理も不十分です。
  • 属人化の問題: 特定担当者に業務が集中し、「その人でなければ分からない」状態に陥りやすく、異動や退職で業務停滞や品質低下のリスクがあります。
  • 管理コストの増大: 保管スペースコスト(キャビネット購入費、保管スペース賃料)や人件費(ファイリング、入力、検索、期限管理、廃棄作業)が増加します。システム利用料、サーバー・バックアップ費用、運用サポート費といった電子保管コストと比較しROI試算(検索コスト削減、破棄漏れ防止によるリスク回避コストの定量化)も重要です。

2. 契約書管理システム導入による課題解決とメリット

契約書管理システムは、契約書情報と電子化された契約書ファイルを一元的に管理し、契約書のライフサイクル全体を効率的かつ安全にサポートする専門ツールです。

  • 一元管理と高度な検索機能: 紙・電子問わず契約情報をデータベース化し、全文検索や多様な条件(タグ検索、属性検索)で瞬時にアクセス可能になります。
  • 期限管理の自動化: 更新期限、終了期限などを自動でアラート通知(例:期限3ヶ月前、1ヶ月前など段階的に担当者へメール通知)し、管理漏れを防止します。契約条件変更時に関係者へ即時プッシュ通知する機能も有効です。
  • セキュリティ強化とアクセス制御: 詳細な権限設定、操作ログ管理で不正アクセスや情報漏洩を防止します。電子帳簿保存法の真実性担保(タイムスタンプ付与、訂正削除履歴の自動記録)や可視性担保(契約書原本と同等の見え方を保持し迅速に出力可能)にも対応します。
  • ワークフロー統合: 契約書の作成・申請から法務レビュー、経営判断、電子署名、保管、廃棄までをシステム上で連携し、効率化と内部統制を強化します。承認ルート自動化(組織図連携で上長承認者リスト自動取得、承認待ち可視化)も可能です。
  • ペーパーレス化とコスト削減: 電子契約との連携やスキャナ保存機能により、紙の利用を大幅に削減し、関連コストを低減します。

3. 契約書管理システムの選定基準

システム導入を検討する際は、以下のポイントを比較検証しましょう。

  • 電子帳簿保存法への対応: 真実性、可視性、検索性の各要件を満たしているか。
  • 検索・アラート機能の充実度: 全文検索、属性検索、期限アラート、更新履歴通知など。
  • ワークフロー機能の柔軟性: 自社の承認プロセスに合わせられるか。
  • セキュリティ: ISO27001やSOC2などのセキュリティ認証取得状況、暗号化、アクセス制御、ログ管理機能。
  • カスタマイズ性: 自社業務フローに合わせた項目追加やプロセス変更が容易か。
  • API連携: 会計ERP、CRM、グループウェアなど既存システムとの連携によるデータ連動が可能か。
  • 運用サポート体制: 導入研修、ヘルプデスク、定期バージョンアップを伴うサポート体制が整っているか。
  • 費用対効果: 導入・運用コストを抑えつつ、業務効率化やリスク低減効果が見込めるか。クラウド型かオンプレミス型かも含め比較検討します。

システム導入のタイミングは、契約書数が一定量を超え手作業管理に限界を感じ始めた時、コンプライアンス強化や内部統制向上が経営課題となった時、全社的なDX推進の一環として検討されることが多いでしょう。

まとめ – 最適な契約書保管でリスク低減と企業価値向上へ

本記事では、契約書の効果的な保管方法について、紙媒体でのファイリングの基本から、電子データ保管における法的要件と実践ポイント、社内ルール策定と運用体制構築、そして手作業の限界とシステム導入のメリット・選定ポイントまで解説しました。適切な「契約書 保管方法」を確立し、組織全体で確実に運用することは、企業の法的リスクを低減し、業務効率を高め、最終的には企業価値向上に繋がる重要な取り組みです。

紙と電子の特性を理解し、施錠書庫や耐火キャビネットでの物理的管理と、タイムスタンプや暗号化通信を備えたシステムによる電子保管を組み合わせたハイブリッド運用も有効な選択肢です。手作業による保管の限界を認識し、自社の状況に合わせて最適な保管ルールと運用体制を継続的に見直し、改善していくことが不可欠です。その上で、「契約書管理システム」の導入は、検索性向上、コンプライアンス遵守、リスク低減を同時に実現し、契約書管理業務全体のデジタルトランスフォーメーションを推進する極めて有効な手段となります。システム導入後は定期レビューとPDCA運用、破棄証跡管理、コスト試算を通じて、継続的な改善と費用対効果の最大化を図りましょう。

適切な契約書保管は、単なる「守り」の業務ではなく、企業の信頼性を高め、迅速な意思決定を支え、従業員がより創造的な業務に集中できる環境を整える、「攻め」の経営基盤強化の一環です。本記事が、貴社における契約書保管方法の見直しと、より良い管理体制構築への第一歩となれば幸いです。

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