【初心者向け】電子帳簿保存システムとは?電帳法をわかりやすく解説!導入メリット・選び方ガイド

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
「電子帳簿保存法」「電子帳簿保存システム」最近よく耳にするけれど、正直なところ、よくわからない。自社で何かしなければいけないのは理解しているが、何から手をつければ良いのか…多くの管理部門や決裁者の方が、このような課題認識をお持ちではないでしょうか。特に2024年からは、メール等で受け取った電子取引データ(請求書PDFなど)を電子データのまま保存することが全事業者で義務化されました。これは、企業規模を問わず対応が必須のルールです。しかし、過度に恐れる必要はありません。法律やシステムの要点は、基本を押さえれば理解可能です。この記事は、電子帳簿保存法の基礎知識が少ない初心者の方を対象に、専門用語を極力使わず、システムの基本、メリット、選び方のポイントをわかりやすく解説します。この記事を読めば、最低限知るべきルール、システムの役割と利点、そして自社に合ったシステムの選び方がわかり、導入検討の第一歩を踏み出すための知識が得られます。漠然とした不安を解消し、具体的な行動に移すための一助となれば幸いです。
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会社名 | 特徴 | 費用 | 機能 |
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株式会社invox |
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ミニマム:初期費用0円、月額基本料金1,980円(税抜)、データ化料金(AI OCR)20円(税抜) ベーシック:初期費用0円、月額基本料金9,800円(税抜)、データ化料金(AI OCR)20円(税抜)、(オペレータ)100円(税抜) プロフェッショナル:初期費用0円、月額基本料金29,800円(税抜)、データ化料金(AI OCR)20円(税抜)、(オペレータ)100円(税抜) |
・国税関係書類や電子取引情報を取り込むと、検索要件に必要な日付・金額・取引先を自動でデータ化 ミニマム: ・チャット、メールサポート ・訂正削除の履歴を記録 ・検索要件に対応 ・一括ダウンロード、索引簿形式データ出力 ベーシック:ミニマムに下記機能が追加 ・オンライン会議 ・書類へのファイル添付 ・EDIデータの取り込み ・ファイル名からの情報読み取り ・タイムスタンプ ・拡張項目設定 ・指定箇所の読み取りて下記 プロフェッショナル:ベーシックに下記機能が追加 ・APIからの書類登録 |
株式会社インフォディオ |
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月額9000円から ※詳細は要お問い合わせ |
・タイムスタンプ標準搭載 ・取引先、取引日付、取引金額の自動データ化と検索 ・請求書や領収書だけなく、契約書・見積書・納品書などの帳票を保存・データ化 ・電子取引・スキャナ保存に対応 |
株式会社オプティム |
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無料トライアルあり スターターS1:月額 9,980円(税抜) スターターS2:月額 19,800円(税抜) スターターS3:月額 29,800円(税抜) ビジネスB1:月額 34,800円(税抜) ビジネスB2:月額 39,800円(税抜) ビジネスB3:月額 49,800円(税抜) |
・請求書・領収書・注文書・見積書・送り状・その他のデータ化に対応 ・電子帳簿保存法・インボイス制度の保存要件に対応 ・EDI取り込み ・全文検索 ・メール取り込み機能 ・SharePoint連携 ・CSV出力 ・関連書類の紐付け ・独自書式のAI解析対応 ・編集履歴の保存 ・タイムスタンプ ・AI検索 |
株式会社LayerX |
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無料プラン:0円 有料プラン:12,000円(税別)〜 |
・AI-OCRの入力補完 ・書類区分・解像度の自動判定 ・適格事業者登録番号の自動判定 ・保存書類へのタイムスタンプ付与 ・外貨対応 ・カテゴリー別の書類管理 ・拡張項目での書類管理 ・メールから書類取り込み ・書類項目のCSV/PDF出力 ・書類項目の一括変更 ・書類確認・編集ロック機能 ・ユーザー閲覧制限 ・カテゴリー別の権限管理 ・SAML認証・IP制限 ・API連携 |
株式会社ラクス |
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ライト:月額17,000円(税抜)~ スタンダード:月額28,500円(税抜)~ プロ:要お問い合わせ ※「楽楽明細」で受け取った書類のみ保存・一元管理できる無料プランあり |
・請求書や領収書、納品書などのあらゆる書類を、まとめて一元管理・保存 ・ファイル名などの項目を自動で読み取る「AI-OCR機能」 ・検索要件 ・認定タイムスタンプ |
JFEシステムズ株式会社 |
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要お問い合わせ |
・上位システム・ERP・周辺システムのデータ登録 ・関連データの連携保存 ・上位の外部システムの参照 ・証憑ファイルの一括ダウンロード |
ウイングアーク1st株式会社 |
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invoiceAgent 文書管理プラン:月額3万円/10ユーザー(税別)~ invoiceAgent AI OCRプラン(クラウド):月額3万円/OCR 年間96,000画像(税別)~ invoiceAgent AI OCRプラン(オンプレミス):月額25万円/OCR 500画像/時(税別)~ ※無償トライアルあり |
・タイムスタンプ付与 ・複合条件下での検索 ・証跡管理 |
Sansan株式会社 |
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スモールビジネスプラン(従業員数100名以下):請求書毎月100件まで無料 従業員数101名以上:要お問い合わせ |
・請求書の正確なデータ化 ・スキャン代行 ・代理受領 ・受領通知・リマインド ・請求書の一覧表示 ・コメントやメモの付与 ・ステータス管理 ・変更履歴・対応履歴の保存 ・社内アナウンス・リマインド ・請求書以外のファイル添付 ・支払通知・管理 ・法人カード発行 ・請求書の発行 ・請求書の検索 ・仕訳入力 ・タイムスタンプ ・請求書原本の保管 |
株式会社マネーフォワード |
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スモールビジネス(小規模事業者向け):年額プラン2,980円/月、月額プラン3,980円/月 ビジネス(中小企業向け):年額プラン4,980円/月、月額プラン5,980円/月 IPO準備・中堅〜上場企業向け:要お問い合わせ |
・受領代行 ・スキャナ保存 ・電子取引データ保存 ・AI-OCRで登録番号を自動判定 ・API連携 ・支払調書作成 |
フリー株式会社 |
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要お問い合わせ |
・請求書の自動格納 ・電子帳簿保存法やインボイス対応した帳票の一括保管 ・証憑の保管フォルダカスタマイズ ・請求書の読み取り・仕訳を自動対応 |
株式会社TOKIUM |
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初期費用+基本利用料(1万円/月(税別)〜)+国税関係書類の件数に基づく従量課金制 ※詳細は要お問い合わせ |
・オンラインで書類の一元管理 ・関連書類の紐づけ ・原本の代理保管 |
大興電子通信株式会社 |
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要お問い合わせ ※無料トライアルあり |
・認定タイムスタンプ機能 ・検索機能 ・処理ログ、操作ログの確認、抽出 ・データ入力代行 ・スキャンサービス |
株式会社オービックビジネスコンサルタント |
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月額あたり利用料:7,000円~ 年間利用料:84,000円~ スペック契約発行数(年間):600 ライセンス構成:管理者1ライセンス ※スペック契約発行数が600を超える場合や管理者ライセンスを追加する場合の価格は要お問い合わせ |
・請求データの自動取込 ・電子請求書・納品書発行(PDF) ・Web公開配信 ・メール添付配信 ・スケジュール設定・自動配信 ・即時発行・再送 ・ステータス管理 ・タイムスタンプ自動付与 ・電帳法対応(原本控えの保管) ・オリジナルフォーム(指定用紙の電子化) ・メールアドレス収集 ・Peppol対応 ・配信メール通知 ・請求書ダウンロード(PDF) ・お知らせ・掲示板 ・メール送信先の追加・変更 |
株式会社日立ソリューションズ |
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要お問い合わせ |
・データアーカイブ機能 ・電子帳票機能 ・帳票管理機能 ・ユーザー管理機能 ・情報流出防止、不正利用防止 ・帳票運用実態の確認 ・参照機能 ・検索機能 ・書き込み機能 ・フリーハンド書き込み ・CSV・PDF出力 ・メディア出力 |
コクヨ株式会社 |
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@Tovas Master+ スタンダードプラン:初期費用120,000円+月額費用12,000円+送信通数、従量課金 ※詳細は要お問い合わせ |
・FAX送信 ・ファイル送信 ・請求書発行代行 ・私書箱 ・往復便 |
株式会社インフォマート |
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月額利用料:23,000円(税別)~+初期費用100,000円(税別)~ ※詳細は要お問い合わせ |
・公共料金明細を自動取り込み ・支払通知書機能 ・会計システムへの自動取り込み ・関連書類の添付機能 ・紙の請求書の一元管理 ・入金消込システム ・請求書の自動発行 ・郵送代行 |
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 |
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初期費用・カスタマイズ+月額費用(固定費+従量料金) ※詳細は要お問い合わせ |
・システム連携 ・FAX連携 ・受け取り確認機能 ・HTTPS接続(SSL通信)で通信を暗号化 ・取引先情報の収集代行 |
株式会社ネクスウェイ |
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初期加入料金:0円 月額基本料金:10,000円(税別)〜/月 ※送信1ページあたりの通信料金がかかる |
・送達管理(再送・転送) ・不達時のリダイヤル ・送信日時指定 ・ECMエラー補正 ・特殊宛先への送信 ・途中電文出力 |
日鉄日立システムソリューションズ株式会社 |
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パッケージの標準価格(Light Edition):100万円(税別)~ ※詳細は要お問い合わせ |
・帳票作成機能 ・帳票の取り込み ・電子保存機能 ・帳票出力機能 ・データの高速検索 ・帳票処理ワークフロー ・電子検印 |
インフォテック株式会社 |
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Create!Form Design:1ライセンス200,000円(税別) +帳票出力用ランタイム、システムソリューションの料金 ※詳細は要お問い合わせ |
・帳票デザイン ・帳票とデータの紐付け ・PDF、HTML(SVG)、Excel へのファイル出力 |
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まずはここから!「電子帳簿保存法」って何?3つのポイントで簡単理解
「電帳法」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、ここでは経営層や管理部門が押さえるべき法律のポイントを3つに絞って解説します。複雑な条文ではなく、「何が求められているのか」をシンプルに理解しましょう。
1. 電子帳簿保存法の目的とは? この法律は、税金に関する帳簿や書類(請求書、領収書、仕訳帳など)を、一定のルール下で電子データとして保存することを認めるものです。目的は、ペーパーレス化による企業のコスト削減や業務効率化の促進、そして電子データの信頼性を確保し、税務調査などを円滑に進めることにあります。単なる規制ではなく、デジタル化を推進するための法律という側面も持っています。
2. 知っておくべき「3つの保存区分」 電帳法には、保存するデータの種類に応じて主に3つの区分があります。特に②スキャナ保存と③電子取引が重要です。
- ① 電子帳簿等保存: 会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿・書類をそのまま保存するルールです(例:会計ソフトの仕訳帳データ)。
- ② スキャナ保存: 紙で受け取った書類(請求書、領収書など)をスキャンして画像データで保存するルールです。ペーパーレス化に繋がりますが、導入は任意です。ただし、保存する場合は解像度やタイムスタンプ付与など、細かい要件を守る必要があります。
- ③ 電子取引データ保存: これが最重要かつ全事業者で義務化されているルールです。メール添付のPDF請求書、Webダウンロードした領収書など、電子的に授受した取引データは、必ず電子データのまま、特定の要件を満たして保存しなければなりません。紙への印刷保存は原則不可です。
3. 対応しない場合のリスク 義務化された電子取引データ保存などの要件を満たさない場合、そのデータは税法上の証拠書類と認められないリスクがあります。これにより、青色申告の承認取り消しや追徴課税といった直接的なペナルティを受ける可能性があります。また、コンプライアンス違反とみなされ、企業の社会的信用が低下する恐れもあります。法令遵守は、経営リスク管理の重要な要素です。電子帳簿保存法への対応は、単なる事務作業ではなく、企業の信頼性と持続可能性を守るための必須事項なのです。したがって、これらの区分と要件を理解し、適切に対応することが極めて重要となります。
で、「電子帳簿保存システム」って何をしてくれるの?役割をわかりやすく解説
電子帳簿保存法のルール、特に電子取引データ保存の義務化は理解できたけれど、「じゃあ具体的にどうすればいいの?」「電子帳簿保存システムって、結局何をしてくれるの?」という疑問が湧いてきますよね。ここでは、システムの役割をわかりやすく解説します。
1. なぜシステムが必要?ファイル保存だけではダメな理由 「受け取ったPDF請求書を、そのままパソコンのフォルダに保存しておけばいいのでは?」と考えるかもしれません。しかし、電帳法は単にデータを保存するだけでなく、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの大きな要件を満たすことを求めています。
- 真実性の確保: 保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための措置です。例えば、タイムスタンプ(データが存在した時刻を証明する電子的なスタンプ)の付与や、訂正・削除の履歴が確認できることなどが求められます。
- 可視性の確保: 税務調査などで必要になった際に、データをすぐに見つけ出し、画面や書面で明瞭に確認できるようにしておくことです。具体的には、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる機能などが要求されます。 これらの要件を、通常のファイルサーバーやフォルダ管理、Excel台帳、手作業での運用だけで、継続的かつ確実に満たすことは非常に困難であり、ヒューマンエラーや管理の手間も増大します。そこで、これらの法的要件を満たす機能を標準で備え、安全かつ効率的な電子保存を実現するために開発されたのが電子帳簿保存システムなのです。
2. システムの役割①:法令遵守をサポート 電子帳簿保存システムの最も基本的な役割は、ユーザーが複雑な法律の要件を意識しなくても、法令に準拠した形でデータを保存・管理できるように支援することです。
- 真実性の確保支援:
- タイムスタンプ付与: システムが自動的に、あるいは簡単な操作でタイムスタンプを付与します。
- 訂正・削除履歴の管理: データの変更履歴を自動で記録・保存したり、そもそも訂正・削除ができない設定にしたりできます。
- 可視性の確保支援:
- 検索機能: 法定の検索項目(日付・金額・取引先)での検索機能を標準で備えています。範囲指定や複数条件での検索も可能です。
- データ管理: 取り込んだデータを適切に整理・保管し、必要に応じて速やかに表示・出力できます。
3. システムの役割②:業務効率化を実現 システムは、法令遵守だけでなく、日々の面倒な業務を効率化する役割も果たします。
- 書類検索時間の短縮: 「あの請求書どこだっけ?」という検索時間をほぼゼロにできます。
- データ入力の自動化・省力化: OCR機能で画像から文字情報を読み取り、データ化を支援します。
- 承認プロセスの電子化: ワークフロー機能で、紙の回覧やハンコリレーをなくし、承認スピードを向上させます。
- 会計ソフト連携: 仕訳データを会計ソフトに連携し、二重入力の手間を削減します。
このように、電子帳簿保存システムは、法令遵守という守りの側面と、業務効率化という攻めの側面の両方を支援する、現代の企業活動に不可欠なツールと言えるでしょう。
導入すると何が良いの?わかりやすいメリット5選
電子帳簿保存システムの導入は、法律で求められているから仕方なく…というネガティブな側面だけではありません。むしろ、企業経営にとって多くのプラスの効果、つまり明確なメリットがあります。ここでは、システム導入によって得られる主なメリットを5つに絞って、わかりやすく解説します。これらを理解することで、システム導入を「コスト」ではなく「投資」として捉えることができるでしょう。
- メリット①:法令遵守と税務リスクの低減による「安心感」 これが最も基本的かつ重要なメリットです。システムを活用することで、電子帳簿保存法が定める複雑な保存要件(真実性の確保、可視性の確保など)を確実に満たすことができます。これにより、意図しない法令違反のリスクを大幅に減らし、税務調査などにも適切かつスムーズに対応できるようになります。追徴課税や青色申告承認取り消しといった経営リスクを回避できることは、企業にとって大きな「安心」材料となります。コンプライアンス体制が整備されていることは、企業の社会的信用にも繋がります。
- メリット②:業務プロセスの「スピードアップ」と「効率化」 紙の書類を探す時間、請求書情報を手入力する時間、承認印をもらうために書類を持って歩き回る時間…。これらの非効率な時間が大幅に削減されます。システム上でデータは瞬時に検索可能となり、OCR機能や会計ソフト連携によりデータ入力作業は自動化・省力化されます。ワークフロー機能を使えば、承認プロセスも電子化され、迅速化します。結果として、担当者はより創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになり、組織全体の生産性が向上します。
- メリット③:ペーパーレス化による「コスト削減」 紙の利用には、紙代、印刷費(インク・トナー)、郵送費、ファイルやバインダー、キャビネットの購入費、そして書類を保管するためのオフィススペースや倉庫の賃料・管理費など、様々なコストが発生しています。電子帳簿保存システムを導入し、ペーパーレス化を推進することで、これらの物理的なコストを確実に削減できます。特に書類の量が多い企業ほど、その削減効果は大きく、年間で見れば相当な金額になることも珍しくありません。削減できたコストは、企業の利益改善に直結します。
- メリット④:情報管理体制の強化による「ガバナンス向上」 請求書などの取引情報は企業の重要な資産であり、機密情報です。電子帳簿保存システムでは、データは一元的に管理され、アクセス権限をユーザーごとに細かく設定できます。また、誰がいつ、どのような操作を行ったかのログ(証跡)が記録されるため、不正なアクセスや改ざんを抑止し、内部統制を強化することができます。紙の書類のように紛失したり、盗難されたりするリスクも低減できます。これは、企業全体のガバナンス(企業統治)レベルの向上に貢献します。
- メリット⑤:「多様な働き方」の実現と「事業継続性」の確保 システム(特にクラウド型)を導入することで、時間や場所にとらわれずに請求書関連業務を行うことが可能になります。これは、テレワークやリモートワークといった柔軟な働き方を推進する上で非常に有効です。また、自然災害や感染症拡大など、不測の事態でオフィスに出社できなくなった場合でも、事業を継続するための重要なインフラ(BCP:事業継続計画)となり得ます。場所に縛られない業務体制は、従業員の満足度向上や人材確保の観点からもメリットがあります。
これらのメリットを理解し、自社の課題と照らし合わせることで、システム導入の意義をより深く認識できるはずです。
どうやって選ぶ?初心者向けシステム選びのポイント【決定版】
「電子帳簿保存システムを導入するメリットはわかったけれど、たくさんある製品の中から、どうやって自社に合ったものを選べばいいのだろう?」これは、導入を検討する上で誰もが直面する悩みです。ここでは、システム選びで失敗しないために、特に初心者の方が押さえておくべき5つの重要なチェックポイントを解説します。このポイントに沿って比較検討を進めれば、自社に最適なシステムが見えてくるはずです。
- ポイント①:【最重要】法令要件への対応状況
- 何よりもまず、導入候補のシステムが最新の電子帳簿保存法の要件にきちんと対応しているかを確認しましょう。特に、全事業者必須の「電子取引データ保存」の要件(真実性・可視性の確保)を満たしているかは絶対条件です。もし紙の書類も電子化したい場合は、「スキャナ保存」の要件に対応しているかも確認が必要です。
- JIIMA認証は、システムが法的要件を満たしているかどうかの客観的な目安になります。認証マークの有無と、それが自社が必要とする保存区分(電子取引/スキャナ保存)に対応しているかを確認しましょう。ただし、認証がなくても要件を満たすシステムは存在しますので、最終的にはベンダーに直接確認することが重要です。
- ポイント②:自社の業務に必要な「機能」の過不足
- システムによって搭載されている機能は多種多様です。自社が「システムを使って何をしたいか」「どの業務を効率化したいか」を明確にし、それに必要な機能が備わっているかを確認します。
- 基本機能: データ取込方法(PDFアップロード、スキャン)、検索機能(日付・金額・取引先の必須3項目、範囲指定やAND検索が可能か)など。
- 付加機能(例): OCR機能(精度はどうか)、会計ソフト連携(利用中のソフトに対応しているか、連携方法は)、ワークフロー機能(承認ルート設定の柔軟性は)、他システムとのAPI連携など。
- 多機能=良いシステムとは限りません。使わない機能が多いとコストが無駄になる可能性もあります。自社の規模や業務フローに合わせて、必要十分な機能を見極めることが大切です。
- ポイント③:誰でも「使いやすい」か?(操作性・UI/UX)
- システムは導入して終わりではなく、日々利用するものです。画面が見やすく、直感的でわかりやすい操作性であることは非常に重要です。特にITツールに不慣れな従業員でも抵抗なく使えるような、シンプルなデザインや操作フローが望ましいでしょう。
- 必ずデモや無料トライアルを試す: カタログだけではわからない実際の使用感を確かめるため、複数のシステムを実際に操作してみることを強く推奨します。操作のしやすさ、画面の見やすさ、レスポンス速度などを比較検討しましょう。
- ポイント④:導入後も安心できる「サポート体制」
- 導入時の設定や操作方法、運用開始後に発生する疑問やトラブルなどに、迅速かつ丁寧に対応してくれるサポート体制があるかは、安心してシステムを活用するために不可欠です。
- 確認事項: サポート窓口(電話、メール、チャット等)、対応時間、サポート範囲、FAQやマニュアルの充実度、導入支援の内容などを確認しましょう。特に導入初期のサポートが手厚いと安心です。
- ポイント⑤:「費用」と「導入効果」のバランス
- システムの費用体系(初期費用、月額/年額利用料、オプション費用など)を確認し、トータルコストを把握します。利用ユーザー数やデータ量に応じた従量課金プランなどもありますので、自社の利用状況に合った料金プランを選びましょう。
- 費用対効果の検討: 単純な価格の安さだけでなく、システム導入によって得られる効果(コスト削減額、業務効率化による人件費換算効果など)を試算し、投資に見合う価値があるかを判断します。長期的な視点で検討することが重要です。
これらのポイントを総合的に評価し、複数のシステムを比較検討することで、自社にとって最適な電子帳簿保存システムを選び出すことができるでしょう。
システム導入後の運用ポイント:効果を最大化するために
最適な電子帳簿保存システムを選定し、無事に導入が完了しても、それだけで自動的に業務が改善されるわけではありません。システムを形骸化させず、その導入効果を最大限に引き出すためには、導入後の運用体制の整備と継続的な取り組みが非常に重要になります。「導入したはいいけれど、うまく活用できていない…」とならないために、押さえておくべき運用上のポイントを解説します。
- 1. 運用ルールの明確化と周知徹底
- システムを導入しただけでは、従業員がどのように使えば良いか迷ってしまいます。電子データの命名規則、フォルダ構成(システムによっては不要な場合も)、スキャナ保存を行う際の具体的な手順(担当者、スキャン品質、タイムスタンプ付与タイミング、原本の保管・破棄ルールなど)、承認ワークフローの手順、アクセス権限の範囲など、自社における具体的な運用ルールを明確に定めましょう。
- 定めたルールは、マニュアルとして整備し、関係する従業員全員に周知徹底することが不可欠です。ルールは、最初から完璧を目指すのではなく、シンプルで守りやすいものから始め、運用しながら見直していくのが良いでしょう。
- 2. 利用者への十分な教育とサポート
- 新しいシステムや業務フローに対する従業員の理解と協力がなければ、導入は成功しません。導入時には、システムの基本的な操作方法だけでなく、なぜシステムを導入するのか、新しい運用ルールは何なのかといった背景や目的も含めて、丁寧な研修や説明会を実施しましょう。
- 導入後も、操作に不慣れな従業員へのフォローアップや、よくある質問(FAQ)の共有、社内での問い合わせ窓口設置など、継続的なサポート体制を整えることが、スムーズな定着を促します。
- 3. 関係部門との連携強化
- 請求書業務は、経理部門だけでなく、営業、購買、各事業部門、情報システム部門など、多くの部門が関わります。システム導入後の新しい業務フローや役割分担について、関係部門と事前にしっかりと連携し、協力体制を築くことが重要です。部門間の認識のずれや連携不足は、運用上のボトルネックになりがちです。
- 4. 定期的な効果測定と改善活動
- 「導入して終わり」にしないことが最も重要です。システム導入によって実際にどのような効果が出ているのか(または、出ていないのか)を定期的に測定・評価しましょう。例えば、「請求書処理時間の変化」「検索時間の短縮効果」「印刷・郵送コストの削減額」「従業員からの定性的な評価(使いやすさ、負担感など)」といった指標を設定し、導入効果を可視化します。
- 測定結果や、実際にシステムを利用している現場の担当者からのフィードバック(意見や改善要望)をもとに、運用ルールやシステムの設定、業務フローなどを継続的に見直し、改善していく姿勢が大切です。これにより、システムをより自社の業務にフィットさせ、その価値を最大限に高めていくことができます。
これらの運用ポイントを着実に実行していくことで、電子帳簿保存システムは単なる「法令対応ツール」ではなく、「業務を変革し、企業の成長を支える基盤」となり得るのです。
まとめ
本記事では、電子帳簿保存法と電子帳簿保存システムの基本について、特に初心者の方に向けてわかりやすく解説しました。電子取引データの電子保存義務化により、電帳法への対応は全事業者にとって必須です。しかしそれは、業務効率化やコスト削減、ガバナンス強化を実現するチャンスでもあります。その鍵を握るのが電子帳簿保存システムです。システムは、複雑な法的要件への対応を支援し、日々の業務を効率化します。システム選びでは、①法令対応 ②機能 ③操作性 ④サポート ⑤費用対効果の5つのポイントを確認し、自社に最適なものを選びましょう。そして導入後は、運用ルール整備、教育、効果測定と改善を継続することが重要です。この記事が、皆様のシステム導入への不安を解消し、具体的な第一歩を踏み出す後押しとなれば幸いです。