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SFA JOURNAL by ネクストSFA

更新日:2025/11/14 

社食サービスの経費は、月3,500円。要件や上限についても解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

従業員の満足度向上や健康経営の推進を目的に、福利厚生として社食の導入を検討する企業が増えています。「従業員のために食事補助を提供したいが、その費用はどこまで経費として認められるのか」「月3,500円という上限の話は聞くけれど、具体的な要件がよくわからない」といった疑問をお持ちの経理・総務担当者の方も多いのではないでしょうか。社食の費用は、会社の税負担にも関わる重要なポイントです。本記事では、国税庁が定める社食の経費計上に関する要件や上限額、給与課税されるケース、具体的な仕訳例まで、担当者が知りたい情報を網羅的に解説します。

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社食の費用は「福利厚生費」として経費計上できる

企業が従業員のために提供する社食や食事補助は、単なるコストではありません。一定の要件を満たすことで、税法上の「福利厚生費」として経費計上が可能です。福利厚生費は、給与とは異なり、従業員の所得税や社会保険料の対象外となる非課税の扱いです。これは、企業が従業員の労働環境や福祉の向上を目的として支出する費用であり、事業運営に必要な経費と見なされるためです。この制度を正しく活用することは、企業にとって大きな節税メリットにつながります。次の項目では、なぜ社食の経費計上が節税効果を生むのか、その具体的な仕組みについて詳しく見ていきましょう。

なぜ社食の経費計上が節税につながるのか

社食費用を「福利厚生費」として処理することで、会社は法人税を減らし、従業員は税負担なしで食事補助を受けられるため、会社と個人の双方に金銭的なメリットが生まれます。

この仕組みのポイントは、「給与」と「福利厚生費」の税務上の扱いの違いにあります。

  • 給与として渡す場合(現金支給など)
    • 会社:経費にはなるが、社会保険料の会社負担分が増える。
    • 従業員:所得税・住民税・社会保険料がかかり、手取りが減る。
  • 福利厚生費として渡す場合(食事の現物支給)
    • 会社:経費計上で法人税を圧縮できる。社会保険料の負担も増えない。
    • 従業員:税金や社会保険料がかからないため、補助額がまるごと得になる。

このように、同じ金額を還元するなら、福利厚生費を活用したほうが資金効率が圧倒的に良くなります。

【最重要】社食を経費にするための非課税要件とは?

社食費用を福利厚生費として認めてもらうためには、以下の「2つの要件」を必ず両方とも満たさなければなりません。

これらは「特定の社員への特別扱い」や「実質的な給与の隠蔽」を防ぐためのルールです。どちらか一つでも欠けると、全額が給与として課税対象になります。

要件1:従業員が食事代の「半分以上」を負担していること

従業員は、食事の価格(お弁当代や材料費など)の 50%以上 を自分で支払う必要があります。会社が全額を負担することはできません。

例:1食800円のお弁当の場合

  • 従業員の負担:400円以上
  • 会社の負担:400円以下

要件2:会社の負担額が「月額3,500円(税抜)以下」であること

会社が補助できる金額(食事代から従業員負担分を引いた差額)には上限があり、従業員1人あたり 月額3,500円(税抜)まで と決まっています。

計算例: 1食につき会社が300円を補助する場合、月に11回利用すると3,300円でOKですが、12回利用すると3,600円となりNG(課税対象)となります。

注意!社食の経費が認められない(給与課税される)3つのケース

社食の非課税要件を正しく理解していても、実際の運用で意図せずルールから外れてしまうことがあります。経費として認められず、福利厚生費が「給与」と判断された場合、従業員の手取りが減るだけでなく、企業は追加の源泉所得税や社会保険料の納付義務を負う可能性があります。こうした事態を避けるためにも、担当者はどのようなケースが給与課税の対象となるのかを事前に把握しておくことが重要です。ここでは、実務上陥りやすい典型的な3つのケースを紹介します。これらの事例を参考に、自社の社食制度が適切に運用されているか、改めて確認してみてください。

ケース1:企業の負担額が月額3,500円を超えている

もっとも注意が必要なケースです。上限(3,500円)を1円でも超えると、超過分だけでなく、その月に会社が負担した「全額」が給与扱いになります。

  • NG例: 会社負担が月4,000円になった。
    • ◎ 4,000円すべてが給与として課税
    • × 差額の500円だけ課税

ケース2:従業員の負担が食事代の半分未満である

会社の負担額が月3,500円以下であっても、

従業員の負担が半分未満であれば福利厚生費とは認められません。

  • NG例: 1食600円の食事で、会社が400円(負担率約67%)負担した。
    • 月額上限内でも、全額給与課税となります。

ケース3:現金で食事手当を支給している

福利厚生費として認められるのは、あくまで「食事の現物支給(お弁当、食堂での提供、食事券など)」に限られます。現金の支給は、使い道が自由であるため、金額に関わらずすべて「給与」とみなされます。

【経理担当者向け】社食の経費計上に使う勘定科目と仕訳例

要件を満たした社食費用の勘定科目は、一般的に「福利厚生費」を使用します。

従業員からの代金回収方法(給与天引きか、現金徴収か)によって仕訳が異なるため、以下の表を参考にしてください。

前提: 業者へのお弁当代10,000円(会社負担3,500円/従業員負担6,500円)を処理する場合

パターンタイミング借方(左側)貸方(右側)解説
A. 給与天引き業者への支払時福利厚生費 3,500
立替金 6,500
現金預金 10,000一旦、従業員負担分を会社が立て替えます。
給与支払時給与手当 xxx立替金 6,500
(他 預り金等)
給与から天引きして立替金を消し込みます。
B. 現金徴収従業員から回収時現金 6,500預り金 6,500従業員から受け取ったお金を預り金とします。
業者への支払時福利厚生費 3,500
預り金 6,500
現金預金 10,000会社負担分と預り金を合わせて支払います。

勘定科目は「福利厚生費」が一般的

国税庁の非課税要件をすべて満たしている社食の費用について、企業が負担する金額は、会計上「福利厚生費」という勘定科目で処理するのが最も一般的です。福利厚生費は、販売費及び一般管理費に属する経費科目であり、損益計算書上で費用として計上されます。これにより、企業の課税所得が減少し、結果的に法人税の節税につながります。万が一、非課税要件を満たせず給与課税の対象となった場合は、企業負担分を「給与手当」などの科目で処理し、源泉徴収の対象として扱う必要があります。勘定科目を正しく使い分けることは、企業の財務状況を正確に示すだけでなく、税務上のコンプライアンスを遵守する上でも非常に重要です。

ケース別・社食の経費に関する仕訳例(従業員から現金徴収する場合/給与天引きする場合)

社食の会計処理は、従業員から食事代をどのように徴収するかによって仕訳の方法が異なります。ここでは、弁当業者に食事代金10,000円(内訳:企業負担3,500円、従業員負担6,500円)を支払うケースを想定し、「給与天引き」と「現金徴収」の2パターンの仕訳例を表で示します。給与天引きの場合は、一度従業員の負担分を「預り金」または「立替金」として処理し、給与支払い時に相殺します。現金徴収の場合は、徴収した現金と業者への支払いをそれぞれ記録します。自社の運用方法に合わせて、適切な仕訳を行いましょう。

取引内容借方貸方
【給与天引きの場合】
弁当業者へ代金を支払った時福利厚生費 3,500円 立替金 6,500円現金及び預金 10,000円
給与支払い時(天引き)給与手当 XXX円立替金 6,500円 (その他、預り金・現預金など)
【現金徴収の場合】
従業員から現金で徴収した時現金及び預金 6,500円預り金 6,500円
弁当業者へ代金を支払った時福利厚生費 3,500円 預り金 6,500円現金及び預金 10,000円

こんな場合はどうなる?社食の経費に関するQ&A

社食を経費として計上するにあたり、担当者が疑問に思いがちな点をまとめました。

Q1. 社食の費用は、全額を会社の経費(福利厚生費)にできますか?

A. いいえ、全額はできません。 会社が全額を負担した場合、それは「福利厚生費」ではなく「給与」として扱われます。非課税の福利厚生費にするには、必ず「従業員が食事代の半分以上を負担する」必要があります。(※ただし、業務命令による残業食や宿直食は例外的に全額経費計上が認められます)

Q2. 経費にするための条件を簡単に教えてください。

A. 以下の2つを両方とも満たす必要があります。

  1. 従業員が食事代の50%(半分)以上を負担していること。
  2. 会社が補助する金額が、従業員1人あたり月額3,500円(税抜)以下であること。

Q3. 現金で支給する「食事手当」も経費(福利厚生費)になりますか?

A. いいえ、なりません。 「食事手当」や「ランチ代補助」といった名目で現金を支給すると、税務上はすべて「給与」として扱われ、従業員の所得税や社会保険料の対象となります。経費(福利厚生費)にするには、必ず食事そのもの(現物)を提供する必要があります。

Q4. もし条件(要件)を満たせなかったら、どうなりますか?

A. 会社が負担した金額の「全額」が、給与として課税されます。 例えば、月額3,500円の上限を超えて4,000円を補助した場合、差額の500円ではなく、4,000円すべてが給与扱いとなります。これにより従業員の手取りが減るだけでなく、会社も源泉徴収義務違反や社会保険料の追加負担を求められるリスクがあります。

まとめ:要件を正しく理解し、社食の経費メリットを最大化しよう

本記事では、社食の費用を経費として計上するための税務上のルールについて詳しく解説しました。重要なポイントは、企業が福利厚生費として非課税で食事補助を行うためには、「従業員が食事代の半分以上を負担すること」と、「企業の月額負担額が3,500円(税抜)以下であること」という2つの要件を同時に満たす必要がある点です。これらの要件から外れてしまうと、補助額の全額が給与とみなされ、意図せず従業員と企業の双方に税負担が発生するリスクがあります。社食制度は、適切に運用すれば従業員満足度を向上させつつ、企業にとっては節税にもつながる有効な施策です。この記事を参考に、自社の制度が要件を遵守できているかを確認し、必要に応じて税理士などの専門家にも相談しながら、社食がもたらす経費上のメリットを最大限に活用してください。

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