人事管理システムでデータ分析!データ活用の方法について解説

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
人事管理システムは、単なる従業員情報の管理ツールにとどまらず、蓄積されたデータを活用することで、戦略的人事の実現に貢献します。勤怠状況や評価履歴、異動データなどをもとに分析を行えば、離職リスクの早期発見や適切な人材配置の判断にも役立ちます。本記事では、人事管理システムを活用したデータ分析の具体的な方法と、実務にどう活かせるかをわかりやすく解説します。
【比較】おすすめの採用管理システム
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サービス名称 | 特長 | こんな企業におすすめ | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
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採用管理システムsonar ATS
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採用担当者の業務効率を高めたい企業 新卒・中途両方の採用を行っている企業 複数の求人媒体やツールを使用している企業 |
求人作成~公開/エージェントや応募者との連絡 説明会の予約受付/選考フローの設計/メッセージの自動化 応募者の集計・分析/AIによる書類選考効率化 |
あり | 初期費用 0円 月額費用 22,000円~ お問い合わせ |
PERSONA
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数多くの求人媒体を利用している企業 さまざまなデータを収集・分析したい企業 面接官の質を上げたい企業 |
求人媒体連携/求人ページ作成・イベント用ページ作成/エージェント用推薦ページ発行/応募情報カスタマイズ/候補者管理/自動書類選考/アセスメント/選考フロー設定/日程調整/カスタマイズ分析/Slack・Chatworkとの連携/カレンダー・オンライン会議との連携 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
i-web
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応募者管理/求人作成/外部サービス連携/データ分析/採用サイト制作/スコアリング機能/AI面接アシスタント/ショートメッセージ/タレントプール など | あり | 要お問い合わせ |
採用管理システムRPM
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媒体連携/応募者管理/選考管理/応募者自動対応/未対応アラート カレンダー連携/LINE連携/オンライン面接ツール連携 チャットボット/SMS送受信 分析(求人媒体別/拠点・店舗別/募集別/移行率/リードタイム) |
要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
mochica
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新卒採用に特に力を入れたい企業 採用候補者とのやりとりを円滑にしたい企業 サポートが手厚いATSを利用したい企業 |
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クラウドハウス採用
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サイトデザイン設定/求人作成/記事作成 応募者管理/説明会管理/人材紹介/自動日程調整 広告連携/媒体連携 |
要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
ワガシャ de DOMO
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あり | 初期費用 ライト 29,000円 バリュー 140,000円 月額費用 ライト 33,000円〜 バリュー 70,000円〜 お問い合わせ |
ジョブカン採用管理 | シリーズ累計導入実績が20万社突破、ITトレンド年間ランキングNo.1の実績 | 簡単高機能な採用管理システムを導入したい企業 | 応募者情報の管理/採用のタスク・スケジュール管理/分析レポート | あり | 要お問い合わせ |
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HRMOS採用 | 利用企業の約96%が業務負担軽減を実感!(運営企業の株式会社ビズリーチ調べ) | ビズリーチ社のノウハウと支援を採用業務に取り入れたい企業 | 応募者情報の管理/採用のタスク・スケジュール管理/分析レポート | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
ジョブスイート キャリア | 中途採用実務にこだわった、機能・使いやすさ・安全性・サポート・実績のバランス力が魅力 | 中途採用に力を入れたい企業 | 応募者情報の管理/採用のタスク・スケジュール管理/分析レポート | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
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この記事の目次はこちら
1. なぜ今、人事データの分析が不可欠なのか?
現代はVUCAと呼ばれる予測困難な時代であり、市場の変化は激しく、企業間の競争は常に激化しています。このような環境下で企業が持続的に成長するためには、経営資源の中でも特に「ヒト」すなわち人材の価値を最大限に引き出すことが不可欠です。しかし、従来の人事管理は担当者の経験や勘に依存することが多く、必ずしも客観的な根拠に基づいた最適な意思決定が行われてきたとは限りませんでした。重要な判断が主観や慣習に左右され、機会損失や従業員の不満を招くこともありました。
加えて、少子高齢化による労働人口の減少も深刻であり、優秀な人材の獲得と定着は企業の最重要課題の一つです。限られた人材リソースを最大限に活かし、従業員のパフォーマンスとエンゲージメントを高め、組織全体の生産性を向上させる必要性が高まっています。
こうした背景から「データドリブン人事」が強く求められています。これは、人事管理システム(HRMS)などに蓄積された客観的なデータを分析し、その結果に基づいて人事戦略の立案や意思決定を行うアプローチです。感覚や経験だけに頼らず、具体的な**データという「根拠」**を持つことで、より精度の高い現状把握、課題特定、効果的な施策実行、そして将来予測が可能になります。
人事管理システムを活用したデータ分析は、もはや一部の先進企業だけのものではなく、企業の規模や業種を問わず、組織力強化のための必須要件となりつつあります。勘や経験といった「暗黙知」を、データという「形式知」に転換することで、人事機能の高度化はもちろん、経営戦略と連動した「戦略人事」の実現を力強く後押しします。この記事では、人事管理システムを用いたデータ分析の重要性、具体的な活用法、成功のポイント、そしてシステムの選び方まで、人事部や決裁者の皆様が必要とする情報を網羅的に解説します。データに基づいた戦略人事を実現し、変化に強く持続可能な「強い組織」を構築するための一歩を、この記事と共に踏み出しましょう。客観的なデータは、これまで見えなかった組織の課題や新たな可能性を照らし出してくれるはずです。
2. 人事管理システムが可能にする「人事データ分析」とは?
「人事データ分析」とは、人事管理システム(HRMS)等に集約された従業員に関する多様な情報を体系的に分析し、組織運営の改善や人事戦略の立案に役立つ知見(インサイト)を引き出す活動です。単にデータを集計するだけでなく、そのデータが示す意味を深く理解し、具体的なアクションに繋げるプロセス全体を指します。
このプロセスにおいて、人事管理システムはデータ分析の基盤として中心的な役割を果たします。従業員の入社から退職までの様々なデータ(属性、経歴、評価、スキル、勤怠、給与、採用など)がシステム内に一元的に蓄積・管理されるため、分析に必要な情報を効率的に収集・活用できます。データが散在している状態では、分析以前のデータ収集・整備に膨大な工数がかかってしまいます。
人事管理システムで主に分析可能となるデータ項目例は以下の通りです。
- 基本情報: 所属、役職、年齢、性別、勤続年数など
- 経歴: 異動履歴、昇格・降格履歴など
- 評価: 目標達成度、評価スコア、コンピテンシー評価など
- スキル・研修: 保有スキル、資格、研修受講履歴など
- 勤怠: 労働時間、残業時間、休暇取得状況など
- 給与: 給与額、昇給率など
- 採用: 応募経路、選考評価、適性検査結果など
これらのデータを多角的に分析することで、様々なメリットが得られます。
- 客観的な現状把握と課題の可視化: 組織や従業員の状態を具体的な数値やグラフで正確に把握できます。例えば、部署間の残業時間の差、特定のスキル保有者の不足、評価分布の偏りなどを客観的に認識し、的確な課題設定が可能になります。
- 根拠に基づく効果的な人事戦略の立案: 分析結果という客観的な根拠に基づき、優先的に取り組むべき課題を特定し、より効果的な人事施策を立案できます。「なぜこの施策が必要か」をデータで示すことで、関係者の納得感も得やすくなります。
- 迅速かつ高精度な意思決定の支援: 人員配置、昇進・昇格、採用判断などの場面で、データという判断材料があることで、よりスピーディかつ的確な意思決定が可能となり、属人化や機会損失を防ぎます。
- 人事施策の効果測定と継続的な改善: 実施した施策の効果を、関連するKPIの変化を追跡することで定量的に測定・評価できます。効果検証に基づき施策を改善するPDCAサイクルを回すことが可能になります。
- 将来予測による先手のアクション: 過去のデータパターンから、将来の離職リスクなどを予測し、問題が顕在化する前に対策を講じる、といった予防的なアプローチも可能になります。
このように、人事管理システムを基盤としたデータ分析は、単なる業務効率化に留まらず、組織全体のパフォーマンス向上と戦略目標達成に直接貢献する、重要な経営機能と言えます。データから価値ある知見を引き出し、戦略的な人事を展開するためのエンジンとなるのです。
3. 【実践】人事データ分析による組織強化の具体的な活用手法
人事管理システムのデータ分析は、具体的にどのように組織強化へ繋げられるのでしょうか。ここでは代表的な活用手法を4つの目的別に解説します。
人材育成と最適配置
人事管理システムの活用は、単なる情報管理にとどまらず、データをもとにした戦略的人材マネジメントへと進化しています。たとえば、高い成果を出す従業員の特性を分析する「ハイパフォーマー分析」、必要なスキルとのギャップを可視化する「スキルギャップ分析」、異動や配置の影響を予測する「配置・異動シミュレーション」などが代表例です。これらの分析により、人材育成の最適化、離職リスクの低減、組織力の強化など、経営効果の高い施策を打ち出すことが可能になります。
ハイパフォーマー分析
高い成果を出す従業員の属性や行動特性を分析し、その成功要因を特定します。この知見を採用基準の見直し、育成プログラムの設計、効果的な配置転換などに活用し、組織全体のパフォーマンス底上げを図ります。再現性のある育成・配置戦略の基盤となります。
スキルギャップ分析と育成計画
従業員のスキル保有状況を可視化し、組織戦略に必要なスキルとのギャップを明確化します。これにより、ターゲットを絞った効率的な育成計画(研修、リスキリング等)の立案や、戦略的な中途採用が可能になります。
配置・異動シミュレーション
従業員のデータに基づき、異動や組織改編後の人員構成やスキルバランス、人件費への影響を事前に予測します。データに基づいたシミュレーションにより、「適材適所」の精度を高め、組織変更に伴うリスクを低減します。
エンゲージメント向上と離職防止
人材の定着と活躍を両立させるためには、従業員の状態を「見える化」し、早期に課題を察知・対処することが不可欠です。人事管理システムに蓄積されたデータを活用すれば、エンゲージメントの傾向把握、離職の予兆検知、退職理由の分析などが可能になります。感覚や後追いではなく、データドリブンで人材課題に向き合うことで、組織の健全性を高め、持続的な人材戦略を実現できます。
従業員エンゲージメント分析
定期的なサーベイ結果などを分析し、組織全体のエンゲージメントレベルや影響要因を特定します。部署別、属性別などの傾向も把握し、働きがい向上や職場環境改善に向けた具体的な施策に繋げます。継続的な測定と改善が重要です。
離職予兆分析
過去の離職者の勤怠変化や評価推移などのデータパターンから、離職リスクの高い従業員を早期に特定するモデルを構築します。これにより、個別フォローアップなどの予防的リテンション策を効果的に実施できます。
退職理由分析
退職時の面談記録などを分析し、退職の根本原因や傾向を探ります。属人的な理由だけでなく、組織的な課題(制度、風土、マネジメントなど)を特定し、人事制度や職場環境の改善に活かします。
採用活動の最適化
人事データ活用は採用活動にも大きな効果を発揮します。感覚や過去の慣習に頼った採用から、データに基づく意思決定へと転換することで、費用対効果の高い採用チャネルの選定や、ボトルネックの解消、ミスマッチの低減が実現できます。
採用チャネル分析
どの求人媒体やエージェント、採用手法が質の高い候補者の獲得や採用決定に貢献しているかをデータで評価します。費用対効果を分析し、採用予算の最適な配分やチャネル戦略の見直しを行います。
選考プロセス分析
応募から内定までの各段階における通過率や所要時間などを分析し、ボトルネックとなっているプロセスを特定・改善します。選考の効率化と候補者体験(CX)の向上を目指します。
入社後活躍度分析
採用時の評価と入社後のパフォーマンスや定着率との相関を分析します。これにより、自社で活躍する人材像を明確にし、採用基準や選考方法の妥当性を検証し、採用ミスマッチの低減を図ります。
人件費と生産性の最適化
人事データは「人材の管理」だけでなく、「組織の経営判断」にも活かすことができます。特に、人件費や労働時間などの数値情報は、データの可視化とシミュレーションによって、経営資源の最適配分や課題改善に直結します。
人件費分析・シミュレーション
部署別、等級別などの切り口で人件費構造を可視化し、適正な配分や予算管理に役立てます。昇給・賞与シミュレーションにより、人件費への影響を事前に評価できます。
労働時間・生産性分析
労働時間や残業時間の傾向を分析し、長時間労働の是正や働き方改革に繋げます。業務内容や工数データと組み合わせることで、部署や個人の生産性を分析し、業務プロセス改善やリソース配分の最適化を支援します。
4. 人事データ分析を成功に導くための重要ポイント
人事管理システムを導入しデータ分析に取り組んでも、必ずしもすぐに成果が出るわけではありません。分析を成功させ、組織強化につなげるためには、以下の重要なポイントを押さえる必要があります。
明確な目的設定
「何を明らかにし、どのように活用したいのか」という目的を具体的に設定することが出発点です。目的が曖昧では、分析の方向性が定まらず、効果的な示唆を得られません。「離職率〇%削減」「次世代リーダー候補〇名特定」など、測定可能な目標を設定しましょう。
データの質と鮮度の担保
分析の精度は元データの品質(正確性、網羅性)と鮮度に大きく左右されます。不正確なデータからは誤った結論しか生まれません。正確なデータ入力の徹底、継続的な情報更新、定期的なデータクレンジングといったデータマネジメントが不可欠です。
適切な分析基盤の整備
データが散在していては効率的な分析は困難です。データを一元管理でき、目的に合った分析機能を持つ人事管理システムを選定・導入することが、効率的な分析の第一歩となります。
分析スキルと体制の構築
データを解釈し価値ある知見を導き出すには、一定のデータリテラシーや分析スキルが必要です。人事担当者のスキルアップ、データ分析専門部署との連携、外部専門家の活用などを検討し、組織として分析に取り組む体制を構築することが望ましいです。
部門間の連携と協力
人事データ分析は人事部だけで完結しません。経営層、事業部門、情報システム部門など関連部署との連携が不可欠です。目的設定から結果の共有、施策実行まで、組織横断的な協力体制を築きましょう。
セキュリティと倫理への配慮
人事データは機密性の高い個人情報です。関連法規の遵守はもちろん、従業員のプライバシー保護に最大限配慮しなければなりません。アクセス権限管理、データの匿名化、利用目的の明確化などを徹底します。
- 結果の解釈と活用への意識: 分析結果は絶対的な答えではありません。数値の背景にある要因や文脈を考慮し、批判的に吟味する姿勢が重要です。そして最も重要なのは、分析から得た知見を具体的なアクションプランに落とし込み、実行に移すことです。
5. データ分析に強い人事管理システムの選び方
効果的な人事データ分析を実現するには、自社の目的や状況に適した人事管理システム(HRMS)の選定が不可欠です。ここでは、データ分析機能に注目した場合の選定ポイントを解説します。
機能面のチェックポイント
- 分析対象データの網羅性: 自社が分析したい、または将来分析する可能性のあるデータ項目がシステム上で管理・分析できるかを確認します。データの不足は分析の幅を狭めます。
- 標準レポート・ダッシュボード: 基本的な分析結果(人員構成、離職率など)を標準機能で確認できるか、またその見やすさ、分かりやすさを評価します。標準機能が充実していれば、導入後すぐに活用できます。
- カスタムレポート作成の柔軟性: 自社独自の切り口でデータを分析できるカスタムレポート機能が重要です。どの程度自由に、かつ容易に設定できるかを確認します。専門知識がなくても扱えるものが望ましいです。
- データ可視化機能: 分析結果をグラフ等で分かりやすく表現できるか。多様なグラフ形式に対応し、視覚的に訴える力があるかを確認します。インタラクティブな操作性も重要です。
- 他システムとの連携: 給与、勤怠、採用など、他のシステムとのデータ連携がスムーズに行えるか(API連携、CSV対応など)を確認します。連携の手間は分析効率に直結します。
- シミュレーション機能: 人員配置や人件費変動などの影響を事前に予測できる機能があると、戦略的な意思決定に役立ちます。機能の有無と精度を確認しましょう。
機能以外のチェックポイント
- 操作性(UI/UX): 分析専門家以外(人事担当者、管理職など)も利用するため、専門知識がなくても直感的に操作できるかが重要です。無料トライアル等で確認しましょう。
- サポート体制: 導入支援から運用後の問い合わせ対応まで、迅速かつ的確なサポートを受けられるかは安心して利用する上で重要です。サポート範囲や品質を確認します。
- セキュリティ: 機密情報を扱うためセキュリティレベルは最重要です。暗号化、アクセス権限、第三者認証(ISMS等)などを詳しく確認します。
- 費用対効果: 初期費用や月額費用だけでなく、導入によって得られる効果(業務効率化、意思決定の質向上など)とのバランスを考慮し、総合的に判断します。
これらのポイントを多角的に評価し、複数のシステムを比較検討することで、自社の戦略人事推進に最も貢献する人事管理システムを選び出すことができるでしょう。ベンダーの説明だけでなく、デモやトライアルで実際の使用感を確認することが重要です。
6. データ分析の導入・実践における課題と乗り越え方
人事データ分析の導入・実践は、多くの企業にとって挑戦であり、いくつかの共通した課題に直面しがちです。これらの課題を事前に認識し、対策を講じることが成功への鍵となります。
- 課題1: データのサイロ化・品質問題
- 課題: データが各所に散在し統合が困難。データの精度が低く信頼性に欠ける。
- 対策: データ統合基盤(人事管理システム等)の整備、データ入力ルールの標準化と徹底、定期的なデータクレンジングを実施する。
- 課題2: 分析スキル・リテラシー不足
- 課題: 担当者にデータ分析スキルや知識が不足。分析結果の解釈や活用ができない。
- 対策: 人材育成への投資(研修等)、外部専門家の活用、ユーザーフレンドリーなツールの選択、社内に分析担当者を育成・設置する。
- 課題3: データ活用文化の欠如
- 課題: データに基づいた意思決定の文化が組織に根付いていない。分析結果が活用されない。
- 対策: 経営層のコミットメントと率先垂範、データ活用の成功事例共有による価値の可視化、スモールスタートで成功体験を積む。
- 課題4: 分析結果の現場への浸透とアクション
- 課題: 分析結果が現場に理解されず、具体的な行動変容に繋がらない。
- 対策: 現場との対話と協働(目的設定から関与)、現場管理職への分析結果の提供と活用支援、具体的なアクションプラン策定と進捗フォローを行う。
これらの課題は相互に関連していることが多く、一つずつ着実に対策を講じることが重要です。特に、経営層の強いコミットメントと、組織全体でデータ活用の価値を共有する努力が、これらの壁を乗り越える原動力となります。データ分析はツールであり、それを使いこなす組織能力と文化を育てることが、真の成果を生み出すために不可欠です。焦らず、継続的に改善していく姿勢が求められます。
7. まとめ
本稿では、人事管理システムを活用したデータ分析の重要性、具体的な活用法、成功へのポイント、そして実践上の課題について解説しました。経験や勘に頼る人事から、客観的なデータに基づいた戦略人事へと転換することは、変化の激しい現代において企業が持続的に成長するための鍵となります。
人事管理システムは、その実現を支える強力な基盤です。システムに蓄積されたデータを分析することで、人材育成、最適配置、エンゲージメント向上、離職防止、採用最適化など、多岐にわたる人事課題に対して、より効果的かつ効率的なアプローチが可能になります。これは従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性向上に直結します。
ただし、明確な目的意識、データの品質担保、適切な分析体制、そしてデータ活用文化の醸成が伴わなければ、システム導入だけでは十分な成果は得られません。課題を乗り越え、組織全体でデータと向き合う姿勢を育てることが重要です。本稿が、人事管理システムのデータ分析機能に関心を持つ人事部や決裁者の皆様にとって、システム選定やデータ活用推進の一助となれば幸いです。