人事管理システムのセキュリティは安心?対策方法について徹底解説

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
社員の個人情報や給与データなど、極めて機密性の高い情報を扱う人事管理システム。そのため、導入に際して「セキュリティ面は本当に大丈夫なのか?」と不安を感じる企業担当者も少なくありません。万が一情報漏えいが発生すれば、企業の信頼を大きく損なうだけでなく、法的リスクにも発展しかねません。本記事では、人事管理システムに求められるセキュリティ対策の具体例と、導入時に確認すべきポイントについて詳しく解説します。
【比較】おすすめの採用管理システム
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サービス名称 | 特長 | こんな企業におすすめ | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
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採用管理システムsonar ATS
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採用担当者の業務効率を高めたい企業 新卒・中途両方の採用を行っている企業 複数の求人媒体やツールを使用している企業 |
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PERSONA
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i-web
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mochica
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クラウドハウス採用
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ワガシャ de DOMO
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なぜ人事管理システムのセキュリティが最重要課題なのか
企業活動において、人事管理システムは単なる業務効率化ツールではありません。従業員の氏名、住所、連絡先といった基本的な個人情報はもちろん、給与、評価履歴、スキル、キャリアプラン、さらには家族情報、健康診断結果、社会保険情報といった極めて機密性が高くセンシティブなデータの集合体を扱います。これらは個人の記録であると同時に、企業の組織運営、人材戦略、給与体系の根幹を成す重要な経営資源そのものです。
昨今、サイバー攻撃の手法はますます巧妙化・高度化しており、情報漏洩や不正アクセスの脅威はかつてないほど高まっています。人事管理システムが保有するこれらの機密情報が万が一、外部へ漏洩したり、内部で不正に利用・改ざんされたりした場合、企業が被るダメージは計り知れません。
- 深刻な社会的信用の失墜: 情報漏洩インシデントは、情報管理体制の甘さを露呈させ、顧客、取引先、株主、そして何より従業員からの信頼を一瞬にして失います。ブランドイメージは大きく毀損し、失った信頼の回復には莫大な時間とコストが必要です。
- 直接的な金銭的損失: 被害を受けた従業員や元従業員からの損害賠償請求訴訟に発展する可能性があります。また、個人情報保護法をはじめとする各種法令違反による行政からの厳しい指導、勧告、業務改善命令、高額な課徴金や罰金が科されるリスクも現実のものです。インシデント対応費用(調査、システム復旧、弁護士費用など)も甚大な額になる可能性があります。
- 事業継続への影響: ランサムウェア攻撃などによりシステムが停止した場合、給与計算や勤怠管理、評価業務などが完全にストップし、事業継続そのものが危うくなる事態も想定されます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の流れやリモートワークの普及により、多くの企業が人事管理システムを導入・活用し、社外からのアクセスも増加しています。こうした背景から、人事管理システムのセキュリティ対策は、もはやIT部門だけの問題ではなく、経営層、人事部、法務部を含む全社で取り組むべき最重要の経営課題として認識する必要があります。
特に、新たに人事評価システム等を導入・リプレイスする決裁者や人事部の担当者にとって、システムの機能や使いやすさ、コストと同等、あるいはそれ以上に、セキュリティ対策が十分に施されているかを厳格に評価・検証することが不可欠です。
人事管理システムに潜むセキュリティリスク
人事管理システムの導入・運用にあたり、具体的にどのような危険が存在するのかを正確に把握することは、効果的な対策を講じるための第一歩です。リスクは大きく「外部からの脅威」「内部からの脅威」「その他の脅威」に分類できます。
1. 外部からの脅威:悪意を持った第三者による攻撃
人事管理システムは、社内外の重要な個人情報を扱うため、外部からの攻撃対象になりやすい側面があります。特に悪意を持った第三者による不正アクセスやウイルス感染は、情報漏えいや業務停止といった深刻な被害につながるリスクがあります。ここでは、代表的な外部脅威とその対策を見ていきましょう。
ランサムウェア
システム内の人事データファイルを勝手に暗号化し、復旧と引き換えに高額な身代金を要求します。近年ではデータを窃取し公開すると脅す二重恐喝の手口も増加。感染すると給与計算や評価業務などが停止し、事業継続に致命的な影響を与えます。
標的型攻撃
特定の企業や組織の機密情報を狙い撃ちにする攻撃です。人事担当者や役員になりすました巧妙なメール(スピアフィッシング)や、業務連絡を装った不正ファイルを開かせることでマルウェアに感染させ、システム内部への侵入を図ります。
フィッシング詐欺
偽のログインページへ誘導し、担当者のID、パスワード、多要素認証コードなどを盗み取ります。正規のアクセス権限を悪用してシステムに侵入するため、検知が難しい場合があります。
DDoS攻撃 (サービス妨害攻撃)
大量の不正なアクセス要求を送りつけてサーバーを過負荷状態にし、システムを利用不能にします。業務継続を直接的に脅かすリスクです。
脆弱性を突いた攻撃
システムやソフトウェアに存在するセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を悪用して不正アクセスやマルウェア感染を引き起こします。ゼロデイ攻撃(脆弱性が発見され、修正パッチが提供される前に仕掛けられる攻撃)も深刻な脅威です。
2. 内部からの脅威:従業員等による不正行為やミス
人事情報の漏えいリスクは、外部だけでなく内部にも潜んでいます。悪意を持った従業員による情報の持ち出しや、操作ミスによる誤送信・設定ミスなど、日常的な業務の中に思わぬセキュリティリスクが存在します。ここでは、内部からの脅威の具体例と対策を解説します。
内部不正
現職従業員や退職した元従業員が、自身のアクセス権限を悪用し、機密性の高い人事情報(給与、評価など)を不正にコピーして持ち出したり、改ざん・削除したりする行為です。動機は金銭目的、私怨、転職先への手土産など様々で、外部からの攻撃以上に発見が困難な場合があります。アクセス権限設定の不備や退職者アカウントの削除漏れがリスクを高めます。
ヒューマンエラー
悪意がない場合でも、担当者の単純な操作ミス(例:重要ファイルの誤送信)や設定の誤りにより、意図せず情報が外部からアクセス可能な状態になったり、データが破損・消失したりするリスクです。従業員のセキュリティリテラシー不足や、多忙による注意力の散漫が背景にあることも少なくありません。
その他の脅威~委託先リスクや物理的要因~
人事管理システムのセキュリティを脅かす要因は、外部・内部の攻撃だけに限りません。システムの運用を委託している外部業者の管理体制や、災害・盗難・機器の故障といった物理的リスクも見過ごせない重要な脅威です。
サプライチェーンリスク
システム開発・保守・運用を委託している外部ベンダーのセキュリティ体制が不十分な場合、そこが攻撃の侵入口となったり、委託先従業員による情報漏洩が発生したりするリスクです。委託先の選定・管理・監督が重要になります。
クラウドサービス利用のリスク
クラウドサービス(SaaSなど)を利用する場合、自社での設定ミスによる情報公開リスクや、サービス提供基盤への攻撃、他の利用者を狙った攻撃の影響を受ける可能性も考慮が必要です。サービス提供事業者のセキュリティ対策レベルの確認が不可欠です。
物理的な情報漏洩
人事関連の機密情報が印刷された書類や、データが保存されたUSBメモリ、ノートパソコン、スマートフォンなどが盗難・紛失することによる情報漏洩リスクも依然として存在します。特にリモートワーク環境下では注意が必要です。
人事管理システムで実施すべきセキュリティ対策
人事管理システムの安全性を確保し、情報漏洩リスクを最小限に抑えるためには、システムを提供する事業者(ベンダー)側と、システムを実際に利用する企業側の双方が、それぞれの立場で責任を持って適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。両者の取り組みが連携して初めて、堅牢なセキュリティ体制が実現します。
1. システム提供事業者(ベンダー)側が実施すべき対策
クラウドサービスであれ、オンプレミス型のパッケージソフトウェアであれ、提供されるシステムの基盤となるセキュリティの堅牢性は最も重要です。選定時には以下の点を確認しましょう。
- データ保護(暗号化):
- 通信経路の暗号化: インターネット経由でのアクセス時には、HTTPS/TLSによる通信の暗号化が必須です。
- 保存データの暗号化: データベースに保存される人事情報(特に個人情報、給与、評価など)そのものが、AES256ビットなどの強力なアルゴリズムで暗号化されているか確認が必要です。暗号鍵の管理方法も重要です。
- 不正アクセス対策:
- ファイアウォール: 外部からの不正な通信を基本的なレベルで遮断します。
- WAF (Web Application Firewall): SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど、Webアプリケーション固有の脆弱性を狙った攻撃を防御します。
- IDS/IPS (不正侵入検知・防御システム): ネットワークレベルでの不正な通信パターンや攻撃の兆候を検知し、防御します。
- 脆弱性管理:
- 定期的な脆弱性診断: 第三者機関による診断を含め、定期的にシステムの脆弱性を検査しているか。
- 迅速なパッチ提供: 発見された脆弱性に対して、修正パッチを迅速に開発・提供する体制があるか。ゼロデイ攻撃への対応方針も確認しましょう。
- アクセス管理機能:
- 多要素認証 (MFA): ID/パスワードだけでなく、SMS、認証アプリ、生体情報などを組み合わせた認証方式を提供しているか。現代では必須の機能です。
- IPアドレス制限: 特定のネットワーク(例:自社オフィス)からのアクセスのみを許可する機能。
- ロールベースアクセス制御 (RBAC): 役職や担当業務に応じて、誰がどのデータ項目を閲覧・編集・削除できるのかを、柔軟かつ厳密に設定できる機能。
- 運用・監視体制:
- 24時間365日の監視: サーバー稼働状況、システムログ、アクセスログ、操作ログなどを常時監視し、異常を検知する体制があるか。
- インシデント対応計画: セキュリティインシデント発生時の報告手順、復旧計画が明確に定められているか。
- 第三者認証:
- ISMS (ISO/IEC 27001) や プライバシーマーク (Pマーク)、クラウドセキュリティに関する SOC報告書 (SOC1/SOC2) や ISMAP などの認証を取得しているかは、客観的な信頼性の指標となります。
2. システム利用企業側が実施すべき対策
どんなに高機能なシステムを導入しても、利用する側の対策が不十分では意味がありません。以下の対策を徹底しましょう。
- ID・パスワード管理の徹底:
- 推測されにくい複雑なパスワード(英数記号混在、十分な長さ)の設定ルール化。
- 定期的なパスワード変更の義務付けと、使い回しの禁止。
- システム側でパスワードポリシーを強制できる機能の活用。
- アクセス権限の適切な設定・運用管理:
- 最小権限の原則: 従業員には、担当業務に必要な最低限のアクセス権限のみを付与します。
- 権限の適時見直し: 人事異動、職務変更、退職時には、遅滞なく権限の見直し、変更、削除を行います。
- 定期的な棚卸し: 定期的に全ユーザーのアクセス権限が適切かを確認します。
- 従業員への継続的な教育・啓発:
- 情報セキュリティポリシーの周知徹底。
- フィッシング詐欺の見分け方、不審メール・添付ファイルへの対処法。
- 機密情報の取り扱いルール(持ち出し、印刷、私物デバイス利用など)。
- 内部不正のリスクと懲戒処分に関する認識向上。
- 社内利用ルールの策定・運用:
- 社内ネットワーク以外からのアクセス制限(VPN必須化など)。
- 私物デバイスからの業務システム利用(BYOD)に関する明確なルール。
- 機密情報のダウンロード、印刷、持ち出しに関するルールと承認プロセス。
- ログの定期的な監査:
- システムから提供されるアクセスログや操作ログを定期的に確認し、不審なアクティビティがないか監視します。内部不正の早期発見にも繋がります。
人事管理システムの選び方:7つの必須チェックポイント
数多く存在する人事管理システムの中から、自社の重要な人事情報を安心して預けられ、かつ業務効率化や人材戦略に貢献するシステムを選び抜くことは、人事部や決裁者にとって極めて重要なミッションです。機能、価格、操作性に加え、以下の7つのセキュリティチェックポイントを必ず確認し、比較検討してください。
Point 1:データ暗号化の方式と範囲の詳細確認
- 確認事項:
- 通信経路(HTTPS/TLS)と保存データ(データベース内)の両方が暗号化されているか?
- 特に機密性の高い個人情報、給与情報、評価情報などが暗号化対象となっているか?
- どのような暗号化アルゴリズム(例: AES256ビット)が採用されているか?
- 暗号鍵はどのように管理されているか(事業者側か利用者側か、管理方法は安全か)?
- 重要性: 万が一データが流出・窃取された場合でも、内容を解読されるリスクを低減する基本的な対策です。
Point 2:不正アクセス対策の具体策と実績
- 確認事項:
- ファイアウォール、WAF、IDS/IPSなどの基本的な防御メカニズムの導入有無とその運用状況(例: WAFのシグネチャ更新頻度)。
- 第三者機関による定期的な脆弱性診断(ペネトレーションテスト含む)を実施しているか?
- 発見された脆弱性に対して、どの程度の期間で対応するポリシーか、過去の実績はどうか?
- 重要性: 外部からのサイバー攻撃に対する防御力を評価します。実績やポリシーの確認が重要です。
Point 3:アクセス制御・認証機能の柔軟性と強度
- 確認事項:
- 多要素認証 (MFA) が標準機能として提供されているか?利用可能な認証方式は(SMS、OTPアプリ、生体認証など)?
- IPアドレス制限機能はあるか?
- ロールベースアクセス制御 (RBAC) 機能は充実しているか?(部署、役職、プロジェクト単位などで、データ項目ごとに閲覧・編集・削除権限を柔軟かつ厳密に設定できるか?)
- シングルサインオン(SSO)に対応しているか?
- 重要性: なりすまし防止、内部不正リスク、ヒューマンエラーによる情報漏洩リスクを低減するために不可欠です。
Point 4:ログ管理機能(監査証跡)と監視体制
- 確認事項:
- いつ、誰が、どのIPアドレスからログインし、どのような操作を行ったかを示すアクセスログ、操作ログ(監査ログ)が正確かつ改ざん不可能な形式で記録・保管されるか?
- ログの保管期間は十分か(最低1年以上を推奨)?
- システム提供事業者側での24時間365日のシステム監視体制、異常検知・アラート通知の仕組みは?
- インシデント発生時の報告体制、連絡フローは明確か?
- 重要性: インシデント発生時の原因究明、不正の追跡、内部統制の証跡として不可欠です。
Point 5:第三者認証の取得状況とその内容
- 確認事項:
- ISMS (ISO/IEC 27001)、プライバシーマーク (Pマーク) を取得しているか?
- クラウドサービスの場合、SOC1/SOC2報告書やISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)などの認証を取得しているか?
- 取得している認証の種類だけでなく、認証範囲や有効期限も確認すること。
- 重要性: セキュリティレベルを客観的に評価する上で信頼性の高い指標となります。継続的なセキュリティ維持・改善へのコミットメントの表れでもあります。
Point 6:サーバーインフラの設置場所とデータセンターのセキュリティレベル
- 確認事項:
- 特にクラウドサービスの場合、データが保管されるサーバー(データセンター)は国内にあるか?(日本の法律が適用されるか)
- データセンター自体の物理的なセキュリティ対策(入退室管理、監視カメラ等)は十分か?
- 災害対策(耐震・免震構造、自家発電設備等)やシステムの冗長化構成は?
- 重要性: データ主権や準拠法の問題を回避し、物理的な安全性や災害時の事業継続性を確保するために重要です。
Point 7:サポート体制とSLA(サービスレベルアグリーメント)、将来性
- 確認事項:
- セキュリティに関する技術的な問い合わせ窓口、インシデント発生時の連絡窓口、対応時間、対応フローは明確か?
- SLAにおいて、システムの安定稼働率(例: 月間99.9%以上)が保証されているか?
- 障害発生時の目標復旧時間(RTO)、目標復旧時点(RPO)は規定されているか?そのレベルは自社の要求を満たすか?
- 将来的な機能拡張や法改正への対応、技術トレンドへの追随など、システムの継続的なアップデートや拡張性は見込めるか?
- 重要性: 万が一の際の迅速な対応、安定したシステム運用、そして長期的な視点でのシステム活用に不可欠です。
これらのチェックポイントを網羅した質問リストを作成し、複数の候補ベンダーに提示・ヒアリングを行い、比較検討することを強く推奨します。これにより、自社のセキュリティ要件と運用実態に最も合致した、信頼できる人事管理システムを選定することが可能になります。
まとめ
本記事では、人事管理システムにおけるセキュリティの重要性、潜むリスク、具体的な対策、そして失敗しないためのシステム選定チェックポイントを解説しました。人事管理システムのセキュリティ対策は、単なるコストや負担ではなく、企業の持続的な成長と競争力を支えるための戦略的な投資です。
従業員の機密情報は企業の貴重な資産であり、その漏洩や不正利用は経営基盤を揺るがしかねません。巧妙化するサイバー攻撃、複雑化する法規制、多様化する働き方といった環境下で、人事情報の安全確保は、決裁者および人事部にとって最優先事項の一つです。
安全な運用には、システム提供事業者による高度な技術的・組織的対策と、利用企業側における厳格な運用管理・従業員教育の両輪が不可欠です。システム選定においては、本記事で挙げた7つのチェックポイントに基づき、各候補システムのセキュリティレベルを多角的に評価し、機能やコストだけでなく、セキュリティに妥協しない姿勢が求められます。
適切な対策が施された信頼できるシステムを選定・導入し、さらに社内でのアクセス管理、利用ルールの遵守、継続的な教育といった運用面の努力を怠らないことで、初めて企業は安心して人事管理システムを活用し、業務効率化、タレントマネジメント強化、データドリブンな人事戦略といった多大なメリットを享受できます。
これはリスク回避に留まらず、従業員の心理的安全性を高め、エンゲージメントや生産性向上にも寄与します。また、堅牢な情報管理体制は、優秀な人材の獲得・維持、ひいては企業価値全体の向上にも繋がります。ゼロトラストやAI活用といった新しい技術動向も視野に入れつつ、自社に最適なセキュリティ対策を継続的に見直していくことが、企業の未来を守り、成長を加速させる賢明な経営判断と言えるでしょう。