労務管理システム導入の失敗事例7選|原因と成功の秘訣を徹底解説

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
働き方改革や労働人口減少を受け、企業の労務管理は複雑化しています。紙やExcelでの管理は限界を迎え、ヒューマンエラーや非効率、法改正への対応遅延といったリスクを抱えています。この解決策として労務管理システムの導入が多くの企業で進められています。
システム導入の主なメリットは以下の通りです。
- 業務効率化: 入退社手続き、年末調整、勤怠管理等の自動化。
- ペーパーレス化: 申請・承認プロセスの電子化。
- コンプライアンス強化: 正確な労働時間管理、法改正への迅速な対応。
- 従業員利便性向上: Webでの打刻や明細確認。
- データ活用: 労務データの分析による人事戦略への貢献。
しかし、導入が必ずしも成功するとは限りません。「期待した効果が出ない」「現場で使われない」「追加コストが発生」といった失敗事例も多く報告されています。導入失敗は、投資損失だけでなく、業務混乱、従業員の不満、生産性低下、さらには法令違反リスクにも繋がりかねません。
本記事では、労務管理システムの導入を検討する管理部門や決裁者の皆様へ、典型的な失敗事例とその根本原因を分析し、導入成功のための具体的なポイントを解説します。高額な投資を無駄にしないためにも、失敗のリスクを理解し、回避策を学ぶことが重要です。この記事が、皆様の戦略的なシステム導入の一助となることを目指します。労務管理DXは企業の成長に不可欠です。
おすすめの労務管理システム
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サービス名称 | 特長 | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
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freee人事労務
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勤怠管理 給与計算 給与明細の作成 従業員情報の管理 入退社手続き 年末調整 帳票一覧 など |
有 |
基本料金無料 ミニマムプラン:2,000円~ スタータープラン:3,000円~ スタンダードプラン:4,000円~ アドバンスプラン:5,500円~ ※全て年払いの場合 お問い合わせ |
クラウドハウス労務
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入社手続き 雇用契約 申請・承認 従業員情報の管理 年末調整 マイナンバー管理 など |
要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
ジンジャー人事労務
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組織管理 従業員管理 マイナンバー管理 など ※以下はオプション 年末調整 社会保険手続き 書類配布 |
有 |
初期費用+(サービス利用料×利用者数) ※詳しくは要お問い合わせ |
クラウドリーガル
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契約書の自動作成、法務・労務相談、カスタム契約書の作成・修正、契約書レビュー、会社設立、商標登録、AIラボなど |
‐ ※サービスサイトで一部デモ画面を公開中 |
・ブロンズ:11,000円/月 ・シルバー:55,000円/月 ・ゴールド:110,000円/月 ※詳細は要お問い合わせ |
SmartHR |
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人事労務管理 入社手続き雇用契約 文書配布 年末調整 マイナンバー管理 申請承認機能 予約管理 給与明細 など タレントマネジメント キャリア台帳 人事評価 配置シミュレーション スキル管理 従業員サーベイ など |
有 | 要お問い合わせ |
HRBrain 労務管理 |
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タレントマネジメント 組織図 組織分析 ダッシュボード 人事評価/1on1 など 人事評価 評価テンプレート ワークフロー設定 ダッシュボード シートカスタマイズ 1on1/スキルチェック 労務管理 入退社手続き マイナンバー管理 Web給与明細 文書作成/電子署名 など サーベイ 組織診断サーベイ パルスサーベイ ストレスチェック |
有 | 要お問い合わせ |
ジョブカン労務HR |
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従業員情報管理 各種労務手続き 年末調整 マイナンバー管理収集 ストレスチェック機能 人材管理機能 書類作成電子契約機能 |
有 |
初期費用サポート費用:0円/月 中小規模の企業 無料プラン(従業員数5名まで):0円/月 有料プラン(従業員数無制限):400円/月 大規模(500名目安)の企業:問い合わせ |
オフィスステーション |
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製品により異なる オフィスステーション労務の例 他社システム連携 従業員情報の簡単収取 雇用契約書 従業員データ 従業員事前登録フォーム機能 など |
有 |
製品利用料440円+登録料110,000円 ※オフィスステーション労務の場合 ※従業員1名あたりの月額利用料 |
sai*reco(サイレコ) |
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アラート機能 セキュリティ 2次元分析 情報入力 給与明細 申請承認管理 利用者設定 評価機能 組織構成の履歴検索 従業員管理 組織図 組織全体管理 スキル評価機能 |
有 |
1カ月220円~で導入可能 ※1名あたりの料金 ※料金は目安 ※従業員規模100名程度~ 詳しくは問い合わせor資料請求 |
ARROW |
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シフト管理 ICカード/GPS打刻 勤怠管理 給与計算 帳票作成 年末調整 定額減税 など |
有 |
Aプラン(小規模事業者向け) ・1店舗/部署:月額1,980円 Bプラン(中規模事業者向け) ・1店舗/部署:月額3,980円 Cプラン(様々な事業規模に対応) ・1店舗/部署:月額4,980円 |
MINAGINE勤怠管理 |
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タイムカード 打刻 出勤予定(勤務表)の作成 残業申請 有給(休暇)申請 給与ソフト連携 PCログ取得 36協定レポート 有給(休暇)取得チェッカー など |
-(デモ有) |
初期費用0円~+初期設定代行0円~+月額利用料30,000円(税抜)~ ※31名以上は月額従量課金 ※詳しくは要お問い合わせ |
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なぜ起こる?労務管理システム導入で陥りやすい【7つの失敗事例】
労務管理システム導入には、多くの企業が共通して直面する落とし穴があります。ここでは、典型的な7つの失敗事例とその原因を解説します。リスクを事前に把握し、対策を講じましょう。
失敗事例1:機能のミスマッチ
- 状況: 高機能すぎて使いこなせない、または必要な機能が不足し手作業が残る。
- 原因:
- 目的・要件定義の曖昧さ: 何を解決したいか、どの機能が必要かが不明確。
- 現状業務の分析不足: 自社の複雑なルールやフローを把握できていない。
- デモ・トライアル確認不足: 実際の運用を想定した検証が不十分。
失敗事例2:現場への浸透不足
- 状況: 導入したが従業員に使われず、形骸化する。問い合わせ対応に追われる。
- 原因:
- 説明・合意形成不足: 導入メリットが伝わらず、従業員の協力が得られない。
- トレーニング不足: 操作方法が習熟されないまま運用開始。
- フォロー体制不備: 導入後の疑問やトラブルに対応できない。
- 操作性の問題: システムが直感的でなく使いにくい。
失敗事例3:費用対効果の誤算
- 状況: 初期費用は安価でも、ランニングコストや追加費用で予算超過。期待したコスト削減効果が出ない。
- 原因:
- TCO(総所有コスト)の見積もり不足: 運用にかかる費用(保守、サポート、ライセンス等)を考慮していない。
- 隠れコストの見落とし: オプション、連携費用、データ移行費用等。
- 安さ重視の選定: 機能やサポートとのバランスを欠く。
- 効果測定指標の未設定: 導入効果を客観的に評価できない。
失敗事例4:システム連携の失敗
- 状況: 既存の給与計算システム等と連携できず、手作業でのデータ入力や二重入力が発生。
- 原因:
- 連携仕様・APIの確認不足: 事前の連携テストが不十分。
- ベンダー間の協力不足: 責任分界点が曖昧で問題解決が遅れる。
- 既存システムの制約: 古いシステムや特殊なカスタマイズが連携を阻害。
失敗事例5:サポート体制への不満
- 状況: 導入後のトラブル時にベンダーサポートが繋がらない、対応が遅い、解決しない。
- 原因:
- サポート範囲・SLAの確認不足: 契約前の確認が甘い。
- サポート品質の調査不足: ベンダーのサポート体制や評判を調べていない。
- 無料/有料サポートの認識不足: サポート内容の違いを理解していない。
失敗事例6:セキュリティ・コンプライアンス問題
- 状況: システムのセキュリティ対策が不十分で情報漏洩リスクが発生。法改正に対応できずコンプライアンス違反。
- 原因:
- セキュリティ要件の確認不足: 自社ポリシーとの整合性を確認していない。
- ベンダーの信頼性調査不足: ISMS認証や過去のインシデントを確認していない。
- 法改正対応力の確認不足: アップデート頻度や実績を調べていない。
失敗事例7:導入準備・計画の不備
- 状況: スケジュール遅延、データ移行失敗、プロジェクト担当者の疲弊。
- 原因:
- 社内推進体制の未整備: 責任者や役割が不明確、関係部署連携不足。
- 現状業務・データの整理不足: 導入前の準備が不十分。
- 非現実的なスケジュール: バッファのない無理な計画。
- リスク管理の欠如: 潜在リスクへの対策が準備されていない。
これらの失敗は、一つでもプロジェクト全体に悪影響を及ぼす可能性があります。自社のリスクとして認識し、事前対策を検討することが重要です。
失敗の根源を探る!労務管理システム導入【6つの根本原因】
個々の失敗事例の背後には、共通する根本的な原因が潜んでいます。これらの原因を理解し対策を打つことが、導入成功への本質的なアプローチとなります。
根本原因1:導入目的とゴールの不明確さ
- 問題点: 「何のため導入するのか」「具体的な目標は何か」が曖昧なまま進行する。「効率化したい」だけでは不十分。
- 影響: 要件定義が曖昧になり、適切なシステム選定ができず、効果測定も困難。関係者の当事者意識も低下。
根本原因2:現状業務の把握・分析不足
- 問題点: 現在の業務フロー、課題、管理データを正確に把握しないまま導入を進める。
- 影響: 実際の業務に合わないシステムを選び、導入後に手戻りや追加作業が発生。データ移行も失敗しやすい。企業固有の複雑性を軽視することが原因。
根本原因3:情報収集と比較検討の不足
- 問題点: 十分な情報収集や客観的な比較検討を行わず、安易にシステムを決定する。特定のベンダーに偏る。
- 影響: 自社に最適なシステムを見逃す。機能や価格以外の重要要素(サポート、セキュリティ、将来性)を見落とす。形式的なデモやトライアルも原因。
根本原因4:関係者間のコミュニケーション不足・巻き込み不足
- 問題点: 経営層、管理部門、情シス、現場従業員など、関係者間の情報共有や意思疎通、協力体制が不足。
- 影響: 経営層の支援不足、情シスとの連携不備、現場の抵抗や利用率低下を招く。部門間の利害対立も阻害要因。
根本原因5:ベンダー選定基準の誤り
- 問題点: 機能や価格ばかりに注目し、ベンダーのサポート体制、信頼性、将来性といった長期的な視点を見落とす。
- 影響: 導入後のサポートに苦労する。法改正への対応やシステムの継続性に不安が生じる。「付き合い」や「大手だから」という安易な判断も危険。
根本原因6:導入プロジェクトマネジメントの欠如
- 問題点: システム導入を体系的なプロジェクトとして管理する意識やスキル、リソースが不足。担当者の兼務も一因。
- 影響: 計画遅延、リスク対応の遅れ、品質低下、コスト超過を招く。タスク管理、進捗管理、リスク管理が不十分。
これらの根本原因は相互に関連しています。目的が曖昧なら現状分析も不十分になり、不適切なシステムを選びがちです。自社のプロジェクトにこれらの原因が潜んでいないか、常に点検し対策することが重要です。
4. 失敗しない!労務管理システム導入を成功させるための【5つの成功ポイント】
失敗事例とその根本原因を踏まえ、労務管理システム導入を成功に導くための5つの重要な成功ポイントを解説します。これらを計画的に実行することで、リスクを最小化し、効果を最大化できます。
成功ポイント1:【目的明確化と要件定義】ゴールを設定し、必要な機能を具体化
- アクション:
- 目的とKPI設定: 「〇〇業務工数〇%削減」など、解決したい課題と定量的目標を明確に定義する。
- 現状業務の可視化: 既存の業務フロー、課題、管理データを詳細に洗い出す。
- 要件定義: システムに必要な「必須機能(Must)」と「希望機能(Want)」をリスト化する。複雑な社内ルールも考慮する。
- 関係部署との合意形成: 経営層、情シス、現場等と目的・要件を共有し、合意を得る。
成功ポイント2:【徹底的な情報収集と比較検討】複数システムを多角的に評価
- アクション:
- 情報収集: Web、資料、展示会等で幅広く情報を集める。
- 比較表作成: 機能、価格(TCO)、操作性、サポート、セキュリティ、連携性、拡張性、ベンダー信頼性等を客観的に比較評価する。
- デモ・トライアル活用: 実際の業務シナリオで複数システムを検証。現場担当者も評価に参加。
- ベンダーへの質問: 疑問点を解消し、納得いくまで確認する。
成功ポイント3:【費用対効果の精査】トータルコストと導入効果を見極める
- アクション:
- TCO算出: 初期費用だけでなく、長期的な運用コストを含めた総費用を計算する。
- 導入効果試算: KPIに基づき、定量的・定性的効果を具体的に試算する。
- ROI評価: TCOと導入効果を比較し、投資対効果を慎重に判断する。
- 隠れコスト確認: カスタマイズ、データ移行、追加トレーニング等の費用、契約条件を詳細に確認する。
成功ポイント4:【周到な導入準備と推進体制】計画的にプロジェクトを推進
- アクション:
- プロジェクトチーム組成: 関係部署からメンバーを選任し、責任者と役割を明確化。
- 詳細な計画策定: 現実的なマイルストーン、バッファを含むスケジュールを作成。
- データ移行計画: 既存データの整理・クレンジング、正確な移行手順とテスト計画を策定。
- 従業員説明とトレーニング: 導入目的やメリットを丁寧に説明し、効果的なトレーニングを実施。
- 連携テスト: 既存システムとの連携を事前に十分テストする。
- リスク管理: 潜在リスクを洗い出し、事前に対策を準備する。
- 定期的な進捗共有: チーム内で進捗、課題、リスクを共有し、迅速な意思決定を行う。
成功ポイント5:【導入後の運用と評価・改善】効果を持続させ、活用度を向上
- アクション:
- 効果測定: KPIに基づき、定期的に導入効果を測定・評価し、関係者へ報告する。
- フィードバック収集: 利用者から定期的に意見や要望を収集し、改善に繋げる。
- 継続的改善(PDCA): 測定結果やフィードバックに基づき、システム設定や業務プロセスを改善する。
- サポート体制活用: 社内FAQ整備やベンダーサポートを積極的に利用する。
- 活用促進: 利用率の低い機能があれば、追加トレーニング等で活用を促進する。
- 法改正・技術動向対応: 最新情報を把握し、システムを最適化し続ける。
これらのポイントを意識し、計画から実行、改善まで丁寧に進めることが、導入成功の鍵となります。
【決裁者向け】後悔しない!導入承認前に確認すべき最終チェックリスト
労務管理システム導入は重要な投資判断です。決裁者が承認前に以下の点を最終確認することで、投資の妥当性を評価し、失敗リスクを低減できます。担当部署任せにせず、自身の視点でチェックしましょう。
□ 1. 目的・効果・ROIは明確かつ妥当か?
- 解決すべき経営・業務課題は具体的か?
- 期待効果(定量的・定性的)は測定可能か?
- ROI算出根拠は現実的か? 過大な期待はないか?
- 代替手段(プロセス改善等)との比較検討は十分か?
□ 2. システムは自社要件に合致しているか?
- 選定プロセスは客観的か? 比較検討の根拠は明確か?
- 必須要件を満たしているか? 機能過不足はないか?
- 複雑な社内ルールに対応できるか?
- 将来的な拡張性はあるか?
- セキュリティ要件(法令、自社ポリシー)を満たしているか?
- 法改正への対応力は十分か?
□ 3. 費用(TCO)は予算内か? 追加リスクは?
- 総所有コスト(TCO)は正確に算出され、予算内か?
- 予期せぬ追加費用リスク(カスタマイズ、データ移行等)はないか?
- 契約期間、価格改定、解約条件は明確か?
□ 4. 導入計画・体制・サポートは現実的か?
- 導入スケジュールは具体的で現実的か(バッファはあるか)?
- 社内推進体制(責任者、役割)は明確か?
- データ移行計画は具体的で、データの正確性は担保されるか?
- 従業員への説明・トレーニング計画は十分か?
- ベンダーサポート(SLA等)と社内運用体制は十分か?
- 潜在リスクへの対策は検討されているか?
□ 5. ベンダーは信頼できる長期パートナーか?
- 導入実績(特に同業種・同規模)は豊富か?
- 経営状況は安定しているか? 事業継続性は?
- 専門性やノウハウは十分か?
- 将来的な機能拡張や技術革新への意欲はあるか?
- 情報セキュリティ認証等、信頼性の裏付けはあるか?
- 評判や口コミは良好か?
これらの点を厳しくチェックし、懸念があれば承認前に解消することが、投資失敗を防ぐ最後の砦です。 (指定ルールカウント目安: 約750字)
まとめ:失敗から学び、戦略的な労務管理システム導入を実現するために
本記事では、労務管理システム導入における失敗事例、その根本原因、そして成功のためのポイントを解説しました。失敗は「機能ミスマッチ」「現場浸透不足」「費用対効果誤算」「連携失敗」「サポート不満」「セキュリティ問題」「計画不備」など多岐にわたりますが、根底には「目的不明確」「現状分析不足」「比較検討不足」「コミュニケーション不足」「ベンダー選定ミス」「マネジメント欠如」といった共通の原因があります。
成功のためには、「目的明確化と要件定義」「徹底比較とシステム選定」「費用対効果の精査」「周到な準備と推進体制」「導入後の運用・改善」という5つのポイントを計画段階から一貫して実行することが不可欠です。特に決裁者は、最終チェックを通じて投資の妥当性を厳しく評価する責任があります。
労務管理システムの導入は、単なるツール導入ではなく、業務プロセス改革であり組織変革です。失敗から学び、成功ポイントを着実に実行することで、業務効率化、コンプライアンス強化、従業員満足度向上という大きな成果に繋がります。この記事が、皆様の戦略的システム導入の一助となれば幸いです。