経営権譲渡の全知識|M&Aにおける株価・税金・手続きと成功のポイント
【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
中小企業の経営者にとって、後継者不在の解消や事業の更なる発展を目指す上で、M&Aによる経営権譲渡は非常に有効な選択肢です。しかし、経営権という言葉の法的な意味や、具体的に株式を何パーセント譲渡すれば会社をコントロールできるのか、税金はいくらかかるのかといった実務面を正確に理解している方は多くありません。本記事では、経営権譲渡の定義から、支配権確保に必要な議決権割合、算出される株価の考え方、そして具体的な手続きの流れまでを体系的に解説します。
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経営権譲渡(経営権の移動)の基本的な仕組み
M&Aや事業承継において頻繁に使われる経営権譲渡という言葉ですが、実は会社法などの法律用語として明確に定義されているわけではありません。一般的に経営権譲渡とは、会社の意思決定機関である株主総会における議決権の過半数以上を第三者に移転させることを指します。中小企業の多くは株式会社の形態をとっているため、経営権を譲り渡す行為は、実質的に自社の株式を買い手に譲渡することと同義です。ここでは、経営権譲渡の本質的な意味と、社長交代との違い、そしてオーナー経営者が享受できる利益について詳しく解説します。
M&Aにおける経営権譲渡の定義(株式譲渡との関係)
M&Aの現場において経営権譲渡とは、対象企業の株式を過半数以上、理想的には3分の2以上を買い手企業へ移転させる行為を指します。株式会社の最高意思決定機関は株主総会であり、その株主総会で議決権を行使できるのは株主です。したがって、誰が株主であるかが会社の支配権を決定づけます。単に資産を売買するだけではなく、株式そのものを譲渡することで、会社の資産、負債、契約関係、従業員の雇用契約などを包括的に引き継ぐことが可能となります。これにより、買い手は対象企業を自社の子会社として傘下に収め、経営の実権を掌握することになります。
代表権と経営権の違いとは?社長交代だけでは不十分な理由
経営者の中には、代表取締役を辞任して後継者に席を譲れば経営権の移譲が完了すると誤解されている方がいます。しかし、代表取締役という地位はあくまで業務執行の責任者に過ぎず、株主総会の決議によっていつでも解任される可能性があります。真の意味で経営権を譲渡するためには、取締役を選任・解任する権限を持つ株主の地位、つまり株式そのものを後継者や買い手企業へ譲り渡さなければなりません。代表権の交代は経営体制の変更に過ぎず、所有権である株式の移動を伴って初めて、法的な強制力を持った完全な経営権の移行が完了すると理解する必要があります。
経営権譲渡によってオーナーが得られる利益(創業者利益)
長年にわたり会社を成長させてきたオーナー経営者が経営権譲渡を行う大きなメリットの一つに、創業者利益の獲得が挙げられます。自社株式を第三者に譲渡することで、これまで会社に蓄積してきた含み益や将来の収益性を現金化することが可能です。特に優良な財務内容や独自の技術力を持つ企業であれば、純資産額にのれん代(営業権)を上乗せした金額で株式を売却できる可能性があります。この資金は、オーナー自身の引退後のゆとりある生活資金となるだけでなく、新たな事業への投資資金や、個人保証を解消するための原資としても活用できる非常に重要な対価となります。
経営権譲渡に必要な「議決権割合」の目安
経営権譲渡を検討する際、最も重要となる数値が議決権の保有割合です。株式会社の経営において、株主がどの程度の割合の株式を保有しているかによって、行使できる権限の強さが法律で明確に定められています。M&Aにおいては、買い手企業がどの程度の支配力を求めているかによって、譲渡すべき株式数が変わります。ここでは、会社法に基づいた重要な分岐点となる「過半数」と「3分の2」という数値の意味と、完全子会社化を目指す100%譲渡の重要性について、それぞれの権限の違いを交えて解説します。
| 議決権割合 | 決議の種類 | 可能な主な決定事項 |
| 50%超(過半数) | 普通決議 | 取締役の選任・解任、役員報酬の決定、配当の決定 |
| 67%超(3分の2) | 特別決議 | 定款変更、合併・会社分割の承認、事業譲渡の承認、解散 |
| 100% | 完全支配 | 少数株主の排除(スクイーズアウト)、迅速な意思決定 |
なぜ株式の「過半数(50%超)」の譲渡が必須なのか
経営権を譲渡したと言えるための最低ラインが、発行済株式総数の過半数、つまり50%超の譲渡です。会社法では、取締役の選任や解任、役員報酬の決定、剰余金の配当といった会社の通常運営に関わる重要事項は、株主総会の普通決議で決定すると定められています。普通決議は出席株主の議決権の過半数で成立するため、50%超の株式を保有していれば、自分の意向に沿った取締役を選び、意に沿わない取締役を解任することで、経営の実務をコントロールすることが可能になります。逆に言えば、過半数を握られてしまうと、旧経営陣はいつ解任されても文句は言えない状態となります。
完全な経営権譲渡を目指すなら「3分の2(67%超)」が重要
M&Aにおいて買い手企業がより強固な支配権を求める場合、3分の2(約67%)以上の株式取得を目指します。これは、会社の根幹に関わる重要事項を決定する特別決議を単独で成立させるために必要な割合です。特別決議が必要な事項には、定款の変更、合併や会社分割などの組織再編、事業の全部譲渡、会社の解散などが含まれます。もし譲渡する株式が3分の2未満の場合、重要な経営判断を行う際に少数株主の賛成を得る必要が生じ、経営のスピードが損なわれるリスクがあります。そのため、将来的な組織再編を見据えた経営権譲渡では、このラインの確保が強く推奨されます。
100%譲渡と一部譲渡の使い分け
中小企業のM&Aでは、最終的に全株式を譲渡する100%譲渡が一般的です。これにより買い手は完全な経営権を掌握し、迅速かつ自由な意思決定が可能になります。また、売り手であるオーナー経営者も完全にリタイアできるため、事業承継の完了という意味でも明確です。一方で、オーナーが一定期間経営に関与し続けたい場合や、買い手とのシナジー効果を確認しながら段階的に統合を進めたい場合には、一部の株式を手元に残す選択肢もあります。ただし、少数株主として残る場合は、将来的な株式の買取条件などを事前に契約書で詳細に定めておくリスク管理が必要です。
経営権譲渡を実行する主な3つの手法(スキーム)
経営権を他社や後継者に移転させるための具体的な手法(スキーム)は一つではありません。企業の状況や譲渡の目的、税務上のメリット・デメリットを考慮して最適な方法を選択する必要があります。M&Aの実務で最も頻繁に用いられるのは株式譲渡ですが、特定の事業だけを切り離したい場合や、資本提携からスタートしたい場合など、ニーズに応じて使い分けられます。ここでは、代表的な手法である株式譲渡、事業譲渡、そして第三者割当増資について、それぞれの特徴とどのようなケースに適しているかを解説します。
【株式譲渡】最も一般的で手続きが簡潔な手法
株式譲渡は、売り手(株主)が保有する株式を買い手に売却し、株主の地位を入れ替えることで経営権を移動させる最も標準的なM&A手法です。この手法の最大の特徴は、手続きが比較的簡便である点です。原則として株主総会の承認や個別の債権者保護手続きが不要であり、契約締結と株式名簿の書き換えのみで実行可能です。また、従業員の雇用契約や取引先との契約関係もそのまま会社の中に残るため、個別に同意を取り直す手間が省けます。会社全体をそのまま引き継ぐ形になるため、中小企業の事業承継やイグジットの場面で最も多く採用されています。
【事業譲渡】特定の事業部門のみ経営権を譲渡する手法
事業譲渡は、会社そのものではなく、会社が行っている事業の一部または全部を特定して売買する手法です。例えば、不採算部門を切り離して経営資源を集中させたい場合や、買い手が特定の技術や店舗網だけを欲しがっている場合に有効です。株式譲渡とは異なり、譲渡する資産や負債、従業員との契約などを個別に選別して引き継ぐため、簿外債務のリスクを遮断できるメリットがあります。しかし、従業員の再雇用手続きや取引先との契約巻き直しが必要となるため、実務上の手続きは非常に煩雑になり、実行までに多くの時間と労力を要することが一般的です。
【第三者割当増資】資本提携によって経営権の一部を移転する手法
第三者割当増資は、会社が新株を発行し、特定の第三者(提携先企業など)に引き受けてもらうことで資金調達と同時に経営権の一部を移転させる手法です。既存の株主が株式を売却するわけではないため、オーナーの手元に現金は入りませんが、会社自体に資金が注入されるため財務基盤の強化につながります。経営権の過半数を渡さずに業務提携を進める段階的なM&Aや、再生局面でのスポンサー支援を受ける際によく利用されます。ただし、発行済株式数が増加するため、既存株主の持株比率が低下する希薄化という現象が起こる点には十分な注意が必要です。
経営権譲渡にかかる「税金」と「価格(株価)」の考え方【重要】
経営者にとって、自社がいくらで評価され、手元にどれだけの現金が残るかは最大の関心事です。経営権譲渡における譲渡価格は、単なる純資産の額ではなく、将来生み出すキャッシュフローや無形の資産価値(ブランドや技術力)を加味した企業価値評価(バリュエーション)によって算出されます。また、誰が売り手となるかによって適用される税金の種類や税率が大きく異なるため、事前のシミュレーションが不可欠です。ここでは、価格決定のメカニズムと、個人・法人が売り手となる場合のそれぞれの税務について解説します。
| 売り手の属性 | 課税対象 | 税金の種類 | 税率の目安 |
| 個人株主 | 株式譲渡益(売却額-取得費-手数料) | 申告分離課税(所得税+住民税) | 一律 20.315% |
| 法人株主 | 株式譲渡益(売却額-帳簿価額-手数料) | 法人税等(実効税率) | 約 30% 〜 34% |
経営権譲渡の価格はどう決まる?企業価値評価(バリュエーション)の基礎
M&Aにおける譲渡価格は、企業価値評価の結果をベースに、売り手と買い手の交渉によって決定されます。中小企業の評価でよく用いられるのは、時価純資産に数年分の営業利益を足し合わせる「年買法(修正純資産法)」です。これは客観性が高く分かりやすい指標として好まれます。一方、将来の収益力を重視する場合は、将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く「DCF法」が採用されます。また、上場している類似企業の株価倍率を参考にする「類似会社比準法(マルチプル法)」も併用されます。自社の強みを定量的に示し、適切な評価手法を用いることが高値売却の鍵となります。
個人株主が譲渡する場合の税金(譲渡所得税)
中小企業のオーナー社長個人が株式を譲渡する場合、その利益は「譲渡所得」として扱われ、申告分離課税の対象となります。給与所得や事業所得などの他の所得とは切り離して計算され、税率は一律で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。累進課税ではないため、譲渡益がどれだけ高額になっても税率は変わりません。計算式は「譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)」となります。創業時の出資額が取得費となりますが、不明な場合は譲渡価額の5%を取得費とみなす概算取得費の特例を使うことも可能です。
法人が譲渡する場合の税金(法人税)
親会社が子会社の株式を譲渡する場合など、法人が売り手となるケースでは、株式の売却益は通常の事業利益と合算され、法人税等の課税対象となります。税率は法人の規模や所得額によって異なりますが、実効税率でおおよそ30%から34%程度となります。個人の税率(約20%)と比較すると税負担が重くなる傾向にありますが、会社に過去の繰越欠損金がある場合は、売却益と相殺することで税金を抑えられる可能性があります。M&Aのスキームを検討する際は、株主が個人か法人かによって手取り額が大きく変わるため、税理士を交えた慎重な検討が必要です。
経営権譲渡の具体的な手続きと流れ
経営権譲渡は、思い立ってすぐに完了するものではありません。一般的には検討開始から最終的なクロージング(決済)まで、半年から1年程度の期間を要します。その間には、候補先企業とのマッチング、トップ面談、条件交渉、そして詳細な企業調査など、数多くのステップを慎重に進める必要があります。手順を誤ると情報漏洩によるトラブルや、交渉決裂のリスクが高まります。ここでは、M&A仲介会社への相談から始まり、最終的に経営権が移転して対価を受け取るまでの標準的なプロセスを4つのフェーズに分けて解説します。
検討開始からM&A仲介会社の選定
経営権譲渡の第一歩は、自社の譲渡目的や希望条件(価格、従業員の処遇、譲渡時期など)を明確にすることです。その上で、M&A仲介会社や金融機関などの専門アドバイザーを選定し、秘密保持契約(NDA)を締結します。専門家のアドバイスを受けながら、自社の財務状況や事業内容をまとめた「企業概要書(ノンネームシートやIM)」を作成します。この資料をもとに、アドバイザーが独自のネットワークを使って買い手候補となる企業をリストアップし、ノンネーム(匿名)での打診を開始します。信頼できるパートナー選びが、その後の成否を大きく左右します。
トップ面談と基本合意契約の締結
興味を持った買い手候補が現れると、秘密保持契約を結んだ上で詳細な情報の開示を行い、経営者同士のトップ面談を実施します。ここでは条件面の交渉だけでなく、経営理念の共有や相性、企業文化の適合性などを確認し合います。双方が前向きに検討を進めることで合意した場合、譲渡価格の概算やスケジュール、独占交渉権などを定めた「基本合意契約書(MOU)」を締結します。基本合意は法的な拘束力を持たないことが一般的ですが、心理的な拘束力を持ち、以後の交渉のベースとなる重要なマイルストーンです。
買収監査(デューデリジェンス)と最終契約
基本合意後、買い手企業による買収監査(デューデリジェンス、DD)が実施されます。これは、公認会計士や弁護士などの専門家が売り手企業の財務、税務、法務、ビジネスなどを詳細に調査し、リスクや問題点がないかを確認するプロセスです。簿外債務や法的な紛争リスクが発見された場合、価格の減額修正やM&Aの中止につながることもあります。DDの結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、合意に至れば法的拘束力を持つ「最終譲渡契約書(DA)」を締結します。ここでは詳細な譲渡条件や表明保証などが定められます。
クロージング(株式・対価の受け渡し)と事後手続き
最終契約の締結後、契約書に基づきクロージング(実行)を行います。具体的には、買い手から売り手への譲渡代金の決済と、売り手から買い手への株式(株券発行会社の場合は株券)、会社代表印、重要書類などの引き渡しを同時に実施します。これにより法的に経営権が移転します。その後、臨時株主総会を開催して新役員の選任や定款変更を行い、法務局での役員変更登記手続きを経てM&Aは完了します。最後に、従業員や取引先、金融機関への開示(ディスクロージャー)を適切なタイミングで行い、新体制への移行をスムーズに進めます。
経営権譲渡を行うメリットと注意点
経営権譲渡は、売り手と買い手の双方に大きな変革をもたらす重要な経営判断です。成功すれば双方に多大なメリットをもたらしますが、進め方を誤れば深刻なトラブルに発展する可能性もあります。特に中小企業のM&Aでは、経済合理性だけでなく、人と人との感情や企業文化の融合が成功の鍵を握ります。ここでは、売り手にとっての最大のメリットである後継者問題の解決や個人保証の解除、買い手にとっての成長加速、そして全当事者が注意すべき従業員や取引先への配慮について解説します。
【売り手】後継者問題の解決と個人保証の解除
売り手経営者にとって最大のメリットは、深刻化する後継者不在問題を解決し、事業を存続させられることです。廃業を選択すれば従業員の雇用も失われますが、M&Aであれば雇用を守りながら会社を残すことができます。また、多くの中小企業経営者を悩ませている金融機関からの借入金に対する「経営者個人保証(連帯保証)」を解除できる点も極めて大きな利点です。買い手企業が借入金を肩代わり、あるいは返済することで、オーナーは個人的な債務リスクから解放され、安心して引退後の生活を送ることが可能になります。
【買い手】事業拡大と時間を買うメリット
買い手企業にとって、経営権譲渡を受ける(M&Aを行う)最大のメリットは「時間を買う」ことにあります。新規事業をゼロから立ち上げるには、人材採用、設備投資、顧客開拓、技術開発などに膨大な時間とコスト、そして失敗のリスクが伴います。しかし、すでに実績のある企業を買収することで、熟練した従業員、既存の顧客基盤、確立されたノウハウを一括して手に入れることができ、スピーディーな事業拡大が可能になります。また、自社と異なる強みを持つ企業を取り込むことで、シナジー効果(相乗効果)による売上増やコスト削減も期待できます。
【注意点】従業員の雇用維持と取引先への説明タイミング
M&Aにおいて最もデリケートな問題が、従業員の心情ケアと取引先への対応です。経営権が移ることで「給与が下がるのではないか」「リストラされるのではないか」という不安を従業員に抱かせないよう、労働条件の維持を契約に盛り込むなどの配慮が必要です。また、情報開示のタイミングも重要で、不用意に噂が広まると従業員の大量離職や取引停止を招くリスクがあります。基本的にはクロージング直前、あるいは直後まで情報を伏せ、経営トップから直接、誠意を持って事情と今後の展望を説明することが、PMI(統合プロセス)を成功させるための鉄則です。
まとめ:スムーズな経営権譲渡には株式比率と税務の理解が不可欠
本記事では、経営権譲渡の基本的な仕組みから、支配権確保に必要な議決権割合、株価算定や税金、そして具体的な手続きの流れまでを解説しました。M&Aを成功させるためには、単に相手を見つけるだけでなく、過半数や3分の2といった「数値の意味」を理解し、手取り額を最大化するための税務知識を持つことが不可欠です。経営権譲渡は企業の未来を左右する一大プロジェクトです。トラブルを避け、売り手・買い手双方が納得のいく結果を得るために、M&A仲介会社や税理士などの専門家に早い段階から相談し、戦略的に準備を進めることを強くお勧めします。
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