人事考課(システム)とは? 人事評価システムのおすすめを徹底解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
人事考課とは、企業が定めた基準により、従業員の仕事の成果やプロセスを評価する制度のことです。人事考課を適切に行えば、従業員に対して公正な処遇や人事を提供できるため、適材適所やモチベーションの向上などを期待できます。
ただ、多くの従業員の人事考課を適切に実施するのは手間と時間が掛かるため、近年は人事考課システムを導入する企業が増えてきています。ただ、人事考課システムにはいくつかの種類があるので自社に合ったシステムを検討する際は、基本的な知識を押さえることが重要です。
本記事では、人事考課の基礎知識や必要性、人事考課システムの概要と導入するメリット・デメリット、基本的な機能などについて解説します。システムの選び方やおすすめシステムも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次はこちら
人事考課とは、従業員の業務実績や能力を評価する制度のこと
人事考課とは、企業が定めた基準に沿って、従業員の業務実績や業務態度、能力などを評価する制度のことです。基準は企業ごとに異なりますが、一般的には四半期や半期、あるいは1年に1回など、一定の期間における従業員の実績や態度を評価する仕組みになっています。
人事評価との違い
人事考課とよく似た言葉に人事評価というものがあります。両者は同義として扱われるケースが多いですが、より厳密に言うと、人事考課は主に公正な人事査定に目的に、定められた一定期間における従業員の業績や能力を評価するものであるのに対し、人事評価は従業員の評価全般を意味します。
つまり、人事考課は人事評価に内包されるもので、より狭義的に用いられることが多いようです。ただ、前述のように明確に区別して使用しているケースは少なく、例えば人事評価システムは人事考課システムと同義のものとして扱われる傾向にあります。
人事考課の目的
企業が人事考課を行う目的は大きく分けて3つあります。
公平性のある人事査定
かつての日本では、年功序列制度を採用する企業が大半を占めており、長く勤務するほど給与や待遇が向上する傾向にありました。しかし、現代の日本は景気の低迷が続いており、終身雇用や定期昇給の制度が崩壊しつつあります。
一方で、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働き方の多様化などの要素が重なったことで、どの産業も慢性的な人手不足に陥っており、多くの企業が優秀な人材を確保し、少数精鋭の労働環境を整える方向に舵を切っています。
そのためには、年齢や勤続年数、役職などに応じて自動的に昇給する従来の評価ではなく、個々人の実績や能力に見合った公正な評価システムを導入し、優秀な人材の確保および長期雇用を目指さなければなりません。
人事考課は年齢や勤続年数、役職などにとらわれず、従業員一人一人の実績や能力を正当に評価することで働く意欲を向上させると共に、不平等感による早期離職を防止する効果が期待できます。
組織の成長促進
現代日本において、組織として継続的に成長していくためには、限られた人材を上手に活用して生産性を向上させる必要があります。そのためには、従業員一人当たりの労働生産性を向上し、より効率的な生産体制を整えなければなりません。
人事考課を導入すると、どのような実績を挙げれば会社から評価されるのか。どういった能力が求められているのか、などの要素が明確化されるため、従業員側も目指すべきビジョンがはっきりし、目的に向かって邁進しやすくなります。
個々人の実績や能力が上がれば必然的に組織力もアップするため、組織の成長促進につながります。
企業のビジョン、目標の明確化
前述した通り、人事考課を導入すると、何がどう評価されるのかが可視化されます。人事考課における評価の基準は、すなわち企業が求める要素に直結するため、その会社が将来的にどのような組織を目指しているのかもおのずとはっきりします。
企業の目標やビジョンが明確になれば、従業員に企業理念や行動指針が根付きやすくなり、会社全体で足並みをそろえることが可能になるでしょう。
人事考課の評価基準
人事考課の評価基準は企業によって異なりますが、大きく分けると以下3つにが挙げられます。
業績考課
業績考課とは、定められた期間中に挙げた業績や、そこに至るまでのプロセスを評価する基準のことです。期間中の売上や業績などを基に、従業員自らが立てた目標をどこまで達成できたかを数値化し、企業が定めた基準に沿って評価を行います。
評価の対象が数値化されやすいものなので、公平性が高く、従業員にとっても納得の行く評価基準であると言われています。
能力考課
能力考課とは、業務や研修、独学などによって習得した知識や能力、スキルなどを評価する基準のことです。労働の実績を重視する業績考課とは異なり、能力考課は最終的な結果にかかわらず、その人が従業員としてどのくらい成長できたかを評価するところが特徴です。
例えば、責任の重い仕事に従事したり、業務に関連性のある資格を取得したりした場合、会社への実際の貢献度や今後の貢献への期待を踏まえた評価を行います。
数値化されないものが評価の対象であるため、評価の基準を明確化するとともに、従業員の日頃の仕事への取り組みや姿勢をきちんと観察する必要があります。
情意考課
情意考課とは、従業員の業務への取り組み方や姿勢を評価する基準のことです。具体的には、企業が定めたルールに則って行動できているか、与えられた仕事だけでなく、自ら積極的に仕事に取り組んでいるか、自身の責任を自覚し、それに見合った行動を取っているか、他の従業員と協力して業務に当たっているか、などを評価します。
特に規律性や協調性については一緒に働く上司や同僚、部下など周囲の人からの評価も必要になるため、多角的な視点が求められます。
人事考課の方法
人事考課は、前述した評価基準に則り、5つのステップを1サイクルとして実施するのが一般的です。以下では人事考課の基本的な流れについて説明します。
目標設定
業務考課に必要な目標の設定を行います。例えば売上目標なら、何をどのくらい売り上げたら、どのような評価になるかを設定します。
業務考課の評価対象は数値化できるものなので、目標の設定は「売上◯◯万円で評価A」など具体的な内容にすると、曖昧な評価による不平や不満が噴出しにくくなるでしょう。
業務の遂行
従業員が遂行した業務の内容や取り組み方、姿勢などをチェックし、データとして記録しておきます。
これらのデータは後述する評価で使用する材料となるので、なるべく詳しく、かつ取りこぼしのないよう記録しておくことが大切です。
自己申告・他者からの評価
定められた期間が終了したら、従業員は自身が取り組んだ業務の内容や結果を直属の上司に自己申告します。申告する内容は前述した目標設定に沿って、事実のみを正確かつ具体的に伝えることが大切です。なお、突発的なトラブルによって業務に支障を来した場合は、その旨も合わせて申告します。
一方で、その従業員と一緒に仕事に従事した部下や同僚、上司などからも評価や評判をヒアリングします。
評価
従業員からの自己申告と他者から集めた評価を、あらかじめ定めた評価基準に照らし合わせます。評価が主観に偏らないよう、できるだけ複数人で協議し、客観的な評価を目指します。
フィードバック
従業員に対して、評価の結果およびその根拠について説明するフィードバックを行います。なぜこのような評価になったのか、その理由や原因を説明すれば、従業員から不平や不満が出るリスクが少なくなるでしょう。
併せて、今後その従業員に期待していることや、期間中の反省点を踏まえたアドバイスなどを提供すると、従業員のモチベーションアップや成長促進につながります。
人事考課システムとは、人事考課にまつわる業務を効率化するシステムのこと
人事考課の歴史は古く、職務給が導入された1970年代には個々の従業員の成績や能力、情意などを評価する仕組みが構築されていました。その後、時代の流れと共に目標管理制度(MBO)の導入や職位や責任範囲を超えた部分での行動の評価などが追加され、現在の人事考課のスタイルが成り立っています。
こうした変化に伴い、人事考課にまつわる業務は増加かつ複雑化の一途をたどり、従来のようなアナログな手法では公正かつ迅速な評価が難しくなってきました。
そこで誕生したのが、人事考課システムです。人事考課システムとは、その名の通り、人事考課にまつわる業務を効率化するために開発されたシステムのことです。搭載されている機能はシステムごとに異なりますが、データの一元管理や評価シートの自動作成などが行える仕様になっています。
人事考課システムを導入すれば、これまでアナログで行っていた業務のほとんどをデジタル化できるため、業務の効率化を期待できます。
人事考課システムの主な機能
人事考課システムには、主に以下のような機能が搭載されています。
従業員情報管理機能
個々の従業員の情報を記録・管理するための機能です。人事考課システムの場合、以下のような情報を一元管理することができます。
- 従業員の基本情報(氏名や住所、電話番号など)
- 入退社情報
- 職務経歴
- 保有資格
- 過去の人事考課の履歴
- 過去の実績・受賞歴
項目は標準設定されているものの他にも、任意で追加・削除できる場合があります。人事考課に必要な従業員情報をあらかじめ記録しておけば、評価期間中に挙げた実績や習得したスキルなどを評価する際の手間を省くことが可能です。
特に過去の人事考課の履歴や実績、受賞歴などをデータ分析すれば、自社が求める人材のモデル形成や人事考課の評価基準の見直しなどに役立ちます。
目標設定機能
主に業績考課に必要な目標を設定するための機能です。後述する進捗管理機能とリンクする仕組みになっており、設定した目標に対する達成度をリアルタイムで確認することができます。
設定された目標はクラウドシステムで共有できる仕様になっている場合が多く、チームまたは従業員個人が各々で目標を設定・管理することで、業務達成への意欲やモチベーションの向上を図ります。
進捗管理機能
設定した目標に対し、業務がどのくらい進んでいるかを管理できる機能です。前述した目標設定機能と一体化されているシステムが多く、現時点で目標をどのくらい達成しているか、数値やグラフとして可視化することができます。
進捗管理の単位は従業員個人に限らず、特定のチームを対象とすることも可能です。目標設定機能同様、進捗管理のデータはクラウドベースで共有できるため、進捗に遅れが出ていないか、目標を達成するにはどのように業務を配分すればよいか、などの見直しに役立ちます。
また、目標設定・進捗管理機能共にデータを次の評価期間に反映させることができます。
評価シートの作成
評価シートとは、人事考課の評価項目に沿って従業員を評価した内容や結果を記載するシートのことです。企業が人事考課を行う場合、定めた評価基準に沿ってあらかじめ評価シートを作成し、配布および回収を行う必要があります。
紙の評価シートを使うと、作成にコストが掛かる上、配布・回収・統計に手間と時間が掛かりますが、人事考課システムでは評価シートを簡単に作成できる上、システム上で配布や回収、統計まで行うことができます。
評価・データ分析機能
回収した評価データを分析し、特定の基準に沿って評価を行う機能です。あらかじめ評価方法を選定しておけば、その方法に則って自動でデータ分析・評価を行ってくれるので、手間が省けるのはもちろん、主観によらない客観的な分析・評価を実現できます。
どのような評価方法に対応しているかはシステムによって異なりますが、代表的なパターンには以下のようなものがあります。
- 360度評価
- コンピテンシー評価
- 目標管理制度(MBO)
1は上司・同僚・部下・取引先など多角的な方面から評価を行う方法です。2では、一定の成果を挙げている従業員に共通する行動特性を基に、従業員の能力や行動を評価します。3では、従業員自らが目標を設定し、その達成度を評価します。
外部システムとの連携機能
他のシステムやソフトと連携する機能です。例えば勤怠管理システムやメッセージアプリなどと連携できるシステムを導入すれば、勤怠情報を人事考課システムに反映したり、評価者同士でコミュニケーションを取ったりすることができます。
また、これまで人事考課に利用していたツール(表計算ソフトなど)からデータを移行できるシステムを選べば、スムーズに業務の引き継ぎを行えるでしょう。
上記の他にも、どの従業員がどこに所属しているか、といった情報を顔写真付きの組織図で分かりやすく表示する機能や、従業員の異動後の状態をシミュレーションできる機能など、システムによってさまざまな機能が搭載されています。
人事考課システムを導入するメリット
人事考課システムを導入した場合に期待できるメリットを5つご紹介します。
業務の効率化
人事考課を行うには、目標の設定をはじめ、評価シートの作成や配布、回収を行ったり、集めたデータを統計・分析したりと、複数のプロセスを踏まなければなりません。これらのプロセスは従業員の数が多ければ多いほど複雑になり、アナログな手法ではかなりの手間と時間が掛かってしまいます。
人事考課システムを導入すれば、目標設定から評価シートの作成・配布・回収、集めたデータの分析、評価に至るまで、全てシステム上で簡単に行うことができます。
一部の工程は自動化されるため、人事考課にまつわる業務を大幅に効率化できるでしょう。
人的ミスの防止
人事考課を手書きや表計算ソフトで行う場合、一つひとつの情報を手動で入力しなければならないため、人的ミスが発生しやすくなります。特にデータの分析や評価点の計算を誤ると、適正な評価が行われず、従業員から不平や不満が噴出するかもしれません。
人事考課システムを利用すれば、あらかじめ設定した評価基準と、システム上で回収した評価データを基に、システムが自動で評価を行ってくれるので、人的ミスの予防につながります。
また、システム上で評価シートを配布・回収する場合、シートの提出状況なども一覧表示できるため、シートの回収漏れなどのミスも防ぐことが可能です。
公正な評価の実現
人事考課は評価者の主観や感情の影響を受けやすく、場合によっては公平性に欠ける評価が行われることもあります。人事考課システムを利用すれば、あらかじめ設定された評価基準を基に客観的な評価が行われるため、公平な評価を実現できます。
また、人事考課システムでは評価の基準やプロセスが明確化されるため、従業員が評価内容を納得しやすいのも利点です。
適切な人材配置
人事考課システムでは、従業員の能力や資格、職務経歴などの個人情報を一元管理することが可能です。登録したデータを基に、適材適所の人材配置を行えば、労働生産性の向上やモチベーションアップ、離職率の低下などの効果を期待できます。
さらに人材配置のシミュレーション機能を搭載しているシステムを選べば、異動後の配置をよりイメージしやすくなります。
人材育成の促進
人事考課システムに登録する従業員情報の中には、所有する資格やスキル、これまでの人事考課歴などのデータが含まれています。これらのデータを分析し、従業員ごとに足りないスキルや能力を補う教育・指導を行えば、従業員の育成を効率化できます。
人事考課システムの選び方
人事考課システムを選ぶ際にチェックしたいポイントを4つご紹介します。
自社に適したタイプのシステムを選ぶ
人事考課システムは、大きく分けて以下4つのタイプがあります。
- タレントマネジメント対応タイプ
- 1オン1ミーティング対応タイプ
- 人事考課特化タイプ
- 人事情報対応タイプ
1は従業員のデータ分析や育成管理などに対応するタイプです。顔写真付きの組織図や人材配置シミュレーションなどを搭載しているのがこのタイプで、人事考課の内容を基に適材適所の配置を目指したい場合に向いています。
2は従業員との1オン1ミーティングに対応しているタイプです。メッセージアプリを使ったコミュニケーションや、ミーティング時に使う対話テンプレートの作成、レコメンド機能などが搭載されており、フィードバックの質の向上を目指せます。
3はその名の通り、人事考課業務に特化したタイプで、人事考課にまつわる業務を効率化できる機能が一通り搭載されています。多機能タイプに比べると人事考課にまつわる機能が充実しているため、人事考課業務の効率化を目的としている場合におすすめです。
4は人事考課に関連する機能に加え、従業員情報をより詳しく管理したい方に適しています。
3のタイプにも従業員情報機能はありますが、4の場合はさらに人事台帳の作成や従業員情報へのアクセス権限の設定といった便利機能も搭載されているところが特徴です。
このように、一言で人事考課システムと言ってもさまざまなタイプがあるので、自社の目的やニーズに合ったシステムを選ぶことが大切です。
操作性の良さをチェック
人事考課システムの操作方法や画面レイアウトはシステムごとに大きく異なります。初めて人事考課システムを導入する場合、現場ですぐ活用できるよう、初心者でも使いこなせる操作性の良いシステムを選ぶのがおすすめです。
システムによっては無料体験やデモサービスなどを提供しているので、一度使い勝手を試してみて、人事考課の関係者が問題なく利用できるかどうかチェックしてみましょう。
コストが予算に合っているか
人事考課システムの導入には、初期費用と維持費用が掛かります。クラウドシステムの場合、初期費用は安く抑えられますが、システムを利用している間は継続的に利用料金が発生するので、毎月の予算に合った費用かどうかをあらかじめ確認しておきましょう。
また、システムによっては利用できる機能やサポートの範囲ごとに複数のプランが設けられている場合があります。
多機能なプランはサポートやサービスが充実していますが、そのぶん費用が割高になるので、自社にとって必要な機能・サポートを明確にした上で、無駄のないプランを選ぶことが大切です。
セキュリティは万全か
人事考課システムには、従業員の個人情報や評価内容、企業の評価基準といった重要な情報が記録されています。もしこれらの情報が何らかの理由で外部に流出してしまうことは、会社にとって大きな損害です。
特にクラウドタイプの人事考課システムは外部サーバーとデータをやり取りするため、悪意ある第三者からの侵入や情報窃盗のリスクに備えて万全のセキュリティ体制を整えておく必要があります。
具体的には、暗号化通信やデータの暗号化、DDoS(分散型サービス拒否攻撃)保護や侵入検知といった不正アクセス対策など、強固なセキュリティ機能が搭載されているかどうかを確認しておきましょう。
人事考課システムを導入すれば業務効率化や適材適所の人材配置などに役立つ
人事考課は、従業員の能力や業績を公平に評価した上で査定に反映する重要な制度です。人事考課を適正に行えば、公平な評価に基づく人事査定や、組織の成長促進、企業目標の明確化などに役立ちますが、目標設定や評価シートの作成、および全従業員分のデータ分析・評価を行うのは簡単なことではなく、多大な手間と時間が掛かってしまいます。
そのようなときは、人事考課にまつわる業務を効率化できる人事考課システムを導入するのがおすすめです。システムを利用すれば、業務プロセスの一部を自動化できる他、人的ミスによる評価漏れや誤評価を防ぐことができるので、担当者の負担を減らすことができます。
人事考課システムはサービスごとに機能やサービス、費用などに違いがあるので、自社のニーズや予算、用途などを明確にした上で複数のシステムを比較し、適切なものを選ぶようにしましょう。
こちらのサイトでは、初期費用や月額費用、無料トライアルの有無など複数の項目で人事評価システムを比較しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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