更新日:2024/11/06
信用調査(与信調査)とは? 4つの調査方法や押さえるべきポイントを紹介
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
企業間の取引において欠かせないのが信用調査です。信用調査は相手企業から売掛金を回収できるか見極めるために行われます。売掛金を回収できなければ自社にとっても損害につながるため、信用調査は非常に重要です。
本記事では信用調査の基本知識や調査方法、調査のポイントを詳しく解説します。未回収のリスクを回避し、確実に売掛金を回収するためにも、信用調査の重要性とポイントを理解し、適切な方法で実施しましょう。
この記事の目次はこちら
信用調査(与信調査)とは?
適切な信用調査を実施するためには、信用調査の概要を理解する必要があります。
以下では信用調査の基本知識と重要性に関して解説します。基本をしっかり把握した上で、自社のワークフローにどのように信用調査を入れるべきか検討しましょう。
信用調査とは取引先を見極めること
信用調査とは、企業が取引する際に取引相手としての信頼性を調査することで、「与信調査」とも呼ばれます。会社基本情報・業績推移・事業構成などを元に経営状況や債務状況などを調査し、取引に対しての支払い能力があるかを判断します。
例えば取引先と売買契約を結び、自社が商品を引き渡し、取引先企業から後払いで代金を支払ってもらう場合、相手が期日までに代金を支払ってくれなければ、自社の資金繰りに影響を及ぼすことになります。金額が大きい場合はなおさら影響が深刻なものになるかもしれません。
売買契約が成立したからといって、期日までに取引先が支払いを完了してくれる保証はありません。企業の経営状態や財務状況によっては、契約で決めた代金を支払うだけの資金力がない場合もあります。
後から取引先に支払い能力がないことが分かっても遅いため、事前に信用調査を実施し、相手先の信用度を見極める必要があるのです。
信用調査の重要性
信用調査は損益面と資金面の両方において「焦げ付き」を防止する意味で重要です。焦げ付きとは、取引先の経営が傾いたために代金が回収できなくなることを指します。
取引先に焦げ付きが出た場合、損益面では自社の決算にも大きな悪影響を及ぼし、業績の悪化につながる可能性があります。
また焦げ付きによる損失を取り戻そうとすると、膨大な売上を新規で得なければなりません。取引における利益率と焦げ付きの額にもよりますが、場合によっては数億円、数十億円といった膨大な売上が必要になります。
資金面からみると取引先の焦げ付きにより未収金が発生し、資金繰りが悪化する可能性があります。未収金分の金額を他で補おうとすると余計に資金が足りなくなり、仕入れ先への支払いも滞るでしょう。最悪の場合は自社まで連鎖的に倒産しかねません。
こうした事態を防ぐために、あらかじめ信用調査をしっかり実施する必要があります。
信用調査の方法は主に4つ
信用調査の方法は、主に次の4つです。
- 社内調査
- 直接調査
- 外部調査
- 依頼調査
ここでは上記4つの調査方法について詳しく紹介します。ケースによっては、複数の方法を組み合わせて調査することをおすすめします。
①社内調査
社内調査は自社内で情報や手段を使って信用調査する方法です。例えば営業担当者へのヒアリングや、過去の取引実績記録などから取引先の資産状況や資金繰りを調査する方法が挙げられます。
社内調査のメリットは、コストをかけずに一定の情報を得られる点です。また社内のスタッフや資料に直接アクセスするので、調査時間の短縮にもつながります。相手先企業との取引前でも、過去にその企業とやり取りした経験のある営業担当者にヒアリングしたり、過去の取引記録を経理担当部署に確認したりして、信用調査することが可能です。
一方、社内リソースのみだと調査範囲に限界がある点はデメリットです。社内調査は、メリットとデメリットを把握した上で、他の調査方法と組み合わせることもおすすめします。
②直接調査
直接調査は調査対象企業や個人に直接接触して情報を収集し、信用状況を調査する方法です。例えば企業を直接訪問してヒアリングする方法や、電話やメールなどを通して事業の実態や財務状況、経営方針などを調査する方法が挙げられます。
直接調査のメリットは、企業がインターネットや広報資料で公開している情報だけでは知り得ない情報が得られる点です。決算状況だけでなく、実際の会社の雰囲気やスタッフの対応、業務の様子、設備や備品などまで細かくチェックできます。こうした情報はより正確な信用調査に役立つでしょう。
一方、直接調査は相手企業の協力を得なければならず、手間や費用がかかります。また、企業によっては警戒心を抱いてしまい、以後の取引に悪影響が出る可能性も捨てきれません。直接調査をする場合は、相手企業と丁寧にコミュニケーションを取りながら調査するスキルが求められます。
③外部調査
外部調査には、大きく分けて次の3種類の方法があります。
- 官公庁調査
- インターネットによる検索調査
- 側面調査
以下ではこの3つの外部調査方法について詳しく紹介します。自社にとってやりやすい方法を組み合わせて調査するのが良いでしょう。
官公庁調査
官公庁調査は、政府機関や地方自治体が保有する公的な記録や情報を調べる方法です。例えば法務局やインターネットの登記情報提供サービスで、商業登記簿や不動産登記簿を閲覧する方法が挙げられます。
商業登記簿では企業の本店所在地や設立の目的の他、資本金の情報も調査できます。不動産登記簿では土地または建物の所有権、抵当権賃借権などの情報を調査することが可能です。
他にも税務署、市区町村役場、裁判所といった官公庁が保管する公文書や納税記録、許認可情報、裁判記録なども調査の対象にできます。公的機関の保有する情報なので、信頼性のある情報を得られます。
インターネットによる検索調査
インターネット上で公開されている情報を入手し、信用度を評価する方法です。相手企業の公式Webサイトやデータベースから事業内容や資産状況、決算状況などの情報を収集します。
他にも企業のソーシャルメディアアカウントやブログ、求人情報なども調査対象です。財務情報だけでなく、製品やサービス、経営者情報、業界での評判、顧客の反応などの情報を精査することで、より正確な信用調査につなげられます。
また企業に関するニュースや最近の出来事などの情報も収集すると、決算情報だけでは見えてこない企業の動向が分かることもあります。この方法は迅速かつ低コストで幅広い情報を収集できる点がメリットです。
側面調査
側面調査とは、直接調査で得られた情報が正しいかどうかをチェックするために実施する調査です。「裏付け調査」とも呼ばれます。
具体的には、対象企業の取引銀行や仕入れ先などの第三者から情報を入手します。対象企業に出入りしている業者や、オフィスが入っているビルのオーナー、顧客などから情報を得ることも可能です。
こうして側面から追加情報を入手することで、直接情報で得た情報の正確性をチェックしていきます。
また側面調査は直接調査では十分な情報を得られなかった場合に、さらなる情報を入手するためにも行われます。ただし調査相手によっては欲しい情報を開示してくれない場合もあります。個人を相手に調査する場合は、プライバシーの侵害にならないよう十分気を付けることが重要です。
④依頼調査
依頼調査は専門の調査会社や信用調査機関に調査を依頼して、情報を入手する調査方法です。自社の手で行う調査だけでは情報が不十分な場合に有効です。
調査に関して高度な専門知識と豊富な情報源を持つ専門家に依頼することで、自社のみで調査するよりも詳細で信頼性の高い情報を得られるメリットがあります。また自社では信用調査に割く人的リソースが足りない場合にも、専門のスタッフが代わりに調査してくれるので安心です。
一方、調査会社や機関に調査を依頼する場合は、費用がかかります。どれくらいの費用がかかるかは、調査会社(機関)や調査の内容・範囲などによって異なります。依頼調査は費用面をしっかり考慮した上で選択することをおすすめします。
信用調査で押さえるべき3つのポイント
信用調査の際に押さえるべきポイントは、主に以下の3つです。
- 資産状況・財務状態が安定しているか
- 企業や経営者は信用できるか
- 支払い能力があるか
①資産状況・財務状態が安定しているか
まず相手先企業の資産状況や、財務状態が安定しているかどうかを確認することが必要不可欠です。資産状況は決算報告書から判断できます。
資産状況や財務状態の確認は、相手先企業の経済的基盤と安定性を評価する上で重要です。なぜなら、どれだけ社風が良い企業であっても売掛金をきちんと支払える資金がなければビジネスが成り立たないからです。
また決算報告書の他にも在庫状況や返品の多さなどの荷動きも分かれば確認しましょう。さらに、社員の離職状況や労働条件に関する争議などの内部トラブルも大切な情報源です。
信用調査においては第一に、上記で挙げた情報を調査することで、企業の支払能力、投資余力、長期的な事業継続性を判断することが大切です。
②企業や経営者は信用できるか
企業に信用力があるかどうかは、収入や財務基盤の安定性につながります。従って相手先企業の経営者が信用できるかも確認しましょう。
企業間のやり取りにおいても、やはり「人対人」のコミュニケーションが軸となります。企業の財務状況はもちろん、人柄が良く信頼できる経営者の元にこそ多くの企業が「取引をしたい」と集まるものです。経営者の信用性が高ければ、それだけ取引先としても人気があり、安定した収入が期待できる判断要素になります。
とはいえ、いきなり経営者の人柄を判断するのは難しいため、まずは企業の中長期事業計画や株主向けの資料などから、経営者がどういった考えを持ちながら会社経営に臨んでいるかを調べます。
続いて当該経営者の人となりを知る人物に評判を聞いたり、可能であれば経営者と直接コンタクトを取ったりして実際の人柄を調査しましょう。
③支払い能力があるか
相手先企業に、実際に支払い能力があるかどうか確認することも重要です。どれだけ有名企業で信用性の高い経営者がいたとしても、取引の時点で支払い能力がなければビジネスが成立しません。企業には、儲かっている時期もあれば、損失を出してしまう時期もあります。したがって、取引時点の相手先企業の財務状況がどのようになっているかをチェックする必要があるのです。
具体的には、財務諸表、キャッシュフロー、資産と負債の比率、流動性指標などの財務データを詳細に検討します。売上高が伸びていても、負債を多く抱えていたり、支出が多かったりなど、手元に残る資金があまり多くないケースもあります。決算資料を四半期ごとに精査するようにしましょう。
信用調査をしないとどうなる?
企業間取引を成功させるためには、信用調査が必要不可欠です。信用調査をしない場合、当然リスクが生じます。
以下では、信用調査をしない場合のリスクを解説します。リスクを避けるためにも、信用調査はしっかり行いましょう。
売掛金が回収できないリスクがある
相手先企業の財務状況や資産状況を確認しないまま取引してしまうと、支払期日までに相手から入金がなく売掛金の未回収に陥るリスクが高まります。
信用販売を行うことは、実質的には未知の相手に無担保融資を提供するのと同じことです。表面上はスムーズに取引できたとしても、相手先企業の経営状態や財務状況によっては、売掛金を支払うだけの資金が残っていないことがあります。
支払い能力に問題がある場合、売掛金の回収が遅延したり、最悪の場合、回収不能になったりすることもあります。そうなった場合は自社にとって大きな損害です。
売掛金未回収のリスクを回避するためにも、信用調査は必ず実施し、相手先の財務状況や資産状況から支払い能力に問題がないかチェックしましょう。
連鎖倒産のリスクがある
信用調査をせずに取引してしまうと、取引先の財務状況や支払い能力を正確に把握できず、売掛金未回収といった潜在的なリスクを見逃す恐れがあります。また、売掛金の回収が困難になれば、自社の資金繰りにも深刻な影響を与えることがあります。
そうなると自社も資金繰りが悪化し、支払いの遅延や停止を余儀なくされるかもしれません。さらに、売掛金未回収のまま相手先企業が倒産してしまうと、自社も借入金や利息の返済の目処がたたなくなり、最悪の場合倒産につながることもあります。これが連鎖倒産です。
たとえ自社が黒字経営だったとしても、売掛金の未回収が発端となって財務状況が悪化する可能性は高いです。
従って黒字経営だからといって安心せず、信用調査は必ずしっかりと実施するようにしましょう。
信用調査を行うベストなタイミング
信用調査を行うのにベストなタイミングは、新規取引を開始する前や、既存の取引関係で重要な変更を行うときです。いずれにせよ自社の資金が動く前に、必ず信用調査で相手先の財務状況をチェックすることが大切です。特に大口の取引や長期的な契約を結ぶ前には、丁寧な信用調査を行うようにしましょう。
また信用調査は一度で終わりにするのではなく、定期的な調査も重要です。なぜなら市場環境の急激な変化や、取引先の経営体制の変更などさまざまな要因で相手先の財務状況が急に悪化することもあるからです。
相手先の業績の悪化兆候を見逃せば、売掛金の回収にも支障が出る可能性が高くなります。特に長期にわたる契約では相手先の財務状況が変化しやすいため、定期的な信用調査を忘れないようにしましょう。
信用調査を専門会社に依頼するメリット
信用調査は時間やコスト、経験の有無などの理由から自社のスタッフだけで行うのは困難な場合があります。
その際は専門会社に依頼することも有効な選択肢の一つです。以下では信用調査を専門会社に依頼するメリットについて解説します。
自社で調査する時間が省ける
専門会社に信用調査を任せれば自社で調査する時間が省け、本来の業務に専念しつつ信用調査が完了できるメリットがあります。
専門会社は豊富な経験と効率的な調査手法を駆使するので、迅速かつ正確な情報収集が可能です。また独自のデータベースや情報網を活用し、通常はアクセスしにくい業界内の非公開情報も入手できる可能性があります。自社がサポートしなくても、専門会社が情報収集を一手に担ってくれるのです。
その他にも専門家による分析も行ってくれることから、自社でリソースを割いて分析する必要はありません。分析結果は分かりやすい形で自社に共有してもらえます。
このように専門会社に依頼することで時間の節約になるため、自社が本業に集中でき、より戦略的な意思決定に時間を割くことができるでしょう。
公正な視点で調査してくれる
自社のみで調査を行う場合、対象企業の世間一般でのイメージや、これまでの取引経験でのイメージなどから、気づかないうちに先入観をもって調査してしまう可能性があります。これでは、調査の正確性が担保できません。
この点、専門会社であれば多数の調査経験から得られた広い視野と比較データを活用し、業界標準や市場動向を考慮した公平な評価が可能です。
また標準化された調査手法と評価基準を用いることで、一貫性のある結果を提供してくれます。
信用調査の他に債権管理サービスの利用がおすすめ
自社に合った信用調査会社を選ぶコツは「調査価格の適切性」と「納期の適合性」です。調査価格の適切性を確認するには、調査内容に見合った適切な価格設定であるかに着目しましょう。複数のサービス会社から相見積もりを取り、市場相場を把握した上で選ぶのがおすすめです。
納期の適合性は、自社の要求期間内に調査結果を提供してくれるかどうかを見極めます。会社によって納期が異なるため、自社が求める納期に対応できるかどうか、見積もりの際にスケジュールを確認しましょう。
未回収リスクを抑え、安定したキャッシュフローを維持していくためには、信用調査を行う他、債権管理も重要です。債権管理の業務は煩雑化しやすいため、債権に関する情報を一元管理できる債権管理サービスを利用するのがおすすめです。債権管理サービスを活用することで請求や売掛金回収業務を効率化できたり、未入金に迅速に対応できたりするなどのメリットがあります。
まとめ
信用調査は取引を成功させるために必要不可欠な工程です。決して相手先企業に対する先入観や世間一般のイメージだけで信用性を判断するのではなく、決算情報や資産状況などの具体的な数字を調査して分析することが重要です。
健全なキャッシュフローを実現するには信用調査の他、債権管理を適切に行うことも大切です。しかし債権管理は煩雑化しやすく手間がかかります。「債権管理業務を効率化したい」「未回収リスクを抑えたい」をお考えの企業さまには債権管理サービスを利用することをおすすめします。
債権管理サービスと一口に言っても対応範囲はさまざまで、与信業務や請求書発行、入金確認、売掛金回収まで一元管理できるサービスをはじめ、煩雑な入金消込を自動化するタイプや、入金保証にも対応しているサービスもあります。
債権管理サービスを導入するなら、サービスの特徴や対応範囲、価格などを比較して、自社に合ったサービスを選びましょう。
おすすめの債権管理ツール
scroll →
サービス名称 | 特長 | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
---|---|---|---|---|
請求まるなげロボ |
|
与信審査 請求書発行 代金回収 入金管理 最速 リスク保証 |
無 |
月額利用料 請求書発行件数に応じて変動します。 + 業界最安水準 手数料1.0%〜 お問い合わせ |
URIHO |
|
- | 初回の保証開始日から1ヵ月間は無料 |
A プラン 9,800円/月 B プラン 29,800円/月 C プラン 99,800円/月 |
ACT-NetPro |
|
基本会計 債権管理 債務管理 固定/リース資産管理 手形管理 |
無 | - |
V-ONEクラウド |
|
一括入金消込機能 消込シミュレーション機能 入金データ自動連携 債権管理帳票機能 チャット・メール連携機能 API連携機能 債権計上機能 口座振替対応機能 入金予定登録機能 前受振替処理機能 内部統制対応機能 セキュリティー・権限設定機能 |
無 |
プラン有 金額は記載なし |
Victory-ONE【検収照合】 |
|
自動照合 手動照合 リスト出力 マルチ照合 自由キー設定 税抜/税込照合 |
無 |
初期費用 + 月額費用 |
Victory-ONE/G4 |
|
売上管理 請求管理 入金管理 滞留債権管理 一括入金消込 消込パターンレコメンド 入金データ自動連携 前受金管理 請求書発行 債権管理帳票 社内督促協力通知 データ連携 |
無 | - |
Victory-ONE【決済管理】 |
|
- | 無 |
初期費用 + 月額費用 |
Fimple保証 |
|
- | 無 | - |