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SFA JOURNAL by ネクストSFA

更新日:2024/10/02 

滞留債権って? 不良債権との違いや管理方法を徹底解説

滞留債権って? 不良債権との違いや管理方法を徹底解説

【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬

滞留債権は不良債権とは異なり、回収できる見込みがある債権のことです。しかし、滞留債権が増えるとキャッシュフローが悪くなり、最悪の場合には黒字倒産する恐れがあります。本記事で、滞留債権を防ぐ方法や管理方法を知り、未回収の債権を作らないことが大切です。

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滞留債権は期日までに入金されなかった債権のこと

滞留債権は、売掛金の支払期日が到来しても入金されなかった債権のことです。企業間の取引は、一般的に掛取引で行われます。掛取引とは商品やサービスの購入時に毎回支払うのではなく、1カ月や2カ月など期間を定め、期間内の取引金額をまとめて支払う取引のことです。

掛取引では、商品やサービスを提供すると売上として計上しますが、実際は現金が支払われていないため、帳簿上は売掛金です。取引金額確定後、相手に入金する期日や入金額を記載した請求書を発行し、支払いが行われれば帳簿上の売掛金が消込まれます。しかし、支払期日が到来しても支払われない場合には、売掛金は未回収の売上金として債権のひとつになり、滞留債権として管理されます。

滞留債権は管理上の呼び名

滞留債権は管理上の呼び名で、期日が到来しても入金されない売掛金のことです。長期滞留債権は未入金期間が6カ月を超えた売掛金です。滞留債権と長期滞留債権は1年以内に代金の回収が見込めるとの判断から帳簿上の勘定科目は売掛金に分類されます。1年を超える長期未収入金として管理されます。期間により管理の仕方が変わるのは貸借対照表では、記載する資産や負債を流動と固定に分類しているためです。ワン・イヤー・ルールという1年基準により1年未満は流動資産、1年以上は固定資産と判断されます。

不良債権と異なる点は回収の見込みがあるかどうか

未回収金には滞留債権の他に不良債権があります。滞留債権と不良債権には未回収金を回収できる見込みがあるかどうかという点に違いがあります。滞留債権は、支払期日までに支払いがなくても催促や督促で回収の見込みがある債権で、不良債権は相手企業の経営状況の悪化により支払いが遅れていて今後も回収が見込めなかったり、不可能になったりした債権のことです。しかし、会計ミスが原因で発生する滞留債権ではなく、経営の悪化による資金繰りの不良が原因で発生した滞留債権の場合には長期間未回収の状態が続くと不良債権となり企業の損失につながる恐れがあるため、速やかに回収に向けた行動を取ることが大切です。

滞留債権が企業に与えるリスク

滞留債権が増えるとキャッシュフローが悪化し、経営に悪影響を及ぼします。滞留債権が企業に与えるリスクを解説します。

会社の損失となる

取引先が倒産すると貸倒となり売掛金の回収ができなくなります。また、倒産していなくても売掛金には時効があり、放置すると債権が消滅して会社の損失となります。売掛金の時効は原則として支払期限の翌日を起算日として5年間です。しかし、消滅時効は手続きを行うことで時効の更新や完成猶予にできます。

企業の信用の低下

正しく請求しているにもかかわらず、売掛金を支払わない場合は相手企業に問題があります。しかし、掛取引による未回収金が増えたり、貸倒で損失を被ったりした情報が周囲に広がれば、支払いができなくなるような企業と取引をする企業・売掛にして支払いができなくても大丈夫な企業との印象を与え、企業の信用の低下やイメージの毀損につながります。

黒字倒産

黒字倒産は商品やサービスは売れていて帳簿上では利益が出ているのに、現金が不足しているため、事業が継続できなくなる状態のことです。掛取引では取引の度に支払いをするのではなく、1カ月分などの取引をまとめて支払うのが一般的です。そのため、現金が手元に入るのは取引から1カ月程先で、その間は帳簿上と手元資金に差が生じます。売掛金の回収が遅れ滞留債権が増えると、手元の資金が不足し黒字倒産するリスクが高まります。

滞留債権が発生する理由

滞留債権は、取引先と自社のどちらかの原因により発生します。

取引先に原因がある場合

取引先が原因の滞留債権には次の理由が考えられます。

  • 請求書の紛失
  • 入金忘れ
  • 入金期日の間違い
  • 経営状況の悪化 など

期日までに売掛金が入金されない原因には、請求書の紛失や入金忘れ、期日の間違いなど担当者の単純なミスが考えられます。手作業で会計処理をしている場合、ヒューマンエラーが起こりやすいですが、ミスであれば相手へ連絡すればすぐに支払いしてもらえるでしょう。

滞留債権を繰り返す場合や、催促してもなかなか入金してくれない場合は経営状況が悪化している可能性があります。滞留債権が不良債権につながる恐れがあるため、迅速な対応と今後も掛取引を続けるかどうかを判断する必要があります。

自社に原因がある場合

自社が原因の滞留債権には次の理由が考えられます。

  • 請求書の記載ミス
  • 請求書の未送付
  • 入金消込ミス など

事業規模が大きくなるほど取引の件数が増え、請求書の発行数も増えるため、請求ミスや請求漏れが起こる可能性が高くなります。請求ミスや請求漏れには商品数や単価の間違い、入金期日の間違い、値引き計算ミスなどの請求書の記載ミスや請求書の発行忘れ、郵送し忘れなどさまざまなものがあります。また、同じ金額や似ている企業名の売掛金があると、見間違いによる帳簿上の消込ミスが原因で、入金されているのに滞留債権が発生しているケースもあるでしょう。単純な作業ミスは確認作業を複数人で行ったり、会計システムを導入したりすることが有効です。

滞留債権を防ぐ方法

滞留債権は、企業のキャッシュフローの悪化や信用の低下などさまざまなリスクがあります。長期滞留債権は不良債権となり会社の損失につながる恐れがあるため、迅速な対処が大切です。

ここでは、滞留債権の発生を防ぐ方法を4つ解説します。

定期的に売掛金の回収状況を確認する

定期的に売掛金の状況を確認し、会計のミスや請求書の発行漏れ、消込忘れがないかをチェックすると滞留債権の解消や、長期未収入金の発生を防げます。掛取引を行う場合は、どこの取引先にどれくらいの債権があるかを把握しておくことで、滞留債権が発生したときに迅速に対応できます。

与信管理を行う

掛取引は信用取引なので、相手企業の支払能力を確認する与信管理が重要です。信用の度合いを決めるルールは企業により異なりますが、経営成績や財務状況、社会的信頼性などから総合的に判断されます。経営状況は変化するものなので、与信管理は取引前だけでなく、取引中も定期的に見直す必要があります。

滞留債権回収を怠らない

滞留債権は金額が増えたり、期間が長くなるほど回収が難しくなるリスクが高まるため、迅速な対処が大切です。金額の大きさにかかわらず回収業務を徹底して行うようにしましょう。

会計システムを利用する

売上管理や債権管理はExcelでできますが、作業手順が多く複雑なので手作業での管理はヒューマンエラーによる滞留債権が生じる恐れがあります。会計システムは、伝票・帳簿・請求書の発行などが一括して管理できるシステムです。サービス内容やサポート体制は利用する会社により異なりますが、債権管理サービスがある場合は煩雑な消込作業も自動で行い、リアルタイムでのキャッシュフローの状況が把握しやすくなります。

滞留債権を回収する方法

滞留債権は未回収の状態が長くなると不良債権につながるリスクがあります。支払期日が到来している売掛金は迅速に回収する必要があるため、滞留債権の回収方法を4つ解説します。

取引先に連絡する

入金の期日が到来しても入金が確認できないときは、まず取引先にメールや電話で連絡しましょう。取引先への連絡は未入金の状態が確認できたら、速やかに行ってください。連絡をしない場合、相手に支払いが遅れても大丈夫な企業と思われる可能性があります。

この段階では、入金忘れや請求書の紛失など相手のうっかりミスや、請求漏れ・請求書の送付ミス・消込ミスなど自社に原因がある可能性もあります。高圧的な態度にならないようにしましょう。

話し合いの場を設ける

滞留債権の回収は迅速に対応する必要がありますが、今後も相手と取引を行う可能性があれば、いきなり内容証明郵便を送付するのは避けましょう。取引先に、連絡後2〜3日経過しても入金が確認できない場合、話し合いの場を設けることが有効です。話し合いの場では、入金できない理由を聞くことができるでしょう。資金繰りが悪化しているときは、自社にとって優先順位の高い企業から返済しようとする傾向がありますが、話し合うことで自社の優先順位を上げ、優先的に返済してもらえる可能性があります。

催促状や督促状を送る

相手に連絡をしても反応がなく、支払いの意思が見えない場合には催促状や督促状を送り支払いを促します。催促状は、最初に取引先に連絡したときよりも、明確に支払いを求める文章にしますが、柔らかく支払いを促す文章のものです。催促状を送っても相手からの連絡や入金がない場合には、督促状を送ります。督促状では催促状よりも強い言葉で支払いを促し、支払われない場合には法的手段へ移行することを伝えます。督促状を送るときには、内容証明郵便を利用しましょう。内容証明郵便は差出人・宛先・内容・差出日を証明する郵便です。また、内容証明郵便を送るときには配達証明をあわせて利用すればいつ相手が受け取ったかの証明になります。

法的手続きを取る

督促状を送っても支払われない場合には、支払督促や差押えを行います。支払督促は、自社が送る督促状とは異なり裁判所から送付されるものです。強制執行を実施するための前段階として送られる書類で、放置すると差押えに進むことになります。法的な手段には弁護士費用がかかったり、訴訟を行う手間と時間がかかったりするため債権の金額に対して自社の負担が大きくなることがあります。債権の金額が少ない場合や相手との交渉の余地がある場合には、公正証書の作成、民事調停、少額訴訟などの手段も検討してみましょう。

滞留債権を管理する方法

滞留債権の主な管理方法はExcelを使用する手動管理と、クラウドサービスを使用するシステム管理の2種類です。それぞれの特徴を解説します。

Excelで管理する

Excelはビジネスシーンでよく利用される表計算ソフトで、コストが発生しないことや使い慣れている人が多いことがメリットです。パソコン環境により仕様が変わることがなく、データの互換性が高いのでデータ共有や移行もスムーズに行えます。しかし、Excelは表計算ソフトのため、会計に利用するためにはフォーマットを作成しなくてはいけません。会計には、総勘定元帳や仕訳帳、現金出納帳などが必要で、フォーマットを作成するには、簿記とExcelの両方の知識が必要です。


また、フォーマットは作成者以外が使いこなすことは難しく、会計業務が属人化しやすい傾向にあります。入力や消込作業、請求書の発行などは手作業で行うため、ヒューマンエラーが起こる可能性も高くなります。

会計システムで管理する

会計システムを利用すると、データを取り込めば自動的に仕訳されるため簿記の知識がなくても帳簿付けができます。銀行口座の取引データを取り込めるシステムであれば、入金消込も自動で行ってくれるため、帳簿を付ける手間や作業時間の削減、ヒューマンエラーの低減、属人化を防ぐことにも有効です。

滞留債権が回収できないときは貸倒損失として計上する

滞留債権が回収できず、不良債権となった場合は、貸倒損失として計上すると自社の税務上の負担を軽減できます。貸倒損失とは取引先が倒産し売掛金を回収できなくなったときに使用できる勘定科目です。滞留債権を貸倒損失として計上できるのは法律上の貸倒・事実上の貸倒・形式上の貸倒のいずれかに該当する場合です。

法律上の貸倒

法律上の貸倒の要件は次のとおりです。

  • 会社更生法や民事再生法など法的手続きを取った
  • 債権者の協議や行政機関、金融機関などのあっせんによる関係者会議で切り捨てが行われた
  • 債務者の債務超過の状態が相当期間継続するなど一定の条件を満たし、書面により債務の放棄を通知した

法律上の貸倒は、発生した年度の損失として計上できます。

事実上の貸倒

事実上の貸倒は取引先の資産状況から支払不能となり、全額が回収できないことが明らかになった場合に発覚した年度の損失として計上できます。ただし、債権の全額が回収できないことが条件なため、担保物の処分や保証人からの回収後でなければ認められません。

形式上の貸倒

取引停止後、1年以上弁済がないがない場合や最終の弁済から1年以上経過した場合には、売掛債権から備忘価格を控除した額を損失として計上できます。

債権管理サービスで滞留債権の発生を防ぐ

売掛金の管理や請求書の発送、入金の確認などは経理業務の一環です。事業規模が大きくなるほど取引の量が増えるため、経理担当者の負担も大きくなり、見落としや記入漏れ、記入間違いなどのミスが起こる可能性が高まります。相手が期日までに入金していないのであれば、相手側に落ち度がありますが、見落としや消込ミスで本来は支払われているにもかかわらず、滞留債権として扱い二重の請求や催促をしてしまうと、企業の信頼を落としかねません。そのため、請求書の発行や入金消込はミスなく行われる必要があります。

債権管理サービスを利用すれば、取引ごとの売掛金や滞留債権をリアルタイムで一元管理でき、入金消込や台帳の付け合せ作業も不要です。すでに導入しているツールがある場合には、自社に合うものを選ばなければ業務範囲が重なることもあります。複数のツールを比較して、必要なものを選びましょう。

会計システムの種類

会計システムは財務会計システム・管理会計システム・債権管理システム・債務管理システムの4つに分けられます。

財務会計システム

財務会計システムは、企業が利用する一般的な会計システムです。取引の仕訳や決算書、財務諸表などの書類作成が行えます。伝票入力や帳簿作成などがシステム化されることで、誰でも会計業務に携われるようになり、効率化とヒューマンエラーの防止に有効です。

管理会計システム

管理会計システムは、取引による損益管理、経費の状況、キャッシュフローの分析ができ、今後に向けた経営分析ができます。

債権管理システム

債権管理システムは、売掛金の回収が適切に行われているか管理するシステムです。請求書の発行、入金と連動した自動消込、支払期日を過ぎた債権の督促、売上管理などを行えます。

債務管理システム

債務管理システムは、買掛金の支払いを管理するシステムです。債務の支払期日を取引先ごとに分けて管理できるので、支払いの遅延により信用を失うリスクを防げます。

滞留債権を防ぐには管理体制の強化が重要

滞留債権は、売掛金の支払いが期日までに行われなかった債権です。経営状況の悪化だけでなく、Excel管理による入力間違い、請求書の確認し忘れや発送漏れなど人的なミスが原因で発生する可能性があります。債権管理サービスの導入は、人的なミスや会計処理の負担を軽減するために有効です。経営状況の悪化が原因の場合には迅速に対応することで回収できる可能性があるので、管理体制を強化し長期滞留債権の発生を防ぎましょう。

以下の記事では、滞留債権の管理にも役立つ請求管理ツールを紹介しています。ぜひご参考ください。

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