最低限そろえるべき福利厚生とは?法定・任意の違いと企業が守るべき基準を徹底解説
【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
企業の成長を支えるのは「人」であり、その従業員が安心して働くためには福利厚生の整備が不可欠です。しかし、「福利厚生を充実させたいが、まず何から手をつけるべきか」「法律で定められた最低限のラインはどこなのか」と悩む経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、企業が必ず守るべき最低限の福利厚生である「法定福利厚生」を中心に、その種類や加入条件、整備しなかった場合のリスクについて徹底的に解説します。自社の労務管理が適切か確認し、健全な企業経営の第一歩としましょう。
【比較表】福利厚生のおすすめサービス
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オフィスコンビニTUKTUK
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BeeNii
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初期費用:0円 月額費用:0円 配送料:0円 ※システム利用料はお弁当代に含まれます |
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この記事の目次はこちら
企業の義務である「最低限の福利厚生」とは?
福利厚生は、従業員の経済的な安定や生活の質の向上を目的とした、給与以外の報酬やサービスを指します。これは単なるコストではなく、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、企業の生産性向上や持続的な成長に貢献する重要な投資です。特に、企業が従業員を一人でも雇用する際に法律で整備が義務付けられている「法定福利厚生」は、企業が守るべき最低限の基準と言えます。これには、健康保険や厚生年金保険といった社会保険制度が含まれており、従業員が病気やケガ、失業、老齢といったリスクに直面した際のセーフティーネットとしての役割を果たします。企業の規模や業種に関わらず、すべての事業主にこの義務が課せられており、その遵守は企業の社会的責任の根幹をなすものです。この記事を通じて、企業として果たすべき最低限の責任を正しく理解し、従業員が安心して働ける環境を構築するための知識を深めていきましょう。適切な福利厚生の整備は、採用競争力の強化や離職率の低下にも繋がり、結果として企業の価値を高めることに直結するのです。
「法定」と「法定外」の違い
福利厚生制度を検討する上で、まず理解すべきなのが「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」という二つの大きな区分です。この違いを明確に把握することが、自社の制度を適切に整備するための第一歩となります。法定福利厚生は、その名の通り、法律によって企業に導入が義務付けられている最低限の福利厚生を指します。これは従業員の生活を保障するための基本的なセーフティーネットであり、企業の意思で内容を変更したり、廃止したりすることはできません。一方で、法定外福利厚生は、企業が任意で独自に設定する制度です。住宅手当や社員食堂、特別休暇など、その種類は多岐にわたります。こちらは法律上の義務はありませんが、従業員満足度の向上や他社との差別化を図り、優秀な人材を確保するための重要な戦略的要素となります。まずは、企業としての義務である法定福利厚生を確実に遵守し、その上で企業の特色を出すためにどのような法定外福利厚生を追加していくかを考えるのが基本的な順序です。
企業が必ず整備すべき最低限の福利厚生は「法定福利厚生」
企業が従業員を雇用する上で、必ず整備しなければならない最低限の福利厚生が「法定福利厚生」です。これは、国の社会保障制度の一環として、従業員の生活を守るために法律で定められた企業の義務です。具体的には、「社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)」と「労働保険(雇用保険、労災保険)」、そして「子ども・子育て拠出金」の納付がこれにあたります。これらの制度にかかる保険料は、労災保険(全額事業主負担)などを除き、原則として企業と従業員がそれぞれ決められた割合で負担(労使折半)します。法定福利厚生は、企業の規模や業績に関わらず、適用条件を満たす従業員を雇用するすべての事業主に課せられた責任であり、コストではなく企業の存続に不可欠な義務として捉える必要があります。
企業が任意で提供する「法定外福利厚生」
法定外福利厚生とは、法律による設置義務がなく、企業が独自の判断で任意に提供する福利厚生のことを指します。最低限の基準である法定福利厚生に上乗せする形で導入され、企業の理念や文化、従業員のニーズを反映した多様な制度が存在します。例えば、住宅手当や家賃補助、社員食堂での食事補助、通勤手当、人間ドックの費用補助、リフレッシュ休暇制度などが代表的です。これらの制度は、従業員の満足度やエンゲージメントを直接的に高め、働きがいのある職場環境を創出する上で非常に効果的です。また、魅力的な法定外福利厚生は、採用活動において他社との差別化を図る強力な武器となり、優秀な人材の獲得と定着(リテンション)に大きく貢献するため、戦略的な経営投資として重要視されています。
【一覧】法律で義務付けられた最低限の福利厚生(法定福利厚生)
企業が従業員を守るために、法律で加入が厳しく義務付けられている最低限の福利厚生。それが法定福利厚生です。これらの制度は、従業員が安心して日々の業務に励み、万が一病気や失業といった事態に陥った際にも、生活の基盤が揺らがないようにするための重要な社会インフラと言えます。法定福利厚生は、大きく「社会保険」と「労働保険」の2種類に分けられ、合計6つの具体的な制度から成り立っています。事業主は、適用事業所となった場合、これらの制度への加入手続きを速やかに行い、定められた保険料を正確に納付する責任を負います。従業員を一人でも雇用すれば、原則としてこれらの義務が発生します。ここでは、それぞれの制度がどのような役割を担っているのか、その内容を一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 健康保険
健康保険は、従業員やその家族が業務外で病気やケガ、または出産や死亡といった事態に直面した際に、必要な医療給付や手当金を支給する公的な医療保険制度です。病院での診療や治療、入院にかかる医療費の自己負担が原則3割に軽減されるのは、この制度によるものです。保険料は、従業員の給与(標準報酬月額)に基づいて算出され、企業と従業員が半分ずつ負担する労使折半となっています。この最低限の福利厚生があることで、従業員は医療費の心配を大幅に軽減でき、安心して治療に専念できます。企業にとっては、従業員の健康維持を支え、早期の職場復帰を促すことで、安定した労働力の確保に繋がるという重要な役割を果たしています。
2. 厚生年金保険
厚生年金保険は、従業員の老後の生活を支える「老齢年金」を主軸としながら、病気やケガが原因で障害が残った場合の「障害年金」、そして加入者が亡くなった場合に遺族の生活を保障する「遺族年金」という3つの機能を備えた公的年金制度です。国民年金(基礎年金)に上乗せされる形で支給され、より手厚い保障を提供します。保険料は健康保険と同様に、従業員の給与(標準報酬月額)に応じて決まり、企業と従業員で労使折半して負担します。この制度は、従業員が長期的な視点で安心してキャリアを築くための最低限の基盤となります。企業がこの義務を果たすことは、従業員のライフプランを支え、社会全体の安定に貢献する重要な責務です。
3. 介護保険
介護保険は、高齢化社会を支えるための重要な社会保険制度です。40歳以上の従業員(第2号被保険者)と事業主が保険料を負担し合い、加入者やその家族が要介護状態または要支援状態になった際に、訪問介護やデイサービス、施設入所といった介護サービスを原則1割〜3割の自己負担で利用できるようにするものです。40歳になった月から、健康保険料と合わせて徴収が始まります。この制度があることで、従業員は親の介護や自身の将来の介護に対する不安を和らげることができます。企業にとっては、従業員が介護を理由とした離職(介護離職)をせずに働き続けられる環境を支える、最低限の福利厚生として非常に重要な役割を担っています。
4. 雇用保険
雇用保険は、従業員の雇用の安定と促進を目的とした制度です。最もよく知られているのは、従業員が自己都合や会社都合で離職し、失業状態になった際に、再就職するまでの一定期間、生活を支えるための失業等給付(基本手当)でしょう。しかし、その役割は失業時だけにとどまりません。育児休業を取得した際の「育児休業給付」や、家族の介護のために休業する際の「介護休業給付」、さらには従業員のスキルアップを支援する教育訓練給付など、働き続けることを支援する多様な給付制度が含まれています。保険料は事業の種類によって料率が異なり、企業と従業員の双方が負担します。これは、働く意欲のある人が安心してキャリアを継続できる社会を実現するための最低限のセーフティネットです。
5. 労災保険
労災保険(労働者災害補償保険)は、従業員が業務上の事由または通勤中に、ケガをしたり、病気にかかったり、あるいは不幸にも死亡してしまった場合に、被災した従業員やその遺族に対して必要な保険給付を行う制度です。治療費の全額給付、休業中の所得補償、障害が残った場合の年金や一時金、遺族への補償などが含まれます。この制度の最大の特徴は、保険料の全額を事業主が負担する点です。従業員の負担は一切ありません。また、パートやアルバイトといった雇用形態に関わらず、一人でも労働者を雇用するすべての事業者に加入義務があります。これは、労働者を保護するための最も基本的かつ最低限の福利厚生であり、企業の安全配慮義務を補完する重要な役割を担っています。
6. 子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金は、次世代の社会を担う子どもの健全な育成を支援するために、企業が負担する税金の一種です。これは、児童手当や地域の子育て支援サービス、仕事と子育ての両立支援事業などの財源として活用されます。直接従業員に給付されるものではないため、福利厚生としての認知度は低いかもしれませんが、社会全体で子育てを支えるという重要な目的を持っています。この拠出金の納付義務があるのは、厚生年金保険の適用事業所の事業主であり、保険料は厚生年金保険料と合わせて納付します。従業員に負担はなく、全額が事業主負担となります。これもまた、企業が社会の一員として果たすべき最低限の法的義務の一つに位置づけられています。
【要注意】最低限の福利厚生を整備しない場合の罰則・リスク
法律で定められた最低限の福利厚生、すなわち法定福利厚生の整備を怠ることは、単に「従業員への配慮が足りない」というレベルの問題では済みません。これは明確な法律違反行為であり、企業に対して非常に厳しい罰則やペナルティが科せられる可能性があります。行政からの指導や立ち入り調査の対象となるだけでなく、悪質なケースでは懲役刑や罰金刑といった刑事罰に発展することもあります。さらに、法的な罰則以上に深刻なのが、従業員との信頼関係の崩壊や、企業の社会的信用の失墜といった経営上のリスクです。これらのリスクは、企業の存続そのものを脅かしかねない重大な問題に繋がり得ます。ここでは、法定福利厚生を整備しなかった場合に企業が直面する具体的な罰則とリスクについて詳しく解説していきます。
法律に基づく罰則(懲役や罰金など)
法定福利厚生への加入手続きを怠ったり、保険料の納付を滞納したりした場合、各法律に基づいて厳しい罰則が科せられます。例えば、健康保険法や厚生年金保険法では、事業主が正当な理由なく加入手続きを行わない場合、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が定められています。また、行政指導に従わない場合は、ハローワークや年金事務所による強制的な加入手続き(職権適用)が行われ、過去2年間に遡って保険料が一括で追徴されることもあります。この追徴金には延滞金も加算されるため、企業の資金繰りに深刻な影響を及ぼす可能性があります。これらの罰則は、最低限の義務を軽視した企業に対する厳しい警告であり、法令遵守の重要性を示しています。
従業員からの損害賠償請求のリスク
企業が法定福利厚生への加入を怠った結果、従業員が本来受けられるはずだった保険給付を受けられなかった場合、その損害について企業が賠償責任を問われるリスクがあります。例えば、雇用保険に未加入だったために失業手当を受け取れなかった元従業員や、労災保険に未加入で業務中に大ケガをした従業員から、受け取れなかった給付金相当額の損害賠償を請求されるケースが考えられます。裁判になれば企業の敗訴となる可能性は高く、多額の賠償金の支払いだけでなく、企業の評判にも大きな傷がつきます。こうしたトラブルは、現職の従業員の不信感を招き、さらなる労務問題に発展する火種ともなり得るため、極めて深刻な経営リスクと言えるでしょう。
人材採用の難化と離職率の増加
現代の求職者は、給与や仕事内容だけでなく、企業のコンプライアンス意識や働きやすさを厳しく評価します。法定福利厚生、すなわち社会保険が完備されていないことは、求職者にとって「法律を守らない企業」「従業員を大切にしない企業」という明確なシグナルとなります。その結果、求人を出しても応募者が全く集まらない、あるいは質の高い人材から敬遠されるといった採用難に直結します。さらに、既存の従業員にとっても、最低限のセーフティネットがない状態で働き続けることは大きな不安要素です。将来への不安や会社への不信感から、より待遇の良い企業への転職を決意する従業員が増え、離職率の増加は避けられないでしょう。
パート・アルバイトは対象?最低限の福利厚生における加入条件
企業の労務管理において、特に注意が必要なのがパートタイマーやアルバイトといった短時間労働者の福利厚生の取り扱いです。正社員と同様に、これらの非正規雇用の従業員も、法律で定められた一定の要件を満たした場合には、社会保険や労働保険への加入が義務付けられています。この加入条件を事業主が正しく理解・運用していないと、意図せず法令違反の状態に陥ってしまう可能性があります。従業員の権利を守り、企業としての法的責任を果たすためには、労働時間や日数、賃金といった具体的な基準を正確に把握しておくことが不可欠です。社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)では、それぞれ加入要件が異なるため、分けて考える必要があります。以下でそれぞれの具体的な加入条件を確認していきましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務
パート・アルバイト従業員の社会保険の加入義務は、まず労働時間と労働日数で判断されます。原則として、「1週間の所定労働時間」および「1ヶ月の所定労働日数」が、同じ事業所で働く通常の労働者(正社員)の4分の3以上である場合に加入対象となります。この基準に満たない場合でも、法改正により適用範囲が拡大しており、特定の要件をすべて満たす短時間労働者は加入義務が生じます。具体的には、①週の所定労働時間が20時間以上、②月額賃金が8.8万円以上、③2ヶ月を超える雇用の見込みがある、④学生でない、という4つの条件です。この短時間労働者への適用は、企業の従業員数に応じて段階的に拡大しており、人事担当者は最新の法令を常に確認する必要があります。
労働保険(雇用保険・労災保険)の加入義務
労働保険における加入義務の考え方は、社会保険とは異なります。まず、労災保険については、事業主に雇用されるすべての労働者が対象です。労働時間や日数、雇用期間に関わらず、パートやアルバイト、日雇い労働者であっても、一人でも雇用すれば必ず加入しなければなりません。一方で、雇用保険の加入要件は、「1週間の所定労働時間が20時間以上」であり、かつ「31日以上の雇用見込みがある」ことです。この2つの条件を両方満たす場合には、雇用形態に関わらず被保険者となります。ただし、昼間の学生は原則として適用除外となるなど、一部例外も存在するため注意が必要です。企業は、従業員一人ひとりの労働条件を正確に把握し、適切に手続きを行う責任があります。
法定外福利厚生はどこまで必要?多くの企業が導入している福利厚生例
法律で定められた最低限の福利厚生である法定福利厚生を完璧に整備した上で、企業が次なるステップとして検討するのが「法定外福利厚生」です。これらは法律上の義務ではないため、導入しなくても罰則はありません。しかし、現代の労働市場において、優秀な人材を惹きつけ、従業員の定着率を高めるためには、法定福利厚生だけでは不十分なのが実情です。多くの企業が、従業員の多様なニーズに応えるために、何らかの法定外福利厚生を導入しています。重要なのは、やみくもに流行の制度を導入するのではなく、自社の企業文化や従業員層、そして経営体力に合わせて、費用対効果の高い制度を選択することです。ここでは、多くの企業で一般的となっており、従業員からの人気も高い代表的な法定外福利厚生の例をいくつかご紹介します。
通勤手当
通勤手当は、従業員が自宅から会社まで通勤するためにかかる費用を、企業が補助する制度です。法律上の支払い義務はない法定外福利厚生ですが、日本の企業の多くが導入している非常に一般的な手当の一つです。その背景には、従業員の経済的負担を軽減することで、より広範囲からの人材確保を可能にし、採用競争力を高めるという目的があります。公共交通機関の利用実費を支給するケースや、自動車通勤者に対して距離に応じたガソリン代を支給するケースなどがあります。ただし、通勤手当には所得税法上の非課税限度額が定められており、それを超える金額を支給した場合は課税対象となるため、経理処理には注意が必要です。就業規則で支給条件や上限額を明確に定めておくことがトラブル防止に繋がります。
慶弔見舞金
慶弔見舞金は、従業員やその家族の身に祝い事(慶事)や不幸(弔事)があった際に、企業がお祝い金やお見舞金として支給する制度です。具体的には、結婚祝金、出産祝金、傷病見舞金、弔慰金(死亡お悔やみ金)、災害見舞金などがあります。この制度は、従業員の人生の節目となるライフイベントに会社として寄り添う姿勢を示すことで、従業員のロイヤリティやエンゲージメントを高める効果が期待できます。金額の多寡よりも、会社が従業員を大切に思っているというメッセージを伝えることが重要です。公平性を保つためにも、支給対象となる事由、勤続年数に応じた金額、申請手続きなどを就業規則や慶弔見舞金規程として明確に定めておくことが、円滑な運用のために不可欠です。
法定以上の健康診断費用補助
企業には、労働安全衛生法に基づき、従業員に対して年に一度の定期健康診断を実施する義務があります。これは法定福利厚生の一部と位置づけられますが、法定外福利厚生として、この基準を上回る手厚い健康支援を提供する企業が増えています。具体的には、一般的な健康診断の項目に加えて、人間ドックや脳ドック、がん検診(婦人科検診など)といった、より詳細な検査にかかる費用を会社が補助する制度です。従業員の健康に対する意識を高め、病気の早期発見・早期治療を促すことで、従業員が長く健康に働き続けられる環境を整えます。これは「健康経営」の観点からも非常に重要であり、従業員の生産性向上や、企業の医療費負担の抑制にも繋がる、効果的な投資と言えるでしょう。
まとめ:最低限の福利厚生を正しく理解し、健全な企業経営を
本記事では、企業が必ず遵守すべき最低限の福利厚生である「法定福利厚生」を中心に解説しました。健康保険や厚生年金保険といった社会保険、雇用保険や労災保険といった労働保険は、従業員の生活を守るためのセーフティネットであり、企業の規模に関わらず、適用条件を満たす従業員を雇用するすべての事業主に整備が義務付けられています。この最低限の義務を怠った場合、懲役や罰金といった厳しい罰則だけでなく、従業員からの損害賠償請求や社会的信用の失墜といった、企業の存続を揺るがす深刻なリスクに直面します。 まずは、自社の福利厚生制度が法律の基準を完全に満たしているか、パート・アルバイトを含めた全従業員の加入手続きに漏れがないかを今一度ご確認ください。もし少しでも不安な点があれば、速やかに社会保険労務士などの専門家に相談し、適切な状態に是正することが不可欠です。法令遵守(コンプライアンス)の徹底は、健全な企業経営の土台であり、従業員との信頼関係を築き、企業の持続的な成長を実現するための第一歩となるのです。
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