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SFA JOURNAL by ネクストSFA

与信管理とは?重要性から業務フロー、効率化まで徹底解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

企業間取引が基本となるBtoBビジネスにおいて、「与信管理」は企業経営の根幹を支える非常に重要な業務です。しかし、その重要性が認識されつつも、「具体的に何をすればいいのか分からない」「日々の業務に追われて十分な対応ができていない」「請求管理との連携がうまくいっていない」といった課題を抱える企業は少なくありません。

特に、請求管理システムの導入を検討されている管理部門のご担当者様や責任者様にとって、与信管理の精度向上と効率化は、システム導入効果を最大化する上でも見過ごせないテーマではないでしょうか。

本記事では、与信管理の基本的な知識から、具体的な業務フロー、与信管理を怠るリスク、そして請求管理システムとも連携する現代的な与信管理の効率化・高度化の手法まで、網羅的に解説します。この記事を読むことで、自社の与信管理体制を見直し、より安全で効率的な企業経営を実現するためのヒントを得ていただければ幸いです。

 

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はじめに:なぜ今、与信管理が重要視されるのか?

近年、企業を取り巻く経営環境は、グローバル化の進展、サプライチェーンの複雑化、そして予期せぬ経済変動などにより、不確実性を増しています。このような状況下で、企業が安定的に成長を続けるためには、取引に伴うリスクを適切に管理することが不可欠です。その中でも特に重要なのが「与信管理」です。

与信管理とは、取引先に信用を与え、商品やサービスを先に提供し、後から代金を受け取る「信用取引」において、その信用度を測り、貸し倒れ(代金未回収)のリスクを最小限に抑えるための一連の管理活動を指します。

不適切な与信管理は、キャッシュフローの悪化を招き、最悪の場合、企業の存続をも脅かす可能性があります。一方で、リスクを恐れるあまり過度に与信を絞りすぎると、優良な取引先とのビジネスチャンスを逃してしまう「機会損失」にも繋がりかねません。つまり、健全な企業経営のためには、リスク回避と事業拡大のバランスを取った、適切な与信管理が求められるのです。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の流れの中で、多くの企業がバックオフィス業務の効率化を進めています。請求管理システム導入もその一環かと思いますが、与信管理業務においても、従来のExcelや紙ベースでの管理、担当者の経験や勘に頼った判断から脱却し、データに基づいた客観的で効率的な管理体制への移行が急務となっています。

本記事では、請求管理との連携も視野に入れながら、現代のビジネス環境に適応した与信管理のあり方について詳しく解説していきます。

与信管理とは何か?

「与信」とは文字通り「信用を与えること」を意味します。ビジネスにおいては、主に取引先に対して、商品やサービスの代金を後払いで受け取ることを認める「信用供与」を指します。多くの企業間取引は、この信用取引によって成り立っています。

そして「与信管理」とは、この信用取引を安全に行うために、取引先の信用度を調査・分析し、どの程度の信用(取引金額の上限や支払いサイトなど)を与えるかを決定し、取引開始後も継続的にその信用状態を監視・管理する一連のプロセス全体を指します。簡単に言えば、「この取引先は、どのくらいまでなら掛け売りしても大丈夫か?」を見極め、管理していく活動です。

与信管理の主な目的

与信管理の目的は多岐にわたりますが、主なものとしては以下の点が挙げられます。

  • 貸し倒れリスクの回避・最小化: これが与信管理の最も重要な目的です。取引先の倒産や支払い遅延による代金未回収リスクを可能な限り低減します。
  • 安全な取引先の選定: 新規取引を開始する際に、相手企業の信用力を見極め、リスクの高い取引を未然に防ぎます。
  • キャッシュフローの安定化: 不適切な与信管理による売掛金の焦げ付きや回収遅延は、企業のキャッシュフローを著しく悪化させます。適切な与信管理は、安定した資金繰りに貢献します。
  • 機会損失の防止: リスクを過度に恐れて取引を制限しすぎると、成長機会を逃す可能性があります。適切な与信判断は、リスクとリターンのバランスを取り、健全な事業拡大をサポートします。
  • 効率的な債権管理: 与信管理プロセスを通じて得られた情報は、請求管理や債権回収業務にも活用でき、業務全体の効率化に繋がります。

与信管理の重要性

上記の目的からも分かる通り、与信管理は単なるリスク回避策ではなく、企業の収益性やキャッシュフロー、ひいては持続的な成長に直結する、極めて重要な経営管理活動です。特に、企業間取引がビジネスの中心となるBtoB企業にとっては、その重要性は計り知れません。

適切な与信管理体制が構築されていない場合、どれだけ優れた製品やサービスを持っていても、どれだけ多くの売上を上げていても、貸し倒れ一つで大きな損失を被り、経営が傾いてしまう可能性があるのです。請求管理システムを導入して請求業務を効率化しても、その元となる取引自体に大きなリスクが潜んでいては、根本的な問題解決にはなりません。だからこそ、請求管理と与信管理は一体として捉え、強化していく必要があるのです。

与信管理の具体的な業務フロー

では、実際に与信管理はどのような流れで行われるのでしょうか。ここでは、一般的な与信管理の業務フローを4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:取引先の情報収集

すべての与信管理は、取引先の情報を集めることから始まります。特に新規取引を開始する際には、相手がどのような企業なのか、信用できる相手なのかを判断するための材料を集める必要があります。

収集すべき情報:

  • 基本情報: 会社名、所在地、設立年月日、代表者名、事業内容、資本金、株主構成など(商業登記簿謄本などで確認)
  • 財務情報: 過去数期分の決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)。入手が難しい場合もあるため、可能な範囲で収集。
  • 信用情報: 信用調査会社が提供する企業レポート(評点、支払い能力、取引上の注意点などが記載)。客観的な評価を得る上で有効。
  • 取引情報(既存取引先の場合): これまでの取引実績、支払状況(遅延の有無など)、取引額の推移など。
  • その他の情報: 業界動向、企業の評判(インターネット、ニュース記事など)、代表者や経営陣に関する情報、許認可情報など。

情報収集の方法

  • 取引先からの直接提出依頼(基本情報、決算書など)
  • 信用調査会社の利用
  • 公的機関(法務局など)での情報取得
  • インターネット検索、業界専門誌、ニュースサイトの活用
  • 営業担当者からのヒアリング

ステップ2:収集した情報の分析と評価(与信調査・審査)

収集した情報を基に、取引先の信用度を分析・評価します。このステップが与信判断の根拠となります。

分析の観点

  • 安全性分析: 企業の支払い能力や倒産リスクを評価(自己資本比率、流動比率、当座比率など)。
  • 収益性分析: 企業が利益を生み出す力を評価(売上高総利益率、営業利益率、経常利益率など)。
  • 成長性分析: 企業の将来性を評価(売上高増加率、利益増加率など)。
  • 効率性分析: 資産を効率的に活用できているかを評価(総資本回転率、売上債権回転期間など)。
  • 定性分析: 財務諸表だけでは見えない要素(経営者の資質、技術力、業界でのポジション、コンプライアンス体制、過去の支払い遅延履歴など)を評価。信用調査レポートや担当者のヒアリング情報も重要。

評価基準の設定

分析結果を客観的に評価するために、社内で統一された基準を設けることが重要です。例えば、財務指標や定性情報を点数化し、合計点でランク付けする「スコアリングモデル」を導入する方法があります。これにより、担当者による判断のばらつきを防ぎ、標準化された審査が可能になります。

ステップ3:与信限度額(与信枠)の設定と与信判断

分析・評価結果に基づき、その取引先に対してどの程度の信用を与えるか、具体的な「与信限度額(与信枠)」を設定し、取引を開始するかどうかの最終判断を行います。

  • 与信限度額の考え方:
    • 与信限度額とは、「この取引先に対して、最大いくらまで掛け売りを認めるか」という上限金額のことです。
    • 算出方法に絶対的な正解はありませんが、一般的には、取引先の信用力(評価ランク)、自社の財務体力(相手が倒産した場合に耐えられる損失額)、想定される取引額、取引実績などを考慮して設定されます。
    • 「取引先の純資産の〇%」「月間平均売上高の〇ヶ月分」といった基準を設けることもあります。
  • 与信判断:
    • 設定した与信限度額の範囲内での取引であれば承認、範囲を超える場合や信用評価が著しく低い場合は、取引条件の見直し(前金での取引、保証金の要求など)や、取引自体を見送る判断を行います。
  • 社内承認プロセス:
    • 誰がどの金額までの与信判断を行えるのか、承認権限を明確に定めておく必要があります。高額な与信限度額については、複数の部門や役職者による承認プロセスを経るのが一般的です。

ステップ4:取引開始後の継続的なモニタリング(途上与信管理)

一度与信判断を行って取引を開始した後も、取引先の信用状況は常に変化する可能性があるため、定期的に見直しを行う「途上与信管理」が不可欠です。

  • 見直しの必要性:
    • 取引先の経営状況は、経済情勢や業界動向の変化によって変動します。定期的に信用状況を確認し、必要に応じて与信限度額の見直しや取引条件の変更を行う必要があります。
  • モニタリングすべき項目:
    • 支払い状況: 約定通りの支払いが行われているか。遅延が発生していないか、頻発していないか。(請求管理データとの連携が重要)
    • 財務状況の変化: 定期的な決算書の入手や信用調査レポートの再取得により、財務内容に大きな変化がないかを確認。
    • 取引状況の変化: 取引額の急増や急減、注文パターンの変化などに注意。
    • 外部環境の変化: 業界ニュース、風評、関連企業の倒産情報などを常にチェック。
  • 危険な兆候の早期発見:
    • 支払いの遅延、手形サイトの延長要請、頻繁な代表者交代、悪い噂などは、経営悪化のサインである可能性があります。これらの兆候を早期に捉え、迅速に対応(取引縮小、債権保全策の実施など)することが、損害を最小限に抑える鍵となります。

これらのステップを継続的に実施することが、効果的な与信管理の基本となります。

与信管理を怠ることで生じるリスク

もし、これらの与信管理プロセスを適切に行わなかった場合、企業はどのようなリスクに直面するのでしょうか。主なリスクを具体的に見ていきましょう。

貸し倒れによる直接的な損失

これが最も深刻なリスクです。取引先が倒産したり、支払不能に陥ったりした場合、売掛金が回収できなくなり、そのまま損失となります。特に大口取引先での貸し倒れは、企業の利益を吹き飛ばし、経営に致命的なダメージを与える可能性があります。

資金繰りの悪化(キャッシュフローへの影響)

貸し倒れまで至らなくても、支払い遅延が頻発すると、入金予定が狂い、キャッシュフローが悪化します。これにより、自社の仕入れ代金や経費の支払いが滞ったり、新たな投資機会を逃したりする可能性があります。黒字経営であっても、資金がショートすれば「黒字倒産」のリスクさえあります。

管理コストの増大

支払い遅延が発生すると、督促業務や債権回収のための交渉、場合によっては法的手続きなど、追加的な管理コストと時間、労力が必要になります。本来であれば他の生産的な業務に使うべきリソースが、これらの対応に割かれてしまいます。

販売機会の損失

リスクを過剰に恐れるあまり、審査基準を厳しくしすぎたり、与信限度額を低く設定しすぎたりすると、本来であれば問題なく取引できるはずの優良な顧客とのビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。これは、将来の売上や利益を失うことにつながります。

企業の信用低下

貸し倒れが多発したり、資金繰りが悪化したりすると、金融機関や他の取引先からの自社に対する信用評価も低下する可能性があります。これにより、融資条件が悪化したり、新たな取引を開始しにくくなったりするなど、間接的な悪影響も考えられます。

従来の与信管理における課題

その重要性にもかかわらず、多くの企業、特に中堅・中小企業では、与信管理に課題を抱えているケースが少なくありません。請求管理システム導入を検討されている皆様の会社でも、以下のような課題に心当たりはないでしょうか。

属人化しやすい業務プロセス

与信判断の基準が明確でなく、担当者の経験や勘に頼っているケースが多く見られます。これにより、担当者によって判断がばらつき、一貫性のある管理が難しくなります。また、担当者が異動や退職した場合に、ノウハウが引き継がれず、業務が滞ってしまうリスクもあります。

情報収集・分析にかかる時間と手間(非効率性)

取引先の情報を収集し、財務諸表を分析し、評価を下す一連の作業には、多くの時間と手間がかかります。特に、多くの取引先を抱えている場合、担当者が本来注力すべきコア業務を圧迫してしまうことがあります。情報が様々な場所に散在し、収集・整理に時間がかかることも少なくありません。

判断基準のばらつき、標準化の難しさ

明確な社内ルールや評価基準がない場合、審査の客観性や公平性を担保することが難しくなります。営業部門と管理部門で判断が異なったり、取引の緊急性などによって基準が曖昧になったりするケースも見られます。

Excel管理などの限界

与信管理情報をExcelで管理している企業は多いですが、取引先が増えるにつれて、ファイルの管理が煩雑になり、情報の更新漏れや入力ミスが発生しやすくなります。また、リアルタイムでの情報共有が難しく、複数担当者での共同作業にも向きません。請求データなど、他のデータとの連携も手作業となり、非効率です。

変化への対応の遅れ(モニタリング不足)

日々の業務に追われ、新規取引先の審査に注力するあまり、既存取引先の継続的なモニタリング(途上与信管理)が疎かになりがちです。取引先の信用状況の変化をタイムリーに把握できず、問題が深刻化してから気づくケースも少なくありません。特に、請求管理システムに入力される入金遅延情報などが、与信判断にリアルタイムで反映されていない場合、リスクを見逃す可能性が高まります。

与信管理を効率化・高度化する方法

では、これらの課題を解決し、与信管理をより効率的かつ高度なものにするためには、どうすればよいのでしょうか。主な方法として、以下の3つが挙げられます。

社内体制の整備

まず基本となるのが、社内の与信管理体制を整備することです。

  • 与信管理規定の策定と周知徹底: 与信管理の目的、基本方針、業務フロー、各部門の役割と責任、審査基準、与信限度額の設定ルール、承認権限、モニタリングの方法などを明文化した「与信管理規定」を策定し、社内全体(特に営業部門と管理部門)に周知徹底します。これにより、属人化を防ぎ、一貫性のある管理が可能になります。
  • 明確な審査基準、承認フローの構築: 誰が見ても同じ判断ができるような、客観的で明確な審査基準(スコアリングモデルなど)を設けます。また、与信限度額に応じた承認権限と、スムーズな承認プロセスを確立します。
  • 担当部署や責任者の明確化: 与信管理を主管する部署(経理部、審査部など)と責任者を明確にし、役割分担をはっきりさせます。営業部門との連携ルールも定めておくことが重要です。

外部サービスの活用

自社だけですべての与信管理を行うのが難しい場合は、外部の専門サービスを活用することも有効です。

  • 信用調査会社のレポート活用: 帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査会社が提供する企業レポートは、客観的な信用情報を得る上で非常に役立ちます。定期的にレポートを取得することで、途上与信管理にも活用できます。
  • 保証サービス、ファクタリング等の活用(参考): 売掛債権に対する保証サービスや、売掛債権を買い取ってもらうファクタリングを利用することで、貸し倒れリスクを直接的に低減することも可能です。ただし、コストがかかるため、利用は慎重に検討する必要があります。

与信管理システムの導入

そして、近年の与信管理において最も効果的な効率化・高度化の手法が、「与信管理システム」の導入です。

  • システム化によるメリットの概要: 与信管理システムは、情報収集から分析、審査、承認、モニタリングまでの一連の与信管理業務をサポートするITツールです。導入により、これまで手作業で行っていた業務を自動化・効率化し、判断基準を標準化することで、属人化を排除し、より客観的で精度の高い与信管理を実現できます。 特に、後述するように請求管理システムと連携できる与信管理システムであれば、請求・入金データといったリアルタイム性の高い情報を与信判断に活用でき、さらなる精度向上とリスク低減が期待できます。

これらの方法を組み合わせることで、自社の状況に合った、より効果的な与信管理体制を構築していくことが可能です。

与信管理システム導入によるメリット

与信管理システムの導入は、従来の課題を解決し、管理レベルを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

業務効率の大幅な向上:

  • 情報収集・入力作業の自動化・省力化: 信用調査会社のデータ連携機能や、申請フォームからの自動取り込み機能などにより、情報収集やシステムへの入力作業の手間を大幅に削減できます。
  • 審査プロセスの迅速化: スコアリング機能による一次評価の自動化や、ワークフロー機能によるスムーズな承認プロセスにより、審査にかかる時間を短縮できます。これにより、担当者はより高度な分析や判断業務に集中できます。
  • 情報の一元管理: 取引先情報、審査履歴、与信限度額、モニタリング情報などをシステム上で一元管理できるため、必要な情報へのアクセスが容易になり、情報共有もスムーズになります。Excelファイルの散在やバージョンの不整合といった問題から解放されます。

与信判断の精度向上と標準化

  • 客観的なデータに基づいた判断: 蓄積されたデータや外部データに基づき、システムが客観的な評価(スコアリング)を行うため、担当者の経験や勘に頼らない、精度の高い判断が可能になります。
  • 判断基準の統一、属人化の排除: システムに社内の与信管理規定や審査基準を組み込むことで、誰が担当しても一貫性のある、標準化された審査プロセスを実現できます。これにより、特定の担当者に業務が集中したり、判断が偏ったりするリスクを低減します。

リスク管理体制の強化

  • リアルタイムでのモニタリングとアラート機能: 取引先の信用情報に変化があった場合(例:信用評点の低下、ネガティブなニュースの発生)や、与信限度額を超過しそうな場合に、アラートで通知する機能があります。これにより、危険な兆候を早期に発見し、迅速な対応(取引条件の見直し、債権保全策の検討など)を取ることが可能になります。
  • 途上与信管理の効率化: 定期的な見直しやモニタリング業務をシステムがサポートするため、管理が煩雑になりがちな途上与信管理を効率的かつ確実に実施できます。

データの一元管理と活用

  • 情報の可視化と共有: 与信に関する情報がシステム上で可視化され、関係部署(営業、経理、経営層など)が必要な情報をリアルタイムで共有できます。これにより、部門間の連携が強化され、迅速な意思決定が可能になります。
  • データ分析による戦略的な意思決定支援: 蓄積された与信データを分析することで、取引先ポートフォリオのリスク評価や、業種・地域別のリスク傾向の把握などが可能になり、経営戦略や営業戦略の立案に役立つインサイトを得ることができます。

8. 請求管理システム連携による与信管理の強化

特に、請求管理システムの導入を検討されている企業にとって、与信管理システムと請求管理システムが連携できるかどうかは、非常に重要なポイントです。 なぜなら、この連携により、与信管理の精度と効率、そしてリスク管理能力をさらに高めることができるからです。

請求管理システムには、日々の取引における「請求額」「入金額」「支払期日」「入金遅延の有無」「遅延日数」といった、取引実態を示す極めてリアルタイムで重要なデータが蓄積されています。これらの情報を与信管理に活かさない手はありません。

請求管理システム連携によるメリット

請求管理システム連携による具体的なメリットは以下の通りです。

請求・入金情報と連携したリアルタイムな与信状況把握

請求管理システム上の支払い状況(遅延の有無、頻度、遅延日数など)を与信管理システムに自動で連携させることで、外部の信用情報だけでは見えない、実際の取引における相手の支払い能力の変化をリアルタイムで捉えることができます。例えば、「信用調査レポートの評点は悪くないが、最近支払いが遅れがちになっている」といった兆候を早期に発見できます。

与信限度額管理の精度向上

現在の売掛金残高(未入金額)を請求管理システムから自動連携し、設定された与信限度額と比較することが可能です。これにより、「与信限度額を超過しそうな取引」や「既定の限度額を超過している取引」をシステムが自動で検知し、アラートを出すことができます。営業担当者が新規受注を受ける際にも、リアルタイムで与信残高を確認できるため、限度額超過のリスクを未然に防ぐことができます。

取引実績に基づいた高精度な与信モデル構築支援

自社の取引実績データ(請求額、入金実績、遅延情報など)を分析に加えることで、一般的な信用情報だけに基づいたモデルよりも、自社のビジネス特性に合った、より精度の高い独自の与信評価モデルを構築・改善していくことが可能になります。

請求管理と与信管理の一元化による管理部門全体の効率化

従来、別々のシステムやExcelで管理されていた請求情報と与信情報を連携させることで、データの二重入力の手間が省け、情報の整合性も保たれます。管理部門全体として、よりスムーズで効率的な業務フローを実現できます。例えば、与信限度額の見直しに必要な取引実績データを、請求管理システムから手作業で集計する必要がなくなります。

このように、請求管理システムと与信管理システムの連携は、単にシステムを導入するだけでなく、それぞれのシステムの価値を最大化し、より強固で効率的なリスク管理体制を構築するための鍵となります。請求管理システムの選定においては、将来的な与信管理システムとの連携可能性も考慮に入れることを強くお勧めします。

まとめ:適切な与信管理で企業リスクを低減し、成長を加速させる

本記事では、「与信管理」の重要性から、基本的な定義、具体的な業務フロー、リスク、従来の課題、そしてシステム導入を含めた効率化・高度化の方法について、特に請求管理システム導入を検討されている管理部門の視点も交えながら解説してきました。

与信管理は、時に地味で手間のかかる業務と捉えられがちですが、企業のキャッシュフローを守り、貸し倒れリスクを最小限に抑え、健全な成長を支えるための、まさに「守りの要」となる経営管理活動です。同時に、適切なリスク評価に基づいて与信判断を行うことは、優良な取引先との関係を構築し、ビジネスチャンスを拡大する「攻めの側面」も持っています。

従来の属人的で非効率な与信管理には限界があり、多くのリスクが潜んでいます。社内体制の整備はもちろんのこと、与信管理システム、特に請求管理システムと連携可能なシステムを導入することは、これらの課題を解決し、与信管理を大幅に効率化・高度化するための極めて有効な手段です。

データに基づいた客観的で迅速な与信判断、リアルタイムでのリスクモニタリング、そして請求管理とのシームレスな連携は、貴社のリスク管理体制を強化し、より安全で持続的な成長を実現するための強固な基盤となるでしょう。

この機会に、ぜひ自社の与信管理体制を見直し、請求管理システム導入と併せて、より戦略的な管理体制の構築をご検討ください。適切な与信管理を通じて、企業リスクを確実に低減し、未来への成長を加速させていきましょう。

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