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SFA JOURNAL by ネクストSFA

契約書の保管期間はいつまで?法律・種類・管理方法から安全な廃棄まで徹底解説

小島 伸介

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介

株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。

企業活動において日々作成される契約書は、取引の証拠となり権利義務関係を明確にする極めて重要な文書です。しかし、その適切な管理、特に契約書 保管期間の遵守は、多くの企業担当者様にとって頭の痛い問題ではないでしょうか。「どの契約書をいつまで保管すべきか」「法律上の具体的な決まりは何か」「紙と電子データで扱いに違いはあるのか」といった疑問に加え、増え続ける契約書によるオフィススペースの圧迫や、必要な契約書がすぐに見つからないといった課題も散見されます。

本記事では、契約書の保管期間に関する法的な知識から、種類別の具体的な期間、適切な保管方法、そして期間満了後の安全な廃棄方法に至るまで、専門家の視点から網羅的に解説します。この記事を通じて、契約書管理に関する皆様の疑問を解消し、コンプライアンスを遵守した効率的かつ安全な管理体制構築の一助となることを目指します。法的リスクを回避し企業価値を高めるためにも、適切な契約書管理の理解を深めていきましょう。

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契約書に保管期間が定められている根拠とは?主要法律を解説

企業が契約書を一定期間保管することは、単なる推奨事項ではなく、法律によって定められた義務です。この保管義務の背景には、コンプライアンスの遵守紛争発生時の証拠保全、そして監査や税務調査への対応という主に3つの目的が存在します。これらを遵守しない場合、法的な不利益や経営上のリスクを被る可能性があるため、正確な理解が不可欠です。

契約書の保管期間に大きく関わる主要な法律として、まず会社法が挙げられます。会社法第432条第2項では、株式会社に対し「会計帳簿及びその事業に関する重要な資料」を、会計帳簿の閉鎖の時から10年間保存することを義務付けています。契約書の多くはこの「事業に関する重要な資料」に該当すると解釈されるため、原則として10年間の保管が必要となります。これは企業の説明責任や債権債務関係の明確化のために重要な規定です。

次に、法人税法も契約書保管の根拠となります。法人税法施行規則第59条では、帳簿書類(契約書を含む)について、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則として7年間の保存を義務付けています。これは税務調査の際に取引の正当性を証明するための根拠資料となるためです。ただし、青色申告法人で欠損金が生じた事業年度、または災害損失金額が生じた事業年度においては、繰越控除の適用や損失金の繰り戻し還付を受けるために、帳簿書類の保管期間が最長10年間に延長される点に注意が必要です。

近年、デジタル化の進展に伴い重要性が増しているのが電子帳簿保存法です。この法律は、国税関係帳簿書類について、一定の要件を満たすことを条件に電子データでの保存を認めるものです。電子契約で締結した契約書や、紙の契約書をスキャンして電子的に保存する場合などが該当します。重要なのは、電子データで保存する場合でも、原則として保管期間は紙の書類と同様であるという点です。電子帳簿保存法が定める真実性の確保(タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の管理など)や可視性の確保(検索機能の具備、ディスプレイやプリンタの備え付けなど)の要件を満たすことで、ペーパーレス化や業務効率化が期待できます。

これらの主要な法律以外にも、例えば労働基準法では、雇用契約書や労働者名簿、賃金台帳などの労働関係書類について、労働者の退職、死亡または解雇の日から5年間(法改正により従前の3年から延長)の保存を義務付けています(労働基準法第109条)。

さらに、保管期間の計算を開始する「起算点」も法律や書類によって異なるため、正確な把握が求められます。例えば、会社法では「会計帳簿の閉鎖の時」、法人税法では「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」と具体的に定められています。契約の種類によっては「契約終了日」や「最終取引日」を起算点とすることも実務上考慮されるため、自社の契約実態と照らし合わせて慎重な判断が必要です。

【種類別】主要契約書の保管期間と管理ポイント

契約書の保管期間は、前述の法律に加え、その契約書の種類や性質によっても考慮すべき点が異なります。全ての契約書が一律の期間で管理されるわけではないため、種類に応じた適切な管理アプローチが不可欠です。以下に主要な契約書の種類と、それぞれの保管期間に関する一般的な目安や管理上のポイントを解説します。

  • 一般的な取引関連契約書
    • 対象: 取引基本契約書、売買契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書(NDA)など。
    • 保管期間の目安: 主に会社法(原則10年)および法人税法(原則7年、最長10年)の規定に基づきます。紛争発生時の証拠保全や税務調査対応の観点から、最低でも7年、可能であれば10年間の保管を基本とするのが安全策と言えるでしょう。特に継続的な取引や高額な取引に関するものは長期保管が望ましいです。
    • 管理ポイント: 契約終了日や最終取引日を正確に把握し、そこを起算点として保管期間を管理することが重要です。
  • 労務関連の契約書
    • 対象: 雇用契約書、労働条件通知書、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など。
    • 保管期間の目安: 労働基準法第109条により、労働者の退職、死亡または解雇の日から5年間の保存が義務付けられています。ただし、社会保険や労働保険関連の書類では異なる期間が定められている場合もあるため、個別の確認が必要です。
    • 管理ポイント: 従業員の入退社情報を正確に記録し、起算日管理を徹底する必要があります。退職後のトラブル(未払い賃金請求など)に備える意味でも重要です。
  • 不動産関連の契約書
    • 対象: 不動産売買契約書、建物賃貸借契約書、建設工事請負契約書など。
    • 保管期間の目安: 取引金額が大きく権利関係も複雑なため、長期保管が求められることが多いです。宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者は帳簿を閉鎖後5年間(特定目的会社への譲渡等に係るものは10年間)保存する義務があります。これに加え、会社法や法人税法の期間も考慮し、10年以上の保管を検討するのが一般的です。建設業法では完成図書などについて10年間の保存義務があります。
    • 管理ポイント: 契約内容だけでなく、関連図面や重要事項説明書なども含めて一元的に管理することが望ましいです。
  • 知的財産関連の契約書
    • 対象: 特許ライセンス契約書、著作権譲渡契約書、共同開発契約書、商標使用許諾契約書など。
    • 保管期間の目安: 知的財産権の存続期間が長期にわたるケースや、権利侵害に関する紛争が将来的に発生する可能性を考慮し、法律上の義務期間を超える永久保存またはそれに準ずる長期間の保存が強く推奨されます。権利の有効性や範囲を証明する上で極めて重要な証拠となります。
    • 管理ポイント: 権利の発生、移転、消滅に関する記録を正確に保持し、契約の有効期間と権利の存続期間双方を意識した管理が必要です。
  • 会社の組織運営に関する重要書類
    • 対象: 定款、株主名簿、新株予約権原簿、株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、会計監査報告など。
    • 保管期間の目安: 会社法で本店備え置きが義務付けられている書類が多く、例えば定款や株主名簿は永久保存、株主総会議事録は本店に10年間(写しは支店に5年間)の備え置きが定められています。取締役会議事録も10年間の保存義務があります。
    • 管理ポイント: 法的要件を厳守し、閲覧請求にも対応できるよう整理しておく必要があります。

このように、契約書の種類ごとに参照すべき法律や考慮すべき期間、管理のポイントが異なります。自社で取り扱う契約書を適切に分類し、それぞれの法的要件やビジネス上の重要度に応じた保管期間を設定・管理することが、コンプライアンス遵守とリスク回避の第一歩です。

契約書の適切な保管方法:紙と電子データそれぞれの注意点

契約書を適切に保管するためには、媒体の特性を理解し、それぞれに適した管理方法を実践することが重要です。主に紙媒体での保管と電子データでの保管があり、近年は両者を併用するハイブリッド型管理も一般的です。

1. 紙媒体での契約書保管

従来から行われている紙媒体での保管は、物理的な存在感による安心感や、電源不要で閲覧できる点がメリットです。しかし、以下のようなデメリットと注意点があります。

  • 保管スペースの確保: 契約書の増加に伴い、オフィスや倉庫のスペースが圧迫され、賃料や管理コストが増大します。
  • 検索性の低さ: 目的の契約書を探し出すのに手間と時間がかかり、業務効率を低下させる可能性があります。
  • 劣化・紛失・災害リスク: 紙は経年劣化(変色、破損)しやすく、虫害や湿気の影響も受けます。また、火災、水害、盗難による紛失リスクも常に伴います。
  • セキュリティ管理: 不正な持ち出しや閲覧、改ざんを防ぐため、施錠可能なキャビネットや書庫での保管、アクセス制限の実施が不可欠です。
  • 管理体制: ファイリングルールを統一し、契約書管理台帳(紙またはExcelなど)を作成して、契約書の名称、相手方、締結日、保管場所、保管期間などを記録・管理する必要があります。手作業による管理は属人化しやすく、ヒューマンエラーも起こりやすいため注意が必要です。

2. 電子データでの契約書保管(電子帳簿保存法対応)

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、契約書を電子データで保管する企業が増えています。電子保管には多くのメリットがありますが、法的要件の遵守が前提となります。

  • 省スペースと検索性向上: 物理的な保管場所が不要になり、キーワード検索や属性検索により必要な契約書を迅速に探し出せます。
  • 情報共有とBCP対策: 関係者間での情報共有が容易になり、適切なバックアップ体制を構築すれば災害時の事業継続計画(BCP)にも貢献します。
  • 電子帳簿保存法の遵守: 電子データで契約書を保管する場合、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。主に以下の2点が重要です。
    • 真実性の確保: データが改ざんされていないことを証明するための措置。例:タイムスタンプの付与、訂正・削除履歴の保存、または訂正・削除が原則できないシステムの利用。
    • 可視性の確保: 税務調査などの際にデータを速やかに出力・表示できる状態にしておくこと。例:関連帳簿との相互関連性の確保、検索機能の確保(取引年月日、取引金額、取引先で検索できること)、ディスプレイ・プリンタの備え付け。
  • セキュリティ対策: 不正アクセス、情報漏洩、サイバー攻撃からデータを保護するため、アクセス権限の厳密な設定、暗号化、ファイアウォール、定期的なセキュリティ診断などの対策が不可欠です。
  • バックアップ: システム障害やデータ破損に備え、定期的なバックアップと、できれば遠隔地でのバックアップデータの保管が推奨されます。
  • 運用ルールの策定と周知: 電子データの取り扱いに関する社内ルールを明確にし、従業員への教育・研修を通じて遵守を徹底する必要があります。

多くの企業では、過去の紙契約書と新たに発生する電子契約書が混在するハイブリッドな管理状態にあります。このような場合、双方の情報を一元的に把握できる仕組み(例:契約書管理システムの導入)を検討することが、管理の煩雑さを解消し、効率性と安全性を両立させる鍵となります。

保管期間満了後の契約書:安全な廃棄方法と法的留意点

法律で定められた保管期間や社内規程で定めた期間が満了した契約書は、適切に廃棄する必要があります。不要な契約書を長期間保有し続けることは、情報漏洩のリスクを高め、無駄な管理コスト(保管スペースや検索時間)を発生させる原因となるためです。しかし、契約書の廃棄は慎重な判断と安全な処理が不可欠です。

1. 廃棄前の確認事項と社内承認プロセス

まず最も重要なのは、廃棄対象の契約書が本当に保管期間を満了しており、かつ社内で不要と判断されたものであるかを確認することです。以下の点に留意しましょう。

  • 保管期間の再確認: 起算日(契約終了日、最終取引日など)から正確に期間を計算し、満了していることを確認します。
  • 関連紛争・訴訟の有無: 当該契約に関連する紛争や訴訟が進行中または発生の可能性がある場合は、廃棄を見合わせる必要があります。
  • 社内ルールの遵守: 契約書の廃棄に関する社内規程(廃棄基準、承認フローなど)を整備し、それに従って処理を進めます。通常、法務部門や関連部署の承認を得るプロセスを設けるのが一般的です。責任の所在を明確にし、誤廃棄を防ぐためにも重要です。

2. 安全な廃棄方法(情報漏洩防止)

契約書には機密情報が含まれているため、廃棄方法の選定は極めて重要です。

  • 紙媒体の契約書:
    • シュレッダー処理: 単に破るのではなく、復元が困難なクロスカットやマイクロカット方式のシュレッダーを使用することが推奨されます。
    • 溶解処理: 大量の書類を安全に廃棄する場合、専門業者に委託して溶解処理を行うのが確実です。溶解処理は、書類を水と薬品で完全に溶かし繊維レベルまで分解するため、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
    • 焼却処理: 自社での焼却は環境負荷や火災リスクがあるため、専門業者に委託するのが一般的です。
    • 専門業者への委託時: 信頼できる業者を選定し、機密保持契約を締結の上、廃棄証明書(マニフェスト)を発行してもらうことが重要です。
  • 電子データの契約書:
    • データ消去: 単にファイルをゴミ箱に移動して削除するだけでは、専用ソフトで復元される可能性があるため不十分です。データ消去専用のソフトウェアを使用し、データを無意味な情報で複数回上書きするなどして、復元不可能な状態にする必要があります。
    • 物理的破壊: ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶媒体自体を物理的に破壊(穴あけ、破砕、磁気破壊など)する方法も確実です。
    • システム上の削除: 契約書管理システムなどを使用している場合は、システム内の削除機能を利用しますが、その際もデータが完全に消去されるか、ログが適切に管理されるかを確認する必要があります。

3. 廃棄記録の作成と保管

何を、いつ、誰が、どのように廃棄したのかを記録した「廃棄記録(廃棄台帳)」を作成し、一定期間保管しておくことが推奨されます。この記録は、将来的な監査対応や、万が一廃棄した契約書に関する問い合わせがあった場合に、適切な処理を行ったことを証明する証拠となります。廃棄記録には、契約書の名称、契約相手方、契約締結日、保管期間満了日、廃棄日、廃棄方法、廃棄担当者、承認者などを記載しておくとよいでしょう。

契約書の廃棄は、文書管理のライフサイクルの最終段階であり、情報セキュリティとコンプライアンスの観点から非常に重要なプロセスです。

契約書管理の不備が招くリスクと放置の危険性

契約書の保管期間遵守や適切な管理体制の構築を怠ると、企業は多岐にわたる深刻なリスクに直面する可能性があります。これらのリスクは、法的な制裁に留まらず、企業の信用失墜、経済的損失、さらには事業継続そのものに影響を及ぼすこともあり、決して軽視できません。

法的リスク

契約書は、企業活動の根幹を成す重要な証拠です。しかし、その保管義務を怠ったり、適切な管理を怠ったりした場合、企業は想像以上の代償を払うことになりかねません。会社法や税法、業法に定められた罰則、税務調査での不利益、そして訴訟・紛争における致命的な弱点。本稿では、契約書管理の不備が引き起こす具体的なリスクを提示し、その対策の重要性を訴えます。

法令違反による罰則

会社法や法人税法、各種業法などで定められた保管義務に違反した場合、過料や行政指導、場合によっては許認可の取り消しといった処分を受ける可能性があります。

税務調査での不利益

税務調査の際に必要な契約書を提示できないと、経費の妥当性が認められず否認されたり、追徴課税や加算税が課されたりするリスクがあります。

訴訟・紛争における不利な立場

取引先との間でトラブルが発生し訴訟に発展した場合、契約書は自社の正当性を主張するための最も重要な証拠となります。これを紛失していたり、適切に管理されていなかったりすると、法廷で著しく不利な立場に立たされる可能性があります。契約内容や条件を証明できず、敗訴や不利な和解を余儀なくされることも考えられます。

情報セキュリティリスク

契約書は企業の宝であり、同時に機密情報の塊です。不適切な管理は、取引先情報、価格、技術、個人情報といった重要データの漏洩を招き、社会的信用失墜、顧客離れ、損害賠償請求に繋がる危険性を孕んでいます。電子データにおいては、不正アクセスや改ざんのリスクも無視できません。

情報漏洩

契約書には、取引先の情報、価格情報、技術情報、個人情報など、多くの機密情報や営業秘密が含まれています。不適切な管理によりこれらの情報が外部に漏洩した場合、企業の社会的信用は大きく損なわれ、顧客離れや取引停止、さらには高額な損害賠償請求に発展する可能性があります。

不正アクセス・改ざん

特に電子データの場合、セキュリティ対策が不十分だと不正アクセスやデータの改ざんリスクが高まります。これにより、誤った情報に基づいて意思決定が行われたり、企業の信頼性が低下したりする恐れがあります。

業務効率低下リスク

必要な契約書を探す無駄な時間、確認に手間取る故の意思決定の遅延。これらは、ビジネスのスピード感を鈍らせ、機会損失を招きかねません。さらに、契約情報が特定の担当者に集中する「属人化」は、担当者不在時の業務停滞、そして組織全体の知識継承を困難にします。

検索時間の浪費

必要な契約書がどこにあるか分からない、すぐに見つけ出せないといった状況は、日常業務の生産性を著しく低下させます。担当者が契約書を探すために多くの時間を費やすことになり、本来の業務に支障をきたします。

意思決定の遅延

契約内容の確認に時間がかかると、迅速な意思決定が妨げられ、ビジネスチャンスを逃すことにも繋がりかねません。

属人化と業務継続性の問題

特定の担当者しか契約書の保管場所や内容を把握していない「属人化」した状態は、その担当者が不在の場合や異動・退職した場合に業務が滞るリスクを生みます。知識やノウハウの引き継ぎも困難になります。

内部統制・ガバナンス上の問題

契約書の管理体制が整備されていないことは、企業の内部統制が有効に機能していないことの現れと見なされる可能性があります。これは、監査法人からの指摘や、上場企業であれば投資家からの評価低下にも繋がります。

DX時代の契約書管理:効率化とセキュリティ向上のポイント

デジタルトランスフォーメーション(DX)が社会全体で加速する現代において、契約書管理もまた大きな変革期を迎えています。従来のような紙ベース中心のアナログな管理手法では、増え続ける契約情報に効率的かつ安全に対応することが困難になりつつあります。DX時代の契約書管理においては、デジタル技術を活用して業務プロセスを最適化し、セキュリティを強化することが重要なポイントとなります。

契約書管理規程の整備と全社的なルールの徹底

まず基本となるのは、契約書管理規程の整備と全社的なルールの徹底です。どの契約書を、誰が、どのように作成・レビュー・承認し、どのように保管し、いつ廃棄するのかといった一連のライフサイクル全体をカバーする明確な社内規程を策定します。保管期間、保管方法、アクセス権限、セキュリティポリシーなどを具体的に定め、全従業員への周知徹底と継続的な教育を通じて、組織全体で遵守する文化を醸成することが不可欠です。

管理台帳のデジタル化と情報の一元管理の実現

次に、管理台帳のデジタル化と情報の一元管理の実現が求められます。紙の管理台帳や個々の担当者が作成したExcelファイルでの属人的な管理は、検索性に乏しく、情報の共有も困難で、版管理も煩雑になりがちです。契約相手、契約締結日、契約期間、自動更新の有無、保管場所、関連書類へのリンクといった契約情報をデータベース化し、一元的に管理することで、必要な情報へ迅速かつ正確にアクセスできる環境を構築します。

契約書管理システムの導入

こうした体制を支える上で、契約書管理システムの導入は極めて有効な手段となります。契約書管理システムは、以下のような機能を通じて、契約書管理業務の大幅な効率化とセキュリティ向上に貢献します。

  • 検索性の飛躍的向上: 全文検索機能や、契約日・相手方・契約種別などの属性情報を組み合わせた高度な検索機能により、膨大な契約書の中から目的のものを瞬時に探し出すことができます。
  • 期限管理の自動化とアラート機能: 契約の有効期限、更新期限、保管期間の満了日が近づくと、担当者に自動的にアラート通知が送られるため、更新漏れや意図しない契約失効、不適切な長期保管を防ぎます。
  • ワークフロー機能による業務プロセスの標準化: 契約書の作成依頼から法務レビュー、承認、締結、保管に至るまでのワークフローをシステム上で管理することで、業務プロセスを標準化し、進捗状況を可視化できます。これにより、属人化を排除し、承認遅延などを防止します。
  • 厳密なアクセス権限管理とセキュリティ強化: ユーザーごと、部署ごと、あるいは契約書の種類ごとに閲覧・編集・ダウンロードなどのアクセス権限を細かく設定できます。また、操作ログの記録機能により、誰がいつどのような操作を行ったかを追跡できるため、不正利用の抑止や原因究明に役立ちます。データの暗号化や不正アクセス対策なども提供されます。
  • ペーパーレス化の推進とコスト削減: 紙の契約書をスキャンして電子化したり、電子契約サービスと連携したりすることで、ペーパーレス化を促進します。これにより、印刷コスト、郵送コスト、保管スペースコストなどを大幅に削減できます。

自社に最適な契約書管理体制を構築するためには、まず現状の業務プロセスと課題を正確に把握し、管理すべき契約書の量や種類、求められるセキュリティレベル、予算などを総合的に考慮して、適切なシステムや運用方法を選択することが重要です。定期的な監査と管理プロセスの見直しを行い、法令改正や事業環境の変化にも柔軟に対応できる体制を維持していくことが、DX時代の契約書管理には不可欠です。

まとめ:適切な契約書管理で企業価値を高める

本記事では、契約書 保管期間に関する法的な根拠から、種類別の具体的な期間、紙媒体と電子データそれぞれにおける適切な保管方法、安全な廃棄プロセス、そして契約書管理の不備が招くリスクとDX時代における効率的かつ安全な管理体制のポイントについて解説してきました。

契約書の保管期間を正しく理解し遵守することは、企業が法的責任を果たし、コンプライアンスを確保する上で極めて重要です。会社法、法人税法、電子帳簿保存法といった関連法規を正確に把握し、それぞれの契約書の種類や内容に応じた適切な期間管理を行う必要があります。また、セキュリティを確保した保管方法を選択し、保管期間が満了した契約書は情報漏洩に細心の注意を払って適切に廃棄することが求められます。

契約書管理の不備は、法的リスク、訴訟リスク、情報漏洩リスク、業務非効率といった深刻な問題を引き起こし、企業の信用や経営基盤に大きな影響を与える可能性があります。逆に言えば、適切な契約書管理体制を構築し、それを確実に運用することは、これらのリスクを効果的に低減し、業務効率を向上させ、ひいては企業価値そのものを高めることに直結します。

契約書管理は、単なる事務作業ではなく、企業の健全な成長と持続可能性を支える経営基盤の重要な一部です。本記事が、皆様の会社における契約書管理体制を見直し、より安全で効率的な仕組みを構築するための一助となれば幸いです。日々の業務の中で契約書管理の重要性を再認識し、将来的なリスクに備えるためにも、契約書管理システムの導入検討を含めた積極的な取り組みをお勧めします。

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