障がい者雇用の給料は低い?給与の実態と適正な設定方法

【監修】株式会社ジオコード 管理部長
小島 伸介
株式会社ジオコード入社後、Web広告・制作・SEOなどの事業責任者を歴任。
上場準備から上場まで対応した経験を生かし、サービス品質の改善を統括する品質管理課を立ち上げ。その後、総務人事・経理財務・情報システム部門を管掌する管理部長に就任。
障がい者雇用の推進は、現代企業における重要な経営課題です。しかし、その過程で「障がい者雇用枠は給料が低いのでは?」「一般社員との給与バランスはどうすれば?」といった疑問や懸念が生じることは少なくありません。「障がい者雇用 給料」というキーワードで情報を探すと、低いというイメージが先行しがちです。
結論から言えば、障がい者雇用だからといって一律に給料が低いわけではありません。 多くの企業では、法令に基づき、障害の有無ではなく、その人の能力・職務・貢献度に応じて公正に給与を決定する仕組みが求められています。重要なのは、制度や法的背景を正しく理解し、固定観念にとらわれずに適切な給与設定と運用を行うことです。
障がい者雇用促進法は、法定雇用率の達成だけでなく、障害のある人が能力を発揮できる「質の高い雇用」を目指しています。その核となるのが「適正な給与」であり、これは従業員の生活基盤とモチベーションに直結します。
この記事は、障がい者雇用の給与に関する人事担当者や決裁者の疑問を解消するために、以下の点を分かりやすく解説します。
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障がい者雇用の給与はどのくらい?【職種別】
障害と一口に言っても、その特性や支援の必要性はさまざまであり、それに応じて就労状況や収入にも違いが見られます。厚生労働省が公表した「平成30年度障害者雇用実態調査」では、障害の種別ごとの1カ月あたりの平均給与が示されています。調査結果によれば、それぞれの平均額は以下の通りです。
- 身体障害者:約21万5,000円
- 知的障害者:約11万7,000円
- 精神障害者:約12万5,000円
- 発達障害者:約12万7,000円
このデータからも分かるように、障害の内容によって平均給与額には差が生じており、それぞれの就労環境や職務内容の違いが反映されています。
※なお、ここでの「給料」は基本給だけでなく、各種手当なども含めた月収ベースの金額です。
障がい者雇用の給与の現状:データで見る実態と多角的な視点
障がい者雇用の給与水準を正しく理解するためには、まず客観的なデータを確認することがスタート地点です。厚生労働省が定期的に実施する「障がい者雇用実態調査」などの公的統計は、そのための信頼できる情報源となります。これらのデータは、企業が自社の給与水準を検討する際の重要なベンチマークとなり得ます。
平均賃金の傾向について
各種調査データを見ると、障害のある労働者全体の平均賃金は、一般の労働者の平均賃金と比較して低い傾向が示されています。例えば、厚生労働省の令和X年度調査(※最新のデータをご参照ください)によると、障害種別ごとの平均月額賃金は、身体障がい者が約XX万円、知的障がい者が約XX万円、精神障がい者が約XX万円などと報告されており、全労働者の平均(約XX万円)との間に差が見られます。
しかし、この平均値だけを見て短絡的に結論を出すべきではありません。 なぜなら、この平均値には様々な要因が影響しているためです。特に以下の点が重要です。
給与水準に影響を与える主な要因
- 雇用形態の影響が大きい
- 障害のある労働者は、パートタイムや契約社員といった非正規雇用の割合が比較的高い傾向にあります。特に精神障がい者や知的障がい者で顕著です。
- 非正規雇用は、労働時間の短さや時給制などから、月額・年額の給与総額が低くなる傾向があり、これが全体の平均賃金を引き下げる大きな要因です。
- 正規雇用(正社員)の障がい者の平均賃金は、非正規雇用より高いものの、それでも一般の正規雇用労働者と比較するとやや低い水準にあるというデータも見られます。
- 労働時間の選択
- 体力的な理由や本人の希望から、フルタイムではなく短時間勤務を選択する人も少なくなく、これも給与総額に影響します。
- 勤続年数の影響
- 障がい者雇用、特に精神障がい者等の雇用が本格化した歴史は比較的浅いため、全体として勤続年数が短い傾向があり、これが平均給与を押し下げる一因と考えられます。勤続年数に伴う昇給は一般労働者と同様に見られます。
- その他の要因
- 障害種別: 就労可能な職種や専門性の違い等が影響する可能性があります。
- 学歴: 高学歴ほど賃金が高い傾向は一般と同様です。
- 企業規模: 大企業の方が賃金水準が高い傾向は一般と同様です。
- 担当業務: 専門性や責任の度合いが低い業務の場合、給与もそれに準じます。
データ解釈上の注意点
これらのデータを解釈する際には、「平均はあくまで平均」であることを念頭に置く必要があります。高い専門性を持ち、高収入を得ている障害のある社員も多く存在します。 企業の人事担当者や決裁者は、マクロなデータを参考にしつつも、個々の従業員の職務内容、能力、貢献度に基づき公正に給与を決定するという基本原則を重視し、「なぜ差が生じているのか」という背景要因への理解を深めることが重要です。自社の給与設定が適切かを見直す良い機会とも言えるでしょう。
なぜ「障がい者雇用は給料が低い」と言われるのか?その背景と要因を深掘り
「障がい者雇用の給料は低い」というイメージが持たれがちな背景には、単一の理由ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。これらの要因を理解することは、企業が誤解を解き、より公正な給与体系を構築・運用するための第一歩です。
雇用形態と労働時間の構造的要因
障害者の賃金に影響を与える要因は多岐にわたりますが、なかでも雇用形態と労働時間は、構造的に賃金格差を生み出す重要なポイントです。非正規雇用の割合が高いことや、短時間勤務を選択せざるを得ない状況が、結果として平均給与を押し下げる要因となっています。ここでは、こうした構造的な背景に焦点を当て、実態を整理していきます。
非正規雇用の比率
前述の通り、障害のある労働者の中にはパートタイムや契約社員の割合が高い傾向があります。これは本人の希望(体力、通院等)や、企業側が提供する求人内容(補助的業務中心など)が影響しています。非正規雇用は一般的に正規雇用より賃金水準が低く、昇給・賞与の機会も少ないため、平均値を引き下げます。
短時間勤務の選択
フルタイム勤務が難しい、あるいは希望しないケースも多く、労働時間が短ければ給与総額も低くなります。
担当業務内容と職務評価の問題
障害者の賃金が伸び悩む背景には、担当業務の内容や職務評価のあり方にも深く関係する課題があります。配慮のつもりがスキルの発揮を妨げてしまったり、限定的な業務に固定されることで、本来得られるべき評価や処遇が受けられないケースも少なくありません。ここでは、業務内容の割り当てや評価制度の構造的な問題について解説します。
限定的な業務割り当て
一部の企業では、障害特性への「配慮」が行き過ぎたり、能力を過小評価したりして、本人のスキルや意欲に関わらず、補助的・定型的な業務に限定してしまうことがあります。
職務の価値と給与
担当する職務の責任範囲や難易度が低いと評価されれば、それに応じて給与も低く設定されます。これは障害の有無に関わらない原則ですが、障がい者雇用の場合、能力に見合った職務が与えられていない可能性も考慮すべきです。
キャリアパスの欠如
経験を積んでもステップアップできる職務や役割が用意されていない場合、給与も頭打ちになりがちです。
勤続年数と経験蓄積の途上
障害者の平均賃金が低い要因の一つに、勤続年数の短さという側面があります。特に精神障がい者や発達障がい者の雇用が広がり始めたのはここ十数年のことであり、まだ十分なキャリアを積み上げられていない労働者も多く存在します。本章では、勤続年数と経験の蓄積が賃金に与える影響について見ていきます。
雇用の歴史
特に精神障がい者や発達障がい者の雇用が本格化したのは比較的最近であり、障害のある労働者全体の平均勤続年数がまだ短いことが、平均給与水準に影響しています。
経験とスキルの向上
勤続年数が長くなれば、経験やスキルが向上し、昇進・昇給の機会も増えるため、将来的には状況が変化する可能性があります。
地域差と企業規模・業界による違い
障害者の給与水準には、個人の能力や働き方だけでなく、地域や企業の特性といった外的要因も大きく関係しています。最低賃金の地域差や、企業規模・業種ごとの給与水準の違いは、障害者雇用においても無視できない影響を及ぼします。
地域別最低賃金
最低賃金は都道府県によって異なり、これが地域間の給与水準の差に影響します。
企業の給与ポリシー
企業の経営状況、業界、規模によって給与水準は大きく異なります。「障がい者雇用だから低い」のではなく、その企業自体の給与水準が市場と比較して低い可能性もあります。
根強い誤解や偏見の影響
障害者の賃金に関する問題は、制度や構造だけでなく、社会や職場に根強く残る誤解や偏見によっても引き起こされることがあります。無意識のバイアスや情報不足により、正当な評価がなされず、処遇の低さにつながるケースも少なくありません。本章では、こうした意識の問題が賃金にどのような影響を与えているのかを掘り下げていきます。
能力に対する決めつけ
「障害がある=能力が低い」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、評価や給与決定に影響を与えている可能性は否定できません。
合理的配慮と給与の混同
合理的配慮を提供することは、労働者が能力を発揮するための企業の義務であり、そのコストや手間を理由に給与を引き下げることは明確に誤りです。配慮の提供と、本人の職務遂行能力や成果の評価は、分けて考えなければなりません。
情報不足
障害特性や必要な配慮に関する知識不足から、適切な業務設計や評価ができず、結果的に低い処遇につながってしまうケースもあります。
障がい者雇用の給与に関する制度と法的枠組み
障害のある社員の給与を決定する上で、企業は関連する法律や制度を遵守する義務があります。これらは障害のある労働者の権利を守ると同時に、企業が健全な人事労務管理を行うための基盤となります。
障がい者雇用促進法:差別の禁止と合理的配慮
この法律は、障がい者雇用の根幹をなすものです。
- 募集・採用における差別の禁止: 障害があることを理由に、採用選考から排除したり、不利な条件を設定したりすることは禁止されています。
- 賃金・昇進等における差別の禁止 (第35条): 障がい者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、不当な差別的取扱いをしてはならないと明確に規定されています。
- 合理的配慮の提供義務 (第36条の3, 第36条の4): 企業は、障害のある労働者からの申し出に基づき、その人が能力を発揮できるよう、過重な負担にならない範囲で必要な配慮(物理的・人的・柔軟な働き方など)を提供する義務があります。
- 重要: 合理的配慮の提供を理由として、賃金を引き下げることは原則として認められません。 あくまで能力発揮のための環境整備です。
障がい者差別解消法:社会全体のルール
雇用分野だけでなく、社会全体での障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止と、合理的配慮の提供(事業者には義務)を定めています。障がい者雇用促進法と連携し、障害のある人の権利を守ります。
最低賃金法:すべての労働者のセーフティネット
- 障害の有無に関わらず適用: すべての労働者に適用され、都道府県ごと等で定められた最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります。
- 減額特例: 精神・身体の障害により著しく労働能力が低い場合など、極めて限定的なケースで、都道府県労働局長の許可を得て最低賃金を下回ることが可能ですが、厳格な審査があり、安易な適用はできません。許可なく下回れば違法です。
同一労働同一賃金の原則:正規・非正規間の不合理な待遇差の禁止
パートタイム・有期雇用労働法などに基づき、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パート、契約社員等)の間で、以下の待遇について不合理な差を設けることを禁止する原則です。これは障がい者雇用にも適用されます。
- 対象となる待遇: 基本給、賞与、各種手当(通勤手当、役職手当、精皆勤手当等)、福利厚生(休暇制度、施設利用等)、教育訓練
- 判断基準: 待遇差が不合理かどうかは、以下の要素を比較して個別に判断されます。
- 職務内容(業務内容+責任の程度)
- 職務内容・配置の変更範囲(転勤・異動・昇進の有無や範囲)
- その他の事情(労使慣行など)
- 企業の説明責任: 待遇差がある場合、企業はその理由を客観的かつ具体的に説明できなければなりません。 「障がい者だから」「非正規だから」という理由だけでは不十分です。
法的枠組み遵守の重要性
これらの法令・制度は、単なる「守るべきルール」ではなく、公正な処遇を実現し、多様な人材が活躍できる組織を作るための基盤です。コンプライアンスはもちろん、これらの趣旨を深く理解し、自社の制度・運用に反映させることが、労務リスクを回避し、従業員との信頼関係を築く上で不可欠です。必要に応じて、社会保険労務士などの専門家の助言を得ることも有効です。
企業が適切な給与を設定・運用するための考え方と実践ポイント
法令や制度を遵守した上で、企業が障害のある社員に対し、公正で納得感のある給与を設定・運用していくためには、具体的な考え方と実践的なアクションが求められます。人事担当者や決裁者が主体となり、以下のポイントに取り組むことが重要です。
「能力・職務・成果」に基づく公正な評価を徹底する
給与決定の根幹は、あくまでも「障害」ではなく「仕事とその成果」です。
職務分析・職務評価の活用:
- 担当する仕事の内容、責任、難易度、必要なスキルを客観的に評価し(職務評価)、その「仕事の価値」を明確にします。
- これに基づき、給与レンジや等級を設定する際の根拠とします。
個人の能力・経験・成果の評価:
- 職務遂行能力、保有スキル、経験年数、そして実際に上げた成果や貢献度を評価します。
- 評価プロセスにおける配慮: 障害特性が評価に不利に働かないよう、評価基準の明確化、多面的な評価(自己評価、上司評価、同僚評価など)、具体的な行動や成果に基づく評価、評価者への研修などを行います。
透明性の確保とフィードバック:
- 評価基準や給与決定プロセスを社員に開示し、透明性を高めます。
- 評価結果や給与額については、理由を添えて本人に丁寧にフィードバックし、質疑応答の機会を設けることで納得感を醸成します。
自社の給与体系との整合性を保つ
障がい者雇用枠を、既存の給与体系から切り離して考えるべきではありません。
- 社内等級・評価制度の適用: 他の社員と同様に、社内の等級制度や評価制度に基づいて給与を決定し、昇給・昇格の機会も平等に提供します。
- 賃金規程の統一的適用: 基本給、諸手当、賞与などの算定ルールは、原則として賃金規程に基づき、他の社員と同様に適用します。
- 募集時の適正な提示: 求人広告や面接時には、担当予定の職務内容や等級に見合った、社内基準と整合性のとれた給与額を明示します。
同一労働同一賃金の原則を遵守・徹底する
特に非正規雇用の障がい者を雇用する場合、この原則の遵守は必須です。
- 待遇差の点検と是正: 正社員と非正規社員の間で、基本給、賞与、手当、福利厚生等に不合理な差がないかを定期的に点検し、あれば是正します。
- 待遇差の説明責任: 差がある場合は、その理由が職務内容等の違いによるものであることを客観的・具体的に説明できるようにしておきます。
採用力・定着率向上を意識した給与水準
適正な給与は、人材獲得と定着のための重要な投資です。
- 市場調査: 地域の労働市場や同業他社の給与水準を把握し、競争力のある水準か検討します。
- モチベーション維持: 公正な評価と適正な給与は、社員のエンゲージメントを高め、離職防止につながります。
社内理解の促進と体制整備
制度を適切に運用するためには、社内の理解と協力が不可欠です。
- 経営層・管理職への教育: 障がい者雇用の意義、法的要請、公正な評価の重要性について理解を深めてもらう。
- 採用プロセスの整備: 募集段階から職務内容や評価基準を明確にし、ミスマッチや入社後の誤解を防ぐ。
- 相談体制の構築: 障害のある社員が、給与や評価、配慮などについて気軽に相談できる窓口(人事部、上司、専門部署など)を設置・周知する。
- 継続的な見直し: 社会情勢や法改正、社内状況の変化に合わせて、給与制度や運用を定期的に見直し、改善していく姿勢が重要です。
これらのポイントに体系的に取り組むことで、企業は障害のある社員に対しても公正で魅力的な給与制度を構築・運用し、多様な人材が活躍できる基盤を築くことができます。
給与だけではない、障がい者が定着し活躍できる職場環境の重要性
障害のある社員が長期的に定着し、その能力を最大限に発揮するためには、適正な給与に加えて、働きがいがあり、インクルーシブな職場環境が不可欠です。給与は重要な「衛生要因」(不満を防ぐ要素)ですが、真の活躍と定着を促すためには、以下の「動機づけ要因」にも目を向ける必要があります。
給与以外の待遇・福利厚生における公平性
給与以外の面でも、他の社員と不合理な差を設けないことが基本です。
- 社会保険・休暇制度: 法定要件を満たす限り、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険への加入、年次有給休暇、各種特別休暇(慶弔、育児・介護等)の適用は当然です。
- 福利厚生: 社員食堂、休憩室、保養所などの施設利用、各種手当(住宅手当、家族手当等で職務に関連しないもの)についても、障害を理由に不利な扱いをしてはなりません。
キャリア形成と成長の機会提供
将来への希望を持ち、成長を実感できることは、働く上で大きな動機づけになります。
- キャリアパスの明示: 本人の意欲と能力に応じ、ステップアップできる道筋や目標を示します。担当業務を固定せず、多様な経験を積める機会を提供することも有効です。
- 能力開発支援: OJT、社内外の研修、資格取得支援など、スキルアップのための機会を平等に提供します。
- 研修時の合理的配慮: 資料の工夫(文字サイズ、データ形式)、情報保障(手話通訳、字幕)、休憩時間の調整など、必要に応じた配慮を行います。
- 定期的なキャリア面談: 上司が本人の意向を聞き、キャリアプランについて話し合う機会を設けます。
働きがい、承認、良好な人間関係
仕事の内容や職場環境が、ポジティブな感情や意欲を引き出すものであることが重要です。
- 貢献実感: 自分の仕事が会社やチームの役に立っている、社会に貢献していると感じられること。
- 承認と尊重: 上司や同僚から、努力や成果、存在そのものを認められ、尊重されていると感じられること。
- 円滑なコミュニケーション: 報告・連絡・相談がしやすく、困ったときにサポートを得られる、心理的安全性の高い職場。孤立感を与えない配慮が必要です。
- 適切な業務マッチング: 本人の能力、スキル、興味、障害特性に合った業務を担当することで、達成感や有能感を得やすくなります。
- 裁量権: 仕事の進め方について、ある程度の裁量権を持つことも、自律性や責任感を育み、働きがいにつながります。
継続的かつ適切な合理的配慮
合理的配慮は、障害のある社員が他の社員と対等なスタートラインに立つための土台であり、継続的な提供と改善が求められます。
- 多様な配慮: 物理的なバリアフリーだけでなく、情報保障(資料、コミュニケーション)、柔軟な勤務時間、業務量の調整、指示方法の工夫、相談体制など、多岐にわたります。
- 本人との対話: 必要な配慮は一人ひとり異なります。「良かれと思って」一方的に提供するのではなく、必ず本人と十分に話し合い、意向を確認しながら、個別具体的に検討・実施していくことが最も重要です。定期的な見直しも必要です。
- 社内理解の促進: 合理的配慮は「特別扱い」ではなく、誰もが働きやすい環境を作るための工夫であるという認識を社内に広めます。
適正な給与という基盤の上に、これらの要素が組み合わさることで、障害のある社員は真に能力を発揮し、企業全体の活性化にも貢献できるインクルーシブな職場環境が実現します。人事担当者や決裁者は、給与制度と職場環境整備を両輪として捉え、総合的に取り組む視点が不可欠です。
まとめ
本記事では、「障がい者雇用の給料は低いのか?」という疑問に対し、データ、背景要因、法的枠組み、そして企業が取るべき具体的な対応策を解説してきました。障がい者雇用の平均給与は低い傾向が見られるものの、それは雇用形態や勤続年数など複合的な要因によるものであり、「障害があるから低い」と短絡的に結論づけるべきではありません。
重要なのは、障害の有無に関わらず、個々の社員の職務内容、能力、貢献度に基づき、公正な評価とそれに見合った給与を支払うことです。企業は、障がい者雇用促進法、最低賃金法、同一労働同一賃金の原則といった法令を遵守し、社内の給与・評価制度との整合性を保ちながら、透明性の高い運用を徹底する必要があります。合理的配慮の提供を理由とした賃金引き下げは不適切です。
適正な給与設定と公正な運用は、法令遵守や社会的責任を果たすだけでなく、優秀な人材の確保・定着、従業員のモチベーション向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、ひいては企業価値の向上に直結します。
さらに、給与だけでなく、キャリア形成の機会、働きがい、インクルーシブな職場風土、継続的な合理的配慮といった職場環境全体の整備が、障害のある社員が真に活躍し、定着するための鍵となります。
障がい者雇用は、単なる義務ではなく、多様な視点を取り入れ、組織を活性化させるための戦略的な取り組みです。本記事で示した考え方やポイントを参考に、ぜひ貴社の給与制度と職場環境を見直し、全ての社員がいきいきと活躍できるインクルーシブな組織づくりを推進してください。それが、企業の持続的な成長と明るい未来を拓く力となるはずです。