更新日:2024/09/18
キャッシュフローを改善する8つの方法とは? 事業を安定させるためにできること
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
安定して事業を行うには、キャッシュフローを良好に保つことが大切です。いくら売上が好調で利益が出ているとしても、キャッシュフローが悪化していると経営危機に晒されてしまう恐れがあります。キャッシュフローを改善するには、どのような方法があるのでしょうか。
本記事ではキャッシュフローの概要や種類、キャッシュフローが悪化する原因や改善するメリット、改善する8つの方法を解説します。キャッシュフローが改善すると事業が安定するだけでなく、資金調達や将来の投資の面でも有利になります。本記事を参考にしてキャッシュフロー改善のために、具体的な取り組みを行いましょう。
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キャッシュフローとは?
キャッシュフローとは、直訳の通り「現金の流れ」のことです。
現金が入ってくることを「キャッシュイン」、現金が出ていくことを「キャッシュアウト」と呼びます。キャッシュインからキャッシュアウトを引いたものがキャッシュフローです。キャッシュフローがプラスなら手元のお金が増えている状態、マイナスなら減っている状態になります。
キャッシュフローが一時的にマイナスになったからといって、必ずしも経営状態が悪いとは言えません。しかしキャッシュフローが悪い状態が常態的に続いていると、会計上は黒字でも手元に現金がないので、倒産してしまうケースが少なくありません。
キャッシュフローの種類
キャッシュフローには、以下の3種類があります。
- 営業キャッシュフロー
- 投資キャッシュフロー
- 財務キャッシュフロー
企業のキャッシュフローを示す財務諸表が「キャッシュフロー計算書」です。キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書と合わせて「財務三表」と呼ばれますが、キャッシュフロー計算書でも、3種類のキャッシュフローに分類して記載されています。
それぞれどのような性質を持つのか見ていきましょう。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローとは、企業が行う営業活動における現金の流れのことです。営業キャッシュフローのプラスが大きければ大きいほど事業が好調で、マイナスが大きければ大きいほど不調ということになります。
営業キャッシュフローの主なキャッシュインは、商品やサービスの販売で得た売上や保険金などです。キャッシュアウトには、原材料費や人件費、法人税、オフィスの家賃や光熱費などがあります。
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローとは、投資活動における現金の流れのことです。
投資キャッシュフローの主なキャッシュインは、固定資産や有価証券などの売却によって得た収入や他社への貸付金の回収などです。キャッシュアウトには固定資産や有価証券の取得、他社への貸し付けによる支出などがあります。
企業活動には設備投資や固定資産の投資が欠かせないため、投資キャッシュフローはマイナスになるケースが多いです。営業キャッシュフローのようにマイナスが大きいことが必ずしもネガティブな要素になるとは言えず、将来に向けてしっかり投資していると評価されることもあります。
財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローとは、財務活動における現金の流れのことです。
財務キャッシュフローのキャッシュインは、借入や社債発行、新株式の発行、自己株式の取得による収入などです。キャッシュアウトには、借入金の返済や社債の償還、自己株式の売却、配当金支払いなどによる支出があります。
財務キャッシュフローもマイナスだからといって、ネガティブな評価になるとは限りません。営業キャッシュフローが悪く、借入を行って財務キャッシュフローがプラスになるとネガティブな評価になりますが、借入金の返済を行って財務キャッシュフローがマイナスになったとしても、ポジティブな評価になります。どのような資金調達の背景があるかで、評価が異なるのが特徴です。
キャッシュフローが悪化する原因
どうしてキャッシュフローが悪化してしまうのでしょうか。代表的な7つの原因を紹介します。
本業が赤字状態
キャッシュフローが悪化する原因の一つは、本業が赤字状態になることです。
本業の売上が芳しくなく、売上高が経費を下回ると赤字状態になります。赤字状態になるとキャッシュインよりもキャッシュアウトが多くなってしまうため、キャッシュフローが悪化してしまいます。
売掛債権の未回収・貸倒れ
売掛債権の未回収や貸倒によっても、キャッシュフローは悪化してしまいます。
取引先の経営が悪化し売掛金が回収できないと、帳簿上は売上があったとしても手元にお金が入ってきません。支払い遅延により売掛債権の回収が遅れるケースもありますが、未回収のまま取引先が倒産してしまい、貸倒れが起こってしまうこともあります。
本来手元にあるはずのお金が入ってこないので、キャッシュフローが悪化してしまい、最悪の場合は連鎖倒産してしまうリスクもあるでしょう。
無駄な経費による出費
キャッシュフローの悪化は、無駄な経費による出費によっても起こってしまいます。
事業活動をする上では必要な経費も多くあるため、経費による出費が必ずしも悪いわけではありません。しかし利益につながらない無駄な経費が多く発生すると、キャッシュフローにも影響が出てしまいます。
売上が十分にあったとしても無駄な経費による出費がかさんで、キャッシュフローが悪化してしまうケースも少なくありません。
必要以上の設備投資
必要以上の設備投資を行った場合も、キャッシュフローが悪化する原因となってしまいます。
利益を増やすためには、適切な設備投資が必要です。しかし無計画に過剰な設備投資を行えば、キャッシュアウトがどんどん増えて、キャッシュフローが悪化してしまうでしょう。
行った設備投資が利益を生むまではある程度の時間がかかるため、必要以上の設備投資を行うと、利益が出る前に経営状態が悪化して、倒産してしまうこともあります。
在庫の過剰保有
キャッシュフローの悪化は、在庫の過剰保有によっても起こってしまいます。
在庫を過剰に保有してしまうと、仕入れの支出があるにもかかわらず、資金を回収できません。また在庫を管理するには維持費や倉庫代も必要となるため、さらにキャッシュフローが悪化してしまいやすいです。長期的に在庫を保有することになると、商品の品質が劣化してしまうので、将来的に全ての在庫が売れたとしても、見込んだ売り上げにならなくなるケースもあります。
在庫を保有しておけば、需要が増加した際にチャンスを逃すことなく売上アップにつなげられますが、キャッシュフロー上ではマイナスになってしまう可能性も高いです。市場の状況や需要を予測し、適切な仕入れ量を判断する必要があるでしょう。
無理のある借入金の返済
無理のある借入金の返済も、キャッシュフローを悪化させる原因の一つです。
借入額が多すぎたり無理のある返済計画を立ててしまったりすると、借入金の返済でキャッシュアウトが増えてしまいます。十分に利益があったとしても、返済に圧迫されてキャッシュフローが悪化してしまう可能性も高いです。
借入を行う際は経営状況を考慮して、無理なく返済できる額を検討しなければなりません。また早く借入金を全額返済したいという気持ちだけが先行すると、無理な返済計画になってしまいやすいです。
回収期間と支払期間のズレ
キャッシュフローが悪化する原因には、回収期間と支払い期間にズレも影響します。
商取引では商品やサービスの取引があった際にその都度現金でお金を支払うのではなく、月単位などでまとめて掛け払いを行うのが一般的です。
そのため買掛金を支払う期間に対して、売掛金を回収する期間が長くなり過ぎると、キャッシュフローが悪化してしまいます。業績が良く商品が大量に売れたとしても、売掛金の回収よりも先に買掛金を支払わなければならない場合、支払いがままならず、黒字倒産してしまう恐れもあります。
キャッシュフローを改善する3つのメリット
キャッシュフローを改善すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。3つのメリットを解説します。
1.事業が安定する
事業が安定することは、キャッシュフローが改善して得られる大きなメリットです。
手元に資金が十分にあれば、取引先への支払いや社員への給与、納税などが滞る心配がありません。大規模な設備投資を行ったり売掛金の回収が遅れたりして、一時的にキャッシュアウトが増えたとしても、大きな支障なく事業継続ができるでしょう。
2.金融機関などの信用を得やすい
金融機関や投資家からの信用を得やすいことも、キャッシュフローを改善するメリットです。
キャッシュフローが安定している企業は、外部からの信用を得やすいです。金融機関や投資家からスムーズに資金調達がしやすくなるので、安定した経営が行いやすくなります。資金不足による支払い遅延が起こるリスクも軽減されるため、取引先からの信用も得やすいでしょう。
3.将来の投資がしやすくなる
キャッシュフローを改善すると、将来の投資がしやすくなるというメリットも得られます。
資金が十分にあれば、将来設備投資や研究開発、人員の確保などが必要になった際、しっかり投資が行えます。事業拡大や新規事業の乗り入れもしやすく、経営の自由度が増すため、自社の成長につなげやすいです。
キャッシュフローを改善する8つの方法
キャッシュフローを改善するには、具体的にどのようなことに取り組めば良いのでしょうか。キャッシュフローを改善する8つの方法を解説します。
1. 資金繰り表を作成して現金の流れを可視化する
キャッシュフローを改善させるには、資金繰り表を作成して現金の流れを可視化させましょう。
資金繰り表とは、収入と支出を分類し集計し、現金の動きを把握するためのものです。資金繰り表を作成すると、どのようにお金が動いているのかが明確になり、万が一キャッシュフローが悪化しそうな場合でも、どこに問題があるのかが一目で分かります。
キャッシュフローを悪化させないためには、早めに問題点を見つけ、必要な対策を講じることが大切です。資金繰り表を作成しておけば、深刻な状況になる前にキャッシュフローの改善を目指しやすいでしょう。
2. 営業活動で利益を上げる
営業活動で利益を上げることも、キャッシュフローの改善に効果的です。
シンプルですが、営業活動で利益を上げればその分キャッシュインが増えるので、キャッシュフローが改善します。売上アップのための施策を行うことはもちろんですが、原価の見直しや販売費・一般管理費の見直しも利益を上げることにつながるでしょう。
ただし売上アップのために無理な施策を打ち出すと、キャッシュフローが悪化してしまう恐れもあるため、現状を踏まえてどのような施策が適しているか検討することが大切です。
3. 売掛金の未回収・遅延を減らす
売掛金の未回収や遅延を減らすことも、キャッシュフローの改善につながります。
前述したように、売掛金の未回収や回収の遅延、貸倒れなどは、キャッシュフローが悪化する原因の一つです。売掛金の未回収や遅延を減らすためには、与信管理を徹底することが大切です。また請求管理や債権管理をしっかりと行い、期日までに回収できるように対策を講じて、支払い遅延が起きた際には適切な対処を行う必要もあります。
4. 経費を見直し・削減する
経費を見直し、不要な経費を削減することも、キャッシュフローの改善に効果的です。
経費がかかればかかるほど、キャッシュアウトが増えてしまいます。現在の経費を見直して無駄を削減することで、キャッシュフローが改善しやすくなるでしょう。特に通信費やオフィスの家賃、水道光熱費、保険料などの固定費を見直すと、月々の出費を抑えられるため、キャッシュフローが改善しやすいです。
5. ファクタリングを活用する
キャッシュフローを改善するには、ファクタリングを活用するのも一つの方法です。
ファクタリングは、売掛債権を使って資金調達する方法です。ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらうことで、支払い期限よりも先に現金を調達できます。手数料はかかりますが、早く現金が手元に入ってくるため、キャッシュフローが改善しやすく、黒字倒産のリスクを軽減することが可能です。また借入金と違って負債にはならないので、利用したとしても自社の信用情報には影響がありません。
6. 不良在庫や遊休資産を売却する
キャッシュフローを改善するためには、不良在庫や遊休資産の売却も検討しましょう。
売れずに残ってしまった在庫があると、資金が回収できない上に倉庫代や管理費も発生してしまいます。また遊休資産も維持費が発生する上、借入金が発生していれば月々の返済も必要です。固定資産の場合は、固定資産税も発生します。
不良在庫や遊休資産を売却すれば、キャッシュアウトが減らせる上に、売却によって得た収入でキャッシュインが増えるため、効果的にキャッシュフローの改善が目指せるでしょう。
7. 事業用クレジットカードを使う
キャッシュフローを改善するには、事業用クレジットカードを使うのも一つの方法です。
事業用クレジットカードを利用すれば、商品やサービスを購入した際にすぐに現金が出ていくことがなく、支払いのタイミングも固定されるため、キャッシュフローを管理しやすくなります。ポイントやマイルなどが貯まるクレジットカードを利用すれば、現金払いよりもお得になるケースが多いです。
8. 金融機関からの融資を検討する
キャッシュフローを改善したい場合は、金融機関からの融資も検討してみましょう。
融資を受けて財務キャッシュフローが改善すると、キャッシュフロー全体が改善する効果が期待できます。
ただし営業キャッシュフローが悪化している場合、融資が受けられないかもしれません。日本政策金融公庫や自治体の行っている融資制度は、金利が低く、審査にも通りやすい傾向にあるので、できるだけ審査に通る確率の高い金融機関に融資を申し込むと良いでしょう。
無理な融資を受けると、負債の増加によって将来またキャッシュフローが悪化する可能性があるため、計画をしっかり立てることが大切です。
まとめ
本記事ではキャッシュフローの概要や種類、キャッシュフローが悪化する原因や改善するメリット、改善する8つの方法を解説しました。帳簿上は黒字だったとしても、常にキャッシュフローが悪化していると、黒字倒産してしまうリスクが高くなってしまいます。解説した改善方法を参考に、自社に合ったキャッシュフロー改善に取り組みましょう。
キャッシュフローを改善するには、請求管理や債権管理をしっかり行い、売掛金の未回収や支払い遅延を防ぐことも重要です。請求管理ツールや債権管理ツール、掛け払いツールなどを活用すれば、売掛金の未回収や支払い遅延の防止をサポートしてくれます。担当者の業務負担を軽減や人的ミスの防止にもつながるので、導入を検討してみると良いでしょう。請求管理ツールや債権管理ツール、掛け払いツールを提供している会社は複数あり、ツールによって特徴や機能が異なります。導入を検討するなら、複数のツールを比較し、自社に合ったものを選ぶことが大切です。
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