企業が行うべきメールセキュリティとは? 重要性や実施するメリットおすすめツール5選
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
メールセキュリティとは、メールの送受信が原因で生じるリスクを軽減する対策です。中でも特定の組織を狙った「標的型攻撃メール」は年々高度化しています。万が一、こうした攻撃によってマルウェアに感染すれば情報漏えい・身代金の請求・業務停止など、企業に甚大な被害がおよびかねません。
本記事では、メールセキュリティとは何か、メールセキュリティを実施する重要性、おすすめ対策ツール5選など、詳しく紹介します。
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メールセキュリティとは?
メールセキュリティとは、メールの送受信が原因で生じる不正アクセスや情報漏えいなどのセキュリティリスクを軽減する対策のことです。一般的には、専用ツールを導入し対策を進めます。
企業では日々、大量のメールの送受信を行っています。このような大量のメールのやりとりは攻撃者にとって格好の標的です。そのため、中にはマルウェアが隠されていたり、悪意のあるコードが含まれていたりすることもあります。
また、従業員が送信するメールが原因で情報漏えいなどのトラブルに発展することもあるでしょう。
メールセキュリティは企業の信頼や資産を、外的・内的脅威から守るためにも重要な取り組みです。
メールによるリスクの種類や手口
メールによるリスクは外部からの攻撃だけでなく、内部からの情報の持ち出しなども考えられます。メール攻撃の種類と手口、内部から生じるリスクを紹介します。
メール攻撃の種類
メール攻撃の方法は大別すると「ばらまき型攻撃」と「標的型攻撃」の2つがあります。どちらもメールに添付されたファイルを開くなどして感染が広がります。
ばらまき型攻撃
ばらまき型攻撃とは、ウイルスの入ったメールなどを無作為に送信し被害を及ぼす方法です。件名に「至急」や「請求書」などの文字を入れ、本文はあえて空白にすることで添付ファイルを開くように誘導します。
誤って添付ファイルを開くと、個人情報の入力を促されたり、マルウェアなどのウイルスに感染したりします。標的を絞らずにメールを送付するため、さまざまな情報が集められる方法です。
標的型攻撃
標的型攻撃とは、ウイルスの入ったメールなどを特定の個人や企業、組織、業界などに送り付ける方法です。悪意のある添付ファイルを開かせ、感染などさせる手口は「ばらまき型攻撃」と同様であるものの、事前に周到な準備をしている点が異なります。
- 攻撃する組織の情報を収集する
- 標的組織の役員などを狙いメールを送信する
- 添付ファイルやURLをクリックされウイルスに感染させる
- 端末が制御され遠隔操作される
- 水平展開により被害が拡大する
- 機密情報や個人情報が窃取される
標的型攻撃の中でもスパイ組織などによる高度かつ長期的な攻撃は「「APT(Advanced Persistent Threat)」と呼ばれています(※)。APTは標的組織別に開発したウイルスを用い、長期間潜伏し攻撃をする点が特徴です。
標的型攻撃は組織の持つ機密情報の窃取や金銭の要求だけでなく、組織機能の破壊が目的のこともあるため特に注意が必要です。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.「情報セキュリティ白書2024」p25.https://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/eid2eo0000007gv4-att/2024_ALL.pdf ,(2024-10-10).
メール攻撃の手口
メール攻撃には、悪意のあるファイルのダウンロードによりウイルスに感染させる、嘘の送金取引で資金を詐取するなど、さまざまな方法があります。以下に代表的な手口を紹介します。
フィッシング | 銀行など実在する組織をかたって、偽サイトに誘導し個人情報などを入力させる手口です。2023年現在、フィッシングサイトの総数は499万件にのぼり年々増加しています(※)。 |
スパム | 迷惑メールのことで、受信者が望んでいないにもかかわらず大量のメールを一方的に送りつける方法です。特定のサイトへの誘導やウイルス型のメールもあります。 |
ランサムウェア攻撃 | 悪意のあるウイルスにより、システムなどを復旧不可能にして身代金を要求するサイバー攻撃です。2023年に日本国内の企業・団体で確認された被害件数は197件です(※)。 |
ビジネスメール詐欺 | 偽のメールを組織の役職員に送り、送金取引により資金をだまし取る手口です。取引先を装い送金指示をするため、数億円単位の被害が生じることもあります。 |
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「情報セキュリティ白書2024」P10,P18
内部からの情報漏えいにも注意が必要
メールのリスクは外部からの攻撃だけではありません。内部の従業員が脅威になることもあります。
- メールを使い意図的に企業の機密情報や個人情報を持ち出す
- 社外とのやり取りで送付先や添付資料を間違える
- パソコンが感染したことに気が付かず外部にウイルスを送付する
社外とのメールの送受信に制限がかけられていないと、従業員が意図的に企業の機密情報を持ち出すこともできます。なお、2023年に上場企業とその子会社から公表された個人情報の漏えい・紛失事故うち、24件は内部不正が原因です(※)。
また、個人情報の書かれた添付ファイルを誤って別の担当者に送付するなどすれば、情報漏えいにもつながりかねません。
さらに、会社のパソコンがウイルスに感染すると、メールの送信の度、他社にウイルスをばらまく恐れもあり、知らない間に被害者にも加害者にもなってしまいます。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.「情報セキュリティ白書2024」p14.https://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/eid2eo0000007gv4-att/2024_ALL.pdf ,(2024-10-10).
企業がメールセキュリティを実施する重要性
メールが原因でマルウェアに感染すれば、個人情報や金銭が流出するだけでなく、企業活動の停止に追い込まれることもあります。これらの事態を避けるためにも、メールセキュリティの実施は重要です。
個人情報や金銭の流出を防ぐため
メールセキュリティの実施は、企業の機密情報や金銭の流出を防ぐためにも必要です。
2023年に発生した個人情報事故175件のうち、53.1%がウイルス感染や不正アクセスが原因です(※)。サーバーが不正アクセスを受けた場合、顧客や従業員の氏名・メールアドレスなどの個人情報が大量に流出する恐れがあります。
また、マルウェアの感染が原因の個人情報の窃取では、データを公開すると脅迫し、身代金を請求されるケースもあります。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.「情報セキュリティ白書2024」p49.https://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/eid2eo0000007gv4-att/2024_ALL.pdf ,(2024-10-10).
組織の活動を停止させないため
メールセキュリティは企業活動を継続させる上でも重要です。
マルウェアの手口の中には企業の保有するデータを暗号化し、企業活動を停止させるものもあります。さらに、暗号の解除と引き換えに身代金を要求する「二重恐喝」が行われれば被害はさらに甚大です。
なお、2023年の報告ではマルウェアの被害に遭ってから復旧するまでにかかった期間は「1週間以上1カ月未満」が31.6%と最も多く、復旧までに2カ月以上かかるケースもあります(※)。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.「情報セキュリティ白書2024」p15.https://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/eid2eo0000007gv4-att/2024_ALL.pdf ,(2024-10-10).
メールセキュリティの実施方法
メールセキュリティでは、専用のツールの導入が有効です。ただし、メール攻撃の中にはセキュリティを潜り抜けるものもあるため、従業員教育の徹底や、攻撃に遭ったときにどのように復旧するか計画を立てることも大切です。
メールセキュリティツールの導入
メールセキュリティツールとは、以下の方法でメールが原因のセキュリティリスクを軽減するソフトやサービスのことです。
- ウイルスを含むメールの事前検知により警告や削除を行う
- 添付ファイルに含まれる悪意のあるコードを無効化する
- 送信メールの内容を暗号化して情報漏えいを防ぐ
- 社外メールの送信は条件により制限し情報漏えいを防ぐ
- 送信メールの添付ファイルを確認し誤送信を防ぐ
専用のツールの導入はウイルスなどの外的脅威だけでなく、誤送信や不正持出のような内的脅威に対しても効果を発揮します。
継続的な従業員教育の実施
メールセキュリティツールを導入しても、継続的な従業員のセキュリティ教育は必要です。
メール攻撃の多くは添付されたファイルを開かせるなど、受信者の行動によりウイルス感染のような被害が生じます。悪意のあるメールの中には、セキュリティソフトを突破するものもあるため、万が一の事態に備え不審なメールは開かないよう教育を徹底しましょう。
メール攻撃発生時の復旧計画の策定
メール攻撃を含むサイバー攻撃は年々高度化しており、完全に防ぐことは不可能です。メールセキュリティ対策では攻撃を受けることを前提として、いかに早期に復旧を進めるか、事前に計画しておく必要があります。
一例として、CSF(識別・防御・検知・対応・復旧・統治)のようなサイバーセキュリティのフレームワークを用いるのも方法です。
メールセキュリティツールを導入するメリット
メールセキュリティ対策として、専用ツールを導入するメリットは以下のとおりです。
- メールの送受信で生じるリスクを軽減できる
- インシデント発生によるコストを削減できる
メールは日常的に企業で使うツールです。安全が守られていなければ業務を円滑に進めることも難しくなります。専用ツールを導入すれば、脅威となりうるメールをふるいにかけられるため、安心して業務を進められるでしょう。
また、万が一メールが原因のインシデントが発生すれば、多大な経済的損失につながる恐れがあります。メールセキュリティ対策ツールの導入は、将来的な損失を防ぐ役割もあります。
メールセキュリティツールを導入するデメリット
メールセキュリティツールを導入するデメリットは以下のとおりです。
- 金銭的・人的コストが生じる
- 処理速度が低下する恐れがある
メールセキュリティツールの導入には、導入費用や月額利用料がかかります。また、運用担当者の設定も必要のため、金銭的・人的、どちらのコストもかかる点に注意しましょう。
また、メールの内容や添付ファイルを事前に検査するため、パソコンやサーバーの環境によっては、処理速度が低下する恐れもあります。
メールセキュリティツールの選び方
メールセキュリティツールと一口にいっても、機能や導入方法、価格帯などさまざまな製品があります。選ぶときは自社の導入目的や予算を明確にして、それらを達成できるか確認しましょう。
対策に必要な機能が備わっているか
メールセキュリティツールには、以下のような機能が備わっています。
- アンチウイルス
- アンチスパム
- なりすまし防御
- 添付ファイルの無害化
- URLの無効化
- メール暗号化
- 誤送信防止送
- 信制限設定など
メール攻撃対策に特化したものもあれば、内部不正も合わせて防止できる製品などさまざまです。さらに、メールの受信時には単にフィルタリングするだけでなく、危険自体を無害化してから確認できるものもあります。
導入や運用はしやすいか
導入方法は以下の2つに大別されます。
- オンプレミス型:社内にサーバーやシステムを構築する方法
- クラウド型:他社サーバーで提供されるサービスをインターネット経由で利用する方法
オンプレミス型はセキュリティ面に優れる一方、導入コストがかかり保守業務も自社で行う必要があります。クラウド型は、すでに用意されているサービスを利用するため、導入が簡単で費用も抑えられます。しかし、セキュリティに考慮する必要があり、カスタマイズ性も高くありません。
価格は予算内に収まるか
メールセキュリティツールの導入には、初期費用の他に、月額利用料がかかります。また、サービスによっては月額利用料が安価でも、サポート費用やオプション費用、アカウント費用などが別にかかることもあるため注意が必要です。使いたい機能を全て使っても予算内に収まるか確認しましょう。
メールセキュリティツールのおすすめ5選を紹介
ここからは、企業のメールセキュリティを向上する、おすすめツールを5点紹介します。
迷惑メール撃退率99.98%「使えるメールバスター」
使えるねっと株式会社の「使えるメールバスター」は、 標的型攻撃メールをはじめとする迷惑メールが、メールサーバーに届く前にブロックできます。独自の学習型AIを活用し、スパムメールの撃退率は99.98%を達成。新たなウイルスにもすぐに対応可能です。
費用 | 初期費用:無料月額:1万2,870円(税込)※1ドメイン300メールアカウントの場合 |
提供形態 | クラウド型 |
機能 | ウイルスフィルタ、迷惑メールフィルタ、IPアドレスフィルタ、添付ファイルの制限、アドレスフィルタ、DMARCチェックフィルタ、送信ドメイン認証フィルタ、迷惑メール送信防止機能他 |
無料トライアル | あり(30日間) |
外的・内的どちらのメールリスクにも対応「まるっとメールセキュリティ for Outlook」
株式会社トインクスの「まるっとメールセキュリティ for Outlook」は、標的型攻撃メールのような外部からの脅威だけでなく、誤送信防止機能により内部のリスクにも備えられる点が魅力です。
費用 | 初期費用:無料年額:7万5,000円(税抜)※利用ID数1~50の場合 |
提供形態 | クラウド型 |
機能 | 標的型攻撃メール対策機能、メール誤送信防止機能 |
無料トライアル | あり(60日間) |
必要なセキュリティ機能を自由に選べる「OneOfficeメールソリューション」
株式会社TOKAIコミュニケーションズの「OneOfficeメールソリューション」では、標的型攻撃対策やメール誤送信対策など、自社に必要なセキュリティを選んで導入できます。国内約1万5,000社が導入しているため、自社と同じ業種の導入事例を確認し検討できる点もポイントです。
費用 | 要確認 |
提供形態 | クラウド型 |
機能 | 標的型攻撃対策、スパムメール対策、メール誤送信対策、添付ファイル暗号化 |
無料トライアル | あり(60日間) |
自己学習とAIで不審メールを自動検出「IRONSCALES」
株式会社アズジェントの「IRONSCALES」は、自己学習とAIを組み合わせ、従業員に届いた不審メールを自動で検知し、隔離と削除が可能です。さらに、不審メールはリアルタイムで従業員と共有できるため、被害の拡大を未然に防げます。
費用 | 要確認 |
提供形態 | クラウド型 |
機能 | フィッシング対策他 |
無料トライアル | あり(14日間) |
Emotet対策に特化した「Acrive! zone SS」
株式会社クオリティアの「Acrive! zone SS」は、パスワード付きZip ファイルの検知により、マルウェアのEmotet(エモテット)対策に高い効果を発揮します。受信条件のこまかな設定もできるため、部署ごとの変更も可能です。
費用 | 初期費用10万円(税抜)ベーシックプラン月額:200円(税抜)サンドボックスプラン月額:400円(税抜き)※30メールアドレスから |
提供形態 | クラウド型 |
機能 | アンチウイルス、アンチスパム、添付ファイル内のマクロ除去、添付ファイルの画像化、添付ファイルの分離/ダウンロード、送信元の国名表示、HTML メールのテキスト化、受信メールのduplicate、サンドボックス他 |
無料トライアル | あり |
メールセキュリティは専門ツールで対策しよう
メールセキュリティとは、メールの送受信で生じるリスクを軽減する取り組みです。対策には専用のセキュリティツールの導入が有効なため、自社の状況に合ったものを選ぶとよいでしょう。
なお、マルウェアを使った攻撃はメールだけでなく、OSやシステムの脆弱性も突いてきます。企業を悪意のある攻撃から守るためには、ネットワーク全体を保護することが大切です。
以下の記事では、ファイアウォールやWAFなどWebセキュリティの向上に役立つツールを紹介しています。ぜひご覧ください。