ERPとは? 主な機能や導入するメリット・デメリット、自社に合った選び方を解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
ERPは企業の資産であるさまざまな情報を一元管理して、企業全体の業務効率化を図れるシステムです。ERPという言葉は聞いたことがあっても「実際どのようなシステムなんだろう」「どのように活用するんだろう」と疑問に思っている方は多いかもしれません。
そこで本記事ではERPの概要や主な機能、導入するメリット・デメリット、自社に合ったERPの選び方、導入の流れを解説します。ERPはこれまで大企業を中心に導入されてきたシステムですが、近年はさまざまな種類が登場し、中小企業でも導入しやすくなってきています。本記事を参考にERPへの理解を深め、自社への導入を検討してみましょう。
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サービス名称 | 特長 | 主な機能 | トライアル有無 | 費用 |
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各種口座の管理(お金の場所を見える化) 売上、請求管理(収入を見える化) 支払い管理、経費精算、給与計算(支出を見える化) レポート分析(経営を見える化) |
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プロフェッショナル:47,760円~/月(税抜) エンタープライズ:要お問い合わせ ※年払いも可能 ※メニューによって無料対応人数が異なります |
OBIC7 |
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業界・業務ごとに機能が異なる 会計情報ソリューション:セキュリティや内部統制、ワークフローなど 人事情報ソリューション:候補者抽出、異動シミュレーション、発令登録、辞令発行など |
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販売・調達在庫・製造管理 会計情報(経理・資産・経費)管理 売上、仕入から請求、回収、支払の管理 人事情報管理 |
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マネーフォワードクラウドERP |
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製品により異なる Dynamics 365 Finance: 財務の計画と分析 会計および決算 税務管理、現金管理など |
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GLOVIA iZ |
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クラウドERP ZAC |
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情報共有(予定表、コンタクト管理、文書管理) 基幹業務(販売管理、勤怠・工数管理、購買管理、経費管理、工程管理、在庫管理) 管理会計(分析レポートの出力、経営モニタリング) |
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利用機能と利用人数によって変動 販売:月6,000円/1人 購買:月2,000円/1人 勤怠、経費:月300円/1人 |
ERPとは?
ERPはEnterprise Resources Planning(企業資源計画)の略称で、企業が持つあらゆる資源を最大限有効活用し、企業活動に活かすための考え方です。またこの考え方を実現するために、基幹業務を一元管理するシステムもERPと呼ばれます。ERPパッケージ、ERPシステム、統合基幹業務システム、業務統合パッケージと呼ばれることもありますが、いずれも同じものです。本記事ではシステムとしてのERPを解説します。
企業が事業活動を通して利益を生み出すには、さまざまな基幹業務があります。従来基幹業務は担当部門ごとにバラバラな情報管理が行われてきました。しかし担当部門が異なる業務といってもそれぞれは密接に関係しているため、バラバラに管理していると効率良く連携できないことが課題となっていました。
しかしERPを導入すれば各基幹業務を一元化でき、一つのシステムであらゆる情報の一括管理が可能です。これまでバラバラだった情報をまとめて管理できるので、業務間での連携や部門を超えたデータ活用が可能になり、業務効率化が図れます。また全てのデータの集計・分析もリアルタイムでスムーズできるようになるため、迅速な経営判断ができるようになり、より良い企業経営が実現できるでしょう。
基幹システムとの違い
ERPと混同されやすいのが、基幹システムです。
基幹システムは企業の基幹業務の業務効率化を支援するシステムの総称で、具体的には以下のようなシステムがあります。
- 財務会計システム
- 販売管理システム
- 購買管理システム
- 生産管理システム
- 人事・給与管理システム
- 営業管理システム
- 在庫管理システム
- 勤怠・労務管理システム
それぞれのシステムは特定業務のみを支援するシステムのため、各部門でバラバラに運用されます。対象となる特定の業務に最適化されており、カスタマイズ性が高い傾向にあるのが特徴です。また比較的低コストで導入でき、導入にかかる工数も少ないですが、基幹業務ごとにシステムが独立しているので、業務間の連携は取りにくくなります。
一方ERPは前述した通り、企業が持つさまざまな情報を一元管理することで、企業全体の経営活動を効率化するためのものです。基幹システムよりもコストがかかる上、導入にはデータの統合などを行う必要があるため、導入までには工数もかかります。しかし業務間の連携が取りやすくなり、あらゆるデータを分析してリアルタイムで現状把握ができるので、スピーディーな経営判断に活かしやすいです。統合基幹業務システムとも呼ばれますが、その名の通り各基幹業務を統合して管理できます。
ERPの主な機能6つ
ERPは製品によってさまざまな機能を搭載していますが、ここからは主な6つの機能をご紹介します。
1.会計管理
会計管理は売上や仕入れ、売掛金・買掛金、債権・債務、経費などを管理する機能です。
企業活動にまつわるお金に関する情報を一つのシステムに集約することで、リアルタイムで収支状況が分かり、適切な予算設定やコスト削減が可能になります。また会計機能を活用すれば、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の作成も可能です。ERPを導入すると、各部門で入力された販売状況や在庫状況、生産状況などもリアルタイムで反映されるため、経営判断に必要な財務情報が時差なく把握できます。
2.販売管理
販売管理は、受注や在庫、出荷・納品状況、販売実績などを管理する機能です。
状況を把握・管理するだけでなく、見積書や請求書の作成なども行えます。また月別や販売店別の販売状況や在庫状況も把握できるERPや、販売上場と市場の状況を元に将来の販売予測を立てられるERPも登場しています。
3.購買管理
購買管理は仕入れや購買計画など、製品を製造するために必要な部品や原材料などの調達に関わる流れを管理する機能です。
製造のために必要な部品や原材料の種類や数量を正確に管理することで、無駄のない仕入れを適切なタイミングで行うことができ、製造の業務効率化も図れます。
4.生産管理
生産管理は生産計画や生産工程、製品の品質などを管理する機能です。
受注状況を元に納品期限を正確に把握できるようになり、逆算して製造のタイミングも計画できます。適切な生産計画を立てて生産工程を管理することで、無駄のない人員配置ができるため、人件費の最適化にもつながるでしょう。生産性を高めながら、品質を満たした製品の生産が可能になります。
5.人事・給与管理
人事・給与管理は従業員の個人情報や基本情報、人事評価や保有資格などを管理する他、勤怠管理を行って給与計算に反映させる機能です。
従業員に関するあらゆる情報を一元化できるため、適切な人事評価を下しやすくなります。各従業員が持つ資格や能力を把握できるので、適材適所な人員配置もできるようになるでしょう。また時間外労働の合計時間や年次有給取得の有無なども一目で分かり、一定のレベルを超えると上長へ自動でアラートを通知を行ってくれるERPもあるため、労働状況の改善にも活用できます。
6.営業管理
営業管理は顧客リストや顧客対応履歴、マーケティング活動履歴などを管理する機能です。
どのような営業活動を行っているかが一目で分かる他、実施したマーケティング施策の効果を分析・評価することができます。また顧客とのコミュニケーションの内容やクレームの内容も一元管理できるため、顧客のニーズに合わせたより効果的な営業活動が展開できるようになるでしょう。
ERPの種類
ERPにはさまざまな種類があります。代表的なERPの種類を導入形態・構築方法・利用形態別に見ていきましょう。
導入形態
ERPの導入形態は大きく分けて以下の3種類があります。
- 統合型ERP
- コンポーネント型ERP
- 業務ソフト型ERP
導入形態ごとの違いをご紹介します。
統合型ERP
統合型ERPとは、あらゆる基幹業務を一元化するためのERPです。
経営に欠かせない全ての基幹業務を一つのシステムで完全に統合できるため、企業全体の業務効率化ができ、集約したデータを活かしてスピーディーな経営判断が可能となります。ただし、あらゆる部門のシステムを連携させなければならないので、導入に工数がかかりやすいです。また費用も大きくなるため、ある程度規模が大きな企業に適しているERPと言えます。
コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPは、自社のニーズに合わせて必要なシステムを組み合わせるタイプのERPです。
前述した通り、あらゆる基幹業務を一元管理しようとすると工数も費用もかかりますが、必要なシステムだけを組み合わせるERPなら、予算を抑えながら自社に合ったERP運用ができます。それほど予算が割けない中小企業でも、ERPの導入・運用が行いやすいでしょう。自社の成長に応じて、将来的にコンポーネントの追加も可能です。
ただし全ての基幹業務を一元化できないため、情報を一元化して経営判断に活かすというERP本来のメリットは得られません。またコンポーネントを追加すれば追加するほど、メンテナンスが複雑になりやすいというデメリットもあります。
業務ソフト型ERP
業務ソフト型ERPは、特定の部門や業務に特化したERPです。
会計管理や在庫管理、生産管理などの特定業務にシステムを導入することで、その部門や担当業務の効率化が図れます。3つの導入形態の中では、最も費用を抑えた導入・運用が可能で、予算を確保しづらい小規模事業者におすすめです。対象範囲はコンポーネント型ERPよりもさらに狭いので、導入までの工数もそれほどかからないでしょう。
ただし特定部門や業務に特化したシステムなので、コンポーネント型ERPと同様に情報の完全な一元化はできません。
構築方法
ERPの構築方法は、以下の2種類があります。
- パッケージ型ERP
- フルスクラッチ型ERP
構築方法ごとの違いを見ていきましょう。
パッケージ型ERP
パッケージ型ERPは、ベンダーによってあらかじめ用意されたパッケージを組み合わせて構築するERPです。
一般的な企業で必要であろう機能がパッケージ化されているため、後述するフルスクラッチ型と比較すると導入しやすく、スピーディーな導入が目指せます。
ただし必ずしもパッケージ化された機能が、自社のニーズや既存システムにマッチしているとは限りません。パッケージ型ERPを導入する際は自社の事業や既存システムとの相性を確かめて、導入することが大切です。
フルスクラッチ型ERP
フルスクラッチ型ERPは、自社に合わせてベンダーがオーダーメイドで構築してくれるERPです。
自社の事業や既存システムとマッチしたERPを構築できるので、課題解決に直結するシステムを導入できます。日本独自の商習慣や企業ごとの独自の慣習や業務にも対応可能です。
ただし自社に合ったERPを構築するにはベンダーと話し合いを重ね、どのような機能が必要か一つずつ決めていく必要があります。そのため、開発にはかなりの時間がかかってしまうでしょう。パッケージ型に比べると費用も高額になります。
利用形態
ERPの利用形態は以下の3種類に分けられます。
- クラウド型ERP
- オンプレミス型ERP
- ハイブリッド型ERP
利用形態ごとの違いをご紹介します。
クラウド型ERP
クラウド型ERPとは、文字通りクラウド上に構築されたERPのことです。
自社でサーバーを用意する必要がなく、インターネット環境とパソコンやスマートフォンなどのデバイスがあれば、いつでもどこからでもアクセスできます。後述する利用形態と比べて初期費用もランニングコストも抑えられるため、中小企業でも導入しやすいでしょう。
またアクセスする場所を問わないので、リモートワークを導入している企業でも導入しやすいです。メンテナンスやセキュリティ管理はベンダーが行ってくれるため、運用の手間も軽減できます。
クラウド上にデータをアップロードする必要があるので、クラウド型ERPはセキュリティの脆弱性がデメリットとされてきました。しかし現在はセキュリティ対策に多額を投じ、セキュリティを強みとしたクラウド型ERPも多く登場しています。クラウド型ERPを導入する際は、どのようなセキュリティ対策を講じているかをチェックするようにしましょう。
オンプレミス型ERP
オンプレミス型ERPは、自社で用意したサーバーにシステムをインストールするタイプのERPです。
自社のサーバー環境に合わせたシステムを構築できるので、カスタマイズ性が高く、既存システムとも連携しやすいものが多い傾向にあります。クラウド型ERPが登場するまではオンプレミス型ERPが主流だったため、大手企業を中心にオンプレミス型ERPを導入している企業は多いです。
ただしサーバーを用意しなければならないので、初期費用やランニングコストが高額になります。また自社でメンテナンスやセキュリティ管理を行わなければならないため、自社内で運用担当者を確保しなければなりません。
ハイブリッド型ERP
ハイブリッド型ERPは、クラウド型ERPとオンプレミス型ERPを組み合わせたタイプのERPです。
双方の長所を活かしたERP運用ができるのが特徴で、例えば重要なデータをオンプレミス型の社内サーバーで管理し、その他はクラウド型でアプリケーションを実行するといった使い方ができます。また運用担当者を確保しやすい本社のデータ処理にオンプレミス型、人材が確保しづらく処理するデータ量もそれほど多くない支社ではクラウド型を使うといった運用も可能です。ニーズや事業の特性に合わせて、柔軟な運用ができるでしょう。
ただしクラウド型とオンプレミス型を組み合わせているため、コストが膨らみやすく、導入や運用管理の手間もかかりやすい傾向にあります。
ERPを導入するメリット
ERPを導入すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。7つのメリットをご紹介します。
社内データを一元管理できる
ERPを導入するメリットの一つは、社内データを一元管理できることです。
前述した通り、ERPは基幹業務を一元管理するシステムです。これまで部門ごとにバラバラに管理していた情報が一元化できるため、ERPを導入すれば、データをシームレスに有効活用できます。
これまで部門間でやり取りを行って確認していた手間が省ける上、データの更新に時差が生まれないので、常にデータの整合性が取れるようになります。
生産性の向上が期待できる
生産性の向上が期待できることも、ERPを導入するメリットの一つです。
ERPを導入してあらゆる基幹業務が一元管理されると、同じ内容のデータを手作業で何度も登録する必要がなくなります。データ入力業務にかかる手間が大幅に削減されるので、業務が効率化し、生産性アップが期待できるでしょう。
また手作業でのデータ入力が減ると人的ミスも防げます。ミスが発生するとリカバリーに時間がかかって業務効率が悪くなってしまいますが、ERPを導入すればミスの発生自体を防ぎやすくなるでしょう。
経営状況をリアルタイムで確認できる
経営状況をリアルタイムで確認できることも、ERPを導入するメリットの一つです。
ERPを導入すれば、各部門で入力されたデータがすぐに共有されます。正確な情報がリアルタイムで確認でき、集計や分析も可能なので、自社の経営状況を時差なく把握できます。市場のニーズが刻一刻と変化する現代において、経営を有利に進めるにはスピーディーな意思決定が欠かせません。
ERPの導入によって、タイムリーかつ正確に経営状況を把握できるようになるため、より状況に即した意思決定ができるようになるでしょう。
セキュリティ管理を一元化できる
セキュリティ管理を一元化できることも、ERPを導入するメリットです。
部門ごとにバラバラにシステムを導入していると、システムごとにセキュリティ管理を行わなければなりません。しかしERPを導入すれば、一つのシステムに対してセキュリティ管理を行うだけで済むので、手間や負担を軽減しながらセキュリティ対策の徹底が目指しやすくなります。
情報システム部門の負担が減る
情報システム部門の負担も軽減できることも、ERP導入で得られるメリットです。
部門ごとに独立したシステムを導入していると、情報システム部門はシステムごとにアップデートやメンテナンス、設定変更などを行わなければなりません。業務量が膨大になるため、担当者の負担の大きさが課題になっている企業もあるはずです。
ERPを導入すれば一つのシステムを運用管理するだけで良くなるので、担当者の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
業務効率化によってコストを削減できる
ERPを導入すれば、業務効率によってコスト削減も目指せるでしょう。
前述した通り、ERPの導入によって部門間のデータのやり取りが容易になり、同じデータを手作業で入力する必要もなくなるため、業務効率化が目指せます。業務効率化が実現して工数が少なくなれば、人的コストの削減が可能です。
またリアルタイムで正確な在庫状況や仕入れ状況が把握できるようになると、過剰在庫を抱えてしまうリスクも軽減できるので、在庫コストが削減できます。逆に在庫不足に陥りにくくなるため、ビジネスチャンスを逃すことなく売上アップにつなげられます。
ERPを導入するデメリット
ERPの導入にはデメリットもあります。導入を検討しているのなら、これからご紹介する4つのデメリットを把握しておきましょう。
導入にコストがかかる
ERPを導入するデメリットの一つは、導入にコストがかかってしまうことです。
業務単体でシステムを導入するのと比べて、さまざまな業務をカバーするERPは大規模なシステムのため、導入コストが膨れ上がってしまいやすいです。特に統合型やフルスクラッチ型、オンプレミス型、ハイブリッド型を導入する際は、コストが大きくなる傾向にあります。
導入を検討しているのならまず予算を検討し、予算内で無理なく導入できそうかどうかを検討しましょう。コストを抑えたいなら、コンポーネント型ERPや業務ソフト型を選択するのも一つの方法です。
従業員が正しく使える必要がある
従業員が正しく使える必要があることも、ERP導入のデメリットと言えるでしょう。
ERPを導入するということは、全ての部署もしくは多くの部署で新たなシステムを導入するということです。すでになんらかのシステムやツールを導入していた場合、従業員は既存のものに慣れているため、順応するのに時間がかかってしまうかもしれません。
ERPを導入して正確な情報をリアルタイムで一元管理するには、従業員が正しく情報を入力することが大前提です。導入を成功させるためには、ERP導入を周知徹底して理解を得た上で、システムに関する研修を実施したり導入後のサポート体制を整えたりしておく必要があるでしょう。
現在の業務フローを変えなくてはならない
ERPを導入するデメリットの一つとして、現在の業務フローを変えなくてはならないことも挙げられます。
システムが変更になると、今の業務フローでは対応できなくなる可能性が高いです。多かれ少なかれ影響が出るので、導入するERPに合わせて業務フローの見直しを行う必要があるでしょう。導入するシステムを選ぶ前に業務効率改善に適した業務フローの見直しを行い、それを達成するために必要な機能を搭載しているシステムを選ぶことが大切です。
業務フローが変更になれば従業員の業務効率が落ちてしまう恐れもあり、本末転倒な結果になってしまう可能性もあります。従業員の声を聞きながら、無理のない範囲で少しずつシステムを導入することも検討してみると良いでしょう。
自社に合ったシステムを選ぶのが難しい
自社に合ったシステムを選ぶのが難しいことも、ERPを導入するデメリットです。
ERPにはさまざまな製品があり、製品ごとに特徴や搭載している機能、価格なども大きく異なります。たくさんのERPの中から自社に合ったシステムを選ぶためには、専門知識も必要です。
現状抱えている課題だけでなく、今後の事業計画を踏まえて、最適なシステムを選ぶ必要があります。
自社に合ったERPの選び方
前述した通り、自社に合ったERPを選ぶのはなかなか大変です。自社に合ったERPの選び方をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
必要な機能が搭載されているものを選ぶ
自社に合ったERPを選ぶ際にまず押さえておきたいのが、必要な機能が搭載されているかどうかです。
前述した通り、ERPに搭載されている機能は製品によって異なります。自社に合ったERPを導入するには、自社で行っている業務を踏まえてどのような機能が必要か洗い出し、それに対応できる機能を搭載したものを選ばなければなりません。
システムの形態で選ぶ
システムの形態で選ぶことも、自社に合ったERPを選ぶ際のポイントです。
ご紹介した通り、ERPには導入形態や構築方法、利用形態ごとにさまざまな種類があります。自社の規模、予算、運用担当者が確保できるかどうかなどによって、適したシステムの形態は異なるでしょう。
導入目的や運用方針や予算を踏まえて慎重に検討し、自社に適したシステムの形態を選ぶことが大切です。
導入・運用コストで選ぶ
自社に合ったERPを選ぶためには、導入や運用にかかるコストも重要なポイントです。
いくら良いシステムだとしても、導入・運用でコストがかかり過ぎてしまうと、経営を圧迫してしまう恐れがあります。統合型ERP一つをとっても、製品によって導入コストや月々の運用コストは異なるため、予算内に収まるかどうかを試算することも大切です。
いくら導入コストが抑えられても、運用コストが高ければ長期的に見て予算オーバーになる可能性が高いです。導入コスト・運用コストのバランスを見て、無理なく活用できるものを選びましょう。
拡張性の高さで選ぶ
自社に合ったERPを選ぶ際は、拡張性の高さもチェックしておきましょう。
自社特有の業務がある企業の場合、拡張性が高いERPを導入した方が業務効率化を図り
やすいです。またコンポーネント型でスモールスタートの導入をする場合は、将来コンポーネントの追加による拡張が可能かどうかも確認しておきましょう。
既存システムなど他のシステムと連携ができるかどうかもチェックしておくと、より効果的にシステムを活用できます。
操作性の良いものを選ぶ
ERPを選ぶ際は、操作性の良いものを選ぶことも大切です。
操作性が悪ければ、従業員がなかなかシステムに順応できず、データ入力もスムーズに行えません。ERPを導入した効果を早く得るためには、操作性が高く、直感的に使えるものを選ぶのがおすすめです。
できる限りストレスなく利用できるシステムを選ぶようにしましょう。
サポートが充実しているものを選ぶ
サポートが充実しているものを選ぶことも、自社に合ったERPを導入するためには重要です。
ERPを含めて新しいシステムを導入した際は、疑問点や不明点も数多く出てくるはずです。サポートが充実していれば、導入や運用でトラブルが起きても、迅速に対応してもらえます。
ERPに限らず、何かしらのシステムを導入するときは、サポートが充実しているものを選ぶようにしましょう。
セキュリティ体制で選ぶ
自社に合ったERPを導入するためには、セキュリティ体制で選ぶことも大切です。
前述した通り、かつてはセキュリティの脆弱性が懸念されていたクラウド型でも、セキュリティがしっかりしているものが出てきています。しかし、どの程度のセキュリティが構築されているかは製品によって異なるため、導入前にセキュリティレベルを確かめておくことが大切です。
重要な情報を扱うERPだからこそ、セキュリティが堅牢なものを選びましょう。
導入実績の多さで選ぶ
自社に合ったERPを導入するには、導入実績の多さも欠かさずチェックするようにしましょう。
導入実績が豊富で多くの企業に活用されているERPは、信頼できるシステムだと言えるでしょう。特に同業他社や同程度の企業規模での導入実績が豊富なシステムを選ぶと、導入による失敗を防ぎやすいです。
ERP導入の流れ
ERPを導入する際の一般的な流れをご紹介します。
1.ERPを導入する目的を明確にする
まず自社にERPを導入する目的を明確にしましょう。
目的が明確でないまま導入してしまうと、単に導入しただけになってしまい、自社が抱える課題の解決につながりません。目的を明確にすると、自社に合った製品選びもしやすくなります。
2.プロジェクトの推進者と担当者を決める
次にERP導入プロジェクトの推進者と各部門の担当者を決定します。
推進者も担当者も複数人配置するのが一般的です。推進者を中心として各部門の担当者が連携を取ることで、導入がスムーズに進めやすくなります。推進者は部門の垣根を超えて、発言力を持つ人材が望ましいです。
3.現在の業務を洗い出す
ERP導入によって業務効率化ができるように、現在の業務を洗い出しましょう。
導入後も滞りなく業務を遂行するためには、どのような業務があるか把握しておく必要があります。また現在どのようなシステムを使って各業務を行っているのかも、明らかにしておきましょう。
4.新規業務のフローを構築する
次にERP導入後に最適な業務フローを構築し直します。
一つ前のステップで洗い出した業務の中で、どの業務をERPでカバーするのかを検討し、どのような業務フローにすれば最適化できるのかを検討します。実際に運用を始めて業務フローを見直さなければならない可能性もありますが、現時点で最適と思われる業務フローを検討してみましょう。
5.システムを選定する
ここまで話し合った内容を元に、自社に合っているシステムを選定します。
構築しなおした業務フローに適した機能性を重視することも大切ですが、予算や運用方針も考慮してシステムを選ぶことも大切です。前述した自社に合ったERPの選び方を参考にしつつ、複数のシステムを比較してみてください。
6.試験運用を進める
システムの選定ができたら、試験運用を進めます。
特定の部門や業務に限定して試験的に運用を行い、担当者からのフィードバックを元にして、問題なく運用できそうなシステムかどうかを確かめましょう。試験運用中は既存のシステムと並行して運用することで、効果的にERPが機能しているかを判断しやすくなります。
イレギュラーなケースにも対応できるかを見極めるために、試験運用は1カ月から数カ月程度かけて行うのが理想的です。
7.本番運用を始める
試験運用で大きな問題がなければ、本番運用を開始します。
本番運用に先駆けて、マニュアルの作成や従業員への研修、サポート体制の構築などを行っておきましょう。本番運用の場合もまずは部門や業務を限定しつつ、スモールスタートで開始するのがおすすめです。
まとめ
本記事ではERPの概要や主な機能、導入するメリット・デメリット、自社に合ったERPの選び方、導入の流れを解説しました。
企業が持つさまざまな情報を一元管理できるERPは、業務効率化を実現し、迅速な経営判断によるより良い経営活動をサポートしてくれるシステムです。ただしERPといってもさまざまな種類があるので、ご紹介した自社に合ったERPの選び方を参考に、自社の目的達成や課題解決を目指せる製品を選びましょう。
こちらのページでは、おすすめのERP10選と各製品の特徴をご紹介しています。ERPの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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