更新日:2020/07/14
悲喜こもごも!営業のちょっといい話
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
SNSマーケティングから「バレエ」商品の営業マンに!
営業は多くの仕事のなかでもドラマティックな職種でしょう。先輩と後輩、同僚同士、ライバルなど色々な関係性によって、日々、軋轢や友情、喜怒哀楽が生まれています。
今回は「今でも心に残っている言葉」として、渋谷のバレエ関連商品の販売会社の営業マンとして活躍されている石井さん(28才女性)から聞いた話をご紹介します。
「好きなことをやると、日常のすべてがヒントになる」
石井さんは数年前まで、IT企業でスマートフォンやSNSマーケティングのツールの営業を4年ほど行っていました。
毎日早朝から夜遅くまで働いていました。
当初は何の知識もない状態から学びながら業務を行っていたので好奇心で仕事が続いていたようですが、数年が経ち、だんだんと業務に慣れ親しんできたころから、だんだんとマーケティングツールという商品に対して自分は本当に魅力を感じているのかという疑問を感じ始めていたといいます。
そしてその迷いが、営業の数字に現れてきていたといいます。
そんなある日、石井さんは直属の上司に飲みに誘われました。
「飲みになんてほとんど行ったことがありませんでした」そう石井さん。
なぜ突然? と石井さんは不思議に思ったようです。
そこまで親しい仲でもなかったようです。
お酒を何杯か飲んでから、上司の方はこんなようなことを言ったと言います。
「例えば、会計士として実績を積んできた人が陸上選手と対決して負けたとしても、悔しがる必要はないよな。
その代わり、ビジネスの戦いで陸上選手に負けたら悔しいと思う。
クライアントのニーズにこたえられなかったら絶対に反省するよな。世の中には、好きなことと嫌いなこと、得意なことと苦手なことがあるんだ。
極端に負けず嫌いな人は、この世にある勝負という勝負にすべて本気で挑むのかもしれないけれど、僕はそんなことする必要はないと思う。
人間、年を取ってくると、これが好きでこれが得意だというのが分かっていて、それ以外のケースで仮に負けたり失敗したりしても、それはもちろん心情的には、うれしいことはないけれど、別にそんなに悔しがったり反省したりしなくなくなるんだ。
好きなことが分かっていない人は、社会のニーズに自分を合わせようとする。でも、仕事は絶対に好きなことをやった方がいいと思う。
好きなことをやると、日常の全てがヒントになるんだ。寝ても覚めてもその仕事のことを考えていて、ふとした瞬間、それはサウナに入っていたり、好きなものを食べていたり、運動していたり、2時間かけてゆっくり夕食を食べているというリラックスした時間に大抵訪れるけれど、その仕事に関して、大切なことが降ってくる瞬間がある。
そういう人に、好きでもない人がパフォーマンスで勝とうとするのは無理だよ。
成果主義的、生産の効率化を考えても、好きなことを一生懸命になってするというのは、理にかなっていると思う」
実は上司の方は、会社の商品に対して興味を失ってしまっていた石井さんの背中を押してくれたのです。
この話を聞いてから数ヶ月後、石井さんは昔から自分が続けていたバレエと、営業というスキルを繋ぎ合わせ、有名バレエ商品関連企業の営業マンとして再就職しました。
「あの時むだに引き止めてくれなくて本当に感謝しています」石井さんはその時の上司の方に今でも感謝しているそうです。
マーケティングではなく、情熱と想像力がこの世を動かす。
しかし、いきなりIT企業からバレエ商品のメーカーに転職した石井さん、やはり最初は不安が大きかったようです。営業力を武器に転職はしたけれど、それまでの自分のSNSマーケティングというツールの知識や、「商品販売方法」や「営業方法」が全くと言っていいほど通用しなかったのです。
でも、石井さんはまたもや、先輩と一緒に行った会社全体のセミナーで、心を救われたようです。東京の営業本部長が壇上でこのように言いました。
「多くの場合、世界を動かしているのは情熱と想像力です。
人からどう見られたいという感情よりも、自分がどうしたいという気持ちの方が人を魅了しますし、奇跡を生みます。
世の中には、たくさんのマーケティングの本が並んでいます。
商品をお客様や企業にどのように売り込んでいくのか、そういうことを述べています。
もちろんそれは経済的には正しい考え方です。しかし、時代は少しずつ変化しています。
特に、私たちは表現者、アーティスト、芸術家、クリエイターという類の仕事を営業マンとしてお手伝いするお仕事です。
おもねりやマーケティングや社会全体に対してはっきりとした嫌悪感を持つことが大切なのです」
その言葉で、バレエが好きだから転職したんだという気持ちを再確認したという石井さん。
まだ慣れるまでには時間を要するとのことですが、きっと素晴らしい営業マンになることでしょう。
営業はドラマに満ちています。それぞれの世界の中で、どのような出会いが自分を成長させてくれるか分かりません。もしかしたら、今日出会う誰かが発するその言葉が、営業マンとしてのあなたを成長させてくれるのかもしれません。