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SFA JOURNAL by ネクストSFA

キーエンスの強さの源泉。最強の営業の型「PSS」とは

株式会社ジオコード クラウド事業 責任者 庭田 友裕

【監修】株式会社ジオコード クラウド事業 責任者
庭田 友裕

圧倒的な営業利益率と高い成長を続ける株式会社キーエンス。その強さの源泉の一つに、徹底された営業戦略とそれを支える人材育成があるのは有名な話ですよね。本記事では、キーエンスの営業担当者が実践する営業の「型」PSSについて、その具体的な内容から現場への落とし込み方法までを深掘りします。

キーエンスの提唱するPSSとは?

PSSは「Professional Selling Skills」の略称で、もともとは富士ゼロックス総合教育研究所(現在のパーソル総合研究所)によって開発された、営業面談におけるスキルを体系的に習得するためのプログラムです。この手法を徹底的に実践し、自社の営業スタイルとして確立したのがキーエンスです。

PSSの目的は、営業活動をプロセスとして標準化し、営業担当者の個人スキルに依存することなく、組織として一貫した高いレベルの営業活動を再現可能にすることです。キーエンスでは、このPSSを営業活動の基盤として、次のような主要なスキル要素で構成されているとされています。

  •  オープニング – 商談の第一印象を決めるスタートスキル
  •  プロービング – ニーズを引き出す質問スキル
  •  サポーティング – ニーズに応じた提案スキル
  •  クロージング – 商談を次のステップに進めるスキル

PSSの具体的な内容と特徴

PSSの各ステップでは、営業担当者が取るべき行動や用いるべきスキルが明確に定義されています。

① オープニング

オープニングでは、訪問の目的、商談で話し合いたい内容、期待される成果、所要時間などについて顧客と明確に合意形成を行います。お客様と共通の目的をもつことが非常に重要です。 これにより、顧客と営業担当者の間で認識のズレを防ぎ、商談をスムーズかつ建設的に進めるための土台を築きます。顧客も「何を話すのか」「何を得られるのか」が明確になるため、安心して商談に臨むことができます。

② プロービング

プロービングで重要なのは、巧みな質問を通じて、顧客が抱える現状の課題、潜在的なニーズ、期待や要望、さらには意思決定のプロセスやキーパーソンなどを深く掘り下げて理解することです。人が物を買うという行為には、きっかけが必要です。そのきっかけを作る上で、必要不可欠なのがプロービングです。 単に製品を説明するのではなく、顧客の真の課題を的確に把握することで、後の提案の的確性と説得力を高めます。キーエンスが得意とする「顧客の期待を超える提案」の基礎となる重要なステップです。

③ サポーティング

サポーティングのステップでは、プロービングで明らかになった顧客の具体的なニーズや課題に対して、自社の製品やサービスがどのように貢献できるのかという価値を、具体的かつ論理的に説明・証明します。製品の機能やスペックを羅列するのではなく、顧客の課題解決や目標達成にどう繋がるのかという「顧客にとってのメリット」を強調することが求められます。キーエンスの営業では、具体的なデモンストレーションや導入事例を活用して、顧客が製品を導入した後の成功イメージを具体的に思い描けるようにサポートするのが特徴です。「これなら課題が解決できそうだ」「自社にとって必要なものだ」と顧客が納得できるように、根拠のあるわかりやすい情報を提供することが、商談成功のポイントになっています。

④ クロージング

クロージングとは、商談の最後のフェーズで、契約が取れるか取れないかを決めるところです。このステップでは、商談の最後に「見積もりの提出」や「次回のアポイント設定」など、次に進むための具体的な行動についてお客様と合意し、コミットメントを得ることが目的です。クロージングで特に大切なのは、お客様にとってのメリットを意識した言葉の使い方です。人の心を動かし、商談を前進させるには、説得力のある言葉選びが重要になります。

PSSを実践するメリット

キーエンスがPSSのような営業の「型」を重視し、徹底することで得られるメリットは多岐にわたります。

営業活動の標準化と質の向上

営業担当者個人の能力差に依存せず、組織全体として高いレベルの営業活動を維持できます。

新人育成の効率化

明確な型があることで、新人も早期に戦力化しやすくなります。OJTやロールプレイングも効果的に実施できます。

顧客満足度の向上

顧客のニーズを適確に捉え、価値ある提案を行うことで、顧客からの信頼と満足度を高めることができます。

仮説検証と改善のサイクル

標準化されたプロセスをベースに、成功事例や失敗事例を分析し、営業手法を継続的に改善していくことが可能です。

高い成約率の実現

論理的かつ顧客中心のアプローチにより、無理な売り込みではなく、納得感のある形での成約を目指せます。

PSSを営業全体に浸透させる方法

キーエンスが他社と一線を画すのは、このPSSという「型」を下記のような独自のサイクルを通じて、全社員に徹底的に浸透させている点です。

①徹底したロープレ(準備)

顧客訪問前には必ず上司と商談シミュレーションを実施し、「どのような質問で本質的な課題を引き出すか」などを論理的に深掘りします。入念な準備によって、成功の再現性を高めます。

②OJTによる実践

ロールプレイで立てた仮説を実際の商談で検証し、現場でスキルを磨き上げます。この実践を通じて、仮説思考と現場対応力を同時に鍛えていきます。

③「外報」による振り返りと再現性の確保

商談が終わると即座に「なぜ売れたのか/売れなかったのか」を言語化して報告。上司からの厳しいフィードバックを通じて、成功体験の再現性を高めていきます。

この「準備 → 実践 → 振り返り」のサイクルこそが、キーエンスの営業力を支える強力な育成の仕組みです。これを日々高速で回し続けることで、誰もが高いレベルの成果を出せる「最強の営業集団」が維持されています。

しかし、このような仕組みを自社で実践するのは、決して簡単ではありません。
特に「学んだ内容が現場で正しく実施されているか」を、報告書だけで確認するのは困難です。一方で営業マネージャーが部下の全商談に同席したり、録画を全て確認したりするのも現実的ではないでしょう。

こうした課題を解決する手段として注目されているのが、SFAと連携したAI技術の活用です。AIが商談内容を解析・レポートすることで、マネージャーの負担を軽減しつつ、営業の「型」の定着を強力にサポートします。ぜひ「AI商談レポート」の詳細をご確認ください。

まとめ

キーエンスの強さの秘訣は、PSSという営業の「型」を「準備→実践→振り返り」という独自のサイクルで全社員に徹底させている点にあります。これにより、営業担当者個人のスキルに依存しない、質の高い営業活動を誰もが再現できるようになっています。しかしながら、このような仕組みを自社で一から構築し、運用するのは容易ではありません。特に営業担当者が「型」を現場で正しく実践できているかをマネージャーが把握し続けることは難しいですよね。

こうした課題を解決する手段として、AIを搭載したSFAツールが有効です。AIが商談内容を分析・可視化することで、マネージャーはデータに基づいた的確な指導を行えるようになり、組織全体の営業の「型」の定着を強力にサポートできるでしょう。

SFAは活用されてこそ意味がある

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